「アレックス・ファーガソン自伝」アレックス・ファーガソン

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
世界最高峰のサッカーチームであるイングランドのマンチェスター・ユナイテッドで27年間監督を務めた著者がその人生を振り返る。

アレックス・ファーガソンといえば、僕らサッカーファンのなかでは知らないもののいない名将中の名将である。単純に大きなタイトルを手にしただけでなく、デイヴィッド・ベッカムなどの若手の育成にも定評があり、むしろそここそがファーガソンの成功の大きな礎なのだろう。テレビの画面越しではどちらかというと怖い印象を持つ著者が、どのようなことを考えながら監督という仕事をしてきたのかを知りたくて本書を手に取った。

本書は多くの自伝とは異なり、時系列にはなっていない。著者の人生にとって印象に残っている人、出来事などをそれぞれの章で語っているのだ。

本書を読んで初めて知ったのは、著者はスコットランド人でありイングランド人ではないということと(日本から見るとどちらもイギリスだが、サッカー界では区別される)、チームを統率するために監督が最大権力を握ることを非常に重視しているという点である。

監督が支配力を失ったら、その瞬間にクラブはおしまいだ。選手がチームを牛耳るようになり、深刻な問題が起きる。

この辺は監督のスタイルには賛否両論あるだろうが、確かに絶対的な支配者として選手に接するか、友達のように接するかはどちらも一長一短あり、改めて監督業というのは難しいものだと感じた。

マンチェスター・ユナイテッドの躍進の大きな原動力となった92年組(つまりデイヴィッド・ベッカムやポール・スコールズ・ライアンギグスなどの世代)のなかでは、サッカーに集中しそのほかのことに気を散らさなかったライアン・ギグスやポール・スコールズを評価しているという点も興味深かった。どちらかというとベッカムは、元々は守備にも手を抜かない点が大きな長所だったのに、海外やセレブの世界に触れる中で少しずつサッカー選手として本来あるべき姿から外れていったと残念がっているのだ。

ベッカムの他にも、選手なら、ウェイン・ルーニー、ルート・ファン・ニステルローイ、クリスティアーノ・ロナウド、ロイ・キーン、リオ・ファーディナンド、監督ならジョゼ・モウリーニョ、アーセン・ベンゲルについて語っている。なかなか画面越しには見えない人間関係が見えてくるので、サッカーファンにはたまらないだろう。

人物や過去の有名な試合などがたびたび引用されるので、サッカーファンには間違いなく楽しめるが、サッカーを知らない人にはちょっと難しいかもしれない。サッカーの監督の物語はリーダーシップのすばらしい教本もなるので今後もどんどん触れていきたい。

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