「14歳からのニュートン超絵解本 対数」ニュートン編集部

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
対数について例を交えながらわかりやすくまとめている。

物理を知った後の三角関数など、数学の数式は使い方を知るとより深く理解できる。そんななか対数についての自分の知識が、対数の使い方を知っているといえるのかを確認したくて本書にたどり着いた。

本書は対数の基本的な考え方から、世の中に対数に関連したものが見られる場所、対数の問題など、対数について包括的に説明している。

全体て的に非常にわかりやすい。また数学の問題としての対数にも触れており「14歳から」とタイトルにあるが大人でも普通に楽しめるだろう。グランドピアノの形が対数だというのは初めて知ったし、その他にもちょっとした小話に使えそうな対数の題材が多数あった。

このシリーズには他にも「超ひも理論」「微分積分」「素数」などがあり、いずれも読んでみたいと思った。

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「風間八宏の戦術バイブル サッカーを「フォーメーションで語るな」」風間八宏

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
川崎フロンターレや名古屋グランパスを監督として率いた著者が、サッカーの戦術について語る。

サッカーについてもっと深く理解したいと思っている中で、著者風間八宏氏のボールを止めることの重要性に出会い、著者の考え方に興味を持った。

序盤ではチームとしてセンターバックを攻撃することの重要性について語っている。そして次の4つの攻撃方法をそれぞれ例を交えて説明している。

  • 裏へ飛び出す
  • センターバックの背中側に立つ
  • センターバックに向かって突っかけ、突然方向を変える
  • 動きすぎない、それでいて背中をとり続ける

フォワードの動きを考えた時に、ボールをもらう動きの重要性を強調しがちだが、無駄に動かないことの重要性を、メッシなどの世界的有名な選手の動きと共に説明しているので説得力があってわかりやすい。

中盤以降は実際の選手の動きや、著者自身の監督経験から選手の性格や改善点などを語る。そのなかで大久保嘉人や小林悠の選手としての性格や進歩についても語っている、実際に成績が伸びていることを知っているからこそその裏のエピソードが面白い

最終章では日本サッカーの育成ための提言を書いている。日本のサッカーは早い段階で才能のある子供たちを一つの場所に集めすぎで、上手な人と一緒にプレーして刺激を受ける機会を大事にしつつも、それぞれのチームでチームの中心である状況を大事にすることも必要だという。実際にスペインのセビージャや昔の清水のサッカーでも似たようなことをやっていたという。この野球に例えると「将来の四番候補」をいろんなチームに分散させると方法は納得できるる部分もあり新鮮な考え方である。

サッカーの見方をまた一段階レベルアップしてくれる内容だった。

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「One Plus One」Jojo Moyes

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
母親一人で2人の子供を育てるJessは数学が得意な娘Tanzieの入学金のため、数学オリンピック出場を目指しスコットランドまで旅することを決意するのである

以前読んだJojo Moyesの「The Girl You Left Behind」が素晴らしくて、同じような過去の歴史事実と現代をそれぞれの時代に生きてきた人たちの視点とともにつなぐような作品を期待して本書にたどり着いた。

本書は、夫が実家に帰ってしまった結果、一人で子供を育てることとなったJessと女性関係のもつれからインサイダー取引の容疑がかかり、自ら立ち上げた会社を追われたEdの二人の出会いを中心に描いている。Jessはクリーニングの仕事でEdの家を訪れ、その後、EdがJessの働いているバーで酔い潰れたことで、JessはEdを認識する。

そして、数学オリンピック出場のための旅で困っていたJessたちに、Edが酔い潰れた時に送ってもらったお礼として運転手を買って出たことで大きく関係が変わっていく。狭い車内でぎこちない会話を続けるうちに、少しずつお互いを理解していくのである。

Rich is paying every single bill on time without thinking about it. Rich is being able to have a holiday or get through Christmas without having to borrow against January and February.
お金持ちは考えずに毎月の請求書を支払える人のこと。お金持ちとは祝日やクリスマスを1月や2月分の給料を前借りしなくて過ごせる人のこと

家族や人間関係を描いた優しい物語である。ギリギリの生活をしながらも、二人の子供に対して良い母、良い見本であろうとするJessは言うまでもないが、自らがインサイダー取引の裁判を控えていることで、余命短い父親に会う決断をすることができないEdの生き方もまた家族に対する優しさに溢れている。

旅のなかで2人の子供TanzieとNickyと仲良くなっていくEdがNickyに伝える言葉もそんな優しい振る舞いの一つである。

Everyone I've met who waw worth knowing was a bit different at school.
知り合いになってよかったと思った人はみんな、学校では少し変わり者だったよ。

終盤は、Jessとの関係に悩むEdに対して、Edの姉Gemmaが諭すシーンが印象的である。

I'm not saying she wasn't wrong to do it. I'm just saying maybe that one moment shouldn't be the whole thing that defines her. Or your relationship with her.
彼女が間違ってなかったとは言わない。ただ、その出来事だけで彼女のすべてや彼女との関係を決めつけるべきではないと言っているのよ。

