「極夜行」角幡唯介


オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
北極などの極地では、太陽が昇らず、月も昇らない「極夜」という暗黒に包まれた時期がある。本書はそんな「極夜」に魅了された著者の80日にわたる極夜旅行の記録である。

地球は丸く地域によって、日の長さにが異なることは常識とし知っているが、それでも赤道付近は暑く、北欧の白夜程度というものが存在する、という程度までだろう。人の住まない、北極や南極がどのような様子かまでは今までまったく意識してこなかったということに、本書を読んで気づかされた。

北極点とは半年が極夜で半年が太陽の沈まない白夜、つまり日の出と日の入りが年に一度づずしかない極端な場所のことである。

著者は、犬を連れてグリーンランドのシオラパルクを出発し、事前に食料や燃料を貯蔵しておいた場所を経由しながら極夜旅行を続ける。そんななかシロクマによって食料が荒らされていたり、ブリザードにあったりと予想外の困難に出会いながらも、狼やウサギを狩ったりしながら一つずつ乗り越えていく様子が面白い。

写真がもう少し添付されているとありがたいと思ったが、考えてみれば極夜だから写真を撮るのは難しいのだろう。人生においてまず見ることのないだろう世界を垣間見せてくれた。

【楽天ブックス】「極夜行」

「スティグマータ」近藤史恵

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ツール・ド・フランスを走ることになった白石誓(しらいしちかう)は、対戦相手でありかつての英雄、ドミトリー・メネンコからチーム内のある人物に注意を向けるよう依頼される。そしてレースは始まる。

「サクリファイス」に始まる近藤史恵のロードレースを扱ったシリーズの第5弾である。感覚が2,3年ずつ開いてしまうので前作をよく覚えていないのだが、現在白石誓(しらいしちかう)はフランスを拠点としてプロのサイクルロードレーサーとして生活している。

このシリーズを読んでいる人には言うまでもないが、白石誓(しらいしちかう)は優勝を狙うようなレーサーではない。むしろ同じチームのエースを優勝させるために、風除けや囮となるアシスタントとして働くレーサーである。そんな設定が、ロードレースの特殊性と、他のスポーツにはない深みを感じさせれてくれる。

本書でも、すでに30を過ぎてキャリアの終わりが見え始めたレーサー達の葛藤が面白い。かつての英雄や、期待されながらも思ったような成績を収めることのできないエースなどである。本書では特に、かつての英雄でドーピングによってロードレース界から姿を消したドミトリー・メネンコの復活劇に焦点をあてている。彼は本当に以前のように戦えるのか、彼を取り巻く不安の影の正体はなんなのか。

そんな様々な要素や人間関係を織り交ぜて、23日間のツール・ド・フランスを描いている。ロードレーサーという、自分が選ばなかった生き方を少し体感できた気がする。

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「クリスティアーノ・ロナウド 生きる神話、知られざる素顔」竹澤哲

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
現在メッシと並んで世界最高の選手と言われるクリスティアーノ・ロナウドについて書いている。

偉業を成し遂げたチームの監督やサッカー選手などの話は、挑戦の連続で、どんな話も非常に刺激的で自分自身の人生のヒントとなる部分が多い。今回もそんな刺激を求めて本書を手に取った。

現在、メッシと並んで最高の選手と評価されるクリスティアーノ・ロナウドだが、一般的にはメッシは努力家、ロナウドは才能によって現在の地位に上り詰めたように受け取られているのではないだろうか。僕自身もそれに近い感覚を持っていた。しかし、本書を読むと、ロナウドも練習を怠らない努力家だとわかる。

前半はロナウドの幼少期からマンチェスター・ユナイテッドに入団するまでを描いており、家族の物語として読めるが、後半はチャンピオンズリーグやワールドカップなどの話が多く、サッカーに詳しくない人にはわかりずらいかもしれない。ロナウド自身についてだけでなく、ポルトガルという小さな国の歴史と、小さな国であるがゆえのサッカーにかける国民の思いなども教えてくれるので、2016年のポルトガルのユーロ優勝がどれほど国民が待ち望んだことだったのか知って驚くだろう。

