オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
2人の子供に恵まれた普通の幸せな結婚を楽しんでいたJohn Meronはある日、旧友からの久しぶりの電話を受けて以降、追われる身となる。真実が見えないまま家族を守るためにMeronは奔走する。
ジェットコースター小説というものがあるならまさにそれ。物語の大部分でMeronは逃走、銃撃戦、誘拐、拉致と言ったスリリングな内容で占められている。ハリウッド映画を見ているようなスピーディな展開で栄が向きな物語と言えるだろう。
逃走劇の渦中にいるMeronとその妻Kathyだけでなく、過去につらい出来事ゆえに犯罪捜査に対して違った思いを抱き続けるBoltの心の内なども印象的である。
そして次第に明らかになる大きな犯罪の影。結末に関してやや説明不足の部分もあるような気がするが、一気に読める内容である。また物語の舞台がイギリスという点も面白い。
カテゴリー: ★3つ
「天空の帝国インカ その謎に挑む」山本紀夫
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
文字を持たないゆえに謎に包まれたインカ帝国。その歴史とそこでの生活、文化などを何年もアンデスに通い続けた著者が語る。
インカ帝国の謎の一つに、なぜそんなにも高地に彼らは文明を築いたのか、というものがあり、その点に対して非常にわかりやすく説明している。
印象的だったのがその異形のものを崇拝する文化である。アンデスではじゃがいもやトウモロコシなどの収穫物だけに限らず、兎唇や斜視や双子など人間に対しても希少な存在を敬う文化が根付いているという。いじめや差別の起こる現代社会をみるとそれはむしろ非常に望ましい文化のようにさえ思える。
終盤では、その滅亡の謎に迫る。なぜこれだけ永きにわたって繁栄した文明が、スペイン人の侵攻によってあっさりと滅んでしまったのか。筆者はそこに事実と経験に基づいて推測を語っている。それは異形なものを崇拝する文化にかかわるものであった。
タイトルから期待した「謎」というよりも、しっかりとした調査によって得られた事実に近いことが説明されていて、あまり面白い、とお勧めできるものではないが、インカ帝国について純粋に理解を深めたい人にはお勧めできる内容である。
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「ビブリア古書堂の事件手帖 栞子さんと奇妙な客人たち」三上延
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
鎌倉の古本屋の店主である篠川栞子(しのかわしおりこ)は人見知りで口下手だが、古本をこよなく愛し、古本に関わることではすぐれた洞察力を発揮する。就職浪人中の五浦大輔(いつうらだいすけ)は本の鑑定のためにその古本屋を訪れる。
やはり本シリーズの魅力は篠川栞子(しのかわしおりこ)のその個性だろう。「千里眼シリーズ」で有名な著者、松岡圭祐も「万能鑑定士」シリーズで、非常に知識のある女性を描いているが、最近で言えば「鉄子」と言われる女性鉄道オタクが市民権を得たように、世の中が度を越して知識を持っている女性を求めているのかもしれない。
物語はそんな篠川栞子(しのかわしおりこ)と五浦大輔(いつうらだいすけ)の周辺で起きる、言ってしまえばそれほど深刻でない日常の問題を、栞子(しおりこ)が解いていく。その過程で語られる、古本に関わる小話や、夏目漱石、太宰治などの日本文学が非常に好奇心を掻き立ててくれる。誰もが聞いたことのある著者でありながら、なんとなく「古臭い」「退屈」といったイメージをぬぐえずに実際に読んだことのない人は多いのだろう。本作品は、そんな躊躇している人の背中を押してくれるだろう。実際僕も、太宰治を何冊か読んでみようか、と読み終わって思った。物語自体が、「ものすごい面白い」とかいうわけではないが、心地よく視野を広げてくれる作品である。
本作品では、鑑定、古本に深くかかわる内容である、古本屋といえば京極夏彦の「姑獲鳥の夏」、鑑定といえば松岡圭祐の「万能鑑定士シリーズ」が僕のなかで印象的だったので、まだ読んだことのない人は読み比べてみてはどうだろうか。
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「観察眼」遠藤保仁/今野泰幸
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
日本代表の遠藤保仁(えんどうやすひと)と今野泰幸(こんのやすゆき)が、過去のサッカー人生や、現在の日本代表、Jリーグなどを語る。
