「キョウカンカク」天祢涼

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
第43回メフィスト賞受賞作品。女性を無差別に殺して、その死体を焼くという手口で殺人を繰り返すフレイムの事件を解決するために、音を見ることができる共感覚を持つ音宮美夜(おとみやみや)が捜査に乗り出す。

先日読んだ「希望が死んだ夜に」が比較的良かったので、著者の過去の作品を探して本書にたどりついた。

共感覚という事象はすでに一般的に知られるようになったとはいえ、本書のように共感覚を扱った物語は珍しいだろう。フレイムに幼馴染を殺された失意の高校生山紫郎(さんしろう)が、音宮美夜(おとみやみや)と相互の利益のために共に行動することとなり、フレイムに近づいていくのである。

物語の展開として面白いのは、序盤でその人物の発する声の色から、容疑者を絞り込んだことである。その容疑者とは山紫郎(さんしろう)の幼馴染である神崎玲(かんざきれい)であるが動機がない。さまざまな可能性も考慮しながら犯人を絞り込んでいく。本当に神崎玲(かんざきれい)が犯人なのか、それとも共感覚に振り回されて真犯人を見逃しているのか。

音宮美夜(おとみやみや)を主人公とした続編がいくらでも作れそうな感じで気楽に楽しめる一冊。

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「希望が死んだ夜に」天祢涼

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
深夜の住宅街の空き家で通りがかりの警察官により、首を吊った女子中学生春日井のぞみが見つかり、その場にいた女子中学生冬野ネガが拘束された。「私が殺した」と主張する冬野ネガに対して、神奈川県警の真壁と仲田が真実解明していく。

本書を読んで初めて知ったのが、2000年に少年法が改正されて、現在の少年法の適用は14歳までとされていることである。本書の冬野ネガは14歳で、少年法の適用範囲を出ており、それにより取調室が使われるなど、通常の被疑者と同じ扱いをされるのである。

送検するまでの2日間にできるかぎり真実を明らかにしようと真壁(まかべ)と仲田(なかた)が奔走する様子を描いている。真壁は将来を期待される刑事なので、一つの実績と位置付けてできるかぎりスムーズに真実を解明したいと考える。一方でパートナーとなる仲田蛍(なかたほたる)は生活安全課の仕事をしながら過去数々の少年に絡んだ事件を解決した経歴を持っている。論理的に状況を分析して真実に近づこうとする真壁と、関係者の心のうちを想像しながら真実を見出そうとする仲田という異なる考え方を持つ2人がともに行動するのだが、少しずつ真壁の考え方に変化が現れていくのである。

やがて、冬野ネガの家庭が貧困家庭であったことが判明していく。真壁自身シングルマザーの貧困家庭から刑事になった経歴を持つため、それでも殺人の言い訳にはならない、と見ていたのだが、少しずつ真実が明らかになるにつれて考え方を変えていく。

貧困は珍しくない。どんな過酷な状況でも努力すれば道は開ける。「母を楽にさせたい」という一心で這い上がってきた俺が言うのだから間違いないーーそう思っていた。…そして俺は、「母に楽をさせたい」という一心で、勉強しかしていなかった。母にだけ苦労をかけて、自分は努力する余裕があったのだ。

送検までの2日間の事件解決の物語ではあるがその間の真壁の人間的な成長の物語でもある。女子中学生2人の友情を描きながら、親のあり方や生活保護に対する世の中の偏見など多くの題材がつまった密度の濃い一冊。

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