今度はメッシの本も読んで見たいと思った。

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「最短で目標を達成するOKRマネジメント入門」天野勝

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
OKRの導入の方法について説明している。

OKRの本は「OKR シリコンバレー式で大胆な目標を達成する方法」と「Mueasure What Matters」と読んで理解したつもりでいたが、実際に組織に導入しようと思うとなかなかうまくいかない。うまくOKRを導入するためのヒントが見つかるのではないかと思い本書にたどり着いた。

本書は上に挙げた2冊のようにOKRの導入事例は一切書かれていない。そういう意味では、本書だけでOKRを理解するのは難しいだろう。本書で説明している方法は筆者がOKRを導入する中で試行錯誤した結果であり、元々のOKRの考え方に、アジャイルのスクラムの考え方を組み合わせたような形になっている。OKRがどのようなものかを理解したい人は、どこまでがOKRでどこからがカスタマイズしたものなのか区別しずらいだろう。

しかし、すでにOKRの知識を持っている人には、その導入方法についてヒントが見つかるかもしれない。個人的には

チームの境界を決める

といったあたりが、OKRを機能させるためには重要な気がする。他にもOKRに役立ちそうなインターネットサービスなども多数紹介されている。より実践的なOKRの本と言えるだろう。

【楽天ブックス】「最短で目標を達成するOKRマネジメント入門」

「エンジェル投資家」ジェイソン・カラカニス

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ウーバーへの投資などに関わり、シリコンバレーのエンジェル投資家として成功した著者ジェイソン・カラカニスがその投資の技術や情熱、そして投資の倫理について語る。

エンジェル投資という普通の人がなかなか馴染みのない世界、さらに言えば、人生においてその技術を活かすことがあるのかどうかすらわからない話なので、なぜそんな本を手に取ったのだろう、と思うかもしれない。しかし、考え方を変えれば、スタートアップなどの企業が成功するためには資金調達は避けて通れず、そこに資金を投じてくれる人たちの考え方を理解することは決して無駄ではない。まさに本書を手に取ったのは自分自身が今後もスタートアップで働いていくだろうと思っているからである。

本書はシリコンバレーでの投資についてかからており、著者自身もアメリカのなかでもシリコンバレーがもっともエンジェル投資に向いている、と書いている。つまり、日本はまだまだ法律的、環境的など様々な面で追いついてないのだろう。

興味深いのは、著者が、投資すべき企業を判断する際には、そのサービスよりも創業者の人柄を重視するといこと。なぜなら、スタートアップが続かない理由の大部分が、実は僕らが思うような「資金が尽きること」ではなく、「創業者のモチベーションが尽きること」だからだそうだ。僕らがスタートアップの創業者に対して持つイメージは、大金を稼いでいることかもしれないが、実際にお金を稼ごうと思ったら、スタートアップを創業するよりも大企業に勤めた方が何倍も楽で、そんな周囲の誘惑に惑わされず自ら立ち上げたサービスを大きくするために長く情熱を注げる人間を見極めることが大切なのだという。

著者は、次の4つの質問を、創業者を見極めるための最初の質問として使っている。

この創業者はなぜこのビジネスを選んだのか?
この創業者はどこまで本気なのか?
この創業者がこのビジネスで成功するチャンスはどれくらいかーー人生ではどうか?
成功したときの収益や私へのリターンはどのくらいか?

