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ページをめくる手が止まらない、寝る時間さえ惜しくなる最高のエンターテイメント

泣ける本

思いっきり泣きたい人向け

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悲しいとかハラハラするとか怖いとか必要なく、ただただほんわかして、暖かい気持ちを感じたい人におすすめの本

世界を知る

世界の大きな流れを知りたい人向け

深い物語

いろいろ考えさせられる、深い物語

生き方を考える

人生の密度を上げたい方が読むべき本

学習・進歩

常に向上していたい人が読むべき本

組織を導く人向け

日本の経済力を強くするために、組織づくりに関わる経営者などにおすすめしたい本

デザイン

ただ美しいものを作れるだけじゃなく、一歩上のデザイナーになりたいデザイナーが読むべき本

英語読書初心者向け

英語は簡単だけど面白い、そんな面白さと英語の易しさのバランスの良いものを厳選

英語でしか読めないおすすめ

英語で読む以上、英語でしか読めない本を読みたい。現在和訳版がない本のなかでぜひ読んでほしい本。

「島はぼくらと」辻村深月

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
冴島という瀬戸内海にある架空の島で生活する4人の高校生、朱里(あかり)、衣香(きぬか)、源樹(げんき)、新(あらた)を描いた物語。
冒頭では登場人物達の様子から、日本で島に住むということがどういうことかがわかるだろう。朱里(あかり)、衣香(きぬか)、源樹(げんき)、新(あらた)は毎日島の外の高校へ通い、フェリーの時間のせいで部活に所属する事が難しくなる。子供達は、大学になる島の外へ出て行くので島の大人達は「一緒にいられるのは18年」という思いで子供を育てる。また、小さな子供を持つ母親にとっては医者が島にいるかいないかが非常に重要なのである。
本作品では単純に島の人々の文化や生活だけでなく、そこに移住してくるIターンの人々を物語に取り入れている。どこからかやってきたウェブデザイナーや、かつでのオリンピック水泳選手などが島に住んでいて、彼らの様子も物語を面白くしている。
離島とはいえ技術などの変化の波には逆らえず、それゆえにさまざまな問題が起こる。本書はそんななかで島の人々の様子を高校生の4人を中心に描くのである。
印象的だったのが地域の活性化の仕事の一部として島に訪れる若い女性ヨシノの存在である。自らの利益を度外視して人に尽くすように見えるヨシノの振る舞いに朱里(あかり)、衣香(きぬか)には理解できないのである。

朱里のことを、ヨシノはたくさんたくさん、知っているだろう。だけど朱里は、この人のことを何も知らない。愚痴も不満も、聞いたことが何もない。ヨシノはいつだって、朱里たちを受け止めてくれたけど、彼女の方から話してくれたことは一度だってない。

辻村作品からは特に新しい情報が得られる訳でもないが、いろんな立場の人の気持ちが見えてくる気がする。悩みを持たない人はいないし、人をうらやまない人もいない。本書もそんな人の心が見えてくる温かい作品に仕上がっている。
【楽天ブックス】「島はぼくらと」

「初ものがたり」宮部みゆき

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
江戸の本所深川の岡っ引き茂七(もしち)が地域で起きる事件や諍いを解決していく。
物語自体は、時代こそ違えど殺人、失踪、イカサマなど、現代の探偵物語でも出てきそうなことを扱っている。舞台が現代であればそこら中にありそうな物語であるが、それを江戸という時代で描くところが宮部みゆきらしさなのだろう。宮部みゆきの時代小説はどれに対しても言える事だが、本書も物語を楽しむ中で、江戸の時代の人々の生活が見えてくる。
僕自身「岡っ引き」という言葉の意味さえ知らないほどこの時代に対して無知なのだが、読んでいるうちに日本の人々の生活が、江戸やそれ以前から現在に至るまでどのように発展し変化してきたのか興味を抱いた。日本の過去の人々の生活にももっと目を向けていきたいと思った。
やや解決していない事案もあるような気がするが、ひょっとしたら続編があるのかもしれない。

岡っ引き
江戸時代の町奉行所や火付盗賊改方等の警察機能の末端を担った非公認の協力者。正式には江戸では御用聞き(ごようきき)、関八州では目明かし(めあかし)、関西では手先(てさき)あるいは口問い(くちとい)と呼び、各地方で呼び方は異なっていた。(Wikipedia「岡っ引き」

