「The Body Farm」Patricia Cornwell

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ノースカロライナで11歳の女の子Emily Steinerが教会の帰りに遺体となって見つかった。逃亡中のシリアルキラーと手口が似ていることからFBIとKay Scarpettaは事件の捜査に関わることとなる。

Kay Scarpettaのシリーズ第5弾である。序盤からGaultというシリアルキラーが捕まっていない状態という設定なのでシリーズ前の作品を飛ばしてしまったか、展開を忘れてしまったのでは、と思ったが、そんなことはなく本書が急展開の設定らしい。

物語はEmily Steinerの死の真相を突き止めるために、地方警察とFBIが協力して捜査を進めていく。しかし、Kayの周囲では事件以外にもさまざまな問題が生じる。一つ目は長年の相棒であるMarinoが、離婚をしたことを機に少しずつ自暴自棄になって、それが捜査にも悪影響を与え始めたこと。2つ目は、同僚であるWesleyとの仲である。妻がいるWesleyに惹かれる自分に戸惑い罪悪感を抱えるのである。

そして3つ目は、姪であるLucyとの関係である。大学を卒業してKayと同じくFBIで働き始めたLucyではあるが、FBIでは働いてほしくないKayの想いで干渉するKayとの心の距離は次第に広がっていくのである。そんななかLucyがFBI情報に不正にアクセスしたという疑惑が持ち上がるのである。

そんな多くの問題に悩まされながらも、事件は少しずつ解決に近づいていく。Emily Steinerを殺害したのは本当にシリアルキラーGaultの仕業なのか。シリーズ作品というのは少しずつマンネリ化していくものだが、続きも楽しみになった。

英語慣用句
as a crow flies 最短距離で
crib death 幼児突然死症候群
heat exhaustion 熱中症

「One Plus One」Jojo Moyes

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
母親一人で2人の子供を育てるJessは数学が得意な娘Tanzieの入学金のため、数学オリンピック出場を目指しスコットランドまで旅することを決意するのである

以前読んだJojo Moyesの「The Girl You Left Behind」が素晴らしくて、同じような過去の歴史事実と現代をそれぞれの時代に生きてきた人たちの視点とともにつなぐような作品を期待して本書にたどり着いた。

本書は、夫が実家に帰ってしまった結果、一人で子供を育てることとなったJessと女性関係のもつれからインサイダー取引の容疑がかかり、自ら立ち上げた会社を追われたEdの二人の出会いを中心に描いている。Jessはクリーニングの仕事でEdの家を訪れ、その後、EdがJessの働いているバーで酔い潰れたことで、JessはEdを認識する。

そして、数学オリンピック出場のための旅で困っていたJessたちに、Edが酔い潰れた時に送ってもらったお礼として運転手を買って出たことで大きく関係が変わっていく。狭い車内でぎこちない会話を続けるうちに、少しずつお互いを理解していくのである。

Rich is paying every single bill on time without thinking about it. Rich is being able to have a holiday or get through Christmas without having to borrow against January and February.
お金持ちは考えずに毎月の請求書を支払える人のこと。お金持ちとは祝日やクリスマスを1月や2月分の給料を前借りしなくて過ごせる人のこと

家族や人間関係を描いた優しい物語である。ギリギリの生活をしながらも、二人の子供に対して良い母、良い見本であろうとするJessは言うまでもないが、自らがインサイダー取引の裁判を控えていることで、余命短い父親に会う決断をすることができないEdの生き方もまた家族に対する優しさに溢れている。

旅のなかで2人の子供TanzieとNickyと仲良くなっていくEdがNickyに伝える言葉もそんな優しい振る舞いの一つである。

Everyone I've met who waw worth knowing was a bit different at school.
知り合いになってよかったと思った人はみんな、学校では少し変わり者だったよ。

終盤は、Jessとの関係に悩むEdに対して、Edの姉Gemmaが諭すシーンが印象的である。

I'm not saying she wasn't wrong to do it. I'm just saying maybe that one moment shouldn't be the whole thing that defines her. Or your relationship with her.
彼女が間違ってなかったとは言わない。ただ、その出来事だけで彼女のすべてや彼女との関係を決めつけるべきではないと言っているのよ。

期待していた物語をは少し違ったが、十分楽しむことができた。

英語慣用句
crap at maths 数学が苦手である
form tutor 担任の先生
borrow against お金を借りする
have the grace to … するだけの礼儀はわきまえている

