「コロナ漂流録 2022の銃弾の行方」海堂尊

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
コロナの感染者数が増える中、前首相が手製の銃で狙撃される。コロナ禍の東城医大を中心に政治や社会の様子を描く。

コロナ三部作の三作品目である。前二作品と同様に、実際の出来事にかなり忠実に描かれているので、前首相の狙撃などは描かれているものの、読者の想像を超えるような物語の大きな動きは少ない。一方で中抜きのために税金を大量に投入してつくったコロナアプリや、ワクチンの補助金を受け取りつつワクチン開発を断念した企業の問題など、今まで御用メディアが報じない政治の深刻な問題に目を向けてくれる。

随意契約で四億円、問題が発覚した後の再委託が三億五千円、総額七億五千万円の税金を投入して開発されたアプリは、不具合が次々に噴出して機能不全になっていた。
しかも支払いは中抜きに次ぐ中抜きで、実際に開発した下請け会社に渡ったのはたったの四百万円だったというのだから、呆れて物が言えない。

上場以来二十年、株式市場から資金調達を続けながらも一度も黒字化していない製薬会社で、ワクチン開発実績ゼロのベンチャーに百億円以上も補助金をだすなんて決めやがったのは、一体どこのどいつだよ

結果として国への大きな失望感を感じるとともに、一人の国民として行動をしなければならないという危機意識を再認識させられた。そしてまた、世の中の動向を知るにはテレビだけでは不十分どころかむしろ危険で、多方面の視点から描かれた感想や物語に触れるのが一番だと感じた。

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「Ank:a mirroring ape」佐藤究

★★★★☆ 4/5
京都で暴動が発生したは霊長類研究に起因するものだった。霊長類研究者の鈴木望(すずきのぞむ)が暴動を止めるために奔走する様子を描く。

物語は京都で発生した暴動と、そこに至るまでの京都の霊長類研究所の周辺で起こった出来事や関係者の間でのやりとりなどを交互に行き来しながら展開していく。

鍵となるのが類人猿だけが身につけた自己鏡像認識という能力である。鈴木望(すずきのぞむ)は自己鏡像認識が人類の言葉の発展の鍵と捉え、霊長類研究に情熱を注ぐのである。そんななか研究のためにアフリカから傷ついたチンパンジーを輸送したことから不測の事態へとつながっていく。

やがて不幸な出来事の連鎖により人間同士の暴動へとつながっていく。集団感染を世間が警戒する一方、現場近くにいた鈴木望(すずきのぞむ)は集団感染ではないとしながらも証拠なしに動かない国家のために自ら原因を特定しようとするのである。

正直物語のスピード感はそれほどではないが、どこまでが本書に限ったフィクションなのかがわからなくなるほど霊長類や人類の進化に関する科学的な視点を多くもたらしてくれる。そもそもApeとMonkeyの違いを知らなかった。Monkeyは猿だが、Apeの日本語訳は類人猿なのであり、映画「猿の惑星」は翻訳の都合から猿になっただけで、英語タイトルはThe Planet of Apesで、猿ではなく類人猿とするのが正しいのだという。

久しぶりの理系小説である。「パラサイト・イヴ」のような物語と同時に科学の世界に引き込まれるような楽しさを味わせてもらった。理系読者は存分に楽しめるのではないだろうか。

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「球界消滅」本城雅人

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
日本のプロ野球が4球団に縮小され、アメリカのメジャーリーグとの統一リーグとなることとなった。プロ野球の関係者たちはプロ野球の未来と自分の立場を憂いながらも大きな変化に適応しようとする。

選手、ファン、監督などさまざまなプロ野球関係者の視点から、日本のプロ野球とメジャーリーグ(以下MLB)の統合の動きを追っていく。もっとも興味深いのは大野俊太郎(おおのしゅんたろう)という20代の青年だろう。彼はファンタジーベースボールという実際のプロ野球のデータをもとに競うゲームで優勝者となったことから日本の球団の副GMという仕事にたどり着いたのである。「マネーボール」のような緻密な分析を日本のプロ野球に取り込んだことでチームの成績を上げたにも関わらず、プロ野球とMLB統合という大きな波に飲まれていくのである。