【楽天ブックス】「初ものがたり」

「ガウディの伝言」外尾悦郎

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
スペインのサグラダファミリアの建築に関わる日本人外尾悦郎(そとおえつろう)がサグラダファミリアやガウディ、そしてその仕事の内容について語る。
未だ建築中のサグラダファミリア。最近になって2026年に完成するとされているが、その長い間どのようにその建築は進められているのだろうか。もともとガウディは設計図を書いたりせずに建築を進めることが多かったという。サグラダファミリアも例外ではなく、建築家や彫刻家たちはガウディの思いを汲み取って建築を進めなければならない。序盤では著者がそのような過程を経てガウディの思いを形にするまでのエピソードが綴られている。
その中で著者が繰り返し語っているのが、機能と装飾が互いに補い合うガウディの建築の理念である。サグラダファミリアの装飾は単純に装飾としての意味だけでなく、建物の弱い構造を補う意味ももっているのだという。この考え方は建築だけでなく、機能と美しさを同時に考えなければならないデザインのすべてにおいて重視すべき事なのだろう。
また、ガウディの生涯が語られる中で思ったのは、大富豪エウセビオ・グエルとの出会いがどれほど大きかったかということ。天才は努力だけでなく多くの運に恵まれているのだと改めて思い知った。グエルとの出会いがなければガウディは誰の記憶にも残らずに歴史に埋もれていった事だろう。
さて、これだけ長い間建築が続けられていくと、なかには建築開始当初の理念から逸脱する部分もあるようで、後半ではそのいくつかが語られている。本来石で作られるはずだったものが途中からコンクリートになってしまったのもその1つである。確かに実際僕が訪れた際にどこか期待した重厚さが感じられずハリボテのような印象を受けてしまったのもそのせいかもしれない。
今や世界でもっとも有名な建物の1つ、サグラダファミリアについて理解するのに最適な一冊。

今日、一人の若者に建築家としての資格を与えた。彼の中に宿っているのは天才だろうか、狂気だろうか。それはまだわからない。しかし、時間が答えを出すだろう。

【楽天ブックス】「ガウディの伝言」

「Wolves of Calla」Stephan King

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
Dark Towerシリーズの第5弾。Roland達一行はCallaという町の人々に救いを求められる。その町には何年かに一度仮面を被った「Wolves」と呼ばれるグループがやってきて、町に多くいる双子のうちの一人をさらっていくのだというのだ。
シリーズ中最長の本書。Roland、Eddie、Sussanna、Jake、Oyeは助けを求められてCallaという町に赴き、町の人々から情報を集めながら、約1ヶ月後に迫ったWolvesの来襲に備える始める。そこでは双子の一人がさらわれても残る物もいるのだからそれで甘んじようと言う人々と、これ以上今の状態を続けないために命の危険を承知で立ち上がろうとする人々がいる。
町の老人が昔のWolvesの来襲と一緒に戦って命を失った友人達について語るシーンが個人的にはもっとも印象に残った。

モリーは砕け散った夫の血と脳を浴びながらも、なお動かず。そして叫んで皿を放った。

さて、物語はWolvesの襲撃に備える一行だけでなく、夜になると不穏な行動を始めるSussannaや、Eddie達と同じようにニューヨークからやってきたCallaの町の神父Callahanにも及ぶ。Callahanの語る物語はどうやらStephan Kingの別の作品と繋がっているようで、そちらも読みたくなるだろう。
前作「Wizard and Glass」でも赤い水晶が物語の重要な役割を担っていたが、今回もCallahanが保持しているという水晶が鍵となる。今後この玉の存在が物語にどのように影響を与えていくのか、ようやく近づいてきたシリーズの終盤に対して期待感が高まる。
スピード感溢れる描写に著者の才能を感じた。早くシリーズを最後まで読みたくさせてくれる一冊。

