「Design Leadership」Richard Banifield

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
デザインのチームを機能させるための考え方を、多くの成功しているデザイン企業から紹介している。

この先、デザイナーとして組織に関わる中でチームを率いることが増えると考え、本書にたどり着いた。本書でで紹介されている多くの方法は、決して著者が「正しい」と考えていることではない。著者がインタビューした多くの企業のリーダーたちの声を紹介しているだけである。その人のこれまでの経験から発せられた意見に過ぎず、決してどんな企業にも当てはまることではないし、なかには相反する意見もふくまれている。それでも、日本のデザイン企業よりもはるかに多様な人材と多様な文化の入り混じったデザインチームを機能させているリーダーたちの声はどれも非常に参考になる。

そんななか最も印象的だったのが、働く場所へのリーダーたちのこだわりである。オフィスのある都市や、オフィスのレイアウトがチームの文化への影響の大きさをどのリーダーも強調するのである。その他にも、採用の際に悩みがちな、「技術で選ぶか、情熱で選ぶか」など発展段階にある組織が遭遇する困難の多くに触れている。

そんななかでも結局、リーダーの役目はこちらの言葉に集約されている気がする。 リーダーの仕事は、自分の意思を押し付けることではなく、創造性が発揮される場所をつくることだ。

また、リーダーとして組織を導く中で、困難に出会ったら読み返したいと思った。

「リーン・イン」シェリル・サンドバーグ

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
フェイスブックCOOのシェリル・サンドバーグが女性向けのキャリア形成の方法を語る。

シェリル・サンドバーグのような女性が書いた本ということで、「女性も男性と同等の能力がある」という強い信念を持った生き方を語るのかと想像していたが、実際には、彼女自身のキャリアの過程で、女性であるがゆえに受けた差別や、自分自身が遠慮した結果逃したチャンスなど、常に自分自身の失敗談と向き合い学ん鼻知ったことを女性たちに向けて伝えている。

僕自身、普段から「男女平等」なふるまいをしているつもりではある。しかし、本書で彼女が語る、女性と男性の立場の違い、扱いの違い、振る舞いの違いを知ると、思っていたよりも、はるかにたくさん男女の差は存在するのだとわかる。そのうちのいくつかは、男性側の無神経さからくるものもあるが、「成功した男性は好かれるが成功した女性は嫌われる」という世の中全体が持っている価値観からくるものあり、男女平等という世界の実現にはまだまだ道のりが長いことを思い知らされる。

キャリアはマラソンだと想像してほしい。マラソンのスタートラインに男性ランナーと女性ランナーがついたとする。どちらも同じだけ練習を積み、能力も甲乙つけがたい。二人はヨーイドンで走り出し、並走を続ける。沿道の観衆は、男性ランナーに「がんばれー」と声援を送り続ける。ところが女性ランナーには「そんなに無理するな」とか「もう十分。最後まで走らなくていいよ」と声をかけるのである。

女性に対する接し方を改めて考えさせてくれる一冊である。

【楽天ブックス】「リーン・イン」

「Designing with Data」Rochelle King/Elizabeth F Churchill/Caitlin Tan

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
Spotify、Netflixなどなど、IT業界の著名な企業が、ABテストなどの調査を利用してサービスのデザインを発展させる方法について書いている。

本書ではDataを利用した開発手法を3つに分類している。

  • Data Aware
  • Data Informed
  • Data Driven

Data Drivenは取得したデータを信用してデザインを行うのに対して、Data Awareは参考程度に利用するといった意味である。いずれの方法も取得したデータを利用するが、そのデータの重要視具合が異なるのである。僕自身Data Driven Designという言葉を、「データに忠実にデザインする」という意味に受け取っていたが、かならずしもそうとは限らないのである。

さてABテストの利便性はわかっても、数あるテストしたい項目は、コンテンツやサービスの方向性などの大きな項目から、ボタンの色や文言などの細かい項目まで多岐にわたる。本書では第3章からそんな大量の知りたい項目を体系立てて行っていく手法について説明している。覚えておきたいのは、目的からテストまでを5階層にわけた考え方。