日本のプロ野球とMLBとの統合という考えは、サッカー界が国をまたいだ大会によって大きな成功を収めていることを考えると、現在の閉鎖的なプロ野球でありかつ人口減少が止まらない日本における解決策としては興味深い。しかし、細かいルールの違い、チームが抱える選手数の違い、移動距離の問題、など、実際に実現しようとなると克服しなければならないさまざまな障害があるのである。本書はそれぞれの登場人物の物語とともにさまざまな問題を取り上げていく。

物語として面白いかどうかは別として、プロ野球にかぎらずスポーツビジネスに興味がある人は楽しめるだろう。個人的に興味を持ったのが、アメリカで最も人気のあるスポーツアメリカンフットボールのビジネスモデルである。年間1チーム20試合に満たない試合数でこれほど成功するスポーツの秘訣は一体なんなのか、今年のシーズンは興味を持って見てみたいと思った。

面白く描いたスポーツのビジネス書として捉えるとちょうどいいかもしれない。

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「The Starless Sea」Erin Morgenstern

The Starless Sea

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
大学の図書館で不思議な本と出会ったZacharyは、その本のなかに自分自身が描かれていることを知り、その本の秘密に迫っていくこととなる。

前半は大学生のZacharyが図書館でSweet Sorrowsという、蔵書記録のない本と出会う。Zacharyは子供の頃家の近所にドアの絵が描かれていたにも関わらず、そのドアを開けないとい選択をしたことが強く記憶に残っており、その出来事がSweet Sorrowsに描かれており、またその主人公の親もZacharyの親と同様に占い師であることからSweet Sorrowsが描かれた理由を探し始めるのである。

やがてZacharyはわずかな手がかりからStarless Seaの世界へと入り込んでいくこととなる。

前半の壁に描かれたドアの描写などは久しぶりに出会った面白いファンタジーの入り口のようで期待感高まったが、中盤以降は登場人物たちが物語のなかを彷徨っている様子をひたすら描いているだけなのでかなり焦れて退屈だった。自分の好みには合わなかったが、このような物語が好きな人もきっといるだろう。日々忙しい人よりも、ゆっくりとした時間のなかで過ごしている人向きの物語である。

英語新表現
she took it upon oneself to 自ら進んで~することを課す
bail on A Aとの約束をすっぽかす
waxing moon 上弦の月
waning moon 下弦の月
lunar new year 旧正月
collect oneself 気を落ち着ける
spot on 正しい、どんぴしゃりである

「Aではない君と」薬丸岳

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
第37回(2016年)吉川英治文学新人賞受賞作品。建設会社で働く吉永圭一(よしながけいいち)は14歳の息子の翼(つばさ)が、同級生の殺害の容疑で逮捕されたことを知る。

物語は離婚して、息子が大きくなるとともに少しずつ疎遠になっていった息子が、同級生の殺害の容疑で逮捕されたことで、息子との絆を取り戻そうとする父親吉永圭一(よしながけいいち)の様子を中心に描く。

息子は本当に同級生を殺害したのか、そこにはどんな理由があったのか、離婚して以来、家族と疎遠になっていたからこそ息子を心の底から信じきれない吉永(よしなが)の言動が痛々しい。

また、中盤以降翼(つばさ)は少しずつ真実を口にしはじめる。加害者だけでなく、殺害された少年の父親すら真実を封印したくなる出来事が明らかになっていく。

心を殺すのは許されるのにどうしてからだを殺しちゃいけないの?

少年犯罪を扱った作品はこれまでにも何度か出会ったが、本書はより親として立場に焦点をあてている。一人の親として改めて、子供たちの窮地にどのように行動すべきか、正解のない問いを突きつけられた。

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「ELEVATE 自分を高める4つの力の磨き方」ロバート・クレイザー

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
自分を高める4つの力について順を追って説明している。

自分を高める4つの力を精神のキャパシティ、知性のキャパシティ、身体のキャパシティ、感情のキャパシティとしてそれぞれを章ごとに説明している。身体のキャパシティ以外の3つが若干区別しずらいが、日本語では目的、知識、健康、心構え、という言葉で語られることが多い。

