「諦める力 勝てないのは努力が足りないからじゃない」為末大

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ハードルのメダリストである著者が、自らの経験を基に、現在の日本のスポーツのありかたについて語る。
成功者は言う「諦めなかったから夢がかなった」。僕らは成功者の言葉を聞くことはたくさんあっても、失敗者の言葉を聞くことは少ない。そのため、「諦めなければ夢は叶う」という間違った考えを信じてしまい、それによって多くの競技者たちが引き際を間違えてつらい人生を送ることになるのである。本書で著者は繰り返し言うのである。確かに成功者は諦めなかったから成功したのだろう。しかし、その裏で諦めなかったけれども成功できなかった人がその何倍も存在するのであるのだと。

「やめなかったからこそできた」
こう主張する少数派の言葉に嘘はないが、現実の社会においては、はるかに敗者のほうが多いという事実はわかっておくべきだ。

ちょうど本書を読み終えたころに、世の中はまだ、リオ五輪の余韻に浮かれていた。バドミントンで金メダルととった女性ペアに、4年後もオリンピックを目指してくれるように頼んでいるタレントがいた。このような世の中の態度が、競技者に不要なプレッシャーを与えるのだと感じた。
周囲の人間は、夢を追いかけることばかりを強要するのではなく、その人の人生がよりより人生であるように、別の選択肢を示してあるべきなのだろう。スポーツの世界に没頭できるのはせいぜい人生の1/3程度なのだから。何かに頑張っている人に対して、多くの選択肢を示せる存在でありたいと思った。
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「走る哲学」為末大

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
トラック競技で日本人初のメダルを獲得した著者がツイッターでつぶやく内容を集めたのが本書である。
以前より著者為末大の語る言葉が深い、というのは友人から聞いていた。実際ネット上でも彼の語る内容が物議を醸し出していたりもして、一般的な「スポーツ選手」というイメージから想像される人物とは少し異なる考え方を持っているということは知っていた。それでも彼の書籍を読むのは本書が初めてだったので、その視点の深さに改めて驚かされた。いくつか心に響いたものを取り上げるとこんな感じである。

“継続は力なり”は、常に撤退を頭に入れている時に効力を発揮する。
辛い練習をすれば安心と満足感は約束される。楽な練習はこれでいいのかと不安になる。勇気があるから辛い練習をするのではなくて、臆病だから辛い練習をしている場合もある。

また、自分と強く一致する部分があったことのも印象的だった。

いい方法を探すのではなく、マシな方法を探すと思った方がいい。どんな方法にも問題はあり、問題がない方法を見つけようとし過ぎれば、実行が送れ、学習のサイクルが鈍る。

何度でも読み返したくなるような、素敵な言葉にあふれている。
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