  • Goal
  • Problem/Opportunity Area
  • Hypothesis
  • Test
  • Result

そして、探索と評価、グローバルとローカルの2つの軸にテストの内容をプロットする考え方である。

  • Exploration-Evaluation
  • Local-Global

デザイナーのなかには、直感やセンスなど経験で培っていた部分を大切にしていて、データによってデザインするという考え方に抵抗を持つ人も多いだろう。しかし、本書で描かれている手法は、まったくそんなデザイナーの創造性を否定しているわけではない。むしろ、データという実際のユーザーの反応にしっかりと目を向けることで、デザイナーの持つ経験や創造性をさらに効果的に発揮させることができると言っている。

なかなか一度読んだだけで実践するのは難しいだろう。今後実践のなかで何度でも読み返したい。

「Molly’s Game」Molly Bloom

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ロサンゼルスでウェイトレスとして働き始めたMollyはやがて、Readonという男性に雑用として雇われる。Mollyを自身がReadonが主催しているポーカーを手伝うこととなり、Mollyは大富豪たちの世界へと足を踏み入れていく。
Molly’s Gameという同名の映画を見て、もっと詳しいことを知りたくなり本書を手に取った。ギャンブルのことはほとんど知識がなかったため、テキサスホールデムというルールや、コール、ベット、レイズ、フォールドの意味など、本書で書かれているギャンブル用語は知らないことばかりであった。そんななか驚いたのが、本書の中でも大きなターニングポイントとして描かれている、手数料の話である。州によって法律が異なるらしいが、手数料をとらなければ違法とはならないのだという。Mollyは実際、自身の主宰するポーカーでは手数料を一切とらず、参加者からのチップによって大きな利益を上げるのである。
やがてMollyはニューヨークへと場所を移し、さらに大きな利益を上げるのである。数年前には考えられないような豪華な生活と、誰もが羨むようなスターたちとともに過ごしながらも、虚しさを感じるMollyの葛藤が興味深い。その一方で、人生も含めて、大きなリスクをとることから離れられない、Mollyのお客となったギャンブル依存症のスターたちの生き方も面白い。
普通の生活をしているかぎり見ることのできない世界を、同じように数年前まで田舎者だったMollyの目線で見せてくれる。

「最強の営業法則」ジョー・ジラード

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
世界一の営業マンと呼ばれる著者がその営業手法を語る。
ジョー・ジラードという名前を知らなかったが、なぜか営業という仕事についている人が毎日どのように考えて仕事をしているのか知りたくなり、本書を手に取った。本書に書かれていることは、決して営業職に就いていない人には役に立たない内容ばかりではない。なぜなら、結局、営業の能力というのは、人と繋がり、人に好かれる能力なのである。つまり、人生におけるさまざまな場面で応用が利く能力なのだ。
本書の核となる考え方を一つ挙げるならば、著者が自らの名前を載せて「ジラードの250の法則」と呼んでいる法則である。簡単に言うと、どんな人でも250人程度の知り合いがおり、1人の顧客の気分を害せば、その噂は250人に広まることを覚悟しなければならない、というものである。もちろんこれは、いい方向にも考えられることで、人にいい印象を与えれば、それはやがて250人に伝わるということである。今はインターネットの拡散力も手伝って250どころではないかもしれない。
その他にも、本書ではいろんな営業手法や考え方を紹介している。実は本書はすでに40年も前に執筆された本ということで、インターネットを活用する方法などはもちろん含まれていないが、通常の郵便のように見せかけて人の記憶に残るという郵便による営業手法は、メールなどでも使えそうな方法で、機会があれば実践してみたいと思った。
【楽天ブックス】「最強の営業法則」

「おもかげ」浅田次郎

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
定年を迎えた竹脇正一(たけわきまさかず)はその帰り道に倒れて病院に運び込まれた。昏睡状態になった竹脇(たけわき)に対して、妻や友人、看護師などがそれぞれの立場とそれぞれの視点から竹脇(たけわき)を語る。
周囲の人々が、竹脇(たけわき)を見つめると同時に、竹脇(たけわき)自身も夢のなかで旅をするのである。その旅のなかで竹脇(たけわき)は一人の女性と出会い、それぞれの思いを少しずつ打ち明けていく。
なかなか大きな展開もないので時間がない時に読むとちょっとじれるかもしれないが、最後はそれなりに最後はほっこり感動できる展開。また、夢の中で竹脇(たけわき)は何度も地下鉄に乗るので、昭和の地下鉄の発展に興味がある人には楽しめるかもしれない。
【楽天ブックス】「おもかげ」

