「伝え方が9割」佐々木圭一

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
伝え方を変えるだけで、1割の成功確率のデートの誘いが5割、7割にもなる。そんな自分の望む方向へ人生を変えるための「伝え方」の極意は決して一部の才能ある人だけに与えられた物ではなく、誰しもが意識して言葉を紡ぐ事によってできることなのである。本書はそんな「伝え方」を語る。
本書で語るそんな「伝え方」の秘訣は次の5つに集約される。

サプライズ法
ギャップ法
赤裸々法
リピート法
クライマックス法

である。どれも言われてみれば単純で、たとでばサプライズ法は「!」をつけるだけという簡単なものからいくつか紹介されている。確かに「!」の文字一つあるかないかでずいぶん受ける印象は変わるものだ。
またギャップ法というのはスタート地点を下げて、本当に言いたい事を相対的に強調する方法である。

これは私の勝利ではない、あなたの勝利だ。
嫌いになりたいのに、あなたが好き。

どちらも後半だけでの意味が通じるのだが、前半がある事によって強調されるのがわかるだろう。その他の赤裸裸法、リピート法、クライマックス法などもおそらく想像するのはそれほど難しくないだろうが、慣れるまで若干時間がかかりそうだ。メールだけでなくLINEやFacebookなど、テキストによるコミュニケーションがより広まってきた今だからこそ、言葉の伝え方を見直すときなのかもしれない。
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「海の翼 エルトゥールル号の奇蹟」秋月達郎

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
イランイラク戦争の際、日本人を救出するためにトルコが航空機を飛ばした話は有名である。それは1800年代後半に起きたエルトゥールル号の恩返しであった。
僕自身もトルコを訪れた事があり、トルコ滞在中には日本が本当にトルコに愛されている事を感じてその理由を知ろうとした事もある。だから、エルトゥールル号の物語とイラン・イラク戦争のときのトルコの行動は知識としては知っていたが、それが本書で書かれているような劇的なものだとは思っていなかった。
本書で描かれている、日本人のトルコ人の救出や、また一方で、トルコ人達の日本人の救出は、決して政治的な駆け引きなんかではなく、一般の人々の助け合いの結果なのである。トルコに行った事ある人や、これからトルコに行こうとしている人にはぜひ読んで欲しいと思った。
また、トルコ共和国の初代大統領であるアタチュルクについてもトルコに行ったときに名前だけは知っていたが、日本人から大きな影響を受けていたことは初めて知った。
恩を忘れないトルコ人の姿から僕ら日本人も学ぶ物があるだろう。
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「インデックス」誉田哲也

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
姫川玲子シリーズ。
今回は短編集という事で、姫川玲子を中心とした8つの物語が収録されている。このシリーズは「ストロベリーナイト」「ソウルケイジ」など長編が人気があるが、個人的には短編集である「感染遊戯」や本書が好きである。
本書でも中程に収録されている「彼女のいたカフェ」が非常にいい感じである。書店に併設されたカフェの店員目線の物語で、特に理由もなくカフェのスタッフを始めた彼女が、毎日そこで難しそうな本を読む女性に恋するという内容である。もちろん、その女性が姫川玲子であり、やがてカフェに姿を現さなくなる…という物語であるのだが、その数年後に事件を通じて2人の再会を描くのである。
まだ、ほかの章では、ブルーマーダーの事件や、過去に殉職した姫川の部下について描いたりするなど、どうしても一冊ずつ間隔があいてしまうために内容についていくのは難しいが、姫川玲子の捜査に対する信念や部下に対する温かい思いが伝わってくるだろう。
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「たま高社交ダンス部へようこそ」三萩せんや

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
高校入学と同時に、食べ物に釣られて社交ダンス部に入部してしまった雪也(ゆきや)だが、徐々に社交ダンスの魅力にはまっていく。しかしやがて部の存続をかけて競技会に出場する事になる。
社交ダンスのモチベーションを上げるために、社交ダンス関係の本をなんでもいいからと思い、本書に出会った。少しずつダンスの魅力にはまっていく流れは、非常にありがちではあるものの、挿絵も非常に奇麗で、普通に楽しむ事ができた。特に目新しさはないが、ダンスに興味を持っている人、普段楽しんでいる人が少し違った角度から改めてダンスに目を向けようとしたときには本書はちょうどいいかもしれない。
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「「タレント」の時代 世界で勝ち続ける企業の人材戦略論」酒井崇男

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
なぜアップルやグーグルやトヨタは成功し、日本の電気・半導体・通信・IT企業は完敗してしまったのか。それは「タレント」の重要性を理解していたか否かなのだ。本書はそんな視点で企業が発展して行くためにどのようにしてタレントと向き合うかを語っている。
今や、材料や労働力はどこでも手に入れる事ができるので、物を作るのは人件費や物価の低いところを選ぶ事ができる。そうなると企業として重要なのは何なのだろう。本書はそれを「設計情報」だと主張する。優れた設計情報」さえできあがれば、あとはそれをひたすら各地で現実に存在する物やサービスに転写するだけなのである。そしてその「設計情報」を作る人こそが「タレント」と呼ばれる人なのである。
「タレント」というとなんとなく「すごい人」という印象しかないが、プロフェッショナルやスペシャリストと比較するとタレントというものが何なのか分かりやすいだろう。