今野(こんの)の語る内容からは、とりたててとりえのなかった選手が日本代表になるまでの苦労や心構えが感じられる。人見知りゆえに、初めて代表に呼ばれたときは風をひいてしまった苦労など、組織の中で自らの長所を知り、それを活かしつつ監督の求める要求にこたえる。というむしろサッカーに限らず組織のなかでの心構えとして通用しそうな内容である。
また、後半の遠藤(えんどう)の内容からは、さすがに現日本代表のキープレイヤー的な視点を感じさせてくれる。
例えば、俺が考えているのは「ボールを見る時間を少なくすること」。サッカーというスポーツは、基本的にボールが選手の足下にある。下を向けば当然、上を見られない。下を向く時間を0.1秒でも短くすれば、その分だけ周囲の状況が見られる。
2人の語る内容からは、ザッケローニの求める理想の選手像とオシムの求める選手像の違いが見えてくる。また、間の章ではアジアカップ準々決勝のカタール戦について、試合経過ごとの2人の心のうちを語っている点が面白い。その試合を観戦していない人がどれほど楽しめる内容か、はなんとも言えないが、2人とも派手な選手ではないだけに、その心のうちは新鮮である。
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「30代にしておきたい17のこと」本田健
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
30代のうちにしておくべきこ著者が語る。
正直読み始める前は、価値観を押し付けるような不快な内容で、人生をやりたいこともなく過ごしているような人向けの内容、と馬鹿にしていたりもしたのだが、なかなか興味深く読むことができた。印象的だったのは結婚に関する記述。
うまくいかない結婚の方が、一人で生きるよりも不幸。ということらしい。まさに常々感じていながることである。また、多くの人が嫌いなことを仕事にしている世の中がおかしい、というのも印象的である。
著者は、「好きなことをやっていればやがてどこかにたどり着いてそれを仕事にできる。」と主張するのだ。それを「たまたま好きなことを仕事にできた人だから言える理想論」と片付けることもできるが、それは読者次第だろう。また、個人的には、人脈をつくるために、自ら主催のパーティを開催する。という考えに刺激を受けてしまった。そのほかにも一般的に人生において心がけておくべきことが書かれている。さらっと読んでおいても損のない内容である。
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「この胸に深々と突き刺さる矢を抜け」白石一文

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
第22回山本周五郎賞受賞作品。雑誌社の編集長であるカワバタは胃ガンと診断される。そんなカワバタが死を意識しながらも世の中を見つめながら生きていく。
最近の白石一文の作品はどれも死と隣り合わせの場所で生きている人の目線で世の中を語るものが多く、本作品もそんな物語である。胃ガンと診断され手術を受けた後も再発を恐れ、死を意識し続けるからこそ見えてくる世の中の形が描かれている。
それは、僕らがもはや疑問も持たずに受け入れている人生の形や、社会のシステムなどに対して、もう一度疑いの目を向けさせてくれる内容である。
結婚というのは人間関係じゃないのよ。純然たる経済行為。繁殖や相互扶助という目的はあるにしても、この社会は夫婦や家族を単位として動いたときに最も経済効率が高くなるように作られているから。
どうして誰も彼も金が入ると豪勢な家に住みたがるんだろう?家がでかくなればなるだけ家族はバラバラになるってのに
ネットカフェ難民や、貧困問題など現在の社会問題や、その一方で使い切れないようなお金を手にしている有名人にも触れ、世の中の矛盾を指摘していく。カワバタの目線で語られるから、何か無視できない重みを感じてしまう。
ページをめくる手を加速させるような面白さはないが、世の中について考えさせる内容に溢れている。似たような本ばかりが溢れるなかちょっと違う本を読んでみたい、という方は、一度読んでみるべき本かもしれない。
【楽天ブックス】「この胸に深々と突き刺さる矢を抜け(上)」、「この胸に深々と突き刺さる矢を抜け(下)」
「廃墟に乞う」佐々木譲
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
第142回直木賞受賞作品。
過去の事件によって精神病を患い休職中の刑事、仙道孝司(せんどうたかし)はその有り余る時間ゆえに知り合いから依頼される未解決の事件や、警察が動けない事件の捜査の依頼を受ける。
他の佐々木譲の作品同様、本作品も北海道を舞台とした警察物語。過去の強烈なトラウマゆえにその回復を待つ、という設定ながらもその過去の事件についてはあまり触れられないままいくつかの物語が展開する。いずれも派手な事件ではない点や、余計な説明や描写が少なく展開の速さは非常に佐々木譲らしい。
