
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
第24回吉川英治文学新人賞受賞作品。信長、秀吉、家康と天下の情勢が大きく移り変わる戦国時代において、自らの生き方を貫いた6人の男たちを描く。
本書はいずれも1600年近辺の戦国時代に生きた男たちに焦点をあてた短編集である。牢人、茶人、職人など、後の世に名を残すことのない男たちの、誇り高い生き方を描いている。
個人的に印象的だったのは茶人山上宗二(やまのうえそうじ)を扱った「天に唾して」の章である。美しさがわからない秀吉を卑下する茶人と、嫉妬しつつ権力で支配しようとする秀吉という構図は「利休にたずねよ」などでも描かれているが、本書でも権力に屈しず信念を貫く茶人たちを描いている。
この辺は、CEOの意見の前に譲歩しなければならない現代のデザイン作業にも通じるところがあるのを感じる。異なるのは切腹しなくても良いというところだろう。
自分の印象では秀吉は農民から成り上がった人間として好意的に受け取っているのだが、本書ではどちらかというと、その出自ゆえのコンプレックスからか、権力とともに傲慢になっていくように描かれている。先日読んだ「八本目の槍」の描き方とはまた、大きく異なっていたので、あらためて、史実に忠実でありながらも人格についてはさまざまな解釈があるのだと感じた。
短編集という難しいスタイルでありながらも、どれも登場人物に深みを感じたので、引き続き著者伊東潤の他の作品にも触れてみたいと思った。

















