「Sarah’s Key」Tatiana de Rosnay

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
パリに住むアメリカ人ジャーナリストのJuliaは第二次世界大戦中のパリで起こったユダヤ人迫害事件について調べ始める。やがて彼女は当時の一人のユダヤ人の女の子Sarahにたどりつく。
ホロコーストは世界史上の指折りの悲劇なだけに、それを扱った作品は世の中に多く存在している。本書もそのうちの一つだが、その舞台をパリに据えている点がやや異質かもしれない。実際僕も本書を読むまで、パリでパリの警察によってユダヤ人たちがポーランドに送られるたということを知らなかったのである。
本書では、現代のJuliaが当時を調べる様子と並行して、第二次大戦中のパリのユダヤ人たちの様子が一人の女の子目線で描かれる。彼女こそそのSarahなのである。ある朝、パリの警察によって家を出るように促されたSarahだが、すぐに迎えに帰ってこれると思って、弟を秘密の戸棚に隠して鍵をかけておいたのだ。2人はその後無事に再開を果たすことができたのか。そしてSarahのその後は。
また、物語が進む過程で、アメリカ人でありながらフランス人と結婚して家庭を築いたJulia目線でその2つの国民性の違いが見えてくる点も面白い。
大戦中の悲劇が現代によみがえる。忘れてはいけない負の歴史に目を向けさせてくれる一冊。

Vel’ d’Hiv’(ヴェロドローム・ディヴェール大量検挙事件)
第二次世界大戦下のフランスで行われた最大のユダヤ人大量検挙事件である。本質的には外国から避難してきた無国籍のユダヤ人を検挙するためのものだったとされる。1942年の7月、ナチスの「春の風」作戦として計画されたもので、ヨーロッパ各国でユダヤ人を大量検挙することを目的とした。(Wikipedia「ヴェロドローム・ディヴェール大量検挙事件」
anti-Semtism(反ユダヤ主義)
ユダヤ人およびユダヤ教に対する差別思想をさす。(Wikipedia「反ユダヤ主義」
Drancy internment camp(ドランシー通過収容所)
ナチス・ドイツがフランス・パリの北東のドランシー市(セーヌ=サン=ドニ県)に設置したユダヤ人移送のための収容所。フランスのユダヤ人をポーランドの絶滅収容所へ移送するまで仮に収容しておく通過収容所だった。1941年8月の設立から1944年8月の解放までの間におよそ7万人のユダヤ人がドランシーからアウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所などへ移送されている。フランスにおけるホロコーストの鍵となる地であった。(Wikipedia「ドランシー収容所」
Yad Vashem(ヤド・ヴァシェム)
ナチス・ドイツによるユダヤ人大虐殺(ホロコースト)の犠牲者達を追悼するためのイスラエルの国立記念館である。イスラエルの首都エルサレムのヘルツルの丘にある。(Wikipedia「ヤド・ヴァシェム」