「獣の奏者II 王獣編」上橋菜穂子

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
傷ついた王獣の子リランの世話をすることとなったエリンは、少しずつリランと会話をしようと試みる。

獣の奏者I 闘蛇編」を読んだのはすでに10年以上前で、物語の流れをほとんど覚えていなかったが、ファンタジー熱が再燃したので続きを読みたくなった。

物語は王獣リランと竪琴の音色を通じて少しずつ会話ができるようになるリランと、王獣を制御する力をみにつけたことによって政治の中に巻き込まれていく様子を描いている。

自らの権力を中心に考える者もいれば、人間や動物の種としての存続を優先に考えるものもいて、そんな考え方の違いから争いごとが起きるのは、現実も幻想世界も同じである。

闘蛇と王獣という2つの想像の動物を中心に作られるファンタジーであり、単純化されすぎているという批判はあるかもしれない。「十二国記」と並んで、知名度の高い数少ない日本初のファンタジーの一つであることを考えると、物語の面白さに関係なく読んでおくべきなのだろう。

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「獣の奏者」上橋菜穂子

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
そこは闘蛇(とうだ)と王獣(おうじゅう)と呼ばれる獣たちが住む世界。獣を操ることが国を治めることに大きく貢献する世界。母を失ったエリンはやがて王獣(おうじゅう)という美しく強い獣に興味を持つようになる。

ファンタジーに挑戦したのは久しぶりである。獣を操るという点で、スタジオジブリの名作「風の谷のナウシカ」を思い起こさせるが、単なる焼き直しではなくオリジリティに溢れている。メインとなる2つの獣、闘蛇(とうだ)と王獣(おうじゅう)はいずれも人には決して慣れない生き物で、一歩間違えれば平気で人を飲み込む危険な生き物である。しかし、その強さゆえに操ることができれば強力な戦力となる。人は「音なし笛」を吹くことによってのみコントロールしてきた。

ファンタジーというと、どうしてもその世界観ゆえに、空想の人物名や地名の多さに辟易し、また、話を分かりやすくしようとすると対立の構造が単純すぎてリアルさに欠けるという問題があり、リアルさと分かりやすさのバランスというのは常に難しい部分ではあるのだが、本作品は非常にわかりやすく読みやすく、それでいて単純になりすぎずに少しずつ世界の複雑さが読者に見えてくる点が好感がもてた。

「闘蛇編」と「王獣編」はシリーズ全4作の最初の2作であるが、物語としては一度完結している。今後さらに広がっていくであろうその世界観に期待したい。