「アジャイル開発とスクラム 第2版 顧客・技術・経営をつなぐ協調的ソフトウェア開発マネジメント」平鍋健児、野中郁次郎、及部敬雄

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
アジャイルとスクラムについての基本と現状を多くの例を踏まえて説明する。

序盤はよくあるスクラム関連書籍のように、アジャイルとスクラムの説明から始まる。

大部分が一度は耳にしたことのある内容だったが、改めてその意味を復習する機会となった。そんななか次回これをやってみたいと思ったのは次の二つである。

大きな収穫としては、本書を読むまで2020年のスクラムガイドの改訂を知らなかった。改訂項目を見るとスクラムの陥りがちな罠が見えてくる。本書では次の3つに触れている。

  • インセプションデッキ
  • やらないことリスト

1.スクラムが形式的、儀式的になってしまっている
2.プロダクトオーナー vs 開発チームの構図に陥ってしまっている
3.スクラムマスターがスクラム警察もしくは雑用係になってしまっている

2020年の改訂だけでなく、2017年の改訂についても理解してその傾向を理解して実践へ反映していきたい。

また、スクラムでは常に発生する悩みであるが、どうしても複数のプロジェクトが同時に進んでいたり、チームメイトが複数のプロジェクトをまたがって担当している場合にうまくいかない場面が出てくる。しかし、本書ではスクラムをスケールさせるいくつかの考え方にも触れている。

  • Less
  • Nexus
  • SAFe
  • Scrum@Scale
  • Disciplined Agile

本書の触れ方だと詳細の考え方がわからないので、追って深掘りしてみたい。

後半では、いくつかの日本の大手企業のスクラム導入の様子やインタビューを掲載している。これまで触れてきたスクラムやアジャイル関連の書籍はどれも海外の著書で、そのため、例も海外のものが多かった。本書は日本の企業がスクラムを導入例に数多く触れている点が新鮮である。

スクラムやアジャイルに対してまた新たな気づきを与えてくれた。

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「NO RULES: 世界一「自由」な会社、NETFLIX」リード・ヘイスティングス、エリン・メイヤー

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
現在AppleやGoogleなどのGAFAと同列に語られるNetflixのカルチャーについて語る。

本書はネットフリックスの創業者であるリード・ヘイスティングスとエリン・メイヤーが交互に語ることで進んでいく。リード・ヘイスティングスは以前の会社で会社の規則を細かく規定して行った結果、多くの優秀な人材やクリエイティブな環境が失われて行ったと感じており、その反省がネットフリックスの文化に反映されているという。

まずネットフリックスは社内の能力密度を上げることを目指している。そんな文化を築くために繰り返し出てくる言葉がが次の2つである。

フリーダム&レスポンシビリティ(自由と責任)
コンテキストによるリーダーシップ

本書では休暇、退職、情報共有、フィードバック、経費の承認などの事例を交えながら、ネットフリックスのカルチャーとそこに至った経緯を説明していく。どれも驚かされながらも、納得のいくものばかりである。そんななか、特に取り入れたいと思ったのは、フィードバックの文化である。フィードバックで意識する要素をネットフリックスでは4Aとして次のように定義している。

  • 1.相手を助けようという気持ちで Aim to Assist
  • 2.行動変化を促す Actionable
  • 3.感謝する Appreciat
  • 4.取捨選択 Accept of Discard

最後には文化の違いなども考慮して5つめの適応させる Adaptを追加している。やはりフィードバックの前に良いところを伝えたり、オブラートに包んだりすることは、相手の育ってきた文化によっては必要なのだろう。

また、イノベーションを生み出すためのイノベーションサイクルも印象的である。

  • 1.「反対意見を募る」あるいはアイデアを「周知する」
  • 2.壮大な計画は、まず試してみる
  • 3.「情報に通じたキャプテン」として賭けに出る
  • 4.成功したら祝杯をあげ、失敗したら公表する。
承認など要らない、判断するのは自分なのだ

どれもさっそくできる範囲で実践してみたいと思った。会社の文化を変えるのは難しくても、自分が行動することは今日からできるはずだと感じた。

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「ジェフ・ベゾス 発明と急成長をくりかえすAmazonをいかに生み育てたのか」ブラッド・ストーン