年間何十件ものスタートアップの創業者とのミーティングを重ねる著者が、短時間で創業者の人柄を判断するためにとたどり着いた質問である。必ずしもエンジェル投資家だけでなく、転職先を探しているような人も、この質問は役にたつかもしれない。

全体的には、やはり異なる世界の出来事という感は最後まで拭えなかったが、ソーシャルレンディングなど、上場企業以外への投資が少しずつ一般へ広がる中、機会があれば本書で書いてあることを実行してみたいと思った。

【楽天ブックス】「エンジェル投資家」

「Design Leadership」Richard Banifield

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
デザインのチームを機能させるための考え方を、多くの成功しているデザイン企業から紹介している。

この先、デザイナーとして組織に関わる中でチームを率いることが増えると考え、本書にたどり着いた。本書でで紹介されている多くの方法は、決して著者が「正しい」と考えていることではない。著者がインタビューした多くの企業のリーダーたちの声を紹介しているだけである。その人のこれまでの経験から発せられた意見に過ぎず、決してどんな企業にも当てはまることではないし、なかには相反する意見もふくまれている。それでも、日本のデザイン企業よりもはるかに多様な人材と多様な文化の入り混じったデザインチームを機能させているリーダーたちの声はどれも非常に参考になる。

そんななか最も印象的だったのが、働く場所へのリーダーたちのこだわりである。オフィスのある都市や、オフィスのレイアウトがチームの文化への影響の大きさをどのリーダーも強調するのである。その他にも、採用の際に悩みがちな、「技術で選ぶか、情熱で選ぶか」など発展段階にある組織が遭遇する困難の多くに触れている。

そんななかでも結局、リーダーの役目はこちらの言葉に集約されている気がする。 リーダーの仕事は、自分の意思を押し付けることではなく、創造性が発揮される場所をつくることだ。

また、リーダーとして組織を導く中で、困難に出会ったら読み返したいと思った。

「Molly’s Game」Molly Bloom

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ロサンゼルスでウェイトレスとして働き始めたMollyはやがて、Readonという男性に雑用として雇われる。Mollyを自身がReadonが主催しているポーカーを手伝うこととなり、Mollyは大富豪たちの世界へと足を踏み入れていく。
Molly’s Gameという同名の映画を見て、もっと詳しいことを知りたくなり本書を手に取った。ギャンブルのことはほとんど知識がなかったため、テキサスホールデムというルールや、コール、ベット、レイズ、フォールドの意味など、本書で書かれているギャンブル用語は知らないことばかりであった。そんななか驚いたのが、本書の中でも大きなターニングポイントとして描かれている、手数料の話である。州によって法律が異なるらしいが、手数料をとらなければ違法とはならないのだという。Mollyは実際、自身の主宰するポーカーでは手数料を一切とらず、参加者からのチップによって大きな利益を上げるのである。
やがてMollyはニューヨークへと場所を移し、さらに大きな利益を上げるのである。数年前には考えられないような豪華な生活と、誰もが羨むようなスターたちとともに過ごしながらも、虚しさを感じるMollyの葛藤が興味深い。その一方で、人生も含めて、大きなリスクをとることから離れられない、Mollyのお客となったギャンブル依存症のスターたちの生き方も面白い。
普通の生活をしているかぎり見ることのできない世界を、同じように数年前まで田舎者だったMollyの目線で見せてくれる。

「最強の営業法則」ジョー・ジラード

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
世界一の営業マンと呼ばれる著者がその営業手法を語る。
ジョー・ジラードという名前を知らなかったが、なぜか営業という仕事についている人が毎日どのように考えて仕事をしているのか知りたくなり、本書を手に取った。本書に書かれていることは、決して営業職に就いていない人には役に立たない内容ばかりではない。なぜなら、結局、営業の能力というのは、人と繋がり、人に好かれる能力なのである。つまり、人生におけるさまざまな場面で応用が利く能力なのだ。
本書の核となる考え方を一つ挙げるならば、著者が自らの名前を載せて「ジラードの250の法則」と呼んでいる法則である。簡単に言うと、どんな人でも250人程度の知り合いがおり、1人の顧客の気分を害せば、その噂は250人に広まることを覚悟しなければならない、というものである。もちろんこれは、いい方向にも考えられることで、人にいい印象を与えれば、それはやがて250人に伝わるということである。今はインターネットの拡散力も手伝って250どころではないかもしれない。
その他にも、本書ではいろんな営業手法や考え方を紹介している。実は本書はすでに40年も前に執筆された本ということで、インターネットを活用する方法などはもちろん含まれていないが、通常の郵便のように見せかけて人の記憶に残るという郵便による営業手法は、メールなどでも使えそうな方法で、機会があれば実践してみたいと思った。
【楽天ブックス】「最強の営業法則」