直木賞というと、どちらかというと多くの心を掴みやすい物語という印象があるのだが、本作品はどちらかというと地味で玄人好みなのではないだろうか。
【楽天ブックス】「廃墟に乞う」
「もう誘拐なんてしない」東川篤哉
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
大学生の樽井翔太郎(たるいしょうたろう)はバイトの途中で1人の女子高生と知り合う。病気の妹を救う為にお金が必要な彼女は、幸か不幸かヤクザの組長の娘。2人は狂言誘拐を決意する。 「謎解きはディナーのあとで」の本屋大賞で一気に有名になった著者。本作品はそれ以前の作品となるが、その個性的なテンポは本作品にもしっかり存在している。
ツッコミを前提とした台詞の数々。非現実な設定のオンパレード。何かを学ぶ為に読む物語では決してないが、こういう空気に触れたくなるときは誰にでもあるものだろう。
さて、そんななかで本作品の個性を挙げるとするなら、物語が下関市の関門橋付近で展開される点だろう。僕自身行ったことも通りすぎたこともない場所なので想像するしかないのだが、東京という日本の中心(この表現にもやや抵抗があるが)から遠く離れた場所に生活の基点を置く人々の都会への憧れや嫉妬とともに、巌流島、壇ノ浦、 赤間神宮など、その場所の名所が物語に絡めてある。
特にお勧めするような作品でもないが、決して外れでもない。こんな空気が楽しみたい気分のときに気楽に楽しむべき本である。
【楽天ブックス】「もう誘拐なんてしない」
「サヴァイヴ」近藤史恵
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ロードレースに賭けて生きている人たちを描く。「サクリファイス」「エデン」に繋がる物語。
「エデン」の続編だと思って手に取ったのだが、実際には、前2作品の前後に時間的に位置する短編集となっている。謙虚なロードレーサー、白石誓(しらいしちかう)を主役に据えた物語はもちろん、「サクリファイス」で誓(ちかう)とともに若手のホープとして活躍した伊庭(いば)を中心とした物語や、すでにピークをすぎて引退を感じ始めながらもチームに貢献することを選んでロードレースにかかわり続ける赤城(あかぎ)の物語、などいずれもロードレースというものを違った視点から僕らに伝えてくれる。
今回も、ロードレースという素材を通して、そこに人生をかける人たちの、嫉妬、葛藤、駆け引き、信頼など、いろんな感情がリアルに伝わってきて、時にはロードレースという言葉の持つさわやかなイメージとかけ離れた様子さえ見えてくる。
シリーズを通して読んでいる人には石尾(いしお)を描いた物語が新鮮に映るのではないだろうか、「サクリファイス」で強烈な印象を残しながらも、その人柄はあまり描かれなかった石尾(いしお)。本作品では彼が期待されてチームに入り徐々に頭角を現す様子が描かれている。
近藤史恵の描くこのロードレースシリーズはよくあるスポーツ物語と違って、栄光をつかんだ勝者でもなく、すでに諦めた敗者でもなく、その間に位置するさまざまな種類の人の人生観を見せてくれるのが魅力なのだろう。スポーツ界では「実力の世界」という言葉が飛び交うが、それでも上を目指すためにはそこにある人間関係にうまく対処して生きていく必要がある。そんな部分を描いたスポーツとしては汚い一面が逆に説得力を持って見えてくるのが、このシリーズの魅力なのだろう。
【楽天ブックス】「サヴァイヴ」
「ガール・ミーツ・ガール」誉田哲也
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
デビュー間近のミュージシャン柏木夏美(かしわぎなつみ)だが、芸能界は思い通りにいかないことばかり。それでもマネージャーの宮原祐二(みやはらゆうじ)など、仲間とともに音楽の世界で自らを表現しようとする。
前作「疾風ガール」の続編である。前作を読んだのがもう3年も前なので正直どんな内容だったのかあまり覚えていないのだが、夏美の持つエネルギッシュなキャラゆえに爽快な物語でありながらも、要所要所に心をえぐるような表現がちりばめられていたと記憶している。
本作も前作同様、夏美(なつみ)のポジティブな性格が物語を支配する爽快な内容。急遽バンドを組むこととなったお嬢様タレントと次第に打ち解けていく様子や、頑固なピアニストをメンバーに誘いこむ様子など、少しずつ夏美(なつみ)が成長していく様が描かれている。
また、疾走していた父親との再会も面白い。「幸せ」は他人が評価するものではなく自分自身で感じるものだというメッセージが込められているようだ。
「上を向いて歩けばなんとかなる」的で現実的とはとても思えないが、元気をもらえる内容と言えるだろう。
【楽天ブックス】「ガール・ミーツ・ガール」
「Dog On It 」Spencer Quinn
