「涙香迷宮」竹本健治

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
2017年このミステリーがすごい!国内編第1位作品。

黒岩涙香の隠れ家が見つかったことから、暗号マニアや航路位悪いこう研究家など、各方面の専門家とともに牧場智久(まきばともひさ)はその隠れ家の調査に参加することとなる。

黒岩涙香という人物も、名前を聞いたことがある程度で、その経歴はほとんんど知らなかった。しかし、五目並べを体系化して連珠を作成したり、多数の小説を描いたり偉大な人物であったということがわかる。

どれほどの人が知っているのかはわからないが、「いろはと」は「いろはにほへと」で始まる有名な句に代表されるように、日本語の48文字を重複なく使って意味のある文章を作るというものである。本書の目玉は、黒岩涙香の隠れ家で見つかった48のいろはであり、本書がどこまでフィクションなのだかわからないが、この48のいろはをすべて著者が考えたのだとしたら驚くべきことである。

物語は、黒岩涙香のいろはの謎を説くなかで、参加者の一人が毒殺されたことから、謎解きとともに犯人さがしの様相も呈してくるが、あくまでも謎解きがメインだろう。

いろは、連珠など新しい知識を与えてくれるとともに、好奇心を大いに刺激してくれる作品である。著者、竹本健治の作品は本書が初めてだが、本書に含まれるいろはからもわかるように、日本語に対して深い知識と優れた感覚を持っているのは間違いないだろう。

本書は、同じ主人公である牧場智久を主人公としたシリーズの一つということで、他の作品もぜひ読んでみたいと思った。きっと同じような言葉の不思議な世界を味わえることだろう。

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