「Lost Symbol」Dan Brown

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
偽りの電話によってワシントンに呼び出されたRobert Langdonはそこで、友人であるSolomonの切断された腕を見つける。犯人と名乗る Mal’akhの電話によると、Solomonを救うためにLangdonはMason’s Pyramidを見つけなければならないのだという。
話の流れは前作「The Da Vinci Code」と非常によく似ている。「The Da Vinci Code」をすでに読んだ読者にとっては、扱っている内容と、舞台が異なるだけで、物語のスピード感や展開にあまり新鮮さは感じられないだろう。物語を通じて明らかになるアメリカの首都ワシントンD.C.の謎に興味がある人にとっては、これ以上のエンターテイメントはないのではないだろうか。
個人的には、すでにDan Brownがてがけた続編として「Inferno」や「Origin」があるにもかかわらず、あまり物語としての大きな新鮮さは期待できないのではないかとの印象を受けた。続編を読むか読まないかは現時点ではなんとも言えないところである。

「僕がアップルで学んだこと」松井博

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
Windowsに押されて停滞していた時代と、iPhoneによって世界一の企業へと返り咲いた時代の両方を
経験した著者が、理想の職場と、仕事に対する姿勢について語る。
アップルに返り咲いたスティーブ・ジョブスが行なった改善は、一般的に言われる「割れ窓理論」というもので、細かいことまで徹底的に管理することで会社の文化を改善していくというものである。本書ではそんなジョブスの改革を現場にいた著者の視点から語っている。
また、後半では「社内政治と賢く付き合う方法」についても語っている。アメリカの企業というと、実力主義という印象を持っていたので、社内政治について書いてあるのは意外だった。
あまり秩序立った描き方がされているわけではなく、どちらかというと著者のアップル在籍時代の思い出、といった印象だが、組織を大きくするなかで活かせそうなヒントが詰まっている気がする。
【楽天ブックス】「僕がアップルで学んだこと」

「シェアリングエコノミー Uber、Airbnbが変えた世界」宮?康二

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
AirbnbやUberに代表される、ユーザー同士が使わないものをシェアするためのプラットフォームの現状を知りたくて本書にたどり着いた。
本書では序盤にシェアリングエコノミーの仕組みと、なぜそれがなぜここ数年普及してきたかを説明して、そして中盤以降では、UberとAirbnbに焦点をあててその発展と現在の状況を語っている。
シェアリングエコノミーというと、「使わなくなったもの、または使っていない状態のものの再利用」という印象がが強く、その普及によって経済は停滞方向へ進むと考えていたが、本書によると、新規需要の創出という期待もできるのだという。

これまでホテルがなく滞在できなかった田舎町でもAirbnbなどを活用すれば、観光客が訪れることができる様になる。

途中で触れているミクロ経済学における市場メカニズムが資源の最適な分配を実現する条件。

1.私的独占や寡占がなく、生産者感やユーザー間の競争が十分にあること
2.取引関係者の間に情報の非対称性がないこと
3.直接の関係者以外の第三者に、大きな不利益ないしは利益を与えないこと

というのも、初めて聴くことで印象的だった。
全体的に人に勧めるほど内容の濃い内容ではなかったが、法律による規制の問題がシェアリングエコノミーの普及に大きく影響しているのだと再確認することができた。今後は規制との関連も踏まえて、シェアリングエコノミーの動向に注意を向けていたいと感じた。
【楽天ブックス】「シェアリングエコノミー Uber、Airbnbが変えた世界」