「宮本武蔵(三)」吉川英治

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
宮本武蔵の第三巻。宍戸梅軒(ししどばいけん)や吉岡清十郎(よしかわせいじゅうろう)との対決を描く。
結末はすでに多くの人が知っているように、武蔵が吉岡清十郎に勝つのであるが、その描き方は、数ある宮本武蔵を描いた物語のなかでもさまざまで面白い。本書では、吉岡清十郎(よしおかせいじゅうろう)とその弟、伝七郎(でんしちろう)のやり取りが印象的である。長男であるがゆえに重すぎる責任を背負わされて苦悩する清十郎(せいじゅうろう)、そして次男であるがゆえに身勝手に生きる伝七郎(でんしちろう)。本書では清十郎(せいじゅうろう)のつらい境遇が際立つ描き方をされているように感じた。
また、一方で佐々木小次郎(ささきこじろう)の存在感も高まっていく。そして武蔵の幼なじみの本位田又八(ほんいでんまたはち)は日増しに高まる武蔵の噂に嫉妬し、佐々木小次郎(ささきこじろう)の名前を語るようになる。
そんななかで印象的だったのは、吉岡清十郎(よしおかせいじゅうろう)との勝負を終えた武蔵が辺鄙な場所に母親と一緒に住む光悦(こうえつ)という人物と出会う場面である。剣のことしか知らない武蔵は、光悦(こうえつ)の焼いた陶器の奥深さに驚くのである。

彼が自負している剣の理から、この人物の底を計ろうとしても、持ちあわせの尺度では寸法が足らないような尊敬を正直に持ってしまった。

第二巻で柳生石舟斎(やぎゅうせきしゅうさい)の切った木の枝のエピソードも印象的だったが、わずかな違いにその技術を感じる武蔵の強い感性はなにか刺激を受ける部分がある。
【楽天ブックス】「宮本武蔵(三)」

「ローマ人の物語 ローマは一日にして成らず」塩野七生

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
古代ローマの物語。
ずっと読みたかったがその長さになかなか最初の一歩を踏み出せずにいたが、必ずしも一気読みする必要もなく気長に読み進めていければと思った。文庫版の最初の2冊で「ローマは一日にして成らず」という副題を持つこの2冊は、紀元前753年のローマの建国から紀元前270年前後のイタリア半島の統一までを描く。
グループや会社やチームなどの団体をうまく機能させようとするのは難しいことだがとてもやりがいのあることで、国というのはもっとも大きい団体と考えれるかもしれない。そして国をうまく機能するように作り上げることは興味深いことだが、それは人間の一生の数十年の間にできることではないのだ。だからこそ、本書が見せてくれる、ローマ人が国として試行錯誤をしてその機能をつくりあげていく様子は面白い。
歴史的事実はもちろん著者がスパルタやギリシャなど周辺国と比較してローマを語りその形態をわかりやすく解説してくれる。王政や共和制についての理解が深まるだけでなく、団体や組織が陥りがちな混乱や困難が見えてくるだろう。
まだ始まったばかりだが続きが楽しみだ。
【楽天ブックス】「ローマ人の物語(1) ローマは一日にして成らず(上)」「ローマ人の物語(2) ローマは一日にして成らず(下)」

「まち文字 日本の看板文字はなぜ丸ゴシックが多いのか?」小林章

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
フォントデザイナーの小林章が各国のフォントについて語る。
タイトルでは丸ゴシックをテーマに扱っているように聞こえるが、実際読んでみると丸ゴシックの話題は冒頭だけで、あとは著者が世界の各地で見るロゴで気づいた事をひたすら写真を織り交ぜて語っている。同じ著者の前作「フォントのふしぎ ブランドのロゴはなぜ高そうに見えるのか?」と流れもあまり変わらない。むしろ同じ記事が使い回しされているような気さえする。
これだけ世の中に溢れているにも関わらず、普段フォントというものを意識することのない人にとっては、町を歩く際に新たな視点をもたらす内容だろう。一方で、普段からフォントに触れている人にとっては若干物足りないかもしれない。それでもさらっと気軽に読めて、周囲にあるいろんな文字を凝視したくなる気楽な空気感がいい。
【楽天ブックス】「まちモジ 日本の看板文字はなぜ丸ゴシックが多いのか?」