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
探偵のBernie Littleは行方不明になった少女Madisonを愛犬のChetと一緒に探すことになる。
本作品は徹底して、犬のChet目線で進む。彼のコミカルな語り口調が本作品の最大の魅力だろう。言ってしまえば、物語自体は、事件に巻き込まれた行方不明の少女を探すというありきたりな展開だが、Chetの目線ゆえに非常に面白く味付けされている気がする。
犬ゆえに匂いに非常に敏感で、一方で色の判別に自信がない。そして、主人のBernieがいないと、カギがかかってなくてもノブを回すことさえできないゆえに部屋から出ることもできない。重要なことをうったえようと吠えはするけれども食べ物をもらうとすっかり何をうったえようとしていたかすっかり忘れてしまう。など、そんな犬ならではの言動が非常に面白く描かれている。
展開として興味深いのが、Chetだけは早々に犯人の隠れ家に連れて行かれて、場所も犯人も知っているにも関わらずそれを人間のBernieに伝えることのできない、という点だろう。あまり海外作品でこのようなノリのものを読んだことがないので新鮮だった。シリーズ作品らしいので続きもぜひ読んだみたい。
「For You」五十嵐貴久
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
叔母の冬子(ふゆこ)が突然急死し、その遺品を整理することとなった朝美(あさみ)は、冬子(ふゆこ)の高校時代の日記を見つける。そこには当時の冬子(ふゆこ)の青春が描かれていた。
映画雑誌の編集者という忙しい日々を送っている朝美(あさみ)のその多忙な仕事の様子が描かれるなかで、ときどき思い出したように朝美(あさみ)は冬子(ふゆこ)の遺した日記を開いて読み進める。
現代の朝美(あさみ)の様子と、数十年前の冬子(ふゆこ)の青春という、時間の差のある2つの物語が交互に進んでいく。ただのよくある高校生の恋愛に見えた冬子(ふゆこ)の日記は、やがてその時代の問題へと繋がっていく。また、現代の朝美(あさみ)は大物俳優のインタビューの準備に奮闘することとなる。
個人的には冬子(ふゆこ)の日記の中で描かれている一時代前の高校生の恋愛模様にはどこか懐かしい空気を感じる。携帯電話もパソコンもない時代。多くの場合恋愛の窓口は家の固定電話だったのだろう。
冬子(ふゆこ)はなぜ魅力的な女性でありながら生涯独身で過ごしたのか、そんな謎が遺された日記から少しずつ明らかになっていく。
やや最後は物語的に作られ過ぎた感を感じなくもない。ひょっとしたら妙な捻りをいれずに単純な高校生の恋愛物語にしたほうが素敵な作品に仕上がったかもしれない、と感じた。
【楽天ブックス】「For You」
「マドンナ・ヴェルデ」海堂尊
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
主婦として生活していたみどりは、一人娘で産婦人科医の曾根崎理恵(そねざきりえ)から、理恵(りえ)の娘を代理母として産んで欲しい、と頼まれる。みどりは、理恵自身が出産できないのは、そういう体に産んだ自分のせい、と引き受けることにする。
本作品も海堂尊(かいどうたける)が描く世界と繋がっている。時間と場所は同じく産婦人科医を描いた「ジーンワルツ」と重なり、前でも後ろでもなく、その時間を理恵(りえ)の母、みどりの目線で見つめているようだ。
本作品では、代理母を引き受けた母、みどりと、自身が子供を産めないがゆえに母親に代理母を依頼した理恵(りえ)とのやりとりが繰り返される。
子供を産むという行為を、自身が産婦人科医ゆえなのか、先端医療として淡々とすすめる理恵(りえ)と、理恵(りえ)のそんなふるまいに、母親としての何かがかけているのではないか、と不安がるみどり。そんな2人の考え方の違いがテーマと言えるだろう。
そして、そんな母娘の間で交わされる会話のいくつかは今の医療の問題をあらわしている。例えば子供の母親は卵子提供者なのか、それとも分娩者なのか、という問題もその一つであり、本物語では、母、みどりが娘の振る舞いに不安をもって、自らが母親であることを主張しようとすることからそんな時代遅れの法律に踏み込んでいく。
物語として非常に面白いとかいうものではないが、いろいろ考えさせてくれる内容である。
【楽天ブックス】「マドンナ・ヴェルデ」
「The Waste Lands」Stephen King
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
Dark Towerシリーズの第3弾である。前作では元の世界は荒野でも舞台はそこに現れたドアが続いているNewYorkだった。しかし、今回いよいよ、Roland、Eddie、Susannahは荒野、本作品ではやがてMid-Worldと呼ばれるようになる世界の旅が中心となる。