「A3」森達也

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
東京地裁でオウム真理教の教祖である麻原彰晃(あさはらしょうこう)の裁判を傍聴し、すでに裁判を進めるのに十分な人間性を保てていないと感じた著者が、その経過を語りながら、日本のシステムの問題を明らかにしていく。
本書を読むと、オウム真理教の事件で毎日騒がれていた時に持っていたオウム真理教の印象と、実際のそれは大きく異なるのではないかと、感じるだろう。実際、本書の中で著者は、何度も東京拘置所に足を運び、早川紀代秀(はやかわきよひで)、中川智正(なかがわともまさ)などのオウム真理教の重要人物と話、その会話の一部を載せているが、そこから受ける印象は、いずれもとても礼儀正しい人物だということだ。
著者は訴える。結局僕らはオウム真理教がなんなのかを知ることもなく、知る努力もせずに形だけの裁判によって裁いて終わらせてしまったのだと。世の中がオウム真理教を嫌いその責任者を「死刑にすべき」と望んだから、メディアがそれを助長し、結果として、国のシステムまでもがその勢いに流されてしまったのだと。法治国家として本当にこれが正しいあり方なのだろうか。と。

僕は面会室に入ってきた新実の表情をニコニコと描写した。このニコニコをニヤニヤに変えるだけで、受ける印象はまったく違う。

 
本書で書かれていることをすべて鵜呑みにするのは危険ではあるが、ありえない話ではないと感じた。世の中で頻繁に起こりうる殺人や強盗、窃盗や傷害などの犯罪に対しては、すでに対応の仕方も確立されており国として何度も対応を繰り返してきたために、毅然と対応されるのだが、オウム真理教の起こした事件のような、過去前例のない犯罪が起こった時、日本という国のそれぞれの組織は、対応方法に悩み子供っぽさを露呈するのかもしれない。たとえそれが裁判所という日本の司法権を行使する国家機関であっても。
【楽天ブックス】「A3(上)」「A3(下)」

「歌舞伎町ダムド」誉田哲也

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
歌舞伎町に「歌舞伎町ダムド」を名乗る殺し屋がいるという。歌舞伎町をこれまで守ってきた歌舞伎町セブンの7人と、歌舞伎町ダムドの行動が少しずつ交差し始める。
今回は歌舞伎町セブンのミサキの過去が明らかになる。そんなミサキは息子を人質に新宿署の警察官、東(あずま)を殺害することを依頼される。一方で、歌舞伎町セブン全体としては、命の危険にさらされている東(あずま)を守る方向に動くこととなる。2つの組織の間に挟まれたミサキはやがて、歌舞伎町セブンと対立する組織「新世界秩序」との対決を決意するのだった。
「ノワール 硝子の太陽」を読んで疑問に感じたミサキの過去を明らかにしてくれたが、大きな物語の一つのエピソードと言った印象で、物語のなかから学ぶ要素や、長く印象に残りそうな描写はほとんどなかった。
【楽天ブックス】「歌舞伎町ダムド」

「プロデューサーシップ 創造する人の条件」山下勝

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
良いプロデューサーとはなんなのか。そんな視点でプロデューサーについて語る。
そもそも「プロデューサー」とはどんな人を指すのか。実は僕らはこの「プロデューサー」という言葉を曖昧なまま使っている。多くの人が一昔前に「プロデューサー」という言葉で共通して持っていたのは小室哲哉のような音楽プロデューサーであろう。本書では「Shall We Dance」などのヒット映画を生み出した映画プロデューサー等を例にとってそのプロデューサー像を説明する。
中盤以降ではプロデューサー型人材の持つ能力や、そんな人材を育むための環境について語っている。
正直、あまりわかりやすい内容とは言えないのだが、ここまでプロデューサーという役割に焦点を絞った書籍は珍しく。企業に利益をもたらすような人材を育てるための環境作りに役立つヒントがたくさんつまっているのではないだろうか。
【楽天ブックス】「プロデューサーシップ 創造する人の条件」

