「おいしいごはんが食べられますように」高瀬準子


オススメ度 ★★★★☆ 4/5
第167回芥川賞受賞作品。支店の人間模様を描く。

埼玉の支店に勤める入社7年目の男性二谷(にたに)さん、入社6年目の女性芦川(あしがわ)さん、5年目の女性押尾さんを中心に、支店の様子を、二谷(にたに)さんと押尾(おしお)さんの目線で交互に描いていく。

みんなに愛される芦川(あしがわ)さんは、料理が得意であることを活かして、ケーキなどを職場に持ってきて配る。一方で、高校時代にチアリーディングをやっていた押尾(おしお)さんは、芦川(あしがわ)さんのそんな弱さや、みんなから大事にされることが気に入らない。また、食にそれほど興味がなく、カップラーメンを好む男性二谷(にたに)さんは、芦川(あしがわ)さんと恋愛関係にありながらも押尾(おしお)さんに理解を示す。

ごはん面倒くさいって言うと、なんか幼稚だと思われているような気がしない?おいしいって言ってなんでも食べる人の方が、大人として、人間として成熟してるって見なされるように思う
勘弁してよ。他店で、ものもらいができたくらいで休むなって怒鳴った方が飛ばされたって話、聞いたことあるでしょ

大きい会社の支店というだけに、表面的な礼儀正しさを重んじながらも、不快感が蓄積していく様子が見えてくる。若干極端に表現されてはいるけれども、似たような感情に覚えがある人は多いのではないだろうか。

芥川賞が新人向けの賞であることからか、比較的あっさりした内容の作品が多い印象がある。しかし、本書はいままで描かれなかった、好意を鬱陶しいと感じる人間の嫌な部分を描いており、後味の良し悪しはともかく新鮮に感じた。著者の今後の活躍が楽しみである。

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