「Lost Symbol」Dan Brown

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
偽りの電話によってワシントンに呼び出されたRobert Langdonはそこで、友人であるSolomonの切断された腕を見つける。犯人と名乗る Mal’akhの電話によると、Solomonを救うためにLangdonはMason’s Pyramidを見つけなければならないのだという。
話の流れは前作「The Da Vinci Code」と非常によく似ている。「The Da Vinci Code」をすでに読んだ読者にとっては、扱っている内容と、舞台が異なるだけで、物語のスピード感や展開にあまり新鮮さは感じられないだろう。物語を通じて明らかになるアメリカの首都ワシントンD.C.の謎に興味がある人にとっては、これ以上のエンターテイメントはないのではないだろうか。
個人的には、すでにDan Brownがてがけた続編として「Inferno」や「Origin」があるにもかかわらず、あまり物語としての大きな新鮮さは期待できないのではないかとの印象を受けた。続編を読むか読まないかは現時点ではなんとも言えないところである。

「僕がアップルで学んだこと」松井博

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
Windowsに押されて停滞していた時代と、iPhoneによって世界一の企業へと返り咲いた時代の両方を
経験した著者が、理想の職場と、仕事に対する姿勢について語る。
アップルに返り咲いたスティーブ・ジョブスが行なった改善は、一般的に言われる「割れ窓理論」というもので、細かいことまで徹底的に管理することで会社の文化を改善していくというものである。本書ではそんなジョブスの改革を現場にいた著者の視点から語っている。
また、後半では「社内政治と賢く付き合う方法」についても語っている。アメリカの企業というと、実力主義という印象を持っていたので、社内政治について書いてあるのは意外だった。
あまり秩序立った描き方がされているわけではなく、どちらかというと著者のアップル在籍時代の思い出、といった印象だが、組織を大きくするなかで活かせそうなヒントが詰まっている気がする。
【楽天ブックス】「僕がアップルで学んだこと」

「シェアリングエコノミー Uber、Airbnbが変えた世界」宮?康二

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
AirbnbやUberに代表される、ユーザー同士が使わないものをシェアするためのプラットフォームの現状を知りたくて本書にたどり着いた。
本書では序盤にシェアリングエコノミーの仕組みと、なぜそれがなぜここ数年普及してきたかを説明して、そして中盤以降では、UberとAirbnbに焦点をあててその発展と現在の状況を語っている。
シェアリングエコノミーというと、「使わなくなったもの、または使っていない状態のものの再利用」という印象がが強く、その普及によって経済は停滞方向へ進むと考えていたが、本書によると、新規需要の創出という期待もできるのだという。

これまでホテルがなく滞在できなかった田舎町でもAirbnbなどを活用すれば、観光客が訪れることができる様になる。

途中で触れているミクロ経済学における市場メカニズムが資源の最適な分配を実現する条件。

1.私的独占や寡占がなく、生産者感やユーザー間の競争が十分にあること
2.取引関係者の間に情報の非対称性がないこと
3.直接の関係者以外の第三者に、大きな不利益ないしは利益を与えないこと

というのも、初めて聴くことで印象的だった。
全体的に人に勧めるほど内容の濃い内容ではなかったが、法律による規制の問題がシェアリングエコノミーの普及に大きく影響しているのだと再確認することができた。今後は規制との関連も踏まえて、シェアリングエコノミーの動向に注意を向けていたいと感じた。
【楽天ブックス】「シェアリングエコノミー Uber、Airbnbが変えた世界」

「A3」森達也

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
東京地裁でオウム真理教の教祖である麻原彰晃(あさはらしょうこう)の裁判を傍聴し、すでに裁判を進めるのに十分な人間性を保てていないと感じた著者が、その経過を語りながら、日本のシステムの問題を明らかにしていく。
本書を読むと、オウム真理教の事件で毎日騒がれていた時に持っていたオウム真理教の印象と、実際のそれは大きく異なるのではないかと、感じるだろう。実際、本書の中で著者は、何度も東京拘置所に足を運び、早川紀代秀(はやかわきよひで)、中川智正(なかがわともまさ)などのオウム真理教の重要人物と話、その会話の一部を載せているが、そこから受ける印象は、いずれもとても礼儀正しい人物だということだ。
著者は訴える。結局僕らはオウム真理教がなんなのかを知ることもなく、知る努力もせずに形だけの裁判によって裁いて終わらせてしまったのだと。世の中がオウム真理教を嫌いその責任者を「死刑にすべき」と望んだから、メディアがそれを助長し、結果として、国のシステムまでもがその勢いに流されてしまったのだと。法治国家として本当にこれが正しいあり方なのだろうか。と。