「歌舞伎町セブン」誉田哲也

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
歌舞伎町で町会長の高山和義(たかやまかずよし)が遺体となって発見された。自分の父も同じように歌舞伎町で突然心不全として亡くなった経験を持つ新宿署地域課の小川幸彦(おがわゆきひこ)は、独自に事件の調査を始める。
やがて小川は、歌舞伎町を中心に活動するジャーナリスト上岡(かみおか)と知り合い、「歌舞伎町セブン」という存在を耳にする。
一方、歌舞伎町で小さな居酒屋を経営する陣内陽一(じんないよういち)は、かつては「あくびのリュウ」と呼ばれた歌舞伎町セブンのメンバーの1人。現在はささやかな生活を送りながらも、高山和義(たかやまかずよし)の死を機にかつての仲間から歌舞伎町セブンとしての復帰を求められる。
誉田哲也の警察物語の中で、歌舞伎町セブンを題材とした物語の第1弾であるが、「ジウ」シリーズで起こった歌舞伎町封鎖事件などとも繋がりがあり、誉田哲也の物語をすべてたのしもうと思ったらはずせない一冊である。
誉田哲也のもう一つの警察物語であるストロベリーナイトシリーズとのコラボとなった「ガラスの太陽 ノワール」を、先に読んでしまっていたため、前後の繋がりが把握できていなかった歌舞伎町セブン関連の謎は、本書を通じて解決するかと思ったがそんなことはなく、「歌舞伎町ダムド」および、「国境事変」も読む必要があると感じた。
【楽天ブックス】「歌舞伎町セブン」

「また、同じ夢を見ていた」住野よる

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
小学生の小柳奈ノ花(こやなぎなのか)は、年齢の割に賢く読書が好きだったためか、学校にはあまり仲の良い友達がいなかった。その代わり、放課後は近所に住む高校生の南(みなみ)さん、社会人のアバズレさん、そして、年配のおばあちゃんとの時間を楽しんでいた。そんな奈ノ花(なのか)の日々を描く。
小学生の女の子を扱ったほのぼのとした雰囲気で物語が始まるが、少しずつ小学校の教室での彼女の立ち位置が見えてくる。決してイジメられっ子というわけでも、弱虫というわけでもないが、奈ノ花(なのか)の毎日の行動から、その苦悩が伝わってくるのではないだろうか。
それでも、少しずつ、奈ノ花(なのか)の周囲の大人たちによって、奈ノ花(なのか)の世界は開けていく。もう何年も前に当たり前だった教室という逃げ場のない小さな世界と、そんなわずか40人程度の集団が、世界のすべてだった頃を思い出させてくれる、ほっこりさせてくれる作品。
【楽天ブックス】「また、同じ夢を見ていた」

「ノワール 硝子の太陽」誉田哲也

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ストロベリーナイトシリーズの「ルージュ 硝子の太陽」の裏の物語。同じ時期に起こったもう一つの事件を描く。
この物語への入りは、「ストロベリーナイト」シリーズの延長からであるが、本書は、ストロベリーナイトシリーズではないので、「ストロベリーナイト」シリーズのヒロイン姫川はほとんど出てこない。むしろ本書は、誉田哲也の「歌舞伎町セブン」のシリーズと位置付けられるようだ。
物語は、沖縄基地問題の重要人物を公務執行妨害によって勇み足で逮捕してしまい、その取り調べ担当として東(あずま)刑事が任命されることから始まる。しかし、同じタイミングで、沖縄基地問題を調べていた知り合いのフリーライターである上岡慎介(かみおかしんすけ)が殺害される。上岡(かみおか)が歌舞伎町セブンのメンバーではないかと疑いを持っていた東(あずま)は歌舞伎町セブンのメンバーと思われる人間に接触を試みる。
法律を無視して、自分たちで世の悪党と思われる人々に制裁を与える「歌舞伎町セブン」の面々と、警察組織に所属しながらも、歌舞伎町セブンの行動を止めることもできずに共存しようとする東(あずま)のやりとりが面白い。ただ、誉田哲也の今まで読んでいなかったシリーズ、もしくは読んだけど忘れてしまっているシリーズの物語との関連性が強く、本書の面白さを味わい切れていないとも感じた。
「ジウ」を読み直して、「歌舞伎町セブン」のシリーズを一通り読んでから、もう一度読んでみたいと思った。
【楽天ブックス】「ノワール 硝子の太陽」

