「UX Research: Practical Techniques for Designing Better Products」Brad Nunnally, David Farkas

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
UX調査について語る。
例えば、定量調査、定性調査について詳しく説明しているだけでなく、どんなときにその調査方法を用いてどんなときにもちいるべきでないのか、等を説明している。また、調査のやり方だけでなく、調査結果からどのように組織を動かしていくかなど、なかなか他のUX関連の書籍では扱っていない点に触れているのも新鮮である。また、たくさんの調査方法を紹介している。それぞれの手法については概要程度の記述しかなかったが、今まで知らなかったいくつかの方法を知ることができた。それぞれの方法については今後さらに深めていきたいと思った。
また、ところどころに実際にUXリサーチャーのインタビューを交えている点が面白い。海外では「UXリサーチャー」という職種がここまで普及していることに驚かされる。
後半では、リクルーティングや調査のファシリテートの仕方について書いている。ユーザーの表情や姿勢でその発言からは見えない心理を読み取る方法などについても描かれており、なかなか一度読んだだけで実現できそうもないが、UXについてたくさん勉強している人に取っても、新しい発見がたくさんあるのではないだろうか。非常に細かい部分にまで触れているため、組織によっては、ここまで調査に時間や人を避けないというところもあるかもしれないが、知識として持っておいたり、「ここにこの情報がある」と知っておくことはいつか役に立つことだろう。
調査の結果の報告のなかでWord Cloudsで表現している場面があり印象に残った。今まで使ったことのない方向9手法だったので、機会があれば使ってみたいと思った。これからUXリサーチをするなかで読み返したいと思えるほど内容の濃い1冊。

「億を稼ぐ東大卒トレーダーが教えるおひとりさまの「肉食」投資術」村田美夏

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
東大卒のトレーダーとして有名な著者がその投資に対する考え方を語る。
タイトルだけ読むと、株式投資の方法について書かれていそうな印象を受けたが、実際には、時間の使い方や、人間関係の作り方など広い意味での「投資」について書かれている。
やはり特殊な生き方をしている人の考え方は、僕のような一般の考え方(?)を持っている人間からすると斬新である。個人的に印象に残ったのは

友だち5人の平均年収が自分の年収になる

レイヤーの高い人に会いに行こう

である。
どちらも人間関係の考え方であり、人間関係が変わればお金の流れも変わるのは、言われてみれば当たり前ではある。ただ、僕自身あまり普段こういう努力をしていないので、これを期に少し考え方を微調整してみようと思った。
残念ながらそれほどオススメという内容ではないが、保守的な生き方をしている人にとっては、目の覚めるような内容なのかもしれない。
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「25年目の「ただいま」5歳で迷子になった僕と家族の物語」サルー・ブライアリー

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
インドの田舎町で迷子になったサルーが、オーストラリアの夫妻に養子に迎えられてから自分の生まれ育ったインドの街を見つける物語。
「ライオン、25年目の「ただいま」」というタイトルで映画化もされた物語。街の名前と駅の名前、そしてその周囲の景色の記憶を頼りに、グーグルアースを使って生まれ故郷を見つけ出すのは、技術的にはそれほど難しくないように思える。それがここまで注目されるのは、25年という長い月日と、オーストラリアとインドの間の生活水準の差が原因なのではないだろうか。
物語の流れとしてはすでに知っていたのでそれほど大きな驚きはなかった。むしろ印象的だったのは、サルーを養子に迎えたオーストラリア人夫妻の養子に対する考え方と、サルーとブライアリー夫妻の養子縁組をしたミセス・ヌードの生き方である。サルーを養子に迎えた、ミセス・ブライアリーは12歳のときに、茶色い肌の子供が立っているビジョンを見たのだという。それ以来、いつかそれを実現しようと生きてきたのだという。
必ずしも血の繋がった子供を育てることだけが幸せではないと、改めて感じるのではないだろうか。
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「Measure What Matters」John Doerr

