「黒と白の殺意」水原秀策

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
囲碁棋士の椎名弓彦(しいなゆみひこ)は対局の前日、殺人事件に巻き込まれ、その容疑者として弟の直人(なおと)が拘束される。
言うまでもないが本作品を特長付けているのは囲碁という誰もが知識としては持っていながらも、あまり馴染みのないゲームをその題材においている点だろう。殺人事件の背後に隠された人間関係はもちろん、その過程で描かれる日本の囲碁事情、また、囲碁棋士たちの生活が見えてくる点が新しい世界を見せてくれた気がする。
そして、力で優劣を決められる世界だからこそ、才能を持つものに対する羨望、嫉妬、畏れが、多くのスポーツやビジネスシーン同様、この世界でも見えてくる。
終盤、囲碁の対局を描くシーンは、囲碁のルールすら自信のない僕にとっても、こんな真剣勝負をしてみたいと思わせる。囲碁をスポーツと呼ぶかは議論のわかれるところであるが、どんな分野でも自分と同程度の相手と思う存分力を発揮して勝負をする瞬間というのは、最高の瞬間に違いないのだと思い出させてくれた。
体力の衰えによらず一生楽しむことのできる囲碁というものに大きく興味をかきたてられた。
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