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
アマゾンの創業者でありCEOのジェフ・ベゾスを中心に彼の関わってきた事業や私生活を描く。

面白いのはアマゾンの物語ではなく、ジェフ・ベゾスの本であるということだ。そして、事業やサービスをベースにそこで起こった出来事を描いている点が興味深い、それゆえに、ジェフベゾスとトランプ大統領とのやりとりや、ジェフ・ベゾスが所有する他の会社、ワシントンポストやブルーオリジンについても知ることができた。

もちろんアマゾンの事業の過程やそこで起きる困難についても同じように興味深く読むことができた。アマゾン内広告、マーケットプレイスの話からは、アマゾンも常にフェイスブック、グーグルの影響を受けながら事業を展開していることが伝わってきたし、また中国やインドなど国によって文化が異なるため、それぞれマーケットを広げるためには特有の難しさがあることが改めて伝わってきた。

個人的にはブルーオリジンとスペースXの話が面白かった。今後もアマゾンの動向に注意していきたいと思った。

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「フェイスブックの失墜」シーラ・フレンケル/セシリア・カン

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
マーク・ザッカーバーグとシェリル・サンドバーグを中心に困難の時代のフェイスブックを描いている。

これまであった多くのフェイスブックの起業を描いた成功物語とは異なり、タイトルにあるように企業として大きくなった上の困難の時代を描いている。

序盤はマーク・ザッカーバーグとシェリル・サンドバーグの出会いやシェリル・サンドバーグのそれまでの経歴を描いる。シェリル・サンドバーグ個人がフェイスブック参加後に向き合ってきたフェイスブックの男尊女卑文化や縄張り争いについても触れている。広告部門にリソースを割けないことに苛立つサンドバーグの立場も容易に想像できる。マーケット部門とエンジニア部門が敵対する感じも容易に理解できる。

後半は、フェイスブックが通ってきた多くの歴史的な出来事と、それに対するフェイスブックの対応、主にザッカーバーグとサンドバーグの振る舞いを中心に描いている。その経緯やフェイスブック内部の議論や不和を知る中で改めて大企業の社会的責任の大きさを再認識させられる。

人と人をつなげることをミッションに掲げながら、人がつながることで起こる悲劇に会社としてどのような対応をすべきなのだろう。他者を貶めるヘイトスピーチやフェイクニュースなど、間違った情報だからといって削除できないのは納得できる。しかし、それでもその結果大きなマイナスの動きになってしまう要因は、人と人との繋がりを容易にしているフェイスブックにあり、企業としてどのように対応すべきなのだろうか。自分が彼らの立場だったらどんな答えを出しただろうと考えさせられた。

全体的に、マーク・ザッカーバーグとシェリル・サンドバーグの苦悩ばかりが見えてくる内容だった。また、並行して、多くの大きな事件を知ることができた。たとえば、トランプ大統領の大統領選の裏にあったフェイスブックの重要性は噂程度にしか知らなかったし、その後の国会議事堂襲撃事件や、ミャンマーのロヒンギャ族の件は本書を読んで初めて知った。やはり国内のニュースに触れているだけではわからないことが多すぎると改めて気づいた。

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「ジョブ理論」クレイトン・M・クリステンセン

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
成功する企業になる為にはプロダクトではなくユーザーが解決しようとするジョブにフォーカスすべきだとして、その考え方を説明する。

まず、ジョブを見極める方法として次の5つの項目を挙げている

1.その人がなし遂げようとしている進歩は何か。
2.苦心している状況は何か。
3.進歩をなし遂げるのを阻む障害物は何か。
4.不完全な解決策で我慢し、埋め合わせの行動をとっていないか。
5.その人にとって、よりよい解決策をもたらす品質の定義は何か、また、そん解決策のために引き換えにしてもいいと思うものは何か。

そして、未解決なジョブを見つけるための方法として次の5つを挙げている。

1.生活に身近なジョブを探す
2.無消費と競争する
3.間に合わせの対処術
4.できれば避けたいこと
5.意外な使われ方

これから何か新しい製品やサービスを考えようとしている人は参考にするといいだろう。ここまでがジョブの見つけ方や見極め方であるが、本書ではそれに加えて前後の文脈や、感情面へも配慮を怠らないことが大切としている。