期待していた物語をは少し違ったが、十分楽しむことができた。

英語慣用句
crap at maths 数学が苦手である
form tutor 担任の先生
borrow against お金を借りする
have the grace to … するだけの礼儀はわきまえている

「2030年すべてが加速する未来に備える投資法」方波見寧

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
2030年に備えるべき考え方を語る。

タイトルにある「2030年すべてが加速する未来」とはにエクスポネンシャルテクノロジーの進歩によって世界が一気に加速することを指しており、本書でもエクスポ年シャル企業への投資を勧めている。そして、エクスポネンシャル・テクノロジーファンドの11の産業分野についてそれぞれ現状を語っている。11の産業分野とは

1.コンピューター・ネットワーク(IOT・ARとVRとMRを含む)
2.ビッグデータ(AIを含む)
3.ロボティクス(家庭用ロボット・自動運転車・空飛ぶ自動運転・ドローン)
4.ナノテクノロジーと材料科学(原子レベル操作とグラフェン等)
5.3Dプリンティング(テクノロジーとロボットの融合)
6.医学と神経科学(遺伝子操作による治療・新食品製造)
7.エネルギーと環境システム(太陽光発電・汚水処理・水耕栽培)
8.教育イノベーション(遠隔教育システム)
9.余暇と娯楽(ビデオゲーム・eスポーツ)
10.金融システム(スマホ決済機能・ブロックチェーン)
11.安全とセキュリティ(GPS・画像解析・ブリッド)
12.宇宙開発(宇宙旅行・低空人工衛星)

もっとも新鮮だったのはナノテクノロジー分野である。また、中国の技術の進歩を強調しており、デジタル人民元の脅威を繰り返し語っている点も印象的だった。

投資法とは書いてあるが、投資について書いているのは最初と最後のみで、それ以外は今後どのように世界が変わっていくかを中心に語っている。本書で書いてあることをそのまま鵜呑みにするのは危険だが、少なくともそれぞれの言葉が何を指すのかは覚えておきたい。また、エクスポネンシャルテクノロジー関連のETFも探して少し投資をしてみたいと思った。

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「ユルゲン・クロップ 選手、クラブ、サポーターすべてに愛される名将の哲学」エルマー・ネーヴェリング

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
ドイツのマインツ、ドルトムント、イングランドのリヴァプールを率いた名将ユルゲン・クロップについて語る。

クロップについては最近知ったのだが、モウリーニョやグアウディオラとは異なるスタイルでチームを率いながらも、結果を出し、そしてかつクラブに愛されているという点に興味を持った。

序盤はクロップが選手から監督になるまでの経緯を描いている。多くの選手が引退してから監督になるのに対して、クロップの場合は、チームから選手兼監督を打診されたにもかかわらず、選手として限界を感じていたクロップが監督専任という道を選んだという点が他の監督の経歴と大きく異なる点で印象的である。

以降は、マインツ、ボルシア・ドルトムントとそれぞれ7年の監督期間を経てチームを一定の成功と呼べる地位に引き上げるまでの様子が描かれている。7年は、監督の1つのクラブへの在籍期間としては長いという印象である。クラブチームという大きな組織を試合結果だけでなく若手の育成や経営面も含めて改善するためには、経営側も短期の成績に振り回されるのではなく、監督という人間にある程度の期間信頼して委ねることが必要なんだと感じた。

後半は、リバプールでチャンピオンズリーグ優勝を勝ち取るまでの物語である。クロップのサッカーのスタイルはゲーゲンプレスと呼ばれており、守備時に強くプレスをかける戦術で、選手には高い走力が求められるのだという。実際本書でもリバプールの監督に就任した際、過酷なプレミアムリーグの日程とその戦術ゆえに多くの選手が肉離れで離脱する様子が描かれている。

その点で、ゲーゲンプレスはまさに若手主体というチームの強みを活かした戦術とも言えるが、リーグの特徴に合わせて戦術を変えなければならない点も監督業の面白いところだろう。また、グァルディオラであればボールポゼッション、というようにチームの色だけでなく監督の色が最近際立ってきた点が面白い。日本のサッカーにもクラブの文化、サポーターの文化、監督の文化が根付きくまではまだ時間がかかるのだろう。

また、サッカーのスタイルだけでなく、長期視点で若手を時間をかけて育てるというクロップの監督のスタイルがどんなクラブに向いているか、という点について語っている点も興味深い。例えばレアル・マドリードは監督交代が頻繁に行われるのでクロップ向きではないが、「ノーマルワン」と一般人であることを主張するクロップは労働者階級にサポーターの基盤があるリヴァプールのようなチーム向きだと説明している。

監督の色、サポーターの色、サッカーのスタイルの色、など様々な要素が絡み合ってプロのチームのサッカーという文化が出来上がるということを改めて感じた。改めてサッカーについての視点を広げてもらった。