「One Last Kill」Robert Dugoni

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
過去の未解決事件を担当するTracyは、30年前の連続殺人事件Seattle’s Route 99 serial killerを捜査するよう指示される。

Tracy Crosswhiteのシリーズの第10弾である。Seattle’s Route 99 serial killerは、上司Johnny Nolascoが担当していた事件だったことから、Tracyの人手が欲しいという依頼に応える形で、Nolascoが協力することとなる。

これまでTracyと犬猿の仲だったNolascoが事件解決のために少しずつ心をお互いに心を開いていく。またその過程で30年前の事件発生当時に捜査本部を指揮していたNolasco苦悩が明らかになっていく。

これまでのシリーズでは、理解力のない女性差別主義者としてしか描かれていなかったNolascoであるが、本書では過去の事件により、順風満帆なキャリアから外れて家庭まで崩壊していく様子を描いている点が新鮮である。

前回に引き続き、予算獲得のためにメディア露出を狙うWeberと事件解決を優先するTracyのやりとりも各所に見られる。過去に解体された麻薬取締のための組織Last Lineの応酬した麻薬を警察関係者が横領していたことを未だ明らかにできないことなど、前作に繋がっている部分が多い。

シリーズを途中から読むなら本書ではなく一つ前の「What She Found」から読むのが良いだろう。

英語慣用句
have the upper hand 優位に立つ、優勢になる
drop a gauntlet 宣戦布告する
get under one's skin 〜の気に触ることをする
save your breath 余計なことを言わないでおく
under the gun プレッシャーにさらされている
hit the fan 突然困った事態になる
have a shit fit 怒りを爆発させる
yank one's chain からかう
get ducks in a row タスクを整理する
face the music 立ちむかう
hindsight is twenty-twenty 振り返って考えればなんとでも言える(振り返った時の視力は2.0)
get someone's goat 怒らせる
pound sand 意味のないことをする
put soneone on a pedestal 尊敬する

「What She Found」Robert Dugoni

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
Tracyの元に、25年前に失踪した母親を探して欲しいという依頼が舞い込む。

失踪した女性は当時新聞社のレポーターであり、その調査が失踪に関連があるとみて当時の事件を洗ううちに、Last Lineという過去の麻薬取り締まり部隊の汚職の可能性に近づいていく。なぜLast Lineは解体されたのか、なぜLast Lineの構成員は秘密にされているのか。そして、その過程でTracyの前の部署の仲間であるFazとDelのルーキー時代の経験が明らかになっていく。仲間の過去の過ちを明らかにするべきか悩むながらも、少しずつ真相に近づいていく。

また、警察の予算のためにメディア受けを求める所長Weberとの衝突も面白い。今回は20年以上前の出来事を扱っているために告発できないという法律、Statute of limitations(出訴期限法)という法律が何度も登場し、日本とアメリカの法律の違いなども知ることができた。

どうやら、Last Lineという麻薬取締部隊を描いた物語もあるようなので、そちらも機会があったら読んでみたい。

「Cruel and Unusual」Patricia Cornwell

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
検視官Kay Scarpettaシリーズの第4弾である。死刑囚のRonnie Joe Waddellの死刑が執行された直後に、連続して不可解な殺人事件が起き、その現場から死刑囚の指紋が見つかる。

これまでの3作品とは少し異なる物語展開である。死刑囚のRonnie Joe Waddellの死刑が実行されたその日に、Eddie Heathという13歳の少年が殺害され、その殺害現場は、Ronnie Joe Waddellが10年前にRobyn Naismithの殺害後に残したものとそっくりだった。また、その数日後に遺体で発見された占い師の家でも10年以上刑務所にいたはずの、Ronnie Joe Waddellの指紋が発見されるのである。処刑されたのはRonnie Joe Waddellだったのか、そして、彼は一体何を知っていたのか。

また、かつてのKay Scarpettaの恋人Mark Jamesが亡くなったことも明らかになる。Kay ScarpettaはMarkの死から立ち直りながら、事件の真実に迫っていくのである。

これまでの作品のなかで、かなり大きな陰謀の気配を感じさせる内容である。ただ、ちょっと消化不良な内容だった。

「Verity」Colleen Hoover

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
二流作家のLowenは、交通事故で続編を書けなくなった人気作家Verityの続編を任され、その執筆のためにVerityの残した資料を調べ始める。

Colleen Hooverは「November 9」が面白かったので、同じくおすすめとして挙がる本書にたどり着いた。

Verityとその夫Jeremyは、双子の娘を事故で亡くしており、Verityは交通事故で満足に話すこともできなくなったことを知る。そんなVerityの続編を書くためにLowenはVerityの書斎の大量の資料を自由に見ることを許されるが、そんななかVerityのそれまでの生活を描いた手記を発見する。

