「荒野へ」ジョン・クラワカー

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
所持金をすべて燃やしアラスカに向かった青年は、4ヶ月後朽ち果てたバスのなかで死体となって発見される。彼の残した日記や人々の証言をもとにその軌跡とこころのうちを探る。
「イントゥ・ザ・ワイルド」というタイトルで映画にもなった作品の原作である。世の中の面倒な人間関係や従わなければいけない社会のルールなどからまったく離れて自然のなかで時の経過をしっかりと味わいながら生きていきたい、そんな思いはきっと誰しもが持っているものなのだろう。実際にアメリカ中が彼の死に関心を持ったのもまたそんな理由からだと思う。
本書では必ずしも彼の行動に対して肯定的な意見ばかりが書かれている訳ではなく、彼は準備不足で大自然に踏み込んだ愚かな若者に過ぎない、という意見も描かれており、過去の歴史を振り返って同じように、無鉄砲に自然のなかに踏みこんで亡くなったり行方不明になった人々の例に触れている。それぞれはどこか人間の根底にある欲求を示しているようで非常に興味深い。
それでも著者は、単独で登山を繰り返した自らの経験をあげながら、彼と著者との違いは単にその行為の中で命を落としたか生き延びたかというだけであるということを強調し、彼の行動を理解し、受け入れる視点で描いていく。終盤では未だ明らかになっていない、彼の死の原因についても著者なりの見解を述べている。
映画とセットで楽しむべきかもしれない。
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