「Before I Go To Sleep」S J Watson

短期記憶しかもつことのできないChristineは一晩眠ると前の日の記憶を失ってしまう。だから毎日日記をつけることで前の日に起こった事がわかるようにした。彼女の毎日は、隣で眠る知らない男を夫と認識する事から始まる。
ここ数年短気記憶を扱った物語をたびたび目にする。「博士の愛した数学」「50回目のファーストキス」など、どちらかといえば、短期記憶しか持たないということを、毎日毎日を大切に生きる、ということにつなげる内容が多いように思うのだが、本書はもっとそれをミステリアスに使っている。
医者が言う事と、夫が言う事、そして自分が日記に書いている事に矛盾があるためにChrristineは悩む。そして同時に、今知った事を明日には忘れてしまうという恐怖も味わうのである。息子がいるのかいないのか、息子は生きているのか死んでいるのか、そもそも自分が記憶を失ったのは、交通事故なのか暴行をうけたからなのか。ときどき脳裏に浮かぶ記憶の断片が、少しずつChristineの過去を明らかにしていく。
もはや展開としてはどんな結末にもできる流れだったので驚きはなかったが、一つの物語の試みとしては面白い。