「スターバックス再生物語 つながりを育む経営」ハワード・シュルツ/ジョアンヌ・ゴードン

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
リーマンショックなどの不況の影響でスターバックスも徐々に当初の勢いを失っていった。そして2008年1月、ハワード・シュルツはスターバックス再生のためにCEOに復帰する。本書はその過程と、スターバックスが再生されるまでの物語である。
Google、Facebook、マクドナルド過去「成功物語」と呼べるようなものは何冊か読んだし、世の中にも溢れているが、「再生物語」となると非常に限られている。その1点だけ考えても本書は面白く読む価値があるだろう。まず序盤は少しずつ歯車の狂ったスターバックスの様子を描いている。徐々に店舗で犯罪するものを増やし、徐々にコーヒー以外の別の分野にも手を広げ始める。しかし、売り上げが伸び続けているために誰もその影響に気づかない。それでも確実にスターバックスのネジは狂い始めていたのだ。

店舗のパートナーたちは一生懸命働いています。会社を支えているのは彼らです。しかし、店に足を踏み入れると悲しくなります。伝統のサービスや挨拶はもう存在しないのです。カウンターの中で働いているバリスタたちのせいではありません。スターバックスの文化を維持し、成長させ、繁栄さあるのは経営陣の責任です。

そんな中で、ハワード・シュルツはCEOに復帰してから再生への道を模索して、多くの改善策にとりくむのだが、その内容からは、企業がその質を維持したまま大きくなることがどれほど難しいかが見えてくる。最終的に、ハワード・シュルツは短期的な利益を諦めて長期的な利益を優先する中で、不採算な店舗の多くを閉鎖することを決断するのだが、その際に各地から届く「この街のスターバックスを閉店しないで欲しい」という声は、これまでスターバックスが築いてきたものの大きさを示しているようだ。
失敗もありつつ結果としてスターバックスは再生を果たすのだが、そのためにしなければいけない辛い決断をハワード・シュルツがするにあたって、そんな彼を勇気づけるように、社員から送られる温かいメールの内容が印象的である。

あなたを信じているパートナーが、まだたくさんいることを知って欲しいのです。…わたしたちは他の企業とは違うのです。働く者にとっては、業界で最高の企業です。素晴らしい未来が来ることを心から信じています。

「スターバックス成功物語」を読んだときも感じたのだが、信念を持った会社で自らの時間を費して働くことのなんと羨ましいことだろう。まったく専門は違うがスターバックスで働いてみたくなる。

リーン生産方式
トヨタ生産方式を研究して編み出された方式であり、MITのジェームズ・P・ウォマック(James P. Womack)、ダニエル・T・ジョーズ(Daniel T. Jones)らによって提唱された。製造工程におけるムダを排除することを目的として、製品および製造工程の全体にわたって、トータルコストを系統的に減らそうとするのが狙いである。(Wikipedia「リーン生産方式」

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「スターバックス成功物語」ハワード・シュルツ

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
スターバックスのCEO、ハワードシュルツがその成功の奇跡を語る。
いろんな雑誌や本で何度も言及される本書。いつのまにか読まなければいけない本として僕の頭に残っていた。すでに13年前に出版された本ということで、現在のスターバックスの状況に本書の内容が追いついているとはいえないが、その発展の裏にある考え方、途中で超えなければならなかったたび重なる困難などを知るにはまったく問題ないだろう。
セールスマンだったシュルツがスターバックスと出会い、スターバックスに入社し、また考えの違いから独立して起業し、そしてスターバックスを買収して世界に広めていくまでが時系列に語られている。

人生はニアミスの連続と言ってもいい。われわれが幸運と見なしていることは実は単なる幸運ではないのだ。幸運とはチャンスを逃さず、自分の将来に責任を持つことにほかならない。

そしてそんな中でスターバックスの信念としてひたすら繰り返されるのが「真心を持って美味しいコーヒーを飲ませたい」というものだ。そしてその信念をスタッフ全体(「パートナー」という言葉を使っているが)にいきわたらせるためにさまざまな試みがされていることがわかる。一体、世の中のどれほどの企業の社員が、会社のやることに信念を感じて働けているのだろうか、と考えてしまう。こんな素敵な会社に自分の知識や時間やエネルギーを費やし貢献できたらきっと幸せだろう。
そして後半は、会社が大きくなったことによって生じる問題。そして、その信念と客の求めるものの間で悩み、下される決断とその結果について書かれている。
たとえばフラプチーノの登場の裏話や、空港への店舗のオープンなどがそれである。
普段日常的にスタバを利用している僕らがみているのは、その苦渋の決断の結果でしかないため、その前段階にここまで大きな葛藤があったなど知るはずもない。だからこそ、その決断までの過程はどれも興味深いものばかりであった。

スターバックスが硬直化した企業だったら、あのような形でフラプチーノが誕生することはなかっただろう。

そして、ハワード・シュルツの言葉からは企業を大きく成長するにあたっての経営者のあるべき姿のようなものが感じられるだろう。

自分より物事を知らない人間から何が学べると言うのだ。彼らは自尊心は満足させてくれるし、指示にも素直に従うだろう。だが、成長の支えにはならないのだ。

間違いなく本書はスタバへの見方を大きく変えてくれる。そして、次回スタバに行ったとき今まで見てなかったところまで見ようとしてしまうだろう。

絶えず変化しつづけるこの社会において、最も永続性のある強力なブランドは真心から生まれる。それは本物であり、必ず生き残る。こうしたブランドは強力な力で支えられている。なぜなら、それを築いたのは広告キャンペーンでなく人間の真心だからだ。長く続く企業とは信頼される企業にほかならない。

いつかシアトルに訪れることがあったら、1号店に行ってみたい。
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