印象的だったのは感情のキャパシティの章で触れられていた、人の心に変化を起こすとする次の公式である。

心のつながり+挑戦=変化

改めて、人や世の中を良い方向に変化させるためには、適度なつながりを構築する必要があることを感じた。

それぞれの章の冒頭に格言が書かれているのが興味深い。印象深かったものを挙げると次の2つである。

心の姿勢が正しい人が目標を達成するのを阻止することができる者は存在しないし、
心の姿勢が間違っている人を助けられる者もこの世には存在しない
自分が若いときにいてほしかった人になれ

ページ数も少ないうえに余白も多く、内容も引用や本やWebサイトの紹介が多く、値段に見合うほど中身の濃い本とは言えない。1時間程度で読み終わってしまうような内容なので、学べる点をなにがなんでも見つけようとか、紹介されている本やサイトをすべて見てみよう、など強く意識しない限り意味のある読書にはならないだろう。

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「Artemis」Andy Weir

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
人類が月面の都市で生活をするなか、配達をして生計を立てる女性Jazzを描く。

序盤は月面での生活を詳細に描いていく。重力が少ないゆえに起きる出来事や、都市の機能が未発達ゆえに起きる治安上の問題など、しっかり科学的に説明していく点が著者Andy Weirらしい。

やがて、月面生活の中で少しでも理想の生活を手に入れたいとお金を稼ぐことに勤しむJazzに、危険な仕事を持ちかけられたことから物語は大きく動いていく。そしてやがれそれは月面都市全体の未来を守る使命へと発展していく。

"Artemis" by Andy Weir

Jazzの父親が製錬工の職人であり、Jazz自身も十代の頃には一緒に仕事をしたことがあるだけに、そんな親子の仲違いや絆も描かれる点も面白い。

普通にいろいろ興味深く物語としても楽しめるが、やはり前作「Project Hail Mary」が想像を超えた面白さだったせいで、期待値が上がってしまっているのを感じる。残念ながらそれを超えるほどのものではない。

英語新表現
tourist trap 観光客向けの罠
foot trafic 歩行者交通量
make a stand 断固として抵抗す
hit on people 人々を口説く
in red tape お役所仕事、形式的で非効率な仕事
five by five 音声の大きさと明確さが最高レベル
conk out 意識を失う
take a sniff かぎまわる
cardiac arrest 心停止

「行動経済学が最強の学問である」相良奈美香

オススメ度 ★★★★☆ 3/5
アメリカで行動経済学を専門とする著者が体系的に行動経済学を説明する。

最近の日本の書籍の傾向なのか、内容をわかりやすくするだけではなく、間引いているように見える。本書もその一つで、本書の中でも触れられていて同じく行動経済学を扱った「ファスト&スロー」や「予想通りに不合理」などと比較すると内容が薄いように感じる。

本書で新鮮だったのは、行動経済学という新しい分野を体系化しようと試みている点である。本書では認知のクセ、状況、感情という3つのカテゴリに分けて説明しようとしている。

認知のクセ
・計画の誤謬
・真理の錯誤効果
・快楽適応
・自制バイアス
・システム1vsシステム2
・ホットハンド効果
・身体的認知
・確証バイアス
・概念メタファー
・メンタル・アカウンティング
・解釈レベル理論
・非流暢性
状況
・フレーミング効果
・おとり効果
・ナッジ理論
・アンカリング効果
・プライミング効果
・系列位置効果
・感情移入ギャップ
・単純存在効果
・パワー・オブ・ビコーズ
・情報オーバーロード
感情
・アフェクト
・ポジティブ・アフェクト
・ネガティブ・アフェクト
・心理的コントロール
・拡張-形成理論
・不確実性理論
・心理的所有感
・境界効果
・目標勾配効果
・キャッシュレス・エフェクト

行動経済学関連の書籍を数冊程度読んだことがある読者にとっては、いずれも聞いたことばかりある事柄だろう。しかし、それぞれの事象を命名している点がありがたい。組織のなかに浸透させるためには、いちいち事象を説明するのではなく、簡潔な言葉を共通言語として繰り返し使うに越したことはない。自然と言葉が出てくるようにしたいと思った。