僕は面会室に入ってきた新実の表情をニコニコと描写した。このニコニコをニヤニヤに変えるだけで、受ける印象はまったく違う。

 
本書で書かれていることをすべて鵜呑みにするのは危険ではあるが、ありえない話ではないと感じた。世の中で頻繁に起こりうる殺人や強盗、窃盗や傷害などの犯罪に対しては、すでに対応の仕方も確立されており国として何度も対応を繰り返してきたために、毅然と対応されるのだが、オウム真理教の起こした事件のような、過去前例のない犯罪が起こった時、日本という国のそれぞれの組織は、対応方法に悩み子供っぽさを露呈するのかもしれない。たとえそれが裁判所という日本の司法権を行使する国家機関であっても。
【楽天ブックス】「A3(上)」「A3(下)」

「歌舞伎町ダムド」誉田哲也

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
歌舞伎町に「歌舞伎町ダムド」を名乗る殺し屋がいるという。歌舞伎町をこれまで守ってきた歌舞伎町セブンの7人と、歌舞伎町ダムドの行動が少しずつ交差し始める。
今回は歌舞伎町セブンのミサキの過去が明らかになる。そんなミサキは息子を人質に新宿署の警察官、東(あずま)を殺害することを依頼される。一方で、歌舞伎町セブン全体としては、命の危険にさらされている東(あずま)を守る方向に動くこととなる。2つの組織の間に挟まれたミサキはやがて、歌舞伎町セブンと対立する組織「新世界秩序」との対決を決意するのだった。
「ノワール 硝子の太陽」を読んで疑問に感じたミサキの過去を明らかにしてくれたが、大きな物語の一つのエピソードと言った印象で、物語のなかから学ぶ要素や、長く印象に残りそうな描写はほとんどなかった。
【楽天ブックス】「歌舞伎町ダムド」

「プロデューサーシップ 創造する人の条件」山下勝

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
良いプロデューサーとはなんなのか。そんな視点でプロデューサーについて語る。
そもそも「プロデューサー」とはどんな人を指すのか。実は僕らはこの「プロデューサー」という言葉を曖昧なまま使っている。多くの人が一昔前に「プロデューサー」という言葉で共通して持っていたのは小室哲哉のような音楽プロデューサーであろう。本書では「Shall We Dance」などのヒット映画を生み出した映画プロデューサー等を例にとってそのプロデューサー像を説明する。
中盤以降ではプロデューサー型人材の持つ能力や、そんな人材を育むための環境について語っている。
正直、あまりわかりやすい内容とは言えないのだが、ここまでプロデューサーという役割に焦点を絞った書籍は珍しく。企業に利益をもたらすような人材を育てるための環境作りに役立つヒントがたくさんつまっているのではないだろうか。
【楽天ブックス】「プロデューサーシップ 創造する人の条件」

「歌舞伎町セブン」誉田哲也

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
歌舞伎町で町会長の高山和義(たかやまかずよし)が遺体となって発見された。自分の父も同じように歌舞伎町で突然心不全として亡くなった経験を持つ新宿署地域課の小川幸彦(おがわゆきひこ)は、独自に事件の調査を始める。
やがて小川は、歌舞伎町を中心に活動するジャーナリスト上岡(かみおか)と知り合い、「歌舞伎町セブン」という存在を耳にする。
一方、歌舞伎町で小さな居酒屋を経営する陣内陽一(じんないよういち)は、かつては「あくびのリュウ」と呼ばれた歌舞伎町セブンのメンバーの1人。現在はささやかな生活を送りながらも、高山和義(たかやまかずよし)の死を機にかつての仲間から歌舞伎町セブンとしての復帰を求められる。
誉田哲也の警察物語の中で、歌舞伎町セブンを題材とした物語の第1弾であるが、「ジウ」シリーズで起こった歌舞伎町封鎖事件などとも繋がりがあり、誉田哲也の物語をすべてたのしもうと思ったらはずせない一冊である。
誉田哲也のもう一つの警察物語であるストロベリーナイトシリーズとのコラボとなった「ガラスの太陽 ノワール」を、先に読んでしまっていたため、前後の繋がりが把握できていなかった歌舞伎町セブン関連の謎は、本書を通じて解決するかと思ったがそんなことはなく、「歌舞伎町ダムド」および、「国境事変」も読む必要があると感じた。
【楽天ブックス】「歌舞伎町セブン」

