「滅びの前のシャングリラ」凪良ゆう

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
1ヶ月後に地球に隕石が激突することが明らかになる。そんな滅亡の前の人々を描く。

小学生の江那友樹(えなゆうき)はクラスではいじめられっこという存在でありながらも、地球滅亡を前にクラスのヒロインである藤森さんに少しずつ近づいていく。また、目力信士(めぢからしんじ)は、40歳でヤクザとして生きてきたが、知り合いのヤクザか殺しの依頼されて実行に移そうとする。そんな2人を含む4人の視点から滅亡前の様子を描く。

地球滅亡を前にして、人々はずっと会いたかった人に会いに行ったり、好きな人に告白したり、略奪や欲望のままに行動したりする。そんな少しずつ混沌としていく世界の中で、藤森さんを守ろうとする友樹(ゆうき)や昔の恋人に会いにいく信士(しんじ)の前に様々な障害が立ちはだかるのである。

正直、地球滅亡前の人々の行動がなんとも現実感なく感じてしまうのは僕の想像力の欠如からなのだろうか。多くの人は残りの時間を考えると、使いきれないほどのお金を持っていることになるのし、食料も国としては余ることになるので、実際にはそこまで略奪する必要もなく、最後まで倫理的に行動する美学を持って普段通り行動する人が本書で描かれるよりも多いのではないかと感じてしまった。

著者の別の作品「流浪の月」が良かったので本書も読もうと思ったのだが、正直今回はあまり深みを感じなかった。ひょっとしたら、著者のなかにこの特殊な設定を通じてしか訴えられないものがあったのかもしれないが、残念ながら理解できなかった。

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「流浪の月」凪良ゆう

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
2020年本屋大賞の受賞作品。

9歳の更紗(さらさ)両親が亡くなって親戚の家に引き取られることとなる。自らの居場所に悩むなか、あるとき公園で大学生の文(ふみ)と出会う。

9歳の更紗(さらさ)と大学生の(ふみ)の物語である。大学生の男と小学生の女の子なので、大学生の(ふみ)を見る世間の目は厳しい。そんな危険な関係がどのように展開していくかという点が緊迫感があって面白い。そんな2人はやがて離れ離れになり、15年の時を経て再び近づいていくのである。

周囲の人間の持つ先入観に振り回されながらも強く生きる更紗(さらさ)と(ふみ)の生き方が印象的である。幼い女性しか愛せないという、どちらかといえば世の中から敵意を持って見つめられがちな嗜好性を持つ人間を、物語の中心に据えている点に新鮮さを感じる。普通の人間として生きることのできない人間の、強く切ない物語である。

この感覚を言葉にするのは難しいが、こんな辛い生き方をしている人も世の中に入ることを理解し、、そんな人間が周囲にいるのだとしたら、応援できる人間でありたいと感じた。

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