全体的には上に書いたように、体系化と言語化に努めている点のみに新しさを感じた。

昨今「・・が9割」や「・・が最強の・・である」など似たようなタイトルが目立っている。売れるための手法なのかもしれないが、売ることだけを目的とした大層なタイトルは、内容が伴わなければ失望感の方が大きく、結果的に出版社や著者の信用を傷つけることにしかならない。長期的には出版側にとっても読者側にとってもマイナスであることに気づいてほしい。

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「Las herederas de la Singer」Ana Lena Rivera

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
1930年代から2010年代まで、フランコ政権からコロナ禍までのスペインの女性の生き方をAurora, Áqueda, Ana, Albaという四世代の女性を中心に描く。

四世代の女性の視点を何度も行き来しながら物語は進む。1940年代は石炭産業が盛んで、表向きは男性しか炭鉱に入ることを許されないというなか、Auroraは購入したミシンで、徐々に服飾の道で生計を立てていく。

Las herederas de la Singer

娘のÁquedaはAuroraの立ち上げた服飾の業務をさらに発展させていく。1990年代のその娘のAnaは、大企業の息子と結婚したことから、裕福な生活を送ることができたが、姑との関係や拒食症など、貧困とは別の悩みに苦しむこととなる。

21世紀を生きるさらにその娘のAlbaは同性愛者であることで生きにくさを感じながらも、女性や社会のためにできることを模索し続ける。

少しずつ改善してはいるものの、いずれの世代も男性中心の世の中で生きづらさを感じる女性の人生が描かれている。そんななか、Auroraの時代は必死で自分が生き抜くことを考えていたにもかかわらず、Albaの時代は他者への貢献に人生の目的を置いている点が興味深い。

スペイン人にとっては常識となっている大きな出来事が物語中に取り入れられているようだ。日本人にとっての、東日本大震災や地下鉄サリン事件などのようなもので、スペイン人にとってはきっと過去を当時を思い出しながら懐かしさと共に物語を楽しめるのだろう。映画フォレスト・ガンプがアメリカのさまざまな歴史的出来事を取り入れているにもかかわらず日本人には少し分かりにくいように、ひとつひとつの出来事に共感するのは難しいだろう。それでもスペインの歴史に触れたいと思って本書に触れる人にはちょうどいいかもしれない。

正直、物語の展開が4人の女性の視点を行き来するだけでなく、時間としても2000年代に移ったり1930年代に戻ったりするので、物語についていくのが正直つらかった。現代と過去の2つ程度の時間軸までにして、基本的にはそれぞれの時間軸の中で過去から未来へ進んでくれたらずっと読みやすかっただろう。

スペイン語新表現
para sus adentros 心の中で
como reza el dicho よく言われるように、諺にもあるように
antecedente penal 犯罪歴
tener cabida en に居場所を作る、におさまる
por fuera 外見上は

「八本目の槍」今村翔吾

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
16世紀後半、徳川家康が勢力を増すなか、賤ヶ岳の七本槍とよばれた豊臣家に仕える七人の武将が過去の思い出や現在の思いを語る。

賤ヶ岳の七本槍とよばれた武将たちは、羽柴秀吉が少しずつ大名として地位を向上させる過程で家臣を増やす必要があり、そこに集ってきた似た境遇の若者たちである。賤ヶ岳の戦いで7人は一気に名を広めたが、それ以降は順当に地位を上げていくものもいれば、逆に期待された活躍をできなかったものもいる。そんな少しずつ異なる道をいく7人が、豊臣家と7人の仲間であった佐吉(さきち)つまりのちの石田三成について語る、という形で物語が進む。

「八本目の槍」今村翔吾

7人はいずれも、立派な人間になることを目指して豊臣家に仕えることを選んだが、学問に秀でているものもいれば武芸に自信を持つものもいる。いずれの人生にも、佐吉(さきち)の存在が多少なりとも影響を与えており、それぞれの語る言葉からは佐吉(さきち)が、どれほど仲間を想い、どれほど先の未来を見据えていたかが伝わってくる。