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「サッカーシステム大全」岩政大樹

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
元日本代表の岩政大樹がサッカーのシステムについて解説する。

昨今4バックや3バックなど、サッカーの議論のなかでシステムが頻繁に語られるようになったが、それぞれの長所や短所などもあわせて深く理解したくて本書に辿り着いた。

本書は基本的なシステムと共に、どのような長所と短所があるのか、また、最近流行りの可変システムなど、日本だけでなく世界のサッカーでよく見られるシステムを解説しており、まさに知りたかったことに答えてくれる内容である。

4バックでは「5人目の守備をどういれるのか」をチームとして定めなければいけません。もし5人目を下げない場合は、失点のリスクが増えるデメリットを承知の上で、逆にカウンターに出る人数を増やすなど、リスクを上回るメリットが必要になります。

もちろん、システムの長所や短所が試合中に現れるには、長所を活かした、または弱点をついた素早いプレーをチームとして実現できてこそ可能である。つまり個人としてすぐに実践できるわけではないし、少年サッカーやひょっとしたらJ2、J3レベルでもすぐに役立つ知識なのかはわからない。しかし、間違いなくサッカーを見る視点は広がるだろう。

サッカーを見るときに常に手元に持っておきたい一冊である。

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「El árbol de la diana」Mercedes Guerrero

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
スペインで祖父母と生活していたElenaに、祖父は病床と死の直前に本当の母親がメキシコに住んでいることを伝える。Elenaは母親や兄と手紙のやり取りをしたのち二人に会いにメキシコへ向かう。

母親や兄がElenaに会うことを拒んでいたにもかかわらず、Elenaはメキシコの生まれ故郷を訪れることを決意する。しかし、母親の住所となっていた場所を訪れた際に、その場所の主であるAntonioの部下たちに監禁されてしまうのである。兄だと思っていた男は、Antonioの父親を殺害して逃走中なのだという。

AntonioはElenaが潔白であるということを知るうちに少しずつElenaに惹かれていく。一方で、すでにスペインに家族のいないElenaもAntonioに心を開いていく。そんな中、生まれ育ったメキシコに滞在したことで少しずつElenaに悪夢と共に、幼い頃の記憶が蘇っていく。

正直、裕福な権力者の元に生まれたAntonioの傲慢で嫉妬深い考え方が受け付けない。登場人物を考えるときに完璧な人間よりも共感できる人間にするというのは基本的なことだろうが、本書のAntonioはその裕福な過程環境だけではなく、その傲慢さなどの人間性も含めて全く共感できない。ElenaがAntonioに向ける言葉の数々は真理に違いないのだが、母親が共感力の乏しい小学生の子供に語っているようなやりとりに感じてしまった。

あくまでも著者の描写力の問題で、実際にメキシコの男たちの考え方がここまで共感力に乏しいとは思いたくない。

スペイン語慣用句
estar de paso ついでに立ち寄る
hacer memoria 思い出そうとする
montar el cólera 激怒する
con uñas y dientes 必死に
cielo y tierra あらゆる場所を、徹底的に
alta hora 深夜
bella durmiente 眠れる森の美女
a cal y canto 厳重に
de golpe 突然に
ponerse el mundo por montera 世間の反応を気にしない
restar importancia 軽視する
a juego con … …と合った、…と調和した

「ペップ・グアルディオラ キミにすべてを語ろう」マルティ・パラルナウ

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
FCバルセロナで最強のチームを作った監督グアルディオラがドイツの強豪バイエルン・ミュンヘンの監督に就任した後の様子を描く。

リーダーシップやマネジメントのヒントがあることを期待して、個性の強い選手たちをまとめるサッカーの監督の本を読み漁っている。本書もその流れでたどり着いた。

グアルディオラ(以下ペップ)についてはサッカー選手としてよりも監督としての印象が強い。2000年代前半成績が低迷していたバルセロナが、ライカールと監督の元で、ロナウジーニョやエトーとともに強豪チームへと変貌し、その後を引き継いだペップ時代には手のつけられない無敵なチームとなったことは記憶に新しい。ただ、その後、ペップがバイエルンやマンチェスターシティそ指揮していることは知っていたが、その成績やサッカーのスタイルについてはほとんど着いていってなかった。本書はペップのバイエルン時代の1年目を詳細に描いている。

興味深いのは、すでに前の年に三冠を獲得しているバイエルンをさらに良いチームにするという挑戦である。すでに三冠を獲得しているチームをさらに良くするとはどのようなチームを言うのか、その達成にどのように挑むのか。そんな無謀とも思える挑戦に対するペップを、選手、周囲の関係者の視点も含めて描かれている。

シーズンが始まると、試行錯誤を繰り返しながら、ペップはバイエルンのサッカーを作り上げていく。バルセロナのサッカーをバイエルンに持ち込むのではなく、バイエルンの文化、ドイツ、ミュンヘンの文化のなかで、バイエルンの選手に合わせた新しいバイエルンのサッカーを作り上げていく過程が面白い。