また、ジョブについて説明する過程で、ジョブを解決した実例をいくつか紹介している。ウーバーやP&Gなど、すでに知っている企業の例もあれば、アメリカンガールや、マイヨークリニックなど本書を通じて初めて知った企業もあり、どれも興味深かった。アメリカンガールや、マイヨークリニックなどは日本で実現しても同じようにこれまで未解決のジョブを解決し成功を収めるのではないかと感じた。

ジョブを中心に製品を開発し企業も、その多くが一度製品を世の中に送り出すと、ジョブ中心の考え方からプロダクト中心の考え方に陥っていくのだという。後半では、その理由を大きく3つに分けて説明している

1.能動的データと受動的データの誤謬
2.見かけ上の成長の誤謬
3.確証データの誤謬

どれも言葉だけでは伝わりづらいが、能動的データと受動的データの誤謬とは、最初はジョブにフォーカスするという受動的なデータ、つまり今見えているデータをみてそれを解決する為に製品を考え始めたのに、製品を世の中に出すと、売り上げやユーザー数やユーザー属性など、製品を世の中に出したことによって得ることができた能動的なデータを改善することに意識を取られてしまうということである。見かけ上の成長の誤謬とは、既存顧客に製品をもっと売ろうとしてジョブへのフォーカスを失うことである。そして、確証データの誤謬とは、人間は自分がみたいと思うデータ以外を無視する傾向によって発生する事実誤認のことである。

どれも身に覚えのあることだけにしっかり意識して今後製品開発やサービスローンチに携わっていきたいと思った。そのほかにも、セオドア・レビットやピーター・ドラッカーの有名な言葉をたびたび引用している

人は刃の直径が4分の1のドリルが欲しいのではない。4分の1の穴が欲しいのだ。
企業が売れると思ったものを顧客が購入することはめったにない。

また、最後でジョブを嗜好やほかのものと混在しないように指摘をしている。

同種のプロダクトでしか解決できないのならそれはジョブではない。

「理論」というだけあって、様々な状況に適用できるように考えて構成していることがわかる。本書に書かれている内容をしっかり理解して、実戦で活かせるように身につけておきたいと思った。

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「これからのディープラーニングビジネス」南野充則

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ディープラーニンの簡単の説明と、ディープラーニングが応用できる分野について説明している。

序盤では簡単にニューラルネットワーク、損失関数、勾配降下法などを含むディープラーニングの仕組みを説明している。オートエンコーダーや勾配消失、LSTM、画像生成モデルGANおよびDCGANについては本書で初見だったのだが、表面的な説明にとどまっていあので、もう少し詳しく知りたいと思った。

中盤にこうは、実際にディープラーニングが応用されている、もしくは応用されるであろう分野を順を追って紹介している。不良品の検品や、自動運転などはすでに知られていることだが、本書ではキャラクター生成や、お弁当の自動盛り付けも応用できるとしている。ディープラーニングに生半可かじった僕程度の知識だと想像もつかないような分野にディープラーニングが応用できることがわかった。

最後は、ディープラーニングを導入にあたって気をつけることなどとともに、今後の未来についても触れている。印象的だっったのはディープラーニングの応用範囲が広まっても、一流の技術を持った人間へのニーズは減らないだろうということ。

ディープラーニングについて簡単にまとめてはいるが、専門的な言葉もちりばめられており、ディープラーニングの最初のとっかかりにちょうどいいのではないだろうか。

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「ゼロから作るDeep Leanrning Pythonで学ぶディープラーニングの理論と実装」斎藤康毅

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
最近流行りのディープラーニングについて深く理解したいと思って本書を手に取った。

パーセプトロンの考え方から実施のニューラルネットワークの考え方、そして実際の学習方法まで丁寧に解説している。数学の知識としては微分と行列の考え方がわかっていればある程度ついていけるのではないだろうか。GitHubからソースコードをダウンロードして実際に動作を確認して理解を深められる点がありがたい。デバッグモードで実行して途中の数値を確認することで理解を深めることができた。

