「また、同じ夢を見ていた」住野よる

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
小学生の小柳奈ノ花(こやなぎなのか)は、年齢の割に賢く読書が好きだったためか、学校にはあまり仲の良い友達がいなかった。その代わり、放課後は近所に住む高校生の南(みなみ)さん、社会人のアバズレさん、そして、年配のおばあちゃんとの時間を楽しんでいた。そんな奈ノ花(なのか)の日々を描く。
小学生の女の子を扱ったほのぼのとした雰囲気で物語が始まるが、少しずつ小学校の教室での彼女の立ち位置が見えてくる。決してイジメられっ子というわけでも、弱虫というわけでもないが、奈ノ花(なのか)の毎日の行動から、その苦悩が伝わってくるのではないだろうか。
それでも、少しずつ、奈ノ花(なのか)の周囲の大人たちによって、奈ノ花(なのか)の世界は開けていく。もう何年も前に当たり前だった教室という逃げ場のない小さな世界と、そんなわずか40人程度の集団が、世界のすべてだった頃を思い出させてくれる、ほっこりさせてくれる作品。
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「ノワール 硝子の太陽」誉田哲也

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ストロベリーナイトシリーズの「ルージュ 硝子の太陽」の裏の物語。同じ時期に起こったもう一つの事件を描く。
この物語への入りは、「ストロベリーナイト」シリーズの延長からであるが、本書は、ストロベリーナイトシリーズではないので、「ストロベリーナイト」シリーズのヒロイン姫川はほとんど出てこない。むしろ本書は、誉田哲也の「歌舞伎町セブン」のシリーズと位置付けられるようだ。
物語は、沖縄基地問題の重要人物を公務執行妨害によって勇み足で逮捕してしまい、その取り調べ担当として東(あずま)刑事が任命されることから始まる。しかし、同じタイミングで、沖縄基地問題を調べていた知り合いのフリーライターである上岡慎介(かみおかしんすけ)が殺害される。上岡(かみおか)が歌舞伎町セブンのメンバーではないかと疑いを持っていた東(あずま)は歌舞伎町セブンのメンバーと思われる人間に接触を試みる。
法律を無視して、自分たちで世の悪党と思われる人々に制裁を与える「歌舞伎町セブン」の面々と、警察組織に所属しながらも、歌舞伎町セブンの行動を止めることもできずに共存しようとする東(あずま)のやりとりが面白い。ただ、誉田哲也の今まで読んでいなかったシリーズ、もしくは読んだけど忘れてしまっているシリーズの物語との関連性が強く、本書の面白さを味わい切れていないとも感じた。
「ジウ」を読み直して、「歌舞伎町セブン」のシリーズを一通り読んでから、もう一度読んでみたいと思った。
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「ルージュ 硝子の太陽」誉田哲也

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
世田谷で起きた一家惨殺事件を捜査することとなっった姫川玲子は、やがて28年前の類似事件の存在に気づくのである。
「ストロベリーナイト」に始まる姫川玲子のシリーズの第6弾である。シリーズには短編集も長編もあるが、本書は長編ということで、一家惨殺事件という凶悪事件に姫川は関わることとなる。
警察の捜査の様子とは別に、本書では、ベトナム戦争の後遺症に悩むアメリカ人男性の描写が間に差し込まれていく。戦時中に経験した残酷な命のやりとりの悪夢から逃れられない彼は、日本人の家族を惨殺した夢を頻繁に見るのである。読者は、このアメリカ人を犯人と予想しながら、少しずつ真実に迫っていく姫川とそのほかの警察関係者の様子を楽しむこととなるだろう。
おそらく本書のモデルとなっているのは2000年に起こった未解決事件である、世田谷一家殺害事件なのだろう。本書を読むなかで興味をかきたてられ、事件の詳細を調べたくなった。また、本書はほかのシリーズ作品と異なり、「ノワール 硝子の太陽」という別の物語と表裏一体になっているという。いくつか未解決のまま終わった消化不良の部分もあるが、きっとそのへんは「ノワール」の方で解決するのだろう。物語自体の面白さに加え、そんな2面構成もあわせて楽しめるのではないだろうか。
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「No.1エコノミストが書いた世界一わかりやすい為替の本」上野泰也

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5

漠然とFXで投資をするなかで、FXの持つリスクを正しく理解したいと思って本書を手に取った。
序盤は、「円高」などの言葉の意味もわからないような初心者にも理解できるような、噛み砕いた為替の説明から入り、中盤からは、どのようなできごとが為替に影響を与えるか、などより詳細な為替の動きについて説明している。
僕のようにFX投資するために必要な最低限の知識を持ちながらも、1段階知識のレベルをあげたいという人にちょうどいい。特に後半の2つの章「ドル以外の通貨の実力は?」と「為替相場の動きの法則と読み方・考え方」はまさに知りたかったことで、しかもその知りたかったことを細かくなりすぎない粒度で説明してくれている点がありがい。
世界一わかりやすいかは疑問だが、僕にとっては目的を十分に満たす内容だった。
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「A Dangerous Place」Jacqueline Winspear