また、自らがバイエルンに持ち込むサッカーを、カウンターカルチャーと言い続けている点も印象的である。つまりドイツ国民、ミュンヘン市民に受け入れてもらえるサッカーの範囲で、これまでやってきたことと異なることをする。ということなのだろう。

全体的に、もっとも印象的だったのは、選手たちの声を聞いて戦術を決めた結果ホームで0-4で惨敗したチャンピオンズリーグのレアルマドリード戦である。

メアクルパなんだ。自分のアイデアで行かず、代わりに選手たちのアイデアでいった。そこに自分のアイデアはなかった。私は間違いを犯した。

周囲の声に自分の信念を曲げそうになるのは誰しも身に覚えがあるだろう。そうすることによって周りの納得感が簡単に得られるし言い訳が簡単に言えるのだ。しかし、リーダーたるものはそれをやってはならない。それをやっていたら新しいものは生み出せないのである。改めて周囲の意見と闘い自分のアイデアを通すことの重要性を感じた。

また、周囲の信頼を勝ち取るためには、間違ったことを認めること、他人のせいにしないことが重要だと改めて感じた。

改めていろいろリーダーという役割について感じるところがあった。引き続きペップのその後のサッカーを追っていきたいと思った。

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「Pachinko」Min Jin Lee

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
1911年、日本の占領下の釜山にある島で家族の経営する宿を手伝っていた少女Sunjaの物語である。

母親の経営する宿を手伝っていたSunjaは市場である男性と恋に落ち、子供を身篭ったことで人生が大きく変わっていく。やがて、キリスト教信者のIsakとともに日本に渡りそこで新たな人生を送ることとなる。

歴史として過去を振り返って見ると日韓併合は日本が一時的に韓国を支配下に置いた時代にしか見えない。しかし、本書を読むと、当時を生きていた韓国の人々にとっては、それまで我が国として信じてきた国や文化が消滅するという不安のなかで生きてきたことが伝わってくる。本書はそんな混乱の時代の中で、自分自身や家族の最良の未来を考えて生きてきた韓国の人々の物語である。

日本で在日韓国人として育ったSunjaの子供たちであるNoaやMozasuの生き方はより複雑になっていく。日本で日本の教育を受けて育ったにもかかわらず、韓国人として差別されつづけるのである。

Living every day in the presence of those who refuse to acknowledge your humanity takes great courage.
自分の人間性を受け入れてくれない人たちとともに毎日暮らすのは本当に勇気がいることです。

やがて、ヤクザなどの犯罪集団やパチンコ店の経営に関わってくこととなる。そこでも韓国人の評判を傷つけないために綺麗な商売をして誠実に生きていきたいという思いと、手を汚さずには生きていけないという思いのなかで揺れ動く様子が描かれる。

… she knew that many of the Koreans had to work for the gangs because there were no other jobs for them. The government and good companies wouldn't hire Koreans.
彼女はたくさんの韓国人がヤクザと一緒に働かなければならないのを知っていました。なぜなら他に仕事がないから。政府や良い会社は韓国人を雇おうとしないからです。
..

基本的には在日として生きていく韓国人の物語であるが、日本人もたくさん登場する。正直、若い世代の人はともかく、上の世代の韓国人はみんな日本人を嫌っていると思っていたので、親切な日本人もたくさん登場することに驚かされた。また、本書のタイトルにもなっているパチンコは、日本と韓国にのみ広がっている文化だということを本書を読むまで知らなかった。

韓国人と比べて几帳面な日本人のいい部分も描かれているが、一方で、日本の他者を受け入れようとしない閉鎖的な考え方にも繰り返し触れている。終盤は、ニューヨークなどのアメリカ文化と比較されて描かれている。韓国、日本、アメリカの文化を体験している著者ならではの視点と言えるだろう。

日本に生まれ育ちながらも韓国籍を捨てない韓国人のことを不思議に思っていたが、そんな彼らの生き方を知ることができた。同時に日本の良いところや悪いところ、日本の韓国人の受け入れ方などいろいろ考えさせた。

英語慣用句
lion's share もっとも大きい部分
the pick of the litter 一番良いもの
blanket statement 曖昧で包括的な意見
pipe dream 叶うことのない夢
pin money 少額のお金
marionette lines 唇の両脇から顎に向かって伸びる2本の線
is game for 〜 〜に乗り気である
flunk out of school 学校を退学する
get into hot water 厄介なことになる

和訳版はこちら

「サッカーの見方は一日で変えられる」木崎伸也

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
スポーツライターである著者がサッカーの見方を語る。

日本代表がアジアカップで惨敗したことをきっかけに、サッカーの戦術をより深く知りたくなって本書にたどり着いた。本書は著者がサッカーを見るための見方をチーム、選手、監督という3つの軸で語っている。どの見方も覚えるだけで今日から適用できるぐらい簡単なものである。いくつかその視点を挙げると次のようなものがある。

攻撃は「水」のように、守備は「氷」のように

いいチーム、悪いチームの見分け方としては次の4点、

  • ボール保持者を追い越す選手がいるか?
  • クロスに対して、ゴール前に3人以上が飛び込んでいるか?
  • 攻撃の布石として、ボールの後ろに素早く戻れているか?
  • 守備のスタートラインが決まっているか?