ディープラーニングについての感想は、思っていたほど万能なものではなく学習というフェーズが鍵になることがわかり、全体的にまだまだ伸びしろのある分野だと感じた。誤差逆伝播法や畳み込みニューラルネットワークの内容についてはしっかり理解したとは言い難く理解を深めるには繰り返し読む必要性を感じた。とりあえず大事なことは繰り返し出てくるという前提で続編に進もうと思った。

【楽天ブックス】「ゼロから作るDeepLeanrning Pythonで学ぶディープラーニングの理論と実装」

「NETFLIX コンテンツ帝国の野望」ジーナ・キーティング

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
Netflixの創業から発展を描いていく。

今でこそユーザーの一人として楽しませてもらっているNetflix。元々はDVDの宅配レンタルとして始まったという漠然とした知識はあったが、アイデアとしてそこまで斬新とは思えない内容から始まったNetflixがどのような考えと施策でここまでの企業に成長をしたか知りたくて本書にたどり着いた。

創業者のランドルフとヘイスティングスによって試行錯誤しながら少しずつ規模を拡大していくなかで、もっとも物語として魅力できなのは、店舗によるレンタル大手のブロックバスターとの、熾烈な主導権争いでろう。既存店舗からオンラインへ消費者が移っていく中、Netflixに遅れてオンラインレンタルに踏み切ったブロックバスターが猛烈な追い上げを見せるのである。

本書はNeflixと同じぐらい、ブロックバスターのCEOであるアンティオコを中心として多くの主要人物の様子を描いている。ブロックバスターはやがて引退したアンティオコのあとを引き継いだキーズの愚策によって凋落するが、Netflisの発展は、ブロックバスターの存在なくしては語れないだろう。

後半の山場はユーザーにおすすめする映画の精度をあげるためにNetflixが100万ドルの賞金をかけて実施したアルゴリズムのコンテストである。最初はアルゴリズムに自信のある人々が世界中から参加して順位を競っていたが、やがて、すぐれたチームどうした融合してさらにいいものを作るようになる。

全身全霊をかけて自分の信じるものにかける生き方が本当に羨ましい。Netflixが、他のスタートアップと違うところは、創業メンバーの多くが、すでに社会人経験をある程度している人間だということだ。つまり、僕らも今からでもできるとうことである。そんな勇気をもらえる一冊。

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「INSPIRED 熱狂させる製品を生み出すプロダクトマネジメント」マーティ・ケーガン

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
すぐれた製品の背後には必ず製品開発チームを率いて、顧客の抱える課題を解決する人間がいる、という著者の持つ信念をもとに、プロダクトマネジメントという役割について語る。

僕自身はデザイナーであるが、比較的プロダクトマネジメントという役割に近い位置におり、プロダクトマネジメントという役割を詳しく知ることはキャリアにおいてプラスになると考えて本書にたどりついた。

まず、序盤では、ロードマップを作って製品を開発する方法を「製品開発が失敗する方法」として否定しており、リーンやアジャイル型の開発を推奨している。しかし、多くの開発チームがリーンやアジャイルの考え方を十分に活かしきれていないとしている。

1.リスクには最後ではなく最初に取り組む。
2.製品の定義とデザインは、順を追ってではなく、協調させながら同時に実行される。
3.大切なのは機能を実装することではなく、問題解決をすることである。

ロードマップのデメリットは、開発チームの目を機能の実装に向けさせてしまう点がよくないのだという。本書では、ロードマップに変わるものとして、

製品のビジョンと戦略
ビジネスの目標

を挙げている。

本書を読んで知ったのは、プロダクトマネージャーが備えなければならない知識の多さ、そして注意しなければならない領域の広さである。本書ではプロダクトマネージャーが備えるべき資質・知識として

・顧客に関する深い知識
・データに関する深い知識
・自分のビジネスについての深い知識
・市場と業界についての深い知識
・頭が良く、創造的で、粘り強いこと

を挙げている。

中盤では、成功するためのプロセスとして、目標管理のためのOKRや、製品発見のための、プロトタイプやユーザーインタビューなどを説明している、それぞれが単独で一冊の本になりそうな分野を非常にコンパクトにまとまっていて、全体を網羅的に知りたい人にはちょうどいいのではないだろうか。