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
Maisie Dobbsの第11弾。時代は1934年、時代はまさに第二次世界大戦へと突入しようとしている。それまで探偵業を営んでいたMaisieは前作で新しい生活を始める決意をし、本作品はそのあとの物語である。
まず驚かされるのは、前作までの間に時間的な隔たりがあり、Maisieの夫であるJamesが事故死している点であろう。友人や親の心配を感じながらも、その悲しみと向き合うためにジブラルタルに降り立ったMaisieはそこで暴行に襲われた写真家の死と遭遇するのである。失意の底にありながらも自らの存在意義を確認するかのようにMaisieはその真実を解明しようと動き出すのである。
亡くなった写真家の捜査をするなかで、ジブラルタルの多くの人と出会う。そしてそんななか少しずつMaisieは過去と向き合って夫を失った自分の今後の行き方を模索する。それでも戦況は悪化する一方で、やがてゲルニカ爆撃が起きるのである。
全体的には、登場人物など、過去の作品と繋がったエピソードが多く、本書だけで楽しむのは難しい印象を受けた。ここまでシリーズのすべてお読んでいる僕にとっても、すべてを理解したとは言えないだろう。本シリーズが残りどれほどあるのかわからないが、Maisieにとって前向きな終わり方をしてほしいと思った。

「ネットがつながらなかったので仕方なく本を1000冊読んで考えた そしたら意外と役だった」堀江貴文

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
2年半の刑期のなかで大量の本を読み、そのなかで良いと思ったものを勧めている。
正直このような本だとは思っていないで手にとったのだが、新たにたくさんの読みたい本に出会えた。それぞれの本を紹介する中で著者自身の考え方も書いているが、すでに堀江貴文という人物を知っていて、その著作に何度か触れたことある人にとっては特に新しいものではないだろう。
著者が挙げるリストのなかには有名にもかかわらず、今まで僕が読んでいなかったものなどもあり、これを機会に読んでみたいと思った。

・「グラゼニ」森高夕次
・「JIN 仁」村上もとか
・「東京タワー」リリー・フランキー
・「五体不満足」乙武洋匡
・「A3」森達也
・「こんな僕でも社長になれた」家入一真
・「理系の子」ジュディ・ダットン
・「とんび」重松清

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「ワーク・ルールズ!」ラズロ・ボック

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
グーグルの人事担当者である著者がこれまでのグーグルにおける人事制度のできるまでを語る。

グーグルは世界で最も人気のある企業として認知されているが、実際その文化はどのように作られるのかは正直知らなかった。本書を読むと、ほとんどすべての制度が、データをもとに実験と検証を繰り返しながら少しずつ出来上がったものだとわかる。

本書で題材として上がっている制度のできあがるまでの過程やその背景にある考え方など、どれも非常に興味深い。本書を読むと、どちらかというと組織のなかでレベルの低い人が集まると考えられがちな人事部の仕事も面白そうに思えてくる。また、どんなこともオープンにして、自由に議論が言えるグーグルという環境がうらやましく思えてくるだろう。

「人材は大事」と誰もが言いながらも、グーグルほどその大事さを行動に反映させている組織はないのではないかとも感じた。

たいていの企業は正規分布を使って社員を管理する。...テールは左右対称にはならない。成績の悪い社員は解雇され、さらにひどい人間は入社すらかなわないため、左側のテールが短いからだ。

今後組織づくりに関わるにあたって、もう一度読み直したいと思える一冊。
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「心と身体のパフォーマンスを最大化する「氣」の力」藤平信一

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
心身統一合気道会長の著者が、氣と、メジャーリーグで行なった氣のトレーニングについて語る。
著者の父であり、心身統一合気道の創設者である藤平光一の「氣の威力」はどちらかというと氣の話以外に藤平光一自身の物語であったが、本書は日常生活にも役立つであろう氣の基本的な部分の実践方法を解説している。また、あわせてメジャーリーグでの氣のトレーニングのエピソードを交えることで、その効果の有用性を伝えている。
合気道の経験のない人は、信じられないような話なのかもしれないが、本書を読めば、メジャーリーグや日本のプロ野球など多くの場所で実績を残した理論であることがわかるだろう。
人生がなかなかうまくいかないと感じている人は、ぜひ一度時間を割いて読んでみるといいだろう。
【楽天ブックス】「心と身体のパフォーマンスを最大化する「氣」の力」

「十二人の死にたい子どもたち」冲方丁

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
自殺を志願する十代の子供たち12人が、使われなくなった病院の地下室に集まった。採決をとって、全員の意見が一致したら集団自殺を実行に移すのだという。
最初の採決で、参加者の1人が室内の環境の不自然さを解決するために、話し合いを求めたことから集団自殺の決行が30分先送りになる。そして、話し合いはさらなる謎を呼び、その謎がさらに話し合いへと繋がっていく。死ぬことを決意して集まった子供たちであったが、違和感を解決した上で綺麗に死にたい人や、一方で、死ぬことができれば室内の違和感など小さな問題と、割り切った人間などさまざまであるが、話し合いが少しずつ子供たちの心の中を明らかにしていくのである。
冲方丁は「天地明察」や「光圀殿」の印象が強いが、そのような念入りな下調べの上にできあがった物語を期待して本書を手に取ると大きく予想を裏切られるだろう。むしろ冲方丁らしくない作品で、石持浅海の推理小説のような物語の展開する空間が非常に狭く限られていて、大きな動きもほとんどなく、子供たちの会話をベースに進んで行く。
著者冲方丁にとっても本書は新しい挑戦なのかもしれない。
【楽天ブックス】「十二人の死にたい子どもたち」