そんな一方、Lowenは健気に身動きのできない妻の看病をし、唯一残された息子Crewを可愛がるJeremyは惹かれていくのである。

時間を見つけて少しずつVerityの遺した手記を読み進めるLowenは、その夫婦関係が経験した悲劇の経緯とVerityがどのように考えていたかを知ることとなるのである。

November 9」が結構印象的だったので期待したのだが、比較的ありがちなサスペンスで終わっている気がする。

「The Martian」Andy Weir

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
火星探索中の事故で火星にただ一人取り残されたMark Watneyは、次の火星探査機がやってくるまでの生き残る手段を考え始める。

Project Hail Mary」が面白かったので同じ著者のデビュー作である本書にたどり着いた。マット・デイモン主演で映画になった「オデッセイ」の原作でもある。

物語はMark Watneyが生き残ろうと火星で1人で試行錯誤する様子、そして地球からWatneyが生きていることをを知って見守るNASAの様子、また、Watneyを火星に置いてきて、仲間を失って後悔に苛まれれながらも地球に向かう火星探査者たちの3つの視点からを描いている。

Watneyの火星の様子の大部分はWatneyが残す日記形式で描かれており、その中で、どれだけ僕らが地球の環境を当たり前として生きているかを改めて思い知る。例えばその日記のタイトルは「SOL1」などとなっており「1日目」ではないのである。当たり前のことであるが、火星の1日は地球に1日とは長さが異なるのである。そんなことすら本書を読むまで意識することがなかったことが驚きである。

特に面白いと思ったのは、食糧を増やすためにじゃがいもの栽培を試みるシーンである。植物学者でもあるWatneyだからこそ思いつくアイデアがたくさん登場するし、地球と異なる環境の火星ゆえの制約がまた印象的である。また、Watneyの試行錯誤の過程で過去の火星探査や、火星の地名が登場するので、火星の地形もかなり判明していることを知った。

正直「Project Hail Mary」の印象で本書に入ると、物語にあまり大きな動きがないので期待はずれかもしれない。個人的には、水を作る過程や、生きていくために二酸化炭素を減らす方法などを試行錯誤する様子から、化学を勉強したくなった。

和訳版はこちら。

「November 9」Colleen Hoover

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
2年前の11月9日に父の家に滞在中に、大やけどを負って女優のキャリアを失ったFallonは今まさに新たな人生に踏み出そうとしていた。そんなとき、Benという火傷の跡のの残る顔を気にしないで好きになってくれる男性と出会う。

出会った瞬間に恋に落ちたFallonとBenだったが、Fallonがブロードウェイを目指して翌日からニューヨークに引っ越すこととなっていた。Fallonの母の助言、23歳になるまでは他人に振り回されずに自分を見つける、という信念から、お互いが23歳になるまで、毎年11月9日に同じ場所で1度だけ会うことを約束するのである。物語は1年おきの11月9日の二人の様子を描くことで展開していく。

FallonとBenの視点で交互に描かれていく。序盤は出会いを中心に描かれる。火傷を負って女優としてのキャリアを諦めざるを得なかったにも関わらず、新しい道を踏み出そうとしているFallonと、またそれを後押ししようとするBenのそれぞれの人生を語る言葉に印象的である。

You'll never be able to find yourself, if you're lost in someone else.
人に夢中になっているうちは、自分を理解することはできない。
If people are laughing at you, it means you're putting yourself out there to be laugh about. Not enough people have the courage to even take that step.
人があなたを笑っているということは、自ら笑われる場所に立っていることで、そんな勇気を持った人は多くはない。
Loving someone means accepting all the things and people that person loves, too.
人を愛するということは、その人が愛するすべてを受け入れることです。

後半は、よりBenの視点から二人の出会いが描かれ、前半に散りばめられた伏線が回収されていく。少しずつBen自身のそれまでの苦悩の人生が明らかになっていく。

She knew I would be the one to find her. She knew what this would do to me and still do it…
俺が見つけるってわかっていただろう。それが俺にとってどういうことか、それを知っててなお決行したんだ…

なんといっても20代ですでに一生抱えていかなければならない傷を抱えた二人の物語なので、前向きに生きるための強さを与えてくれる。常にFallonとBenの視点で交互に物語を展開させながらも、感情表現の重点がFallonから少しずつBenに移っていくという物語展開の美しさも感じられる。軽く読み始められるが後半に進むにしたがって深みや生きる強さなどを感じさせてくれる作品である。