すぐに取り入れたいとおもった手法は、製品開発チームに顧客の利益に集中させる方法として書かれている。ワーキングバックワードプロセスと呼ばれるもので、架空のプレスリリースを考えるというものである。プレスリリースとして人々の注目を集めるためには、その製品がどのように顧客の生活を向上するかを簡潔に伝えなければならない。ワーキングバックワードプロセスとは、架空のプレスリリースを作って、製品開発チームに実現したいことを共通認識させるためのものである。同様の目的としてカスタマーレターという手法も紹介しているが、どちらも、目的が曖昧になったり、機能実装だけにフォーカスして、解決すべき課題を忘れがちな開発プロセスにおいて、明日からぜひとりいれたいと思った。

各章の間に挟まれているプロダクトマネージャーの物語として、AppleのiTunesやAdobeのCreative Cloudを率いた話も面白かった。

全体的に、翻訳がわかりにくくて読みにくい部分はあったが、プロダクトマネジメントについて包括的に説明している良書といえるだろう。機会があれば繰り返し読んでしっかり内容を理解したいと思った。

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「Agile Software Development」Peter Oliver

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
Agile開発の基本的な考え方を説明している。

スタートアップで仕事をしていると、基本的にAgileに則った進め方になるが、常に進め方に課題はあり、そのヒントとなるような内容があればと思い本書を手に取った。

最初はAgileの説明から入り、ScrumとKanbanという二つのAgileの考え方をわかりやすく説明している。

Scrumの基本を、

透明性(Transparency)
調査(Inspection)
適応(Adaptation)

とし、Scrumの三つの役割、つまりScrum Master、Product Owner、Cross Functional Teamを説明している。一方でKanbanの6つの哲学を

Visualization
Limiting work in progress
Flow management
Making policies explicit
Using feedback loops
Collaborative or experimental evolution

としてそれぞれを説明している。

どちらかというと今までScrumを中心とした体制のもとで仕事をしてきたが、部分的にKanban方式を採用した方がうまくいくことも多いので、Kanbanの考え方をもう少し取り入れてみたいと思った。

やはりページ数が限られているので、それほど印象的な内容はなかったが、Agileの進め方について簡単に理解したい人にはちょうどいいのではないだろうか。

「サードドア 精神的資産の増やし方」アレックス・バナヤン

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ビル・ゲイツやスピルバーグ、レディ・ガガはどのようにしてその偉大なるキャリアの最初の一歩を踏み出したのか、そんな成功者の最初の一歩を本としてまとめることを思い立った著者は行動を始める。そんな著者の悪戦苦闘しながらインタビューを繰り返す様子を描いている。

ウォーレンバフェットやビル・ゲイツに話を聞くためになんども断られながらも少しずつ、著名人の間で人脈を築いていく様子が描かれており、何事もくじけずに分析し戦略を練って行えば少しずつ実現できるのだと伝わってくる。その過程で、ビル・ゲイツやレディ・ガガ、ジェシカ・アルバやウォーレン・バフェットなどの人柄も見えてくる点も面白い。

なかなか本書のどこが役に立つとは言えないが、諦めずにしつこくメールを送り続けて失敗した話もあるので、よく言われがちな「なにごとも諦めなければ達成できる」という形ではない。人脈をつくるために戦略を練ることも重要だし、一つの方法に固執することもなく考え付く限り多くの場所に種をまき、芽が出たところを攻めるという方法も効果的だということがわかる。

企業や組織だと「広報」という仕事があるが、個人で人脈を広げることに今まで意識をしてこなかったので、これを機会にできることをやってみたいと思った。

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「A/BTesting:Practical Insights and Common Pitfalls」Divakar Gupta

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ABテストの手法、ツールについて語っている。

序盤は簡単なABテストの説明をしており、中盤からはABテストで起こりがちな落とし穴、またABテストのためのツールなどを紹介している。大部分はABテストの15の落とし穴にページを割いており、いくつか興味深いものがあった。いつでも言及できるように覚えておきたい。

Running an A/B test without thinking about statistical confidence is worse than not running a test at all — it gives you false confidence that you know what works for your site when the truth is that you don’t know any better than if you hadn’t run the test