単なるスペシャリストは、知識を活用する「目的」よりも「知識そのもの」にアイデンティティを持っている人が多い。プロフェッショナルも同様である。一方、優れたタレントは、知識にせよ職業にせよ、「目的」を達成するための「手段」だと考えているところに際立った特徴がある。

世の中がただ一言「天才」とか「才能のある人」と読んでいる人の正体が分かった気がする。
また本書は後半でタレントを育む事の成功例としてトヨタの主査制度を挙げている。興味深いのは、トヨタの主査制度は日本よりもアメリカで高く評価されている点だろう。
著者は言う。アメリカは日本ほど新たな文化を創造するのは得意ではないが、いいものを徹底的に分析して取り入れる能力は非常に高く、日本で生まれた主査制度もそうやってアップルなどの企業で成果を上げたのである、と。
アメリカという国の見方が少し変わった。
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「ビル&ボビー・アービンのダンス・テクニック」オリバー・ヴェッセル・テルホーン

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
魅力的なボールルーム王者だったビルとボビー・アービンの哲学を語る。
解剖学からダンスの姿勢を語っている。体の各部の骨の名称を用いて姿勢やライズ&フォールの体の動きを説明しているが、なかなか文字だけで理解するのは難しい。それでもいくつかダンスの動きや姿勢のあるべき姿として気付かされるものはあるだろう。
本書によって、長い間疑問だった、フェザーステップとフェザーフィニッシュの違いはようやく理解する事ができた。

フォーラウェイリバース&スリップピボットではフットワークもよく間違われます。これを踊る際にとても重要なことは、男性は自分のウェイトをしっかりトウの方に持って行くことです。男性が2歩目に入る所をこんな風に想像してください。ーー男性の右足トウの下にはコインがあります。そのコインを3歩目から4歩目のスリップ・ピボットまで引きずって行くのです。そうすれば2歩目右足のヒールを下ろすばかりか、トウまで上げてしまうという、間違いを避けることができるでしょう。

後半ではダンスの歴史についても多くのページを割いて説明している。クイックステップやスローが生まれた歴史的背景も知っておくと面白いかもしれない。
そもそも文字だけで動きをすべて説明しようとするのに無理があるのか、僕のダンスに対する理解が、まだ本書を理解する程度まで達していないのかはわからない。数年後にまた読んでみたいと思った。
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「いのちのダンス 〜舞姫の選択〜」吉野ゆりえ

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
学生時代からダンスに打ち込んで、海外でも活躍した著者だが、ダンスパートナーでもあった夫と分かれてから、苦難の人生が始まる。
5年生存率わずか7%という難病を患うのである。担当医との確執などを経ながら、再発と手術を繰り返して行きていく様子が描かれて行くが、本書は闘病記ではない。病気と闘いながらブラインドダンスなど目の不自由な人のためにダンスを教える事に尽くし、できる範囲で一生懸命生きることの大切さを教えてくれるのである。
また、同じダンスをする人間として、著者が関わったブラインドダンスというものに興味をかきたてられた。ダンスをしていない人にとっては想像しにくいかもしれないが、社交ダンスに置いて相手の動きを察知する能力というのは非常に大切で、目の不自由な状況こそ、その能力をもっとも伸ばす事ができるに違いない、と思うのだ。
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「ゼロ なにもない自分に小さなイチを足していく」堀江貴文

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
ライブドアの経営者として有名になった後、2年6ヶ月の実刑判決を受けてすべてを失った著者「ホリエモン」がその過去や働く事に対する考え方を語る。
目的を見つけるとひたすらそのために努力をするその姿勢は(本人は「努力」とすら思っていないでひたすら好きな事をやっているつもりだと思うが)、同じ種類の人間である僕にとっては特に新しいものではない。だからといって、普段努力をしない人が読めば良い影響を受けるかというとそんなこともない、そういう人はその感覚が理解できないだろう。
多くの自己啓発本と同様に本書は、挑戦することによって得られるスキルや、充実感などについて語られているので、内容についても新鮮なものはないだろう。
唯一、印象的だったのは、田原総一郎が著者に語ったという言葉

あなたはこの国を牛耳る年寄りたちから嫌われ、怖れられ、ついには逮捕され、実刑判決まで食らってしまった。なぜか?それは堀江さん、あなたがネクタイを締めなかったからだ。ちゃんとネクタイを締めて、年寄りにゴマをすっていれば、球団買収だって成功しただろうに…

大きな目標を達成しようとする目前で、小さな礼儀不足や身だしなみのせいで失敗することがある。信念も大切だが、多少の譲歩もやはり必要なのだ。
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