「去就 隠蔽捜査6」今野敏

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
「隠蔽捜査」に始まる竜崎伸也(りゅうざきしんや)のシリーズの第6弾である。
大森署署長を務める竜崎のもとに 大森署管内で連れ去り事件が発生する。このシリーズの面白い点は、毎回事件解決と同じぐらい警察組織内の政治が描かれている点である。今回もその点では同様で、組織内の立場や面子を気にして行動する人々の中で、ひたすら論理的に行動して正義を貫く竜崎の生き方が爽快である。
今回は、竜崎の娘の美紀(みき)の恋人との問題を仲介したり、署内の女性警察官、根岸紅美(ねぎしくみ)の業務改善をする過程でストーカー問題に焦点があたっている。
読み終えて気づいたのだが、このシリーズの面白さは竜崎伸也(りゅうざきしんや)の真っ直ぐさだけで、他に特に学ぶ部分はないのである。にもかかわらずこうやって第6弾まで読み続けている点が面白い。きっと同じように竜崎の生き方だけに魅力を感じてこのシリーズを読み続けている読者は多いのだろう。
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「Speak Human: Outmarket the Big Guys by Getting Personal」Eric Karjaluoto

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5

インンターネットが発展した今、小さい会社でも大きな会社と対等に渡り合える。本書はそんなテーマでブランド戦略、マーケティング戦略について書いている。序盤では「小さいことは悪いことではない」ということを繰り返し強調した後、それの実現方法について次の順番で例と筆者自身の経験を交えながら語る。

自分のブランドを定義する
自分のブランドに合った人との関係を築く
自分のブランドに合って人との繋がりと会話を維持する
行動し、修正する

印象的だったのは最後の「行動して、修正する」で語られている次の4つのレイヤーである。

Direction 方向
Strategy 戦略
Messaging メッセージ
Delivery 伝え方

著者はこのように語っている「マーケットの問題に直面していると感じている多くの会社が、実は方向性の問題に直面していることが多い」。つまり、多くの会社が自分たちがどのような方向に進むべきかを考えもしないで、目の前の仕事に忙殺されているのだ。

あなたは何で、あなたは何がしたいのか?

何よりもまずこれを定義せずに、周囲の企業の真似ばかりしていてはいつまでたっても方向が定まらない。その結果、その先にあるはずの戦略も、メッセージも伝え方も決まらないまま時間ばかりが経ってしまうのだ。
本書は中小企業のための本であるが、人間関係においてもそのまま適応できると感じた。当面起業する予定はないがしっかり頭に刻んでおきたいと思った。

「なるほどデザイン 目で見て楽しむデザインの本。」筒井美希

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
誰にでもわかりやすくデザインについて書いた本。
正直このようなデザインの「良い」「悪い」を語った本は多く、あまり内容が深いとは言えないので今まで敬遠してきた。しかし、本書は友人のデザイナーたちも持っているので、以前より気になっていたのである。デザインを仕事にしている僕に取ってもいくつか新しいことを知ることができた。

文字を加工して丸みをつける
タイトルに「止め」を作る

なかなかデザイナーとして長く仕事をしていると、少しずつ別のデザイナーの視点に触れる機会が少なくなってくる。たとえ新しく知ることのできることが1割程度だったとしても、このような本にもっと触れるべきかもしれないと思った。
【楽天ブックス】「なるほどデザイン 目で見て楽しむデザインの本。」

「Close to Home」Robert Dugoni

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
12歳の黒人男性がバスケットの試合の帰り道に車にはねられて死亡した。犯人の車はすぐに特定され、海軍の運送担当の男性と判明するが、その男性は犯行を否認し続けるのである。
女性刑事Tracy Crosswhiteシリーズの第5弾である。シリーズの他の作品と同様に物語の中心はTracyだが、同じチームのDelの妹の娘がドラッグの過剰摂取で亡くなったばかりなため、Delの違法ドラッグ密売の捜査も多く描かれている。また、ひき逃げ事件の裁判の過程で、海軍の専門の弁護士としてLeah Battlesという女性弁護士が登場し、Leah Battlesの知り合いの検事との因縁や、趣味のクラブマガの様子など、本作品はTracy以外の描写が多かった。
Tracyの私生活の方は、結婚したばかりのDanとのあいだに子供を授かるために奮闘する様子が描かれる。仕事や家庭などさまざまな場所で悩みながら生きていくTracyの様子が非常にリアルである。Tracyがどのように家庭と向かっていくのかは今後もきになるところである。