「ルージュ 硝子の太陽」誉田哲也

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
世田谷で起きた一家惨殺事件を捜査することとなっった姫川玲子は、やがて28年前の類似事件の存在に気づくのである。
「ストロベリーナイト」に始まる姫川玲子のシリーズの第6弾である。シリーズには短編集も長編もあるが、本書は長編ということで、一家惨殺事件という凶悪事件に姫川は関わることとなる。
警察の捜査の様子とは別に、本書では、ベトナム戦争の後遺症に悩むアメリカ人男性の描写が間に差し込まれていく。戦時中に経験した残酷な命のやりとりの悪夢から逃れられない彼は、日本人の家族を惨殺した夢を頻繁に見るのである。読者は、このアメリカ人を犯人と予想しながら、少しずつ真実に迫っていく姫川とそのほかの警察関係者の様子を楽しむこととなるだろう。
おそらく本書のモデルとなっているのは2000年に起こった未解決事件である、世田谷一家殺害事件なのだろう。本書を読むなかで興味をかきたてられ、事件の詳細を調べたくなった。また、本書はほかのシリーズ作品と異なり、「ノワール 硝子の太陽」という別の物語と表裏一体になっているという。いくつか未解決のまま終わった消化不良の部分もあるが、きっとそのへんは「ノワール」の方で解決するのだろう。物語自体の面白さに加え、そんな2面構成もあわせて楽しめるのではないだろうか。
【楽天ブックス】「ルージュ 硝子の太陽」

「A Dangerous Place」Jacqueline Winspear

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
Maisie Dobbsの第11弾。時代は1934年、時代はまさに第二次世界大戦へと突入しようとしている。それまで探偵業を営んでいたMaisieは前作で新しい生活を始める決意をし、本作品はそのあとの物語である。
まず驚かされるのは、前作までの間に時間的な隔たりがあり、Maisieの夫であるJamesが事故死している点であろう。友人や親の心配を感じながらも、その悲しみと向き合うためにジブラルタルに降り立ったMaisieはそこで暴行に襲われた写真家の死と遭遇するのである。失意の底にありながらも自らの存在意義を確認するかのようにMaisieはその真実を解明しようと動き出すのである。
亡くなった写真家の捜査をするなかで、ジブラルタルの多くの人と出会う。そしてそんななか少しずつMaisieは過去と向き合って夫を失った自分の今後の行き方を模索する。それでも戦況は悪化する一方で、やがてゲルニカ爆撃が起きるのである。
全体的には、登場人物など、過去の作品と繋がったエピソードが多く、本書だけで楽しむのは難しい印象を受けた。ここまでシリーズのすべてお読んでいる僕にとっても、すべてを理解したとは言えないだろう。本シリーズが残りどれほどあるのかわからないが、Maisieにとって前向きな終わり方をしてほしいと思った。

「ネットがつながらなかったので仕方なく本を1000冊読んで考えた そしたら意外と役だった」堀江貴文

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
2年半の刑期のなかで大量の本を読み、そのなかで良いと思ったものを勧めている。
正直このような本だとは思っていないで手にとったのだが、新たにたくさんの読みたい本に出会えた。それぞれの本を紹介する中で著者自身の考え方も書いているが、すでに堀江貴文という人物を知っていて、その著作に何度か触れたことある人にとっては特に新しいものではないだろう。
著者が挙げるリストのなかには有名にもかかわらず、今まで僕が読んでいなかったものなどもあり、これを機会に読んでみたいと思った。

・「グラゼニ」森高夕次
・「JIN 仁」村上もとか
・「東京タワー」リリー・フランキー
・「五体不満足」乙武洋匡
・「A3」森達也
・「こんな僕でも社長になれた」家入一真
・「理系の子」ジュディ・ダットン
・「とんび」重松清

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