「銀河鉄道の父」門井慶喜

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
第158回直木三十五賞受賞作品。

質屋の家に育った宮沢政次郎(みやざわまさじろう)に長男が生まれ、賢治(けんじ)と名付けらて自由奔放に育っていく。宮沢賢治の一生を父政次郎(まさじろう)の目線で描く。

やがて宮沢家には賢治(けんじ)のあとにも、トシ、クニ、シゲ、清六という子供達が生まれ、政次郎(まさじろう)は質屋を営みながら、子どもたちの人生を支えていくのである。子どもたちが大きくなるにつれて、「質屋に学問はいらない」と進学を拒んでいた政次郎(まさじろう)が大きな時代の変化や、子供達の強い気持ちに触れて、考え方を変えていく様子が印象的である。いつの時代も父親というのは、自分の歩んできた道の正しさと、自分を越えていってほしいという願いの間で揺れ動きながら子供に接するのだろう。

そんななか、賢治(けんじ)は、優秀な成績で進学をしながらも、いつまでたっても現実的な安定した仕事に就けずにいた。やがて、妹トシの強い勧めもあって、賢治(けんじ)は童話を書くことに目覚めていくのだ。

宮沢賢治(みやざわけんじ)といえば、どこか不思議な物語や詩の印象しかなく、その人生がどのようなものだったかなど考えたこともなかった。しかし、本書を読むと、人生のなかでいろんなことに悔やみ、悩み、生きてきた人間だから作れた物語なんだと感じた。そして、その物語や詩は、周囲の人に助けれながらようやく世に出たもので、どこか少しでも違った方向に動いていたら世に出なかったのだと知った。

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