「「アラブの春」の正体 欧米とメディアに踊らされた民主化革命」重信メイ

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
チュニジアに始まり、エジプト、リビアと続いた「アラブの春」と呼ばれるSNSを起点とした動き。日本での報道だと、どの国でも似たような民主化の動きが起こったかのように見えてしまうが、実際はどうだったのか、そもそも僕らがよくわかっていないイスラム諸国の現状はどのようなものなのか。レバノン生まれのジャーナリストである著者が語る。
本書を手に取ったのは直木賞受賞作品「サラバ!」のなかでアラブの春に触れられていたからである。日本での報道からだと、「アラブの春」は、イスラム諸国に平和が訪れたように聞こえてしまうが、もちろんそんなわずかな期間で国のすべてが解決するはずもなく、また「アラブの春」によってもたらされた新たな問題もあるのだということを知り、現状を詳しく知りたくなったのである。
本書ではチュニジア、エジプト、リビアなどの「アラブの春」の国々をはじめ、サウジアラビアやオマーンなどの国についても現状や、「アラブの春」の影響を説明している。もちろんそれぞれの国についての記述はわずか数ページでしかないので、それぞれの国の歴史と現状に軽く触れる程度で終わってしまうのだが、それでもイスラム諸国等について新しい気づきが得られた。
思っていた以上にイスラム諸国でも女性の社会進出は進んでいるということ。また、僕らがイスラム諸国を代表する報道機関とみなしているアルジャジーラは思ったほど中立ではないということ。そして、YouTubeを利用して西欧諸国の報道を操作しようとしている動きがかなりあり、世界的なメディアが裏を取らずにそのまま報道してしまうことがあるということである。
今後もSNSを良い方にも悪い方にも利用しようとする意識は高まるだろうし、一人の人間として真実を見出すためには情報選別の能力が求められるということを感じた。
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「「アラブの春」の正体」重信メイ

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
2010年にチュニジアから起こったデモがアラブ諸国に大きな動きをもたらした。そんな「アラブの春」と呼ばれる出来事の実態をアラブ社会で育った著者が語る。
「アラブの春」という言葉は知りながらもその実情はほとんどの日本人は知らないだろう。もともと日本と交流の多い欧米の国々のメディアはアラブ社会での出来事についてあまり多くを報道しようとはしないし、なんといっても日本は時を同じくして東北大震災に見舞われていたのだから。
本書を読むと、そんなアラブ社会に対する偏見が見えてくる。アメリカやヨーロッパのメディアは常にアラブ諸国での出来事を、視聴者に意図した形でねじ曲げて伝えようとする。アルジャジーラでさえも物事を完全に客観的に報道してはいないのである。それはスポンサーなくしては存在し得ないメディアにおいては避けられない事なのだろう。
さて、本書ではアラブ諸国について、チュニジア、エジプト、リビアだけでなく、カタール、サウジアラビア、シリアなど多くのアラブ諸国についてその実情を語っている。本当に表面的な部分だけなので、本書だけで理解できるとは言えないだろう。それでもアラブ諸国の実情や、イスラム教などの宗派など興味を喚起させてくれる内容である。
印象的だったのは、革命後の国々の多くの人々が革命前よりも不幸になるだろうという著者の見解である。

政府を倒すまでは民衆蜂起でできるのです。リーダーが必要になるのは、政権を倒し、新しい政権を作るときです。

革命後のアラブ諸国にもしっかり目を向けていきたいと思った。

パンナム機爆破事件
パンアメリカン航空103便爆破事件(パンアメリカンこうくうひゃくさんびんばくはじけん、通称:ロッカビー事件〔ロッカビーじけん〕、パンナム機爆破事件〔パンナムきばくはじけん〕)は、1988年12月21日に発生した航空機爆破事件。(Wikipedia「パンアメリカン航空103便爆破事件」
GCC
中東・アラビア湾岸地域における地域協力機構。(Wikipedia「湾岸協力会議」

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