「Holes」Louis Sachar

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
靴を盗んだ罪で更生施設に送られたStanleyはそこで毎日穴を掘る事を命じられる。その生活に慣れていくなかで少しずつその目的が見えてくる。
灼熱の大地で毎日穴を掘る、という情景になんか惹かれてしまうのは僕だけだろうか。物語にはその他にもなんだか魅力的な要素が詰まっている。主人公のStanleyの名前が、Stanley Yelnatsと逆から読んでも同じだったり、穴を掘っている近くには猛毒のトカゲが生息していたり、細かい設定がやけに印象的である。
さて、Stanleyが毎日の穴掘りに慣れ施設の生活にも慣れていく様子を描く中で、何度も過去の物語が展開される。どうやらそれはStanleyの曾祖父や祖父の物語のようである。アメリカに渡って財産を築いた曾祖父。強盗に襲われて財産を奪われた祖父。またその地域に長く伝わる伝説も描かれている。禁断の恋をした女性教師とタマネギ売りの物語である。
実は最後にはそんなすべての断片が1つに繋がるのである。正直1度読んだだけではなかなか細かい相関関係がわからない。すぐに読み返したくなる1冊。

「ニーベルンゲンの歌」石川栄作 訳

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ジークフリートという英雄の名前はずいぶん前からよく耳にしていた。名前が一人歩きするぐらい有名な物語なのに読んだ事がないものというのは結構あって、ハムレットやロミオとジュリエットなんかも同じであるが、今回はこの「ニーベルンゲンの歌」を選んだ。
おそらく翻訳者の技術や哲学によって、読みやすさは変わってくることもあるだろうが、現代の若い著者によって書かれているような読者を引き込む面白さを求める物ではないのだろう。ある程度は平坦な物語を我慢する覚悟が必要である。
本書は上巻、下巻それぞれに「ジークフリートの暗殺」「クリームヒルトの復讐」という副題がついているとおり、上巻は英雄ジークフリートの活躍と、暗殺されるまでの物語。そして後半はジークフリートの妻クリームヒルトが復讐を遂げるまでの物語である。
本書を読んでようやく一人歩きしていたジークフリートという名前が人格を持った英雄になった気がする。強く本書をオススメするということはないが、読み損ねた名作は誰にでもきっとあることだろう。
【楽天ブックス】「ニーベルンゲンの歌 前編」「ニーベルンゲンの歌 後編」

「宮本武蔵(二)」吉川英治

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
宮本武蔵の第二巻。宝蔵院を後にした武蔵は柳生へ向かう。そこには宮本村で別れたお通がいるのだ。
マンガ「バガボンド」との比較ばかりになってしまうが、本書では残念ながら宝蔵院胤舜(いんしゅん)との試合は行われない。お互いを認め合って言葉を交わすのみである。本書の見所は、柳生石舟斎(せきしゅうさい)と一本の木の枝の切り口を通じて心を伝え合う場面だろう。達人であるからこそわずかな細い切り口にその技を見いだす。剣の世界に限らずそんな世界があるなら到達してみたいと思わせる。
もちろん柳生でのお通との再会の場面も印象的である。お通に会いたいという思いを持ちながらも、剣の道を歩み続けるためにはそれをすべきではない、という武蔵の葛藤が描かれる。
そして後半では佐々木小次郎が登場する。武蔵と絡むのはまだまだ先の話だと思うが今後の展開を楽しみにさせてくれる。
【楽天ブックス】「宮本武蔵(二)」

「検事の死命」柚月裕子

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
米崎地検の検察官、佐方貞人(さかたさだひと)の物語。電車内での痴漢事件を扱う事になる。女性は素行が悪い一方で、容疑をかけられた男性はその地域の有権者の家の息子だった。
4編から成る短編集として構成されているが、後半2編はどちらも痴漢事件を扱った1つの物語である。また2編目の「業をおろす」は同じく佐方貞人(さかたさだと)を扱った作品「検事の本懐」の続編となっているので、本書2編目を読む前にそちらを読んでおくべきだろう。佐方(さかた)の父親の生き方を通じて、彼の信念の原点が見えてくる。
さて、本書のメインは痴漢事件の裁判であるが、女性の言動にやや素行の悪さが冤罪の印象を与える。その一方で、容疑を受けた男性の方も権力者の息子ということで真実に関係なく、裁判関係者に圧力がかかってくる。
そんななか佐方(さかた)は真実に導いていくのだが、本書でもそのぶっきらぼうな態度の裏にある信念は一貫している。本書を通じて感じたのは、正義はたった一人の無鉄砲な意思で貫き通せるものではなく、良き理解者や上司はもちろん、そのための根回しや巧妙な政治的駆け引きも必要だと言うことだ。そういう意味では佐方(さかた)の上司である筒井(つつい)の存在が大きいだろう。
最終的な結末はややあっけない印象もあるが、そこにいたる過程では期待に応えてくれた。