「The Sun Is Also a Star」Nicola Yoon

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
アメリカの移民2世韓国人青年のDanielと不法滞在中のジャマイカ人女性のNatasha出会いを描く。

Natashaは、アメリカで俳優になる夢を追いかける父についてきて、観光ビザでそのままアメリカに不法滞在で生活していた。しかし、父が飲酒運転でつかまったことからジャマイカへ帰国をしなければならなくなる。Natashaは弁護士をあたってアメリカに留まる方法を探し続ける。一方で、Danielは両親の勧めで医者になるために、イェール大学の面接を受けようとしている。なりたくもない医者になるという葛藤を抱えながら面接に向かう際、Natashaに一目惚れするのである。

DanielとNatashaの出会いの1日を描く。Danielは運命を信じる一方で、Natashaはどちらかというと現実主義者であり、そんな二人の考え方の違いと、それを反映するように、少しずつ二人の家族の人間関係や歴史が見えてくるのが面白い。その過程で、韓国とジャマイカという国と、その家族がアメリカで生活することの現実が見えてくる。

アメリカ移民の話は本書に限らずよく耳にする。移民一世は子供の将来のためにと、母国を離れ慣れない土地に移り住み、その結果、人がやりたがらない仕事をやって生計を立てなければならない。一方、その子供の移民二世は、親が自分たちのために苦労して生きてきたことを見ているため、親の期待を裏切る生き方ができない。それが子供の心に葛藤をうむのである。

Natashaの不法滞在者という形は今回初めて触れたので印象的だった。見つかったら即強制送還というわけではないという点も、今回初めて知った。確かに、子供から見れば親についてくるしか選択肢がなかったなかでアメリカに留まる選択肢を与えたくなる心情も理解できるが、一方で、そんなことをしていたらアメリカは人口が増え続け、治安をまもるのも大変だろうと感じた。

全体的には、1日で恋に落ちる若者2人を描いているので、非現実的すぎるという批判もありそうである。映画化されたようなので心情描写が表現しにくい映像の方はなおさらただの非現実な恋愛物語になっている可能性が高いだろう。ただ、個人的には、上に挙げたように、移民二世、不法滞在者という普段触れることのない人生を体験できたのが新鮮で楽しめた。

「Velvet was the Night」Silvia Moreno-Garcia

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
1971年のメキシコでHawksの一員として働くElvisと秘書として週刊誌を読むことだけが楽しみの女性Maiteの2人の男女の人生を描く。

ElvisはEl Magoという男に拾われ、Hawksの一員として学生運動を鎮圧することを仕事としている。しかし、仲のいい同僚のGazpachoが銃弾に倒れて組織から抜けたことでグループのリーダーとなり今まで知らなかった様々な事柄に触れ、少しずつ自分の行動や立場を考えるようになる。そんななかある女性の張り込みを任される。

一方Maiteは秘書として働きながら、政治情勢の話題で盛り上がる同僚たちをは距離を起きながら、過去の恋愛を引きずって週刊誌の恋愛漫画だけを楽しみに生きている。Maiteは小遣い稼ぎのために週末ペットシッターをしていたが、客の一人が猫の餌やりとMaiteに任せたまま失踪してしまってから、その退屈な人生が少しずつ変化が起きる。

そんなメキシコの学生運動が盛んな時代に、異なる世界で生きていたElvisとMaiteの世界は少しずつ近づいていくのである。やがてElvisは話したこともないMaiteにどこか親近感を覚えていく。

物語展開としてものすごい斬新というわけではなかったが、やはりメキシコの学生運動、特にDirty War(汚い戦争)など、その動乱の時代を描写している点が新鮮である。メキシコの歴史などほとんど触れたことがなかったので、キューバ革命の後にこのような動乱の時代があったことを初めて知った。手の届く範囲でもう少し調べてみたいと思った。また、ElvisもMaiteも音楽が好きなため、当時のメキシコの音楽が何度も登場するのが面白い。こちらもいくつかさっそく聞いて当時の雰囲気を味わってみたいと思った。

メキシコにも学生運動の発端は、アメリカの共産主義運動を封じ込める動きから起こっていたことを知った。やはり日本にいて普通に生活していると、アメリカの悪い歴史部分が見えにくいのかもしれないと感じた。英語はどちらかというと欧米文化を伝える一方、南米文化には弱いので、もっとスペイン語の本なども読むべきかもしれないと感じた。