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
グーグルやゲイツ財団がOKRを利用してどのように現在あるような偉業を成し遂げたのかを語る。
OKRの仕組みを理解するのは簡単だが、導入の過程では組織に合わせた多くの微調整が必要である。本書はGoogle, YouTube、Adobe,ピザチェーンなどいくつかの組織がOKRsの導入を試みてから、OKRsが組織のなかで機能するまでを描く。OKRの仕組みを理解しただけでは不十分な知識を補ってくれるだろう。
本書で新しいのはOKRsとは別にCFRsという考えを取り入れていることである。CFRsとはConversations, Feedback, Recognitionのことで、マネージャーとの会話、チームメイトの間における進捗の評価と発展の案内、および達成した成果に対する賞賛の重要性を示している。OKRsに関わる人々の間でのコミュニケーションを活性化し、そのメリットを最大限に活用するためにCFRsは役立つという。
今後OKRsの導入に実際に関わっていくなかで繰り返し読む必要があると感じた。

関連書籍
High Output Management by Dov Seidman
Lean In Sheryl by Sandberg

「ブロックチェーンの衝撃」ビットバンク株式会社&『ブロックチェーンの衝撃』編集委員会

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ブロックチェーンについて語る。
ブロックチェーン関連の本を読むのは本書で5冊目になるが、これまでのなかで本書第1章がもっとも面白かった。ブロックチェーンや仮想通貨が世の中にもたらす変化についての考察は特に珍しくはないが、現在のビットコイン関連の状況を、グラフや表を交えて非常にわかりやすく説明している。
本書を読むまでフィジカルビットコインの存在を知らなかったし、ビットコインのATMが存在することも知らなかった。また、ビットコインのマイナーでは大部分を中国の企業が占めていることに加え、取引通貨でも人民元が94.5%を占めているというビットコインの世界的な偏りも本書によって初めて知ることができた。
残念ながら中盤以降は、法律や技術的な内容に偏っており難しかった。ブロックチェーンの概要を知るためというより、まさにこれからブロックチェーン関連の仕事を始めよとしている人向けの内容である。
【楽天ブックス】「ブロックチェーンの衝撃」

「フィンテック」柏木亮二

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5

昨今よく耳にする「フィンテック」という言葉に対して、金融とIT技術を結びつけた革新的なサービス、という漠然としたイメージを持っていながらも、そこにどのような可能性があるのかをもっと具体的に知りたいと思い本書を手に取った。
序盤ではアメリカでフィンテックが普及した経緯について説明している。その理由の一つとしてリーマンショックが挙げられている。リーマンショックによって、それまでの金融機関に対する不信感が増大したことと、職を失った優れた金融関係者たちがフィンテックという分野で知見を生かすことを選択した結果なのだという。一方で日本においてフィンテックがどのように進化していくかも持論を述べている。日本では貯蓄の多くはITリテラシーの低い年配者に偏っており、ITに抵抗の低い若者の貯蓄額が少ないいので、海外のようにスムーズにフィンテックの文化が浸透する可能性は少ないとしている。
本書ではさまざまなフィンテックを分類して紹介しているが、気になったのはソーシャルレンディングである。すでに世界ではレンディングクラブというソーシャルレンディングが拡大しているにもかかわらず、日本で普及しない理由として法律の問題があるのだそうだ。今ある世界を保護することは確かに重要だが、少しずつ人も法律も変化に適用していかなければならない。そういう意味で今後、ソーシャルレンディング関連の動きに注目したいと思った。
中盤では「イノベーションのジレンマ」について触れている。なぜ優秀な巨大企業が、破壊的なイノベーションに
対応できないのか。そして「イノベーションの解」にあるように、どのように対応するべきなのか。どちらの本も読んだはずなのだが、本書の説明が一番簡潔でわかりやすかった。
全体的にフィンテックの内容が盛りだくさんの一冊。理解できるかは別にして内容としては十分だと感じた。
【楽天ブックス】「フィンテック」