「風の海 迷宮の岸」小野不由美

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
十二国記の戴(たい)の国の麒麟として生まれながらも、天変地異に巻き込まれ、日本で普通の男の子として生活していた泰麒(たいき)が、十二国に帰還し、すこしずつ麒麟としての生活に慣れ、力を発揮していく様子を描いている。

ここまで「魔性の子」「月の影 影の海」を読んでいる中で、少しずつ見えてきた十二国の仕組みが、今回は、麒麟という種族の目線で明らかになっていく。十二国における麒麟の役割とは、それぞれの国の王を選ぶことである。泰麒(たいき)は戴の国の麒麟なので戴王を決めることがその役割である。自らの能力に疑問を持ちながらも、王を選ぶという大きな役割の前に葛藤する様子が描かれる。

少しずつ十二国のドラマが本編に入っていく感じを受けるが、まだまだ、「十二国記」全体の感想を語るには早すぎるようだ。続けて読み進めていきたい。

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「The Alice Network」Kate Quinn

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
子供を身ごもって母とフランスに旅行中のCharlieは、戦時中に行方不明になった従姉妹のRoseを探して、手がかりとして手に入れた一人の女性Eveを訪ねる。その女性は戦時中に女性の諜報活動として大きな役割をになったAlice Networkの一員だった。

それまで保守的な母の言う通りに生きてきて、子供を身ごもってしまったが故に、遠くのスイスで秘密裏に子を産んで元の生活に戻ろうと母と旅行していた際に、CharlieはRoseを訪ねて母の元から逃げ出して、唯一の手がかりとし浮上したEveという女性を訪ねる。EveとEveと行動をともにしていたFinnとの3人で心当たりとなった場所を訪ね回る中で、それぞれが少しずつ心を開き始め、お互いの過去を語りはじめる。

物語は 1915年の第一次大戦中にEveが諜報活動の採用を受けてAliceと出会い少しずつ諜報活動の重要な役割を担っていく場面を交互に展開していく。現在と過去の間が少しずつ埋まっていくのである。Eveの醜い手には一体何があったのか、その美しいAliceは今どうしているのか。読者は、多くの部分に興味をそそられて先へ先へとページをめくっていくだろう。

3人がフランスの様々な場所を移動するのが興味深い。パリなどいくつかの有名な都市しか知らない僕にとっては、聞いたこともない都市が実は戦時中は戦況を分ける重要な場所だったと知って驚かされた。また、戦時中の女性たちの行き場のない怒りややるせなさも、EveやLilyの行動を通じて知ることができた。そしてなにより、この物語は、実際に存在した女性Louise de Bettignies(コードネームをAlice Dubois)を題材としているという点も、本書を通じて初めて知った。機会があったらもっと調べてみたいと思った。

この本の著者Kate Quinnの書籍に触れるのは今回が初めてであるが、他の作品もきっと深い内容だろうと思わせてくれた。ぜひ、有名な作品から順によんでみたい。

和訳版はこちら

「簡単だけど、すごく良くなる77のルール デザイン力の基本」ウジトモコ

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5

デザイナーの著者がいいデザインをするためのルールを説明する。

僕自身も20年以上デザイナーとして生きている人間なので、本書に書いてあることの多くが、毎日取り組んでいる考え方ばかりである。しあし、それでも改めて「この考え方は重要だ」と再認識したことや、今まで考えてもいなかったこと、無意識に実践していたことを言語化した表現に出会うことができた。

「良い」「悪い」≠「好き」「嫌い」
共感するから心が動く

デザイナー向けというよりも、いいプレゼン資料を作りたいビジネスマンや、デザイナーと関わる非デザイナーのための本であるが、デザイナーが読んでも、新たな気づきがあるだろう。

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「サードドア 精神的資産の増やし方」アレックス・バナヤン

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ビル・ゲイツやスピルバーグ、レディ・ガガはどのようにしてその偉大なるキャリアの最初の一歩を踏み出したのか、そんな成功者の最初の一歩を本としてまとめることを思い立った著者は行動を始める。そんな著者の悪戦苦闘しながらインタビューを繰り返す様子を描いている。

ウォーレンバフェットやビル・ゲイツに話を聞くためになんども断られながらも少しずつ、著名人の間で人脈を築いていく様子が描かれており、何事もくじけずに分析し戦略を練って行えば少しずつ実現できるのだと伝わってくる。その過程で、ビル・ゲイツやレディ・ガガ、ジェシカ・アルバやウォーレン・バフェットなどの人柄も見えてくる点も面白い。