「The Monk Who Sold His Ferrari」Robin Sharma

The Monk Who Sold His Ferrari

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
心筋梗塞をきっかけに輝かしい法律家の経歴と私財を捨ててインドに旅立った友人が、若返って帰ってきてヒマラヤで得た豊かな人生のための教訓を語る。

すべてを捨ててヒマラヤに行った友人という話が印象的だったため序盤から興味津々である。ヒマラヤでしあわせにに長生きをする人々の秘訣を教わって帰ってきたJulianは話し始める。灯台のある美しい庭に関取がいる、不思議な逸話から、徐々にその奇妙な話が意図するところを説明していく。

まとめてしまうと、本書で語っている豊かな人生を生きる鍵はは次の7つである。

Master Your Mind
Follow The Purpose
Practice Kaizen
Live With Discipline
Respect Your Time
Selflessly Serve Others
Embrace the Present

つい先日「アファメーション」を読んだばかりであるが、それだけでなく「嫌われる勇気」など、本書で語られていることは、形や順番は異なれど、どれも多くの場所で語られることばかりである。それでも、語り方が異なればまた伝わり方や感じ方が違うもので、今回も改めて自分の生き方の純度をあげるきっかけとなった。

言葉の重要性、周囲で起きたことに対する自分の反応のコントロール、そして人や社会に尽くすこと、この3点は常に忘れないようにしたい。また、そのほかにも、人に伝えたい言葉であふれていた。

There are no mistakes in life, only lessons. There is no such thing as a negative experience, only opportunities to grow, learn and advance along the road of self-mastery. From struggle comes strength. Even pain can be a wonderful teacher.
No matter what happens to you in your life, you alone have the capacity to choose your response to it.
Your I can is more important than your IQ.
Don't pick up the phone every time it rings. It is there for your convenience, not the convenience of others.

世の中にはすでに本書で書かれていることができている人も多いだろう。しかし、そんな人でも何度もその考え方を忘れないために同じ考えに触れ、その純度を上げていくべきなのだろう。

「Fluent forever」Gabriel Wyner

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
多言語話者であり音楽家でもある著者が、語学学習の効率的な方法を語る。

著者の学習方法は

発音→単語→文法→その他

という優先順位で行われ、発音が最初に来る点が面白い。音楽家であることから音から入るのかもしれないが、五感を多く使った方が記憶に刻まれるという点で、読み方を先に知っておかないと記憶するのに時間がかかるという点には間違いないだろう。

そして、本書で何よりもページ数を割いて説明しているのがフラッシュカードの使い方である。誰もが学生時代に単語帳は使った経験があるだろう。フラッシュカードとは単語帳のことでインターネットやアルゴリズムによって現在はさらに効率的に利用できるのである。

何よりもページ数を割いて説明しているのがフラッシュカードの使い方である。誰もが学生時代に単語帳は使った経験があるだろう。フラッシュカードとは単語帳のことでインターネットやアルゴリズムによって現在はさらに効率的に利用できるのである。

本書ではそんなフラッシュカードを利用して、効果的に学ぶコツをいくつも説明している。興味深かったのは、言語によって必要な、男性名詞、女性名詞、中性名詞をどのように覚えていくかということである。著者の方法は新しい言葉を、自分の言語に変換して覚えるのではなく、常にイメージと結びつけることと重視しており、男性名詞はそれが爆発している状態で記憶し、女性名詞は燃えている状態で覚える、など印象的なシーンにして記憶に刻み込ませるためのさまざまな工夫が見られる。必ずしも著者の進める方法に従う必要はないが、効率的に記憶するためのさまざまなヒントが詰まっている。

僕自身もう10年ほど前になるが、フラッシュカードでかつ少しずつ間隔を開けて繰り返す機能を備えたAnkiというアプリを以前使っていた。結局、単語や表現は文脈とともに覚えていかないと使えるようにはならないと悟ってやめたのだが、本書によって考え直すきっかけになった。

「A Man Called Ove」Fredrik Backman

「A Man Called Ove」Fredrik Backman

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
子供もなく妻に先立たれたOveは死ぬことを考える。しかし、Oveは近所のルールが守られているかを見回るという日課があった。そんなOveの様子を描く。

Oveは常に、自らの命を絶って妻のところに行こうと考えているにも関わらず、頑固なOveに惹かれていく周囲の人々の様子をコミカルに描いていく。死にたいという人生の一大事を滑稽に描くところが面白い。