母さんは言ってた。自分のための嘘は絶対ついちゃいけないけど、人を助けるためなら許されるって。母さんはそうやって生きてきたんだ。

楽天ブックス】「検事の死命」

「恐れるな! なぜ日本はベスト16で終わったのか?」イビチャ・オシム

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
元日本代表監督のイビチャ・オシムが南アフリカワールドカップの日本代表を振り返る。
日本は南アフリカワールドカップの予選リーグでカメルーン、オランダ、デンマークと戦い、最終的に決勝トーナメント1回戦でパラグアイに破れて大会を後にした。今まで多くの雑誌やメディア、テレビ番組でこの4試合について語られてきたが、やはり経験豊かな監督の目線は異なる。負けた試合はもちろん、勝った試合についても良くなかった点や改善方法を示してくれる。
オシムに言わせると、パラグアイは決勝トーナメントに残った16チームのなかでもっとも勝ちやすい相手だったという。前回大会のトルコと動揺、相手にめぐまれたにも関わらずベスト8に進めなかった事を嘆く。孤立してしまった本田をどうすれば機能させることができたのか。選手の間に「引き分けでもいい」という考えがあったのではないか、などである。
そして日本代表だけでなくその他の印象に残ったチームや選手についても語っている。スペイン、オランダはもちろん、予想外に終わったブラジルやイタリア。すばらしい活躍をしたウルグアイのフォルランなどである。本書を読むと改めて、オシムの視点で試合を見直したくなる。
また、サッカー界の流れについても語る。スペインの優勝がサッカー界にもたらすもの。モウリーニョ主義への懸念、日本サッカーの向かうべき方向など、本書によってまたサッカーが1つ深く見れるようになるのではないだろうか。
【楽天ブックス】「恐れるな! なぜ日本はベスト16で終わったのか?」

「宮本武蔵(一)」吉川英治

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
もはや説明するまでもないが、数ある宮本武蔵の小説のなかでも人気の吉川英治の作品。すでに本書を原作とする井上雄彦のマンガ「バガボンド」の方が有名である事もあり、わざわざ小説を読もうと思い立つこともなかったが、おそらく日本の小説ベスト100のようなものを作れば間違いなく入ってくるだろうシリーズ。これを機会にと最初の1冊を手に取った。
本書では武蔵(たけぞう)が又八とともに関ヶ原に赴き、やがて追われる身となり、その後、沢庵和尚によって更生し再び修行の旅に出て奈良宝蔵院に訪れるまでを描いている。
すでにマンガで読んでいる内容ではあるが、マンガと違って小説は心情描写が伝わりやすく、特に沢庵和尚と武蔵(たけぞう)のやり取りの部分は涙を誘う。
続きが楽しみだ。
【楽天ブックス】「宮本武蔵(一)」

「ストレスフリーの仕事術」デビッド・アレン

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
ストレスを軽減させる仕事の進め方についておそらく本書に限らずさまざまな方法がいろんな人によって編み出されていると思うが、著者が紹介しているのは、自分が今抱えているプロジェクトをすべて書き出すという方法である。そしてなるべく1つ1つを具体的に書くというもの。細かい物まで含めると大抵の人が1日に100から200のプロジェクトを抱えているというから驚きである。
確かに僕の周囲にも仕事の進め方が非効率だと思う人は多々見かける。そんな人が読んだらひょっとしたら気づく事があるかもしれない。ただ、翻訳のせいかお世辞にも面白いとは言えない。読みにくいわけではないのだが、どこか頭を素通りしてしまうような印象があり、内容もかなり冗長に思える箇所が多かった。
【楽天ブックス】「ストレスフリーの仕事術」