平均値のみを気にする


例えば新しいUIをリリースして、次の一週間のアクセス数が大きく伸びたとしても、日別に伸びているかを確認すべき。一日だけ極端に伸びた結果全体の数値を上げているのだとしたらそれは別の要因によるものだからだ。

「なぜ」を知ろうとしない

例えばABテストが失敗した場合、機能が良いものであるにも関わらず、デザインがよくなかったり説明が悪かったりする。単純に失敗した、だけでなく、「なぜ」失敗したかを知ることは、さらなる成功へ近づくのである。

正直、あまり順序立てた書き方をしておらず、よくあるABテストの落とし穴を思いつくまま羅列しているような内容なので退屈で頭に入りにくいが、もう一度じっくり読み直してみたいと感じた

「Google Analyticsで集客・売上をアップする方法」玉井昇

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
Google Analyticsで取得できる数値からどのようにWebサイトを改善するかを説明している。

Google Analyticsを導入するとそのたくさんの数値に驚くが、結局その数値をどのようにWebサイトの改善につなげたらいいかわからない人も多いだろう。今回は僕自身が久しぶりに仕事でGoogle Analyticsの数値からアクションプランを考えることになったので、本書を手に取った。

一番わかりやすく使えそうなアクションの方法は、たどり着いた検索キーワードによって、滞在時間、直帰率を見る方法である。もし、あるキーワードから一定数のアクセスがあるにも関わらず、滞在時間が短い、または直帰率が高いというような現象が観察できたなら、そのキーワードの記事をもっと増やすべき、ということである。

ほかにも知らなかったGoogle Analyticsの機能についていくつか触れられているが、実際に動かしながらやらないと身につかないだろう。また、GoogleAnalyticsの現状のバージョンとの違いからか、すでにない機能について語られている部分もあったので注意が必要である。

もう一度分析をしながら読みすすめてみたい。

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「アマゾンのすごいルール」佐藤将之

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5

アマゾンジャパンの立ち上げ当初にアマゾンに参加した著者がアマゾンの文化について語る。

著者がアマゾンについて思うことや、著者のアマゾン人生のなかでの印象的な出来事をほとんどランダムに書き連ねているので、読みたい場所から読むことができるといえば聞こえがいいが、物語も筋もないので記憶に残りにくい。

それでも、自分の働いている会社でも取り入れたいなと思ったものは、「1ページか6ページでまとめる」という制度。提案資料を長々と書くのではなく、誰でも簡潔に要点を把握できるようにページ数をルール化しているのである。これによって提案者は高い文章作成能力を求められるのだという。確かに過去を振り返ってみれば、仕事のなかでたくさんしゃべることはしゃべるが結局何が言いたいのかわからない、という人はたくさん存在し、積み重なればそういう人の意見を聞く時間も組織にとっては無視できない大きさであることを考えると、このアマゾンの1ページルールはぜひ真似したい制度である。

そのほかにもほかの企業にはないような制度があふれている。あまり知らなかったアマゾンという企業の文化に少し触れられた気がする。

全体的にはもう少し内容の濃いものを期待していたし、物語的な要素も欲しかった。

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「エアビーアンドビー ストーリー」リー・キャラガー

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
創業者の3人が出会い、エアビーアンドビーを作り成長させていく様子が描かれている。

序盤は、チェスキー、ゲビア、ブレチャージクの出会いと、少しずつコンセプトを変えながらエアビーアンドビーが大きくなっていく様子が描かれている。その過程で、3人の創業者がそれぞれの担当分野において少しずつ成長していく様子が興味深い。

エアビーアンドビーというサービスを知っていて、それゆえに興味を持って本書を手に取ったのだが、本書を読むといろいろ想像もしていなかった困難があったことを知る。

例えば、エアビーアンドビーは、自分の部屋に見知らぬ人を宿泊させるというサービスの形態ゆえ、犯罪まがいのことが全く起こらないということはありえない。本書では、エアビーアンドビーで起こった幾つかの犯罪や悲劇と、それに対応するエアビーアンドビーの様子も描かれている。そんななか最初は投資家などのアドバイスを聞いて責任逃れや結論の先延ばしをするような対応をしていた創業者のチェスキーが、それでは騒動が治らないと見るとすぐに自分たちの信念に立ち返るところに舵を切るところは、組織としてユーザーに向き合うすべての人にとって学ぶ部分があるだろう。