良い選手、悪い選手の見分け方では次の2点を覚えておきたいと思った。

  • 走っている選手の足元にパスを合わせられるか?
  • 「止める」「運ぶ」「蹴る」がひとつの動作でできるか?

僕自身サッカー経験あるのでそれなりに目は肥えているつもりでいたが、新たな視点を得ることができた。テレビではなくサッカー場でサッカーを観戦したくなった。

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モウリーニョのリーダー論 世界最強チームの束ね方

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
モウリーニョの幼馴染の著者が、モウリーニョのリーダー論を語る。

モウリーニョのリーダーシップの考え方が知りたくて本書にたどり着いた。

自らをスペシャル・ワンと公言するモウリーニョの生き方が存分に伝わってくる。そんな中でも速さについてモウリーニョが語った言葉が印象に残った。

デコ(元ポルトガル代表)を見ろ、もしあいつがボルトと100メートルを競争したら、悲惨な結果になるのは間違いない。だが、フィールド上では俺が知る中でも有数の“速い”選手だ。状況をすばやく分析し、それに対してすぐに対応できる“速さ”をもっている。

複数の速度を考えることで上を目指せるのは、様々な分野に言えることなのだろう。例えば、ある技術の習得するのが速い人がいて、その人に習得速度でかなわないとしても、一つの技術の習得からから次の技術の切り替えを速くするなど、別の速度を上げることで全体的にはそれ以上のパフォーマンスを出すことができる、などである。身体能力で敵わない人や記憶力で敵わない人などと出会った時に持ちたい視点である。

冒頭で書いたように、モウリーニョという人物について、自分がもっとも知りたいのは、どのようにして選手のモチベーションを高めるか、であり。それについてはランパードに語った言葉がヒントになるだろう。

お前はジダンやヴィエイラ、あるいはデコと同格だよ。ただ、それを証明するには勝たなければならない。お前が世界最高の選手であることを、優勝して証明するんだ。

この本人の実力を認めつつ新たな目標を提示するセリフは秀逸で、どんな人にも応用できると思った。サッカーの監督の中ではアーセナルの一時代を築いたアーセン・ベンゲルも有名だが、彼とモウリーニョの違いについても書いている。

本書を読んでモウリーニョも成功から、周囲のモチベーションを高める方法について学べる点を挙げるとしたら次の3点になるだろう。

  • 言語化(試合中だけでなく練習や日常生活におけるまで24時間)
    試合や練習だけでなく、選手が理想のキャリアを描けるよう最適な過ごし方を論理的に説明する。
  • 自分自身のモチベーションと感情を表現する
    誰よりも感情を表現し共感する。
  • 選手のキャリアや人生の向上のためのモチベーションを高めるためのセリフ・気遣い
    プライベートには立ち入らないのではなく、選手の家族との時間などプライベートも含めてベストな人生を送れるよう行動する

使える考え方はすぐに実践してみたいと思った。最近はサッカーの戦術についても改めて面白さを感じているので、リーダーシップと合わせて学ぶことができるサッカーの監督の考え方に触れられる本を、引き続き読んで行きたいと思った。

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「マーガレット・サッチャー 政治を変えた「鉄の女」」冨田浩司

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
イギリスの政治家サッチャー時代について描く。

先日読んだ「シャギー・ベイン」がサッチャー政権時代の物語だったことで、当時のイギリスの様子や当時の政治の様子を知りたくて本書にたどり着いた。

本書ではサッチャーが首相になる経緯から、その政権において取り組んだこと、そして退任までを順を追って説明している。

印象的だったのはフォークランド戦争である。サッカーW杯などでイングランドとアルゼンチンが対決する際必ず持ち上がる出来事であるが、どのような経緯で発生したことなのかは知らなかった。本書を読んで、フォークランド戦争のアルゼンチン側の思惑や、イギリス側の民意などを理解すると、日本と韓国の間の竹島問題やロシアとの北方領土問題でも似たようなことは起こりうると感じた。

サッチャーという人物については、思っていた以上に感情的に物事に取り組んだ人物だという印象が強くなった。そんなサッチャーの政治家らしからぬ人間性が、当時の行き詰まっていたイギリスの政治に良い方向に作用したのだろう。

外交の専門家は、本能的に外交というものを、異なる主張についてどこかで折り合いをみつけるプロセスだと考えがちである。…サッチャーの交渉スタイルはこのような外交専門家の「職業病」とは無縁で、…いわば「玉砕型」と呼べるものであった。