物語が進むに従って、少しずつ過去のOveの人生が描かれていく。父親の教え、妻との出会い、そして、コミュニティの友人たちとのやりなどである。どちらかというとOveの生き方は、古き頑固な生き方で現代に合わないようにも見えるが、その人生に触れる過程で、現代に生きる人たちが忘れがちな大切なことが見えてくる。

But we are always optimists when it comes to time, we think there will be time to do things with other people. And time to say things to them.
しかし時間に対しては人は楽観的である。周囲の人との時間や、伝えるべきことを伝える時間がかならず来ると思っている。
It is difficult to admit that one is wrong. Particularly when one has been wrong for a very long time.
間違っていることを認めるのは難しい。特に、間違っていた時間が長いほど難しい。

僕のの未来に対する大きな不安として、妻に先立たれたらどうやって生きていこうか、というのがある。本書はそんな、人生に希望を失いがちな晩年でも、愛しき人との思い出とともに、周囲の人と関わりながら幸せに生きる生き方を示してくれる。常に、世のため人のため、そう考えて生きていればつながりは自然と生まれていくのだろう。

和訳版はこちら。

「Design is Storytelling」Ellen Lupton

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
デザインは「問題解決」と言われてきたが、現代のデザインはすでにそれだけに止まらない。本書は「問題解決」であると同時にStorytellingとしてのデザインを語る。

次の3つの章に分けてStorytellingとしてのデザインの考え方を語る。

  • Action
  • Emotion
  • Sensation

つまり問題解決だけではなく、行動、感情、感動に働きかせてこそStorytellingなデザインと言えるだろう。そして、それぞれの章では、それを実現するための細かい手法を説明している。例えば、Actionの章では次の手法に触れている。

  • Narrative Arc
  • Hero’s Journey
  • Storyboard
  • Rule of Threes
  • Scenario
  • Planning
  • Design Fiction

同様にEmotionの章では次の手法を説明している。

  • Experience Economy
  • Emotional Journey
  • Co-creation
  • Persona
  • Emoji
  • Color and Emotion

ペルソナやCo-creationはすでにデザインスプリントやリーンスタートアップの考え方にも取り入れられており、どれもすでに一般的で特に驚きはなかったが、Emotional Jorneyで説明されている、ピーク・エンドの法則はデザインにも適用できると感じた。特に、全体のUXを改善しようとすると時間もコストもかかりすぎる場合はピーク・エンドの法則と照らし合わせて優先順位を決めるという考えは有効だと感じた。

後半は一般的なデザインに含まれる内容が多かった。むしろ、おまけとして書かれていた最後の、文章ライティングの考え方は参考になった。

As you write, focus on being clear, not clever.

比較的他のデザイン書籍にも書かれている内容ばかりだったのでものすごいおすすめの書籍ではないが、同じような内容でも定期的に触れることに意味があるのだろう。

「The Girl You Left Behind」Jojo Moyes

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
戦時のフランスで生きる姉妹SophieとHélène、それぞれ夫が出兵し不在の中、子供達の面倒を見ながらレストランを経営する。

1916年、第一次世界大戦のドイツの占領下のフランスで、SophieとHélèneはレストランを営み続ける。そして、そこにはSophieの夫であるÉdouardの描いたSophieの肖像画が飾ってあるのである。そして、かつては地元で有名なホテルだったこを聞きつけたドイツ人将校は、2人、食材を提供するのでドイツ兵のために夕食を用意することを依頼されるのである。

一方で、並行して描かれるのは、2006年のロンドンに住む30代女性Livであり、彼女は建築家の夫と死別したのち、1人で夫が遺したマンションの部屋に住み続けている。そしてそこには、人の手を渡り歩いてたどり着いたSophieの肖像画が飾ってあるのである。

物語は、Édouardの描いた作品の価値が高まり、Édouardの子孫がその作品を子孫の元へと返すように訴えることで大きく動き出すのである。彼らの主張は、戦時にドイツ軍によって略奪されたものだから元の持ち主に返すべきということである。一方、早くに亡くなった夫からのプレゼントであり、その肖像画に愛着を持つLivは、お金のためだけに絵を取り戻そうとするそのÉdouardの子孫たちに返すのを避けるために、略奪によって絵がうばされたわけではないという証拠を見つけ出そうとする。

戦時中と21世紀という大きくへだたる時代のなかで、ドイツ兵、フランス、どちらの内側にも、善と悪が描かれている点が印象的である。誰もが戦争という大きな流れのなかの犠牲者でしかなく、そんな過酷な状況ではどんな人も強くいられず、潔癖でもいられず、時には、弱さをさらけ出し、人を傷つける言動をせざるを得ない。その場を経験した人間にしかわからないようなその空気感を見事に表現し、それを物語のなかに組み込んでいる。