「Mockingjay」Suzanne Collins

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
第13地区に逃げ延びたKatniss達は首都から迫害を受けていたすべての地区を率いて反乱を起こそうとする。一方で首都は爆撃だけでなく、捕らえたPeetaを利用して各地の暴動を治めようとする。Hunger Gameシリーズ完結編。
シリーズ3作目ということで、前2作品では脇役に過ぎなかった登場人物達が個性を持ち生き生きと躍動してくる。正直過去の作品の登場人物の名前を覚えてないとややわかりにくいかもしれない。
13地区はまず、他の各地区を同じように首都に対する反乱に向かわせようとする。電波ジャックによってKatnissを革命の象徴とした映像を流し、人々を煽動しようとするのだ。序盤はそんなメディア戦略の映像を撮るために、Katnissが首都の迫害に苦しんでいる各地区をまわり、そこで人々の支持を集めていく様子が描かれる。
一方、首都は捕らえたPeetaを使って革命の気運を抑えようとする。映像を通じて「反乱をやめるべき」というPeetaの言葉にKatnissは思い悩むが、それでも次第に革命の気運は高まり首都は孤立していく。
物語はむしろその後の戦場での悲惨な物語を描く。革命の象徴とたたえられながらも憎むべき独裁者Coinを倒そうとKatniss。GaleなどのHungerGameの生存者達とチームを組んで戦場に赴いていく。その残虐な首都の兵器に傷つき犠牲を払いながらも進んでいく場面が物語の最大の山場である。
シリーズ完結編にふさわしい内容。ハッピーエンドとは言い難いが、だからこそ現実の戦争の無意味さを訴えているように思える。ぜひ映像化されたものも見てみたいと思った。

「世界はひとつの教室」サイマル・カーン

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
ここ数年話題になっているカーン・アカデミーの創始者である著者サイマル・カーン氏がその設立までの経緯と現在の教育に関する考え方を語る。
カーン・アカデミーは、著者がいとこの教育のためにアップしたYouTubeの動画が多くの人に視聴されことから始まる。そのエピソードについてはいろんな雑誌やメディアで取り上げられているから聞いた事がある人も多いだろう。本書ではそんなきっかけを経て大きくなっていく過程でカーン・アカデミーに起こったことや著者が感じたことを書いている。
カーン氏によると、どうやら教育というのはもう100年以上も現在のスタイルで続いているのだそうだ。それは1人の教師が語り、数十名の生徒が聞くというスタイルである。カーン氏が主張するのは、世の中の変化にあわせて、いろいろなものが改善され進歩していく中で、教育も同様に発展していくべきだということである。

私が言いたいのは、私たちが受け継いできた教育上の慣習や前提をもっと疑ってみませんか、ということです。

今の教育スタイルでは早く理解した人は先に進む事を許されずただ退屈な時間を過ごし、理解が遅い人は授業のスピードについていけずに落伍者となるのである。また、カーン氏は現在の理解度をはかるテストについても疑問を投げかけている。例えば80点や90点で合格とするテストがあるが、それはつまり1割、2割を理解していないということで、そのまま次に進んでしまうのは大きな問題だという。
そして後半では、若い生徒たちだけでなく、社会人となってからの教育についても触れている。一生学び続けることの重要性かそのための環境づくりなど、いろいろ考えさせられることが多いだろう。

大切なのは何を教えるかではなく、どのように独学の姿勢を身につけさせるかなのです。

授業料が払えない学生やいじめ問題など、教育が注目を集める中、カーン氏の世の中の教育を少しでも良くしようという気持ちが伝わってくる。自分でも何か世の中に役立つことを始めたくさせてくれる一冊。
【楽天ブックス】「世界はひとつの教室」