また、サッチャーを含む当時の政治家たちの駆け引きや政策を知るにつれて、政治という仕事においても新たな視点をもたらしてくれた。

政治指導者には、時として、政策的には正しくても、政治的に機能しない選択肢を捨て、政策的には不十分でも、政治的に実現可能な選択肢を選ぶ懐の深さが求められる。

これまで政治家の本はバラック・オバマやジョージ・W・ブッシュなどアメリカ大統領に関するものしか読んだことがなかったが、他の政治家の考え方にも触れてみたいと思った。

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「リボルバー」原田マハ


オススメ度 ★★★★☆ 4/5
パリのオークション会社に拳銃が持ち込まれた。それはゴッホを撃った拳銃だという。高遠冴(たかとおさえ)は真実の裏付け調査を始める。

高遠冴(たかとおさえ)は会社の上司、仲間と共に、拳銃を持ち込んだサラという女性に拳銃が委ねられた経緯からゴーギャンの家系にそのヒントがあると考え、家族や愛人などの関係者を調べていく。その過程でゴーギャンの生き方や当時の感情に少しずつ触れることとなる。

そんな調査の中で高遠冴(たかとおさえ)はゴーギャンのさまざまな感情を想像しながらその思考に近づこうとする。ゴッホの絵が大きく進歩していくのを目にして、焦りや羨望を感じるあたりは、何かに秀でた人間を目の当たりにした時に誰もが覚えのある感情だろう。

遅くに画家を志したという点では似ていながらも、2人はかなり異なる人生を送ってきた。ゴーギャンは結婚して妻子がある一方、ゴッホは弟のテオをのぞけばほとんど孤独の身なのである。家族との関係も含めて二人の人生を想像することで真実に迫ろうとする。

ゴッホは家庭を築くことはできなかったが、弟テオとその妻ヨーの不屈の情熱に支えられて世に出た。一方ゴーギャンは家庭を築き、五人もの子供を授かっていたにもかかわらず、彼のために親身になって尽くしてくれる身内は存在しなかった。

ゴッホとゴーギャンという二人の画家が一時期一緒に過ごしたことは有名だが、そんな2人の関係に新たな視点を与えてくれる。そして、そんな新たな視点を持つことで改めて、それぞれの絵画を見直したくさせてくれる。ゴッホの「ひまわり」だけでなく、ゴーギャンの「マンゴーを持つ女」「かぐわしき大地」「死霊が見ている」「マリア礼賛」など、本書で触れられているさまざまな絵画を改めてじっくり鑑賞したいと思った。

ゴッホが自殺したというのが通説だが、それ自体も実は噂の域を出ないことを知った。いつものように著者原田マハはその経歴ゆえに絵画が絡むと見事にその知識を発揮するが、本作もこれまでの作品と同様に絵画と画家の人生を見事に物語に落とし込んでいる。

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「Mourinho ジョゼ・モウリーニョ自伝」ジョゼ・モウリーニョ

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
ヨーロッパの強豪チームでサッカーの監督を勤めるジョゼ・モウリーニョにの自伝である。写真と短い文章でその人生を語る。

「自伝」というタイトルになっているが、どちらかというと写真集に近い印象である。ポルト、チェルシー、インテル時代のモウリーニョの動向は、世界のサッカーの動向をよく見ていたので強烈に覚えているが、その後の成績などはあまり知らなかったのでそれ以降の経歴が新鮮だった。

本書を読むにあたってもっとも知りたいと思ったのは、その一見高慢とも思える態度にもかかわらず、どのように選手たちの心を掌握して勝利という結果に結びつけるかという点である。しかし、案の定、なかなか本という媒体から伝わってくるものではない。それでも、選手たちと良い関係が築けていることや、モウリーニョ自信が常に挑戦を求めて一箇所に止まらない生き方をしていることは十分に伝わってくる。

改めてモウリーニョのように強い情熱を持って、大きな責任のもとで仕事をしながら人生を送れることを羨ましく感じ、大きな刺激をもらった。

冒頭でも「短い言葉と鮮やかなで伝えたい」と書いてはあるもの、「自伝」というタイトルに惹かれて、期待感を持って読み始めると、物足りなさを感じるかもしれない。

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「ピエタ」大島真寿美

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
18世紀のヴェネチア、孤児たちを引き取って育てていたピエタ慈善院を描く。

ピエタとは、現在でいう赤ちゃんポストであり捨てられた子供たちが、職業訓練をして過ごす場所だという。本書はそのなかでも、合奏・合唱の才能を伸ばした女性たちと、作曲家ヴィヴァルディの関わりを中心とした物語である。

語り手となるエミーリアはピエタのなかで人生を生きた一人の女性であるが、そのほかにもピエタに関わるさまざまな人物が描かれ、いろんな人間の生き方があることが伝わってくる。貴族に生まれピエタで共に音楽を学んだヴェロニカ、ピエタで音楽の才能を開花させたアンナ・マリーニ、音楽の才能を開花できずに薬剤師として独立したジーナなど、どの人生にも200年という時を隔てているにもかかわらず、現代に通ずる人生の厚みが感じられる。