序盤は第一弾「Gunslinger」で登場した少年、JakeをNewYorkからMid-Worldへつれてくることが山場となる。そして4人となった彼らは引き続き、DarkTowerを目指す。
さて、そんななか本作品はなぞなぞが鍵となる。引用される英語のなぞなぞはどれも興味深いものばかり。例えばこんななぞなぞである。。
これに対する答えはこうなのだそうだ。
日本のなぞなぞとは少し異なり、答え方が韻を踏む、というのがあるようだ。本作品中で4人はなぞなぞについて繰り返し語り、そんななぞなぞが4人の冒険を大きく左右することになる。
やや終わり方が中途半端な気がするが、今までおぼろげだった世界の全貌が少しずつ明らかになってくる、シリーズの展開を一気に加速させてくれる一冊である。
「万能鑑定士Qの事件簿IV」松岡圭祐」
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
都内で放火が相次いだ。狙われた家には必ずひとつの古い邦画映画ポスターがあった。
鑑定士凛田莉子(りんだりこ)シリーズの第4弾である。今回もシリーズではおなじみの流れとなりつつあるが、冴えない記者小笠原(おがさわら)と冴えない刑事葉山(はやま)とともに物語は展開するが、そこに臨床心理士として嵯峨敏也(さがとしや)が加わる。「千里眼」「催眠」シリーズから松岡圭祐作品を愛読している人にとっては注目すべき点だろう。
さて、物語は各地に眠っていた古い邦画ポスターをめぐって展開する。犯人の狙いはなんなのか、何故ポスターを燃やす必要があるのか、と。
力を抜いて楽しめる一冊。例によって雑学好きにもお勧めである。
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「万能鑑定士Qの事件簿III」松岡圭祐
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
音響効果を用いて詐欺を働いていたのはかつてのミリオンセラーのヒットを多く飛ばした音楽プロデューサーだった。凛田莉子(りんだりこ)はその企みに挑む。
万能鑑定士シリーズの第3弾。前の物語はIとIIにわたって繋がっていたが、本作品はIIIだけで完結している。詐欺を働く音楽プロデューサーはTK氏を想起させる。おそらく述べられていることのいくつかは現実のTK氏のことと重なるのだろう。
詐欺を防ごうと奮闘する物語でありながら、どこか力を抜いて読める作品。なんだかすこしずつ凛田莉子(りんだりこ)のやっていることは千里眼シリーズの岬美由紀(みさきみゆき)のやっていることと変わらなくなったように感じる。
まだ読んでいない続編が次々と出ているようだが、もう少し深みのある物語に発展することを期待している。
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「プロフェッショナルを演じる仕事術」若林計志
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
さらに向上するために、プロフェッショナルの経験談や方法を聞いて実践しようと思っても、多くの人が数日続けるだけですぐにやめてしまう。そもそもそのモチベーションはどうやって維持すればいいのか。そんな新しい自分になるための心構えをまとめている。
また、その際人が陥りやすい罠を、人間の心理的傾向を元にわかりやすく説明している。いずれも誰にとっても思い当たるふしのあることばかりなのではないだろうか。
また、中盤で取り上げられている3つのコンプレックスの反応「同一視」「投影」「反動形成」は呼び名はときどき耳にするが意味をしっかり知ったのは初めてで、この内容を知っていれば自分がもし陥りそうになった場合に修正が効くのではないだろうか。
その他にも「アンラーン」の重要性や「ハロー効果」など興味深い内容を飽きさせないような構成でつづっている。
個人的に僕自身は勉強を始めれば永遠とやってられるぐらいでむしろ本書のターゲットとなる読者層とは異なるのかもしれないが、それでも楽しむことができた。本書の内容は誰にでも「本当に今のままでいいのか?」とか「書かれているような負の罠に嵌っていないか?」と考えさせてくれるだろう。
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「Nineteen Minutes」Jodi Picoult
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
いじめられっ子だったPeterが校内で起こした銃乱射事件。両親や友人、幼馴染みなど癒えない心を抱えたまま事件は法廷へと持ち込まれる。
