「ヘヴン」川上未映子

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
毎日のいじめに悩んでいた14歳の「僕」の元に、女子生徒の中でいじめられていたコジマから手紙が届き、互いの思いを話すようになる。

クラスのなかでいじめの対象となっていた女子のコジマと男子の「僕」が少しずつ近づいて行く様子を描く。

正直物語の大部分は、「僕」のいじめられる様子と、コジマと「僕」の会話や手紙によるやり取りで進むため、明るい部分はほとんどない。

印象に残ったのは、後半の「僕」が勇気を出していじめの集団の一人の百瀬(ももせ)に話しかけるシーンである。自分をいじめることの無意味さを伝えていじめを止めるように訴えるのだが、百瀬もそれに対して自らの考えを伝える。

自分がされたらいやなことからは、自分で身を守ればいいんじゃないか。単純なことじゃないか。ほんとはわかってるんだろうけどさ、『自分がされたらいやなことは、他人にしてはいけません』、っていうのはあれ、インチキだよ。

本来悪者という扱いを受けるであろういじめっ子の一人、百瀬(ももせ)に多くを語らせているのは、いじめに対しての社会の姿勢に疑問を投げかけのように感じた。

実際、「いじめは正しくない」「自分が嫌なことは人にするな」といくら諭し続けてもいじめがなくならないのが現実である。すべて正しいとは思わないし、もちろんいじめられている側が悪いと断ずるつもりもないが、一つの考えとしては理解できると感じた。本書が注目を集めたのも、いじめる側の意見をしっかり描くことが少ないからだろう。

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