「また、同じ夢を見ていた」住野よる

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
小学生の小柳奈ノ花(こやなぎなのか)は、年齢の割に賢く読書が好きだったためか、学校にはあまり仲の良い友達がいなかった。その代わり、放課後は近所に住む高校生の南(みなみ)さん、社会人のアバズレさん、そして、年配のおばあちゃんとの時間を楽しんでいた。そんな奈ノ花(なのか)の日々を描く。
小学生の女の子を扱ったほのぼのとした雰囲気で物語が始まるが、少しずつ小学校の教室での彼女の立ち位置が見えてくる。決してイジメられっ子というわけでも、弱虫というわけでもないが、奈ノ花(なのか)の毎日の行動から、その苦悩が伝わってくるのではないだろうか。
それでも、少しずつ、奈ノ花(なのか)の周囲の大人たちによって、奈ノ花(なのか)の世界は開けていく。もう何年も前に当たり前だった教室という逃げ場のない小さな世界と、そんなわずか40人程度の集団が、世界のすべてだった頃を思い出させてくれる、ほっこりさせてくれる作品。
【楽天ブックス】「また、同じ夢を見ていた」

「ノワール 硝子の太陽」誉田哲也

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ストロベリーナイトシリーズの「ルージュ 硝子の太陽」の裏の物語。同じ時期に起こったもう一つの事件を描く。
この物語への入りは、「ストロベリーナイト」シリーズの延長からであるが、本書は、ストロベリーナイトシリーズではないので、「ストロベリーナイト」シリーズのヒロイン姫川はほとんど出てこない。むしろ本書は、誉田哲也の「歌舞伎町セブン」のシリーズと位置付けられるようだ。
物語は、沖縄基地問題の重要人物を公務執行妨害によって勇み足で逮捕してしまい、その取り調べ担当として東(あずま)刑事が任命されることから始まる。しかし、同じタイミングで、沖縄基地問題を調べていた知り合いのフリーライターである上岡慎介(かみおかしんすけ)が殺害される。上岡(かみおか)が歌舞伎町セブンのメンバーではないかと疑いを持っていた東(あずま)は歌舞伎町セブンのメンバーと思われる人間に接触を試みる。
法律を無視して、自分たちで世の悪党と思われる人々に制裁を与える「歌舞伎町セブン」の面々と、警察組織に所属しながらも、歌舞伎町セブンの行動を止めることもできずに共存しようとする東(あずま)のやりとりが面白い。ただ、誉田哲也の今まで読んでいなかったシリーズ、もしくは読んだけど忘れてしまっているシリーズの物語との関連性が強く、本書の面白さを味わい切れていないとも感じた。
「ジウ」を読み直して、「歌舞伎町セブン」のシリーズを一通り読んでから、もう一度読んでみたいと思った。
【楽天ブックス】「ノワール 硝子の太陽」

「ルージュ 硝子の太陽」誉田哲也

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
世田谷で起きた一家惨殺事件を捜査することとなっった姫川玲子は、やがて28年前の類似事件の存在に気づくのである。
「ストロベリーナイト」に始まる姫川玲子のシリーズの第6弾である。シリーズには短編集も長編もあるが、本書は長編ということで、一家惨殺事件という凶悪事件に姫川は関わることとなる。
警察の捜査の様子とは別に、本書では、ベトナム戦争の後遺症に悩むアメリカ人男性の描写が間に差し込まれていく。戦時中に経験した残酷な命のやりとりの悪夢から逃れられない彼は、日本人の家族を惨殺した夢を頻繁に見るのである。読者は、このアメリカ人を犯人と予想しながら、少しずつ真実に迫っていく姫川とそのほかの警察関係者の様子を楽しむこととなるだろう。
おそらく本書のモデルとなっているのは2000年に起こった未解決事件である、世田谷一家殺害事件なのだろう。本書を読むなかで興味をかきたてられ、事件の詳細を調べたくなった。また、本書はほかのシリーズ作品と異なり、「ノワール 硝子の太陽」という別の物語と表裏一体になっているという。いくつか未解決のまま終わった消化不良の部分もあるが、きっとそのへんは「ノワール」の方で解決するのだろう。物語自体の面白さに加え、そんな2面構成もあわせて楽しめるのではないだろうか。
【楽天ブックス】「ルージュ 硝子の太陽」