なかなか本書のどこが役に立つとは言えないが、諦めずにしつこくメールを送り続けて失敗した話もあるので、よく言われがちな「なにごとも諦めなければ達成できる」という形ではない。人脈をつくるために戦略を練ることも重要だし、一つの方法に固執することもなく考え付く限り多くの場所に種をまき、芽が出たところを攻めるという方法も効果的だということがわかる。

企業や組織だと「広報」という仕事があるが、個人で人脈を広げることに今まで意識をしてこなかったので、これを機会にできることをやってみたいと思った。

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「Grid Systems」Kimberly Elam

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
グリッドシステムについて知りたくて、グリッドシステムの世界的に有名な著書の一つである本書にたどりついた。

多くのデザイナーが無意識のうちに綺麗にレイアウトするために身につけていることだろう。しかし、デザイナーには美しいものをデザインするだけでなく、周囲の関係者たちを納得させることも必要なのである。本書は良いデザインを言語化する手がかりにあふれている。

The Law of Thirds
3×3のグリッドシステムでは、4つのグリッドが交差するポイントが視覚的な焦点となる。
The Circle and Composition
ワイルドカード要素として、円はレイアウト上のどこにでもおくことができる。テキストの近くにおけばそのテキストへ注意をひきつけられる。テキストの間に配置すれば、その情報を分けることができる。テキストから遠くに配置すれば、注意をひきつけ、視線のフローを操作できるし、全体のバランスを整えることにも使える。

最近ではあまりグリッドシステムを用いたデザインというのは少ないのかもしれないが、知識として知っておくとデザイン作業よりむしろデザインの意図を伝えるに当たって大いに役に立つと感じた。

「人は見た目が9割「超」実践編」竹内一郎

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
「人は見た目が9割」の著者が、「人は見た目が9割」に書けなかったことなどをまとめている。

実はあの有名な「人は見た目が9割」を読んだことがなく、ふとした機械から読んでみようと思い立って探したところ、同じ著者の本書にたどり着いた。

「人は中身の方がずっと大切でしょう?」という反論をさせるための若干挑戦的なタイトルではあるが、多くの人は見た目の重要性を知っていることだろう。美しい人に魅力を感じたり、第一印象で人を判断しているからだ。したがって、本書の内容もそのような見た目の重要性を語る内容だと予想していたのだが、実際はそこからさらにもう一歩深い内容だった。

とりとめもなく著者が考えていることを小さな章に分けて書いているので、読みやすくはないかもしれないが、印象的だったのは

「整形手術と痛々しい中年」「共働きと子供の表情」の章である。

「整形手術と痛々しい中年」では、若いころに美人だったりイケメンだったがゆえに、中年になってもそんな表面的な美しさにしがみついている人々を嘆き、むしろ生き方や表情、立ち振る舞いといった見た目を人生をかけて磨いていくべきだと説いている。

私は自分の“見た目”を30年かけて磨こうではないか、といいたいのである。

「共働きと子供の表情」では、共働きで母親も仕事に忙しくなり、子供にたくさんの表情を見せる機会が少なくなることで、少しずつ子供の表情も失われているのだと、警告している。

「子供によい表情を見せる」という心がけは、つまるところ“余裕”のなせる業である。

ぜひ、今後常に意識していきたいと思った。

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「A/BTesting:Practical Insights and Common Pitfalls」Divakar Gupta

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ABテストの手法、ツールについて語っている。

序盤は簡単なABテストの説明をしており、中盤からはABテストで起こりがちな落とし穴、またABテストのためのツールなどを紹介している。大部分はABテストの15の落とし穴にページを割いており、いくつか興味深いものがあった。いつでも言及できるように覚えておきたい。

Running an A/B test without thinking about statistical confidence is worse than not running a test at all — it gives you false confidence that you know what works for your site when the truth is that you don’t know any better than if you hadn’t run the test

平均値のみを気にする


例えば新しいUIをリリースして、次の一週間のアクセス数が大きく伸びたとしても、日別に伸びているかを確認すべき。一日だけ極端に伸びた結果全体の数値を上げているのだとしたらそれは別の要因によるものだからだ。

「なぜ」を知ろうとしない

例えばABテストが失敗した場合、機能が良いものであるにも関わらず、デザインがよくなかったり説明が悪かったりする。単純に失敗した、だけでなく、「なぜ」失敗したかを知ることは、さらなる成功へ近づくのである。

正直、あまり順序立てた書き方をしておらず、よくあるABテストの落とし穴を思いつくまま羅列しているような内容なので退屈で頭に入りにくいが、もう一度じっくり読み直してみたいと感じた