「花まんま」朱川湊人

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
第133回直木賞受賞作品。大人になった人々が子供時代の不思議な体験を思い起こす。そんな6つの物語である。

ずっと心の奥にとどまっている、心残り、引っ掛かり、解決しないままの気がかりなど、すでに記憶に残るぐらいの年齢ではあるが、世の中のすべてを知っているとは言い切れない、そんな年代である小学生の頃の不思議な記憶を、それぞれの男女が吐き出していく。6つの物語に触れる中で、当時の情景が思い起こされ、当まだまだ貧富の差や、差別などがそこら中にあふれていたのだと感じるとともに、過去の生活の進歩を改めて感じる。

また、本書にふくまれる6つの物語のように、人の人生とは必ずしも、優しい人が幸せになるわけでもなく、悪い人が罰せられるわけでもなく、いつか完全にすべての謎が解けるような作られた映画のような物語でもなく、はっきりしないまま、何年経っても結末を知り得ない、やるせない部分を抱えているものなのだろう。

どれも同じ40代、50代の主人公が小学校の頃を思い起こす物語だから、どの物語からも昭和の懐かしい香りが漂ってくる。描ききらない微妙な空白が、40代の僕に当時の埃まみれの校庭や道端の匂いを感じさせてくれる。他の世代の人はどう思うかわかららないが、同年代の人には間違いなくおすすめできる作品。

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