今年最高に涙した作品。

「Building a storybrand」Donald Miller

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
ブランディングの手法について語る。

映画に必要な要素とブランディングに必要な要素は基本的には同じで、次の7つの要素だという。

1.登場人物 Character
2.問題 Problem
3.案内役 Guide
4.計画 Plan
5.行動 Calls Them to Action
6.失敗 Failure
7.成功 Success

次の3つの質問に答えられるだろうか。

1.What does the hero want? ヒーローは何を求めているのか
2.Who or what is opposing the hero getting what she wants? 誰がまたは何がヒーローがそれを手にすることを妨げているのか
3.What will the hero’s life look like if she does(or does not)get what she wants? ヒーローがそれを手にした時、ヒーローの人生はどうなるべきか

そしてユーザーが疑問に思うであろう、次の点が明確だろうか。

1.What do you offer? あなたは何を提供しているのか?
2.How will it make my life better? 私の人生をどのようによくするのか
3.What do I need to do to buy it. それを買うために私は何をする必要があるのか

改めて、本書に書いてあることを考えながら、僕が仕事で取り組んでいるサービスを考えた時に、ユーザーへのその成功をはっきりと見せられていないと感じた。

ヒーローの問題を外面的、内面的、哲学的と3つの領域に分けている点も印象的である。それぞれをよりわかりやすくすると次のようになる。

外面的… 目の前にある問題を解決したい
内面的… こんな人間になりたい
哲学的… 世の中に貢献したい

僕自身が関わっている仕事やサービスなど、様々なものについて、改めてその価値をうまく見せられているか考え直すきっかけとなった。

「The Seven Husbands of Evelyn Hugo」Taylor Jenkins Reid

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
その人生のなかで7回の結婚をしたことで知られる大女優Evelyn Hugoに、伝記を書くように名指しで指名されたMoniqueはその理由に不信を抱きながらもその仕事を請けることとなる。そして、伝記を書くためのインタビュー取材を通じて少しずつEvelyn Hugoの人生が明らかになっていく。

もちろんフィクションではあるが、Evelyn Hugoの語るその人生を通じて、結婚や離婚が有名になるための一つの手段でしかないことを思い知らされる。また、映画のチケット販売を伸ばすために情報をコントロールすることを日常的にやっているんだろうと改めて思った。

やがて、取材からEvelyn Hugoが人生を通じて本当に愛していた人間が明らかになっていく。また、取材を通じてMonique自身にもその心や振る舞いに変化が生じていく。自らも夫と別居状態のMoniqueは自分自身の結婚生活にも区切りをつける決意をする。そして、最後には、なぜ、Moniqueをその担当者として指名したのかも明らかになるのである。

女性がこの著者を勧めることが多いので、本書も、ひょっとしたら女性の方がもっと感じる部分が多いのではないだろうか。特にEvelyn Hugoがスターとして活躍した60年代、70年代は、今以上に人種間差別は根強かっただろうし、またLGBTに対する理解も進んでいなかったことだろう。そんななか自らの本来の姿と、キャリアとの間で悩み生きていく女性の様子は、ひょっとしたら現代にも通じる部分があり、多くの女性の心を打つのかもしれない。

Taylor Jenkins Reidの本は本作が2作目である。前回読んだ「After I do」は比較的軽い印象を受けたので、本作とはかなり雰囲気が異なるのを感じた。他の有名作品もぜひ読んでみたいと感じた。

「The House in the Cerulean Sea」TJ Klune

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
孤児院の監査を仕事にしているLinusはその徹底した仕事からMarsyas島の孤児院の調査を依頼され、飼い猫CalliopeとともにMarsyas島に向かう。

Linusすぐにその孤児院には多くのいわくつきの子供たちがいることを知る。特に大きな問題は反キリストであるLucyである。しかし、やがて子供たちと触れ合う中で少しずつLinusの心は変わっていき、彼らも世の中のすべての子供達と同じように、守られるべき存在だと気づいていく。そして、それまで味気ない生活をしてきたLinus自身の人生も豊かな感覚が蘇ってくるのである。

一方、その孤児院を閉鎖しようとするExtremely Upper Managementは、Linusからその孤児院の問題を指摘する報告を待っている。やがてLinusは自らの仕事を守るために行動すべきか、それとも、暖かい孤児院の人や子供達を守るために行動すべきか葛藤するようになるのである。