また、考えてみればありそうな話だが、エアビーアンドビーはそのプラットフォームを通じて行われる人種差別とも戦っているのだという。例えば、白人のプロフィール画像の人にしか部屋を貸さないホストや、アジア系のユーザーを差別するホストがいるのだそうだ。しかし、これは改めて考えてみると、ユーザーの属性によって部屋を貸すか貸さないかを選択するのは、許されてもいいと感じるぶぶもある。例えば、静かな住宅であれば子供を連れた家族の宿泊には貸したくないなどはホストが選べていいはずで、この辺の線引きが非常に難しいと感じた。

ホテルチェーンなどの既存の勢力から受ける攻撃についても触れている。エアビーアンドビーの拡大に影響を受けてか、ホテルチェーンのいくつかも民泊事業へのシフトする様子をみると、エアビーアンドビーはまさに「世界を変えている」のだと感じる。

印象的だったのは、創業者の3人が困難に出会うたびに、繰り返していた偉人たちの言葉で、本書の中でも効果的に使われている。一つはガンジーの言葉で、見事にエアビーアンドビーの状況にも当てはまる。

はじめに彼らは無視し、次に笑い、そして挑みかかるだろうーーだが勝つのは我々だ
悲観主義者はだいたい正しい。だが世界を変えるのは楽観主義者だ。

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「メルカリ 希代のスタートアップ、野心と焦りと挑戦の5年間」奥平和行

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
メルカリの創業から上場までのその急成長を描く。

フリマアプリという、特に画期的なアイデアではないにもかかわらず、わずか5年でユニコーン企業へと成長したメルカリ。他のフリマアプリとどんなところが違ったからここまで急成長できたのだろうか。その理由を知りたくて本書を手に取った。

個人的に印象的だったのはアメリカでメルカリを普及するために、日本とは大きく異なるブランド戦略をとったことである。日本の赤いロゴとは異なり、アメリカでは青いロゴ、青いUIにしたうえで、「売るためのアプリ」であることを強調したのだという。文化や地域によって戦略を変えるのは、当たり前のことに聞こえるだろうが、実際にアプリを開発している状況を知って入ればそれが簡単な決断ではないことはわかるだろう。

また、メルカリがインドの優秀な学生の採用に力を入れている点も本書を読んで知った。すでにIT業界ではメルカリが優秀なエンジニアを徹底的に採用しているのは周知の事実であるが、その徹底した採用戦略に驚かされた。

結局、急成長のための明確な理由はわからなかった。運やタイミングにめぐまれるという部分はもちろんあっただろうが、それ以上に、経営者の周囲にあった人脈ゆえの良い出会いが大きな要素だったのだと感じる。そして、今、その成長して大きくなったがゆえのさまざまな問題に現在ぶつかっているという。本書で描かれている内容をふまえたうえで、引き続きメルカリの動向を注意してみてみたいと思った。

マイクロサービスアーキテクチャー

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「僕がアップルで学んだこと」松井博

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
Windowsに押されて停滞していた時代と、iPhoneによって世界一の企業へと返り咲いた時代の両方を
経験した著者が、理想の職場と、仕事に対する姿勢について語る。
アップルに返り咲いたスティーブ・ジョブスが行なった改善は、一般的に言われる「割れ窓理論」というもので、細かいことまで徹底的に管理することで会社の文化を改善していくというものである。本書ではそんなジョブスの改革を現場にいた著者の視点から語っている。
また、後半では「社内政治と賢く付き合う方法」についても語っている。アメリカの企業というと、実力主義という印象を持っていたので、社内政治について書いてあるのは意外だった。
あまり秩序立った描き方がされているわけではなく、どちらかというと著者のアップル在籍時代の思い出、といった印象だが、組織を大きくするなかで活かせそうなヒントが詰まっている気がする。
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「シェアリングエコノミー Uber、Airbnbが変えた世界」宮?康二

