「マツダがBMWを超える日 クールジャパンからプレミアムジャパン・ブランド戦略へ」山崎明

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
品質はいいのに「安くていいもの」しか作れない日本の企業を嘆き、BMWやロレックスなどを例に、ブランドの育て方を語っている。

高級なブランドを作ろうと思ったら何をすればいいだろう。高品質なものを高く売ることから始めたらいいだろうか。おそらく高級なブランドを作るために考えなければならないのは、品質と値段だけではないのだ。ブランドが確立されれば、品質によらず商品が高く売れる。本書は自動車ブランドを中心い多くの例を交えながら、ブランドを語っている。

序盤では、海外のブランドに焦点をあて、それらがどのようにブランドを確立していったかを説明している。例えば、BMWは50年ほど前までは高級と呼ばれるレベルではなかったが、「運転を楽しむ」という個性を追求した結果、今ではメルセデスと並ぶブランドに成長している。そのほかにもロレックスやポルシェ、フォルクスワーゲンのブランド戦略を説明している。

中盤以降は、日本のメーカーに目を向けて、なぜブランド価値が上がらないかを説明している。トヨタがレクサスブランドを別に作りながら、やっていることが変わらないため、結局レクサスはトヨタと同じ大衆車という認識を持たれてしまっている。ブランドの価値を理解して、買収してもブランドの名を残すフォルクスワーゲンなどの海外ブランドと比較して、買収するとともに自社名に変更してしまうソニーなど(コニカミノルタ買収の件)日本企業をブランドの理解が乏しいと嘆いているのである。

そんななか、最後にマツダについて、唯一日本で海外ブランドと渡り合えるポテンシャルを持っていると推している。最近多方面でマツダへの注目の高さを耳にするので、今後にぜひ期待したい。

本書を読んで、海外の有名な自動車ブランドの多くが、実はフォルクスワーゲンの傘下に入っていることに驚かされた。ベントレーもブガッティもランボルギーニも現在はフォルクスワーゲンなんだという。この驚きがまさに、フォルクスワーゲンのブランド戦略がうまくいっている証拠と言えるだろう。ブランドを作るために大切なことがたくさん詰まっている一冊。

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