「No.1エコノミストが書いた世界一わかりやすい為替の本」上野泰也

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5

漠然とFXで投資をするなかで、FXの持つリスクを正しく理解したいと思って本書を手に取った。
序盤は、「円高」などの言葉の意味もわからないような初心者にも理解できるような、噛み砕いた為替の説明から入り、中盤からは、どのようなできごとが為替に影響を与えるか、などより詳細な為替の動きについて説明している。
僕のようにFX投資するために必要な最低限の知識を持ちながらも、1段階知識のレベルをあげたいという人にちょうどいい。特に後半の2つの章「ドル以外の通貨の実力は?」と「為替相場の動きの法則と読み方・考え方」はまさに知りたかったことで、しかもその知りたかったことを細かくなりすぎない粒度で説明してくれている点がありがい。
世界一わかりやすいかは疑問だが、僕にとっては目的を十分に満たす内容だった。
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「A Dangerous Place」Jacqueline Winspear

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
Maisie Dobbsの第11弾。時代は1934年、時代はまさに第二次世界大戦へと突入しようとしている。それまで探偵業を営んでいたMaisieは前作で新しい生活を始める決意をし、本作品はそのあとの物語である。
まず驚かされるのは、前作までの間に時間的な隔たりがあり、Maisieの夫であるJamesが事故死している点であろう。友人や親の心配を感じながらも、その悲しみと向き合うためにジブラルタルに降り立ったMaisieはそこで暴行に襲われた写真家の死と遭遇するのである。失意の底にありながらも自らの存在意義を確認するかのようにMaisieはその真実を解明しようと動き出すのである。
亡くなった写真家の捜査をするなかで、ジブラルタルの多くの人と出会う。そしてそんななか少しずつMaisieは過去と向き合って夫を失った自分の今後の行き方を模索する。それでも戦況は悪化する一方で、やがてゲルニカ爆撃が起きるのである。
全体的には、登場人物など、過去の作品と繋がったエピソードが多く、本書だけで楽しむのは難しい印象を受けた。ここまでシリーズのすべてお読んでいる僕にとっても、すべてを理解したとは言えないだろう。本シリーズが残りどれほどあるのかわからないが、Maisieにとって前向きな終わり方をしてほしいと思った。

「ネットがつながらなかったので仕方なく本を1000冊読んで考えた そしたら意外と役だった」堀江貴文

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
2年半の刑期のなかで大量の本を読み、そのなかで良いと思ったものを勧めている。
正直このような本だとは思っていないで手にとったのだが、新たにたくさんの読みたい本に出会えた。それぞれの本を紹介する中で著者自身の考え方も書いているが、すでに堀江貴文という人物を知っていて、その著作に何度か触れたことある人にとっては特に新しいものではないだろう。
著者が挙げるリストのなかには有名にもかかわらず、今まで僕が読んでいなかったものなどもあり、これを機会に読んでみたいと思った。

・「グラゼニ」森高夕次
・「JIN 仁」村上もとか
・「東京タワー」リリー・フランキー
・「五体不満足」乙武洋匡
・「A3」森達也
・「こんな僕でも社長になれた」家入一真
・「理系の子」ジュディ・ダットン
・「とんび」重松清

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「ワーク・ルールズ!」ラズロ・ボック

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
グーグルの人事担当者である著者がこれまでのグーグルにおける人事制度のできるまでを語る。

グーグルは世界で最も人気のある企業として認知されているが、実際その文化はどのように作られるのかは正直知らなかった。本書を読むと、ほとんどすべての制度が、データをもとに実験と検証を繰り返しながら少しずつ出来上がったものだとわかる。

本書で題材として上がっている制度のできあがるまでの過程やその背景にある考え方など、どれも非常に興味深い。本書を読むと、どちらかというと組織のなかでレベルの低い人が集まると考えられがちな人事部の仕事も面白そうに思えてくる。また、どんなこともオープンにして、自由に議論が言えるグーグルという環境がうらやましく思えてくるだろう。

「人材は大事」と誰もが言いながらも、グーグルほどその大事さを行動に反映させている組織はないのではないかとも感じた。

たいていの企業は正規分布を使って社員を管理する。...テールは左右対称にはならない。成績の悪い社員は解雇され、さらにひどい人間は入社すらかなわないため、左側のテールが短いからだ。

今後組織づくりに関わるにあたって、もう一度読み直したいと思える一冊。
【楽天ブックス】「ワーク・ルールズ!」