「グアルディオラのサッカー哲学 FCバルセロナを世界一に導いた監督術」フアン・カルロス・クベイロ/レオノール・カジャルド

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
サッカーファンでなくても現在のFCバルセロナが、世界でトップ3に入る強豪チームである事は知っているだろう。すでにその前任のライカールト監督時代に現在のようなスペクタクルなサッカーを展開するようにはなっていたが、それでも当時いくつかの問題を抱えていた。そんな中、下部チームを率いていたグァルディオラが一気にトップチームの監督へと引き上げられ、ロナウジーニョやデコなどの有名選手を戦力外にするのである。メディアから批判されたが勝利という結果が出るにつれて、批判は賞賛へと変わっていく。
世界のトップチームはいつも個性のある選手達で構成されている。そのためそのチームを率いて目標を成し遂げる監督の考え方や言動はいつも非常に参考になる。イビチャ・オシム、アーセン・ベンゲル、モウリーニョなどはその代表格であるが、本書からもグァルディオラの持つリーダーシップに重要な心構えが見えてくる。それは明確に意図を伝える能力と、常に物事を学ぼうとする真摯な姿勢である。
グァルディオラが監督として選出される際、すでにチェルシーやFCポルトで優れた結果を残していたモウリーニョも候補にあがったが、バルセロナの文化を熟知しているという点でグァルディオラが選出されたという。モウリーニョはその高慢な物言いから、メディアや他チームと敵対しがちであるのに対して、グァルディオラは何事にも敬意を払うという点が印象的である。
多くの人と関わって何かを成し遂げようとする際に参考になるだろう。
【楽天ブックス】「グアルディオラのサッカー哲学 FCバルセロナを世界一に導いた監督術」

「3時間台で完走するマラソン まずはウォーキングから」金哲彦

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
マラソンを走る上での準備や考え方について語る。
今年3回目のフルマラソン挑戦を決意し、何か新しいヒントが得られることを望んで本書を手に取った。著者は他にも数多くのマラソン関連書籍を出している金哲彦氏である。

腹式呼吸や胸式呼吸、有酸素運動や無酸素運動などの運動や筋肉に関する基本的な内容から、ペース走、ウインドスプリントなどマラソンを走る上で有効な練習方法について解説している。また、フルマラソンを走るための練習だけでなく、ダイエット目的の体重を落とすための正しい方法についても説明しているので、マラソンを日常的に行うすべての人に役立つ内容なのではないだろうか。

印象的なのは著者が走る事と同じくらい重要なこととして、生活習慣の改善を強調していることだろう。食生活、入浴、ストレッチなど生活を少しずつ改善する事でマラソンだけでなく、生活にハリが出てくるというのだ。

正しいフォームや怪我のケアなど、本書によってマラソンに関する新しい知識をまたいくつか得る事ができた。出来る範囲で反映していこうと思う。
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「社交ダンスはリズムで踊れ! 足型いらずのダンスレッスン」石場惇史

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
ダンス用の音楽制作を数多く手がける著者が社交ダンスの音楽について語る。
競技ダンスに励むと音がしっかりとれないことが時々悩みの種になる。そもそも音を正確にとるにはどうしたらいいのか。そんなことがきっかけで本書を読む事になった。
本書ではまずは音に合わせて歩く、というような基本的なことで音楽にあわせて身体を動かす事を解説している。その後は世の中にあふれる音楽の種類と、それぞれの特徴について説明している。本という媒体なので音なしのリズム譜での解説になるので正直わかりにくいが、多くの音楽が世の中には存在することがわかるだろう。
著者が言うには、世の中には「社交ダンス用」と書いてありながらも、単純にスピードだけ合わせてベース音がなかったりリズムが乱れていたりと質の悪いのが多く出回っているのだそうだ。国内の社交ダンス用CDの80%以上がそのようなものだというから驚きである。つまり音がとりにくければ自らのダンスの技術とあわせて音楽を疑ってみる必要があるというこである。
全体的な内容は、やや行き過ぎたダンスや音響についての解説があったりと一貫性に欠けていたのであまり読みやすいものではなかった。
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「旅が仕事 通訳ガイドの異文化ウォッチング」志緒野マリ

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
18年のガイドの経験を持つ著者が、その仕事のなかで知った文化の違いや経験について語る。
通訳ガイドという資格について興味を持っていたため、その現場の様子を知りたくて本書を手に取った。もう20年近く前に書かれているためにおそらく現在の状況とは違う部分もあるだろうが、ガイドとして外国の人と触れ合う機会の多い著者が描く内容はどれも面白い。
海外旅行に何度か行った事がある人ならわかるだろうが、日本人の几帳面さは世界でも最高レベルである。だからこそガイドは日本人の害外旅行を案内する際と、外国人が日本を旅行する際の案内のしかたを大きく変えなければならない。また、各国の宗教による制約も常に意識しなければいけないことなど、知識として持ってはいても実際の経験者が語るとまた違って聞こえてくる。
広く視野を持つために様々な文化に触れることは重要なのだろう。改めてそんなことを感じさせてくれる一冊である。
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