大きく展開する物語ではないが、18世紀のヴェネチアという遠い地の遠い昔に生きた人々の人生がしっかり伝わってくる作品で、ヴェネチアという国や当時の音楽に対する考え方に興味を抱かせてくれた。

読み終わってから、ピエタの存在をあらためて調べてみると、かなり史実に近いことに驚かされた。ヴィヴァルディについては「四季」という曲名についてしか知らなかったが、ヴェネチア出身でかつピエタ慈善院に大きく関わっていたというのは本書を通じて初めて知ることとなった。

著者大島真寿美氏は「」で、浄瑠璃の世界を描いたことが印象に残っており、温かい人物描写、さまざまな立場の人物を良い面と悪い面の両面だけでなく、生きがいや悩みまで描くというのはどの作品にも共通しているようだ。他にも異国の地、遠い過去を身近に感じさせてくれる作品がありそうである。今後も大島真寿美氏の作品は読み続けていきたいと思った。

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「Shuggie Bain」 Douglas Stuart

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
2020年ブッカー賞受賞作品。1980年代にスコットランドのグラスゴーで家族と生活する少年Shuggie Bainを描く。

舞台は1980年代のサッチャー政権時代である。そんななか少年Shuggieは母Agnesとタクシーの運転手であるShug、姉のChatherineと兄のLeekと祖父母の狭いアパートで生活していた。やがて父親代わりだったShugが家を出たことで、Agnesはアルコールへと逃避していく。

生活保護に頼って公団住宅で貧しい生活を送る中、Shuggieや兄のLeekはAgnesに養われる側から、Agnesの面倒を見る側へと家のなかでの立場が変化していく。そして、そんななかShuggieは自分がどうやら周囲の少年たちとは異なることにも気づいていくのである。

家庭の都合から学校に行くこともできず、行っても自身の性格から周囲に溶け込むことができない、そんなShuggieが成長していく様子を描く。姉のCatherineは早々に母のAgnesを諦め、結婚して遠方へと生活の拠点を移し家に戻る機会が減っていく。思春期の兄もまた、少しずつ自分の居場所を定めていく。そんななか母が大好きなShuggieは一人母を気にかけて生きていく。ただのアルコール依存症であるだけでなく、プライドが高くと子供たちを守るという優しさをを見せてくれるから、Shuggieは母を捨られないのである。

並行して当時の経済や生活の様子に触れられる点も新鮮である。炭鉱が閉鎖して多くの炭鉱労働者が失業し、タクシーの運転手などで急場を凌ぐ様子が描かれている。日本でも一部観光地になっているが、炭鉱という古い産業が何故栄え衰退していったのか、そんななかサッチャーなどの当時の政治家はどんなことを考えどんなことに取り組んだのかに興味を持った。

終盤は頼れるのは兄LeekだけになったShuggieが、母を救いたい思いと、自分の人生の間で揺れ動く様子が描かれる。Shuggieを気にかける兄Leekの言葉にも同じ道を通った人間としての言葉の重みを感じる。

Don't make the same mistake as me. She's never going to get better. When the time is right you have to leave. The only think you can save yourself.
俺と同じ過ちをするなよ。ママは決して良くならないよ。時期が来たら家を出るんだ。それが自分を救う唯一の方法だ。

小学生の少年Shuggieが背負った過酷な人生に涙が溢れてきた。

英語慣用句
if he / she is a day, 少なくとも…(〜歳である)
give a belt たたく、ぶつ、殴る
milksop いくじなし、決断力のない、臆病者
get one's knickers in a knot 小さなことでビクビクする
get one's goat イライラさせる、怒らせる
not know one from Adam その人のことを認識しない
leave 〜 to chance 〜を成り行きに任せる
brass neck 自信がある、堂々としている

和訳版はこちら

「子どものやる気を引き出す7つのしつもん」藤代圭一

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
さまざまなスポーツでメンタルコーチをつとめる著者が、子供に対しての質問の考えを語る。

本書は子供に対しての質問というテーマで書かれているが、次の例のように、大人同士のコミュニケーションでも意識すべきことばかりである。

  • 答えは全て正解
  • わからないも正解
  • 他の人の答えを受け止める

面白いと思ったのは筆者は「受け止める」と「受け入れる」を次のように定義していることである。

「受け入れる」は、自分の考えと異なる意見でも、心の中に入れて、同意することです。「受け止める」は、相手の価値観や意見を理解することです。

個人的には「受け止める」も「受け入れる」も相手の考えを理解することで同意することではないという認識なので、
(同意するかどうかは「同意する」という言葉を別に使うしかない)。

結局、本書の要点は次の5つの質問に集約されるだろう。

  • どうたった?
  • 自分に点数をつけるとしたら難点だと思う?
  • どうしてそう思うの?
  • うまくいったことはなにがあった
  • どうすれば、もっと良くなると思う?