「ユーザーストーリーマッピング」ジェフ・パットン

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
アジャイル開発を繰り返すと、作業者は要件だけを重視し、その機能が全体のサービスにおいてどのように位置付けられているかを見失いやすい。そんな状況の解決方法の1つであるストーリーマッピングについて語る。

現在の会社の状況の問題点を解決しようといろいろ調べていてユーザーストーリーマッピングに出会い、ユーザーストーリーマッピングの代表的な本である本書にたどり着いた。

これまでの開発手法であれば、開発中の機能について不明な部分が出てくると、「仕様書をしっかり書こう」ということになっただろう。しかし、どんな詳細に書かれた仕様書であっても書いた人の頭のなかには存在しながらも文字にならない部分は必ずあるのである。仕様書を書くことに時間を費やすのはやめて、ユーザーのストーリーを語ることによって共通理解をつくろう、というのがストーリーマッピングの考え方である。

基本的にストーリーマッピングの利点は、マッピング作成の過程で生じる議論に参加することによって、参加者全員の共通理解が進むということである。またストーリーマッピングによってユーザーがサービス利用時に困る部分を見つけ出しサービスの改善につなげることもできるし、製作者側が見落としていた部分を発見することにも役立つのだ。

こうやって語ってみると、いいことばかりのようにも聞こえるが、残念ながら本書ではユーザーストーリーマッピングの詳細なやり方は書いていない。いくつかの事例においてのユーザーストーリーマッピングの様子を語っているだけで、実際効果的なストーリーマッピングの方法は組織や目的によって変わるためファシリーテーターには高いの能力が必要となるだろう。

ストーリーマッピングの効果には特に疑問はないが、本書自体は翻訳もわかりにくく、英語が苦手でない人は英語版を読んだほうが理解しやすいのではないだろうか。また、構成も読みにくく、ストーリーマッピングを理解するためには不要と思われる部分もあり、本としての完成度は低く感じた。
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「反転授業」ジョナサン・バーグマン、アーロン・サムズ

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
講義を録画した動画を事前に見てきて、授業中は生徒たちが学んだことを確認するために費やす「反転授業」について書いている。
5年前、YouTubeを利用して講義を公開して有名になったカーンアカデミーに興味を持った際に「反転授業」という言葉を知った。反転授業が効果があることは当時も想像はついたが、生徒に事前に講義の動画を見せるというのは難しいのではないかと感じていた。その後「反転授業」がどのように発展したのかを知りたくて本書を手に取った。
本書はただ単に「反転授業」の説明だけにとどまらず、どのようにそれを学校の授業に取り入れるかまで丁寧に説明している。著者の2人が本当に世の中の教育を変えたいのだという思いが伝わってくる。
後半では「完全習得学習」という考え方に触れている。完全習得学習とはその名の通り、生徒一人一人が異なるペースで学習し、理解度が一定の基準に達するまで行うという学習である。その効果は認められていたが教師の負担が大きいことからこれまで広まらなかった。興味深いのは、著者の2人が、動画を利用した反転授業によって「反転型完全習得学習」を目指している点である。

「UX虎の巻」坂東大輔

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
UX向上のための方法について書いている。
序盤でUXの一般的な考え方について触れている。著者も書いている通り、UXに明確な定義はないが、ISO版のUXの定義、UXのハニカム構造、Elements of User Experienceはしっかり覚えておきたいと思った。
第5章の「UX向上の具体例」では、UX向上方法についてかなり詳細に書いている。多くのUX関連の書籍が、ユーザーインタビューなどの、調査に多くのページを割いていることを考えると、本書はUX向上のためのテストについて詳細に書いている点が印象的だった。
特にメッセンジャーアプリ、ハードディスクレコーダーなどの具体例の中で

ユースケースの洗い出し
ユースケースの詳細化
UXチェックリストの作成
UXテストの実施

のUX向上の鍵となる流れをわかりやすく解説している。全体的にはなかなかすぐに役立てられるようなものではないが、知識として持っておくぶんには悪くないように感じた。UXをこれから勉強しようとしている人に勧められるような本ではない。
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