日本で銃乱射事件と言うととても現実味がわかないが、銃社会のアメリカでは過去のいくつもの悲しい事件の記憶が染みついている。マイケル・ムーア監督で映画になったコロラド州コロンバイン高校の事件など特に有名で、本書のなかでも触れられている。
事件が起きて町じゅう悲しみにくれ法廷にいくまでの、何人かの事件に関わる人の目線で物語は進んでいく。そのうちの一人がPeterの母親で助産婦のLacyである。誰よりもすぐれた助産婦であるという自信をもちながらも事件を境に、「殺人者を育てた手で赤子を世に送り出していいのか」と悩み始める。
また裁判官であり、娘のJosieとともに生活するAlexの悩みも興味深い。小さな町ゆえに会う人会う人が彼女を裁判官と知っていて、裁判官として接するゆえに、法廷を離れても、知らず知らずのうちに常に「裁判官」を演じるようになる。
物語のカギとなるのが、Peterの幼馴染みで、恋人のMattが銃乱射の犠牲者となったAlexの娘Josieである。事件の真っただ中にいながらも、事件で起こったことを何一つ覚えていないJosie。彼女はMattら校内の運動神経のいい中心グループとともに行動をしながらも、自分がMattの恋人でなかったらPeterと同じように空っぽな人間であることを知っている。だからこそ、Peterがいじめられているのを見て、心を痛めながらも自らも苛められることを恐れて止められないのだ。
さて、事件はJosieの空白の記憶や、現場から回収された弾丸のみつからない拳銃がカギとなる。著者Jodi Picoultは本作品で2作目だが、過剰なまでの回想シーンや、法廷をクライマックスにする点など、前回読んだ「My sister’s Keeper」と非常に似た印象を受けた。誰もが悲しみに打ちひしがれるだろう思えるほど強烈な事件を題材に選ぶあたりも2度続くと「また・・?」的な印象を持ってしまった。できればもう少し誰にでも起こりうる日常を扱った物語を描いてほしいものだ。
「デザインセンスを身につける」ウジトモコ
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
デザインの重要性と、優れたデザインをするための考え方を著者の経験から示している。
どちらかというとデザイナー向けではなく、デザインの重要性を軽視しがちな人向けである。どこかで聞いたような話も多い中、個人的に印象的だったのは冒頭のアイコンデザインの話である。
アイコンデザインというと、つい数年前までデザイナーの仕事でしかなかったのだが、ここ数年は、Twitter、Facebookとオンラインでのコミュニケーションが一般の人にまで普及してきたため、すべての人が「アイコンデザイン」を考えなければいけない時代になっているという。しかし、多くの人がただ漠然と自分の写真をアイコンとして設定したり、顔を出すのを嫌がって、ペットなどの動物をアイコンに設定するケースも多い。
ところがアイコンによってその人が相手に与える印象は大きく異なってしまう。たとえば、同じ日常的な会話、「おやすみ」でも、その隣に表示されるアイコンの顔がアップなら押し付けがましい印象を受けるだろうし、小さく顔の映ったアイコンならまた違った印象を受けるだろう。こうやって考えると、オンラインだけのコミュニケーションが日常的になっている昨今、決してアイコンデザインを疎かにしてはいけない、と著者は言うのだ。多くの読者は読み終わったあとにアイコンを変えたくなるのではないだろうか。
また、AppleやGoogle、スターバックスなど誰もが知っている企業を例に挙げながらデザインの重要性を説いていく、冒頭でも書いたとおり、どちらかというとデザインへの関心の低い人向けであるが、そういう人は「デザインセンスを身につける」という本はなかなか手に取らないと思うが実際どうなんだろう。
【楽天ブックス】「デザインセンスを身につける」
「図解でわかる!ディズニー感動のサービス」小松田勝
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
オープン当時オリエンタルランドに入社し、ディズニーランドのあらゆる部門の発展を見てきた著者が、30年経っても衰えを知らないそのホスピタリティについて語る。
確かに東京ディズニーランドといえば日本ではもはや一人勝ち状態。ディズニーランドのなかでも「東京ディズニーランド」は優れた評価を得ているという。
本書で描かれるディズニーランドの理念やその理由はいずれも納得のいくもので興味深く読むことができた。たとえば、「「いらっしゃいませ」はNG。」いまや「いらっしゃいませ」と言わないサービス業の方が珍しいのではないかと思うほど浸透しているこの言葉。なぜそれを言ってはいけないのか…それでも説明を聞くと納得がいく。
その他にもほかの業種や人間関係にいかせそうなエピソードが満載。今悩んでいる何かを解決ヒントになるかもしれない。
【楽天ブックス】「図解でわかる!ディズニー感動のサービス」