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
AirbnbやUberに代表される、ユーザー同士が使わないものをシェアするためのプラットフォームの現状を知りたくて本書にたどり着いた。
本書では序盤にシェアリングエコノミーの仕組みと、なぜそれがなぜここ数年普及してきたかを説明して、そして中盤以降では、UberとAirbnbに焦点をあててその発展と現在の状況を語っている。
シェアリングエコノミーというと、「使わなくなったもの、または使っていない状態のものの再利用」という印象がが強く、その普及によって経済は停滞方向へ進むと考えていたが、本書によると、新規需要の創出という期待もできるのだという。

これまでホテルがなく滞在できなかった田舎町でもAirbnbなどを活用すれば、観光客が訪れることができる様になる。

途中で触れているミクロ経済学における市場メカニズムが資源の最適な分配を実現する条件。

1.私的独占や寡占がなく、生産者感やユーザー間の競争が十分にあること
2.取引関係者の間に情報の非対称性がないこと
3.直接の関係者以外の第三者に、大きな不利益ないしは利益を与えないこと

というのも、初めて聴くことで印象的だった。
全体的に人に勧めるほど内容の濃い内容ではなかったが、法律による規制の問題がシェアリングエコノミーの普及に大きく影響しているのだと再確認することができた。今後は規制との関連も踏まえて、シェアリングエコノミーの動向に注意を向けていたいと感じた。
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「ワーク・ルールズ!」ラズロ・ボック

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
グーグルの人事担当者である著者がこれまでのグーグルにおける人事制度のできるまでを語る。

グーグルは世界で最も人気のある企業として認知されているが、実際その文化はどのように作られるのかは正直知らなかった。本書を読むと、ほとんどすべての制度が、データをもとに実験と検証を繰り返しながら少しずつ出来上がったものだとわかる。

本書で題材として上がっている制度のできあがるまでの過程やその背景にある考え方など、どれも非常に興味深い。本書を読むと、どちらかというと組織のなかでレベルの低い人が集まると考えられがちな人事部の仕事も面白そうに思えてくる。また、どんなこともオープンにして、自由に議論が言えるグーグルという環境がうらやましく思えてくるだろう。

「人材は大事」と誰もが言いながらも、グーグルほどその大事さを行動に反映させている組織はないのではないかとも感じた。

たいていの企業は正規分布を使って社員を管理する。...テールは左右対称にはならない。成績の悪い社員は解雇され、さらにひどい人間は入社すらかなわないため、左側のテールが短いからだ。

今後組織づくりに関わるにあたって、もう一度読み直したいと思える一冊。
【楽天ブックス】「ワーク・ルールズ!」

「Interviewing Users」Steve Portigal

オススメ度 ★★★★☆ 4/5

ユーザーインタビューの方法について書いている。本書は

デザインにおけるインタビューの重要性
インタビューのフレームワーク
インタビューの準備
ただ質問するだけでなく
インタビューの段階
どのように質問するか
インタビューをまとめる
インタビューを最適化する
調査結果でインパクトを与える

の9章からなる。特に学びが多かったのが「How to Ask Questions」の章である。
まずは、沈黙の使い方について書いている。インタビュー中はどうしても沈黙を埋めたくなるが、沈黙を埋めたいというプレッシャーを感じるのはユーザーも同じこと。だからこそ、その沈黙をユーザーに破らせてこそ、貴重な情報が得られるのだという。
また、「相手を正さない」というのも非常にインタビューにおいてやってしまいがちな間違いである。相手の助けたいという高からきたとしても、インタビューが終わってから行うべきなのだという。
例えばユーザーが「こんな機能があったらいいのに」と、すでにある機能について言った時、プロダクトに常に関わっているインタビュアーとしては、「その機能は実はここにあります」と言いたくなるが、一度それをやってしまうと、ユーザーは「ではこんな機能ありますか?」「こうやるにはどうしたらいいんですか?」という流れになってしまい、本来ユーザーの状況を理解するためのインタビューが、出張サポートへと変わってしまうからだという。
結局、インタビュアーが教えるのではなく、ユーザーから彼らの状況や考え方を教わるのが、ユーザーインタビューの目的なのである。そのことを常に念頭においておかなければならないのだろう。
「How to Ask Questions」の章は、今後もインタビューのたびに読み直して、インタビューするメンバーがほかにもいるならぜひ共有したいと思った。