全体的な考え方には同意できるが、上にも書いたように、子供との会話においてだけ適応する内容ではない。職場環境においても、部下に自主性を持たせたりやる気を出させたりする上司は実践していることある。そう考えると、どちらかというとそのような社会経験がない親が読めば学びはあるかもしれない。誰でも知っているようなクイズや逸話を挟んでページ数を必要以上に増やしているのは残念である。

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「シューマンの指」奥泉光

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
指を失ったはずの天才ピアニスト永嶺修人(ながみねまさと)がピアノの演奏を再開したという。彼は確かに指を失ったはずなのに。里橋優(さとはしゆう)は封印していた記憶を辿り始め再び音楽に向き合う決心をする。

物語はミステリーの様相を呈しているが、音楽に傾倒する里橋優(さとはしゆう)と永嶺修人(ながみねまさと)の様子を描いているので、そのなかでシューマンの音楽についての議論が多く展開される。正直、音楽を本格的にやってない人間にとってはほとんど意味がわからないだろう。ただ、音楽は追求すれば奥の深いものだと言うことだけが伝わってくる。

シューマンという作曲家は名前しか知らないが指が不自由だと言うことを本書を読んで初めて知った。

ミステリーとしては一般的な範囲のものだろう。そこで展開される音楽論を好意的に受けるとかどうかで読者の受け取り方はかなり変わるだろう。個人的には、音楽論はほとんど理解できなかったが、それでもここまで音楽を論じることができたら楽しいだろうと感じた。

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「同志少女よ、敵を撃て」逢坂冬馬

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
2022年本屋大賞受賞作品。第二次世界大戦中のドイツの侵攻によって故郷を失ったセラフィマはロシアの女性狙撃手としての訓練を受けることなる。

進行してきたドイツ軍に村を焼き払われたセラフィマが、女性狙撃手の英雄リュドミラ・パヴリチェンコと共の同志であるイリーナに拾われ、狙撃兵となる訓練受けることとなる。そんなセラフィマの狙撃手としての訓練の様子と、戦場で仲間と共に狙撃兵として成長していく様子を描く。

コサックのオリガや貴族を嫌悪するシャルロッタなど、さまざま背景や歴史から集まった仲間たちの多様性も物語を面白くしている。

途中、セラフィマたち女性狙撃手と前線で戦う男性兵士の考え方や性格の違いなどに度々触れていて、同じ村の幼馴染のミハイルと再会するシーンでは、女性であるが故に、戦場で女性に暴行を加える男性兵士に嫌悪感を抱く様子が見てとれる。

同じ年にKate Quinnの「The Diamond Eyes」でもロシアの狙撃手を扱っており、かなり内容が重なっている。おそらく「The Diamond Eyes」を読んでいなかったら、もっと本書の新鮮さを感じられたことだろう。「The Diamond Eyes」の主人公で実在した人物であるリュドミラ・パヴリチェンコは本書でも登場しているので、引き続きロシアの狙撃手の物語にさらに触れたい人は「The Diamond Eyes」を読むのもいいだろう。

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「アジャイル開発とスクラム 第2版 顧客・技術・経営をつなぐ協調的ソフトウェア開発マネジメント」平鍋健児、野中郁次郎、及部敬雄

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
アジャイルとスクラムについての基本と現状を多くの例を踏まえて説明する。

序盤はよくあるスクラム関連書籍のように、アジャイルとスクラムの説明から始まる。

大部分が一度は耳にしたことのある内容だったが、改めてその意味を復習する機会となった。そんななか次回これをやってみたいと思ったのは次の二つである。

大きな収穫としては、本書を読むまで2020年のスクラムガイドの改訂を知らなかった。改訂項目を見るとスクラムの陥りがちな罠が見えてくる。本書では次の3つに触れている。

  • インセプションデッキ
  • やらないことリスト

1.スクラムが形式的、儀式的になってしまっている
2.プロダクトオーナー vs 開発チームの構図に陥ってしまっている
3.スクラムマスターがスクラム警察もしくは雑用係になってしまっている

2020年の改訂だけでなく、2017年の改訂についても理解してその傾向を理解して実践へ反映していきたい。

また、スクラムでは常に発生する悩みであるが、どうしても複数のプロジェクトが同時に進んでいたり、チームメイトが複数のプロジェクトをまたがって担当している場合にうまくいかない場面が出てくる。しかし、本書ではスクラムをスケールさせるいくつかの考え方にも触れている。

  • Less
  • Nexus
  • SAFe
  • Scrum@Scale
  • Disciplined Agile

本書の触れ方だと詳細の考え方がわからないので、追って深掘りしてみたい。

後半では、いくつかの日本の大手企業のスクラム導入の様子やインタビューを掲載している。これまで触れてきたスクラムやアジャイル関連の書籍はどれも海外の著書で、そのため、例も海外のものが多かった。本書は日本の企業がスクラムを導入例に数多く触れている点が新鮮である。

スクラムやアジャイルに対してまた新たな気づきを与えてくれた。

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