「転落」永島恵美

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ホームレスとして生きていた「ボク」はある日、小学生の女の子と出会う。彼女が持ってきてくれる食べ物と引き換えに、彼女の言うことを聞くことになった。
ホームレスである「ボク」目線で物語は進む。生まれ育った街から遠く離れた場所でホームレスになった「ボク」は小学生の女の子から食べ物をもらいながら生活し、あるとき一人の年配の女性と遭遇する。その人は顔見知りであり過去つらい体験を共有した女性であった。
中盤以降は、その女性目線で物語は展開し、少しずつその女性と「ボク」の関係が明らかになっていく。「ボク」もその女性も、慣れ親しんだ街や友人たちと決別して遠く離れた都会でひっそりと生きることを選んだ。彼らの体験からは、僕ら男性が普段無関心だったり「大した問題ではない」と軽んじている、女性ならではのいさかい、子育て、人づきあいなどの、人の心に深い傷を刻みかねない深刻さが見えてくる。

何もかも話せる相手がいるというのは恐ろしいことだ。言葉にした瞬間、曖昧にしておきたかった事実がはっきりとした輪郭を表す。気づかずにいたほうがいいことまで、気づかされてしまう。

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