「リボルバー」原田マハ


オススメ度 ★★★★☆ 4/5
パリのオークション会社に拳銃が持ち込まれた。それはゴッホを撃った拳銃だという。高遠冴(たかとおさえ)は真実の裏付け調査を始める。

高遠冴(たかとおさえ)は会社の上司、仲間と共に、拳銃を持ち込んだサラという女性に拳銃が委ねられた経緯からゴーギャンの家系にそのヒントがあると考え、家族や愛人などの関係者を調べていく。その過程でゴーギャンの生き方や当時の感情に少しずつ触れることとなる。

そんな調査の中で高遠冴(たかとおさえ)はゴーギャンのさまざまな感情を想像しながらその思考に近づこうとする。ゴッホの絵が大きく進歩していくのを目にして、焦りや羨望を感じるあたりは、何かに秀でた人間を目の当たりにした時に誰もが覚えのある感情だろう。

遅くに画家を志したという点では似ていながらも、2人はかなり異なる人生を送ってきた。ゴーギャンは結婚して妻子がある一方、ゴッホは弟のテオをのぞけばほとんど孤独の身なのである。家族との関係も含めて二人の人生を想像することで真実に迫ろうとする。

ゴッホは家庭を築くことはできなかったが、弟テオとその妻ヨーの不屈の情熱に支えられて世に出た。一方ゴーギャンは家庭を築き、五人もの子供を授かっていたにもかかわらず、彼のために親身になって尽くしてくれる身内は存在しなかった。

ゴッホとゴーギャンという二人の画家が一時期一緒に過ごしたことは有名だが、そんな2人の関係に新たな視点を与えてくれる。そして、そんな新たな視点を持つことで改めて、それぞれの絵画を見直したくさせてくれる。ゴッホの「ひまわり」だけでなく、ゴーギャンの「マンゴーを持つ女」「かぐわしき大地」「死霊が見ている」「マリア礼賛」など、本書で触れられているさまざまな絵画を改めてじっくり鑑賞したいと思った。

ゴッホが自殺したというのが通説だが、それ自体も実は噂の域を出ないことを知った。いつものように著者原田マハはその経歴ゆえに絵画が絡むと見事にその知識を発揮するが、本作もこれまでの作品と同様に絵画と画家の人生を見事に物語に落とし込んでいる。

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「All the Devils Are Here」Louise Penny

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
Gamache家の面々はパリのレストランで緒に夕食をとったあとに、Gamache家の祖父がわりであるStephen Horowitzがひき逃げに会い昏睡状態となる。意図的にStephenを狙ったとして、その意図を探るうちに大きな陰謀に巻き込まれていく。

Armand Gamacheとその子供たちが協力して大きな陰謀を暴いていく物語。謎解きの物語であると同時に、家族の物語でもあり、カナダのケベック州とフランスのパリという大きなスケールで展開していく。印象的だったのは、長い間心を開かなかった息子DanielとArmandの関係である。今回の事件を機に、少しずつお互いの心の内を打ち上げ、やがて幼い頃のDanielの心の傷が明らかになっていくのである。

物語の随所にパリの街並みや地名が描かれるのも印象的だった。本書を読んだらきっとパリへぜひ行ってみたくなるだろう

あとになって気づいたことだがどうやらこれはArmand Gamacheを主人公とした物語の第16作品めということで、いきなり16作品めから読み始めてしまったいうことだ。とはいえすでに16作品目というのを感じさせないほどの一冊で完成された物語。ニューヨークタイムズのベストセラーということだがそれも納得である。これまでの15作品も少しずつ読み進めたいと思った。