なんといってもLucyを中心に、その孤児院にいる子供たちの様子がかわいい。彼らの異質な見た目が小説からだとなかなか伝わってこないのが残念だが、その振る舞いの愛らしさは伝わってくる。

見た目や生まれにかかわらず、人には生きる権利があり、特に、守られるべきだということを、このような形にすることで強く訴えてくるようだ。

「In Her Tracks」Robert Dugoni

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
産休から復帰したTracyは、人員の都合から未解決のままお蔵入りとなった過去の事件を担当することとなる。数年前に行方不明になった女の子や、売春婦の操作に乗り出す。

Tracy Crosswhiteシリーズの第8弾である。すでにシリーズを通じて、再婚し、妊娠し、出産するという40歳を過ぎて人生の転機を次々に迎えているが、今回は出産後の職場復帰にあたる。犬猿の中である上司のNolascoの計らいで、元々のチームに戻ることができずに、未解決事件を時間の許す範囲で単独で捜査することとなる。やがて、過去の経験から少しずつ行方不明になった若い女性の事件に感情的に入れ込んでいくこととなる。

また、未解決事件の捜査と並行して、女性のジョギング中に行方不明になった事件を担当するKinsがTracyに助けと求めてくる。早くから、最後の目撃証言があった場所の近所に住む3人兄弟の言動に疑いを持ち、少しずつ証拠集めをしていく。

複数の事件捜査と並行して、久しぶりにTracyとKinsのコンビが復活したのが嬉しい。すでに3人の子供たちを育て終わったKinsがTracyに子供たちとの貴重な時間を語るシーンは、シリーズの中では初めてではないが、以前にも増して印象的である。

Every night when I get home. I keep asking myself where the years went. Don’t get me wrong, I love with Shannah, but those years with the boys… those quiet times when their eyes lit up and they believed that anything in the world is possible.
毎晩家に帰るたびに思う。あの日々はどこへ行ったんだろう。もちろん妻との時間は良いものだが、子供たちとの日々は…それは彼らの目が輝いて、世の中はなんでも可能なんだと信じている感じる静かな時間・・・。

すでに8作品目となるとネタが尽きそうな気もしてくるし、凶悪事件ばかりを扱うのも不自然であるが、本作品では発生直後の事件と、未解決事件を並行して捜査するという新しい描き方で飽きさせず、しかも最後は久しぶりに泣きそうになった。

現在、Patricia Cornwell、Louise Penny、Jeffery Deaverなどいくつかの警察小説シリーズを読み続けているが、実はあまり学びがなく時間の無駄なのではと感じ始めていたのだが、本作品が面白かったために考え直さなければと感じた。

「The Midnight Library」Matt Haig

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
人生に失望し自殺を決意したNoraは生と死の間で不思議な図書館にたどり着く。

Noraがたどり着いた図書館で、学生時代の図書館の先生だったMrs Elmは案内する。そこの本はすべてNoraの人生の一つ一つの決断によってできる違う人生のパターンで、どれでも好きなだけ体験できると言う。

Noraはいくつかの人生を体験する。選んだ人生によって、元の人生と同じように悲しいことが起きることもある。一方、元の人生では死んだ父がある人生では健在だったり、元の人生では普通に生活している友人が、他の人生では交通事故で死んでいたりするのである。

印象的だったのは、元の人生で外で死んだ飼い猫Voltaireを外に出さない人生を体験したシーンである。

The year you had him was the best of his life… you don’t see yourself as a bad cat owner any more.
あなたが彼を飼っていた時間は、彼にとって最高の日々だったのです。…これであなたはもう自分を悪い飼い主だったとは思わないでしょう。

さまざまな自分の人生を体験する中で、Noraは人生について重要なことを学んでいく。

Every life she had tried so far had really been someone else’s dream… if she was to find a life truly worth living, she realised she would have to cast a wider net.
ここまで体験した人生はどれも他の誰かの夢だった。本当に自分自身に価値のある人生を見つけるためには、もっと広く体験しなければだめだと悟った。

他人の夢を生きないで自分の夢を生きる。当たり前のこととはいえ、世の中このように苦しんでいる人がたくさんいる。周囲の人の勧めたことを人生として選んで、「あの人のせいで自分はこんな不幸だ」と文句を言い続ける人である。今幸せではないと感じている人はもちろん、十分幸せな人生を送っている人もその幸せの密度を高めるために読んでほしいと思った。