最終的に佐吉(さきち)視点で物語が語られることはないが、物語全体から佐吉(さきち)、つまり石田三成に対する憧憬の念が伝わってくる。

僕ら現代の人間が遠い過去の物語に触れる時、どうしても当時の人々を若干下に見がちである。それは現代では当然のこととして知っている技術や自然現象を、当時の人々は知らなかった、など知識や情報不足によるところが大きい。しかし、本書を読むと、いつの時代にも人は、家族や未来を憂い、自分の技術や地位を周囲の人と比べ悩んだりしながら生きているのだと感じた。

今年読んだ中で最高の作品であるし、これまで読んだ江戸時代以前を舞台にした物語の中でももっとも深みを感じた作品。

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「オルタネート」加藤シゲアキ

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
第41回(2021年)吉川英治文学新人賞受賞作品。高校生向けSNSのオルタネートが生徒の中で広まる中、料理に情熱を注ぐ容(いるる)、高校を辞めたばかりの尚志(なおし)、オルタネートで運命の人を見つけようとする凪津(なづ)の3人を描く。

物語は都内にある円明学園という高校を中心にすすむ。料理に情熱を注ぐ容(いるる)は昨年出場した高校生向けの料理番組に今年も出場して好成績を上げるために調理部の部長として活動する。凪津(なづ)は高校生の間で普及しているSNSオルタネートを利用して運命の人を探そうとする。そして、関西で高校を辞めたばかりの尚志(なおし)は昔のバンド仲間を訪ねて円明学園を訪ねるのである。

それぞれが悩みを抱えながらも成長していく様子を描く学園青春小説である。新鮮なのはそれぞれの出会いや人間関係がオルタネートというSNSに大きく影響を受けているという点である。

僕自身はSNSの普及より前に学生時代を終えてしまったので、このようにSNSに大きく左右される学生時代の描写は新鮮である。現代の学生生活と自分の学生時代との違いを改めて考えてみるきっかけとなった。ただ、残念ながらそれ以上心に残るものはなかった。

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「Bringing Down the House: The Inside Story of Six M.I.T. Students Who Took Vegas for Millions」Ben Mezrich

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
MITで将来に悩む学生だったKevinはMITで長きにわたって存在してきたブラックジャックチームに加入することとなり、さまざまなカジノでお金を稼ぐ生活に入り浸っていく。

物語は進路に悩むMITの学生の20歳のKevinが、カードカウンティングチームに勧誘され、カジノで大金を稼ぐ様子が描かれている。

「Bringing Down the House: The Inside Story of Six M.I.T. Students Who Took Vegas for Millions

序盤は、そんなKevinがカードカウンティングの技術を学んで、カジノで仲間と協力して大金を稼ぐ様子が描かれている。

中盤以降は、少しずつカジノ側も対応してきて、次第にMITチームはカジノから出入り禁止や、脅迫を受けることとなる。そんななか、カジノで稼ぐことと自分の辿り着きたい人生とのギャップに苦しむKevinと、カードカウンティングで生きることにこだわる他のメンバーとの意識の差が大きくなっていく。

Was this where he belonged? Was this who he had become?
これが自分がいるべき場所か? これが自分がなりたかった人間か?

カードカウンティングというのは聞いたことがあったが、出たカードを記憶しておくことで、残りのカードを推測することかと思っていたが、実際にはもっと単純なものであることがわかった。

本作品では後半には「マネー・ボール」のBilly Beaneについても触れられているが、数字を重視して、一般的な人が陥りがちな先入観から解放され、ブラックジャックやプロ野球など特定の分野で成功することは、理系の人間には最高に楽しく爽快な瞬間だろうなと感じた。まだ数値的な分析が未開拓な分野を探してみたくなった。

英語新表現
trespass act 不法侵入行為
crash out 眠りにつく
hit the pool プールで泳ぐ、プールに入る
face cards トランプの絵札
break a sweat 汗をかく
raise a sweat 汗をかく
arbitrary point 任意の時点
failure point 限界点、機能停止点
grounded family 地に足の着いた家族、現実的な家族

「ちょっとピアノ 本気でピアノ 〜ブログでおなじみ、川上昌裕のレベルアップピアノ術〜」川上昌裕

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ピアノとの付き合い方をさまざまな視点から語る。

僕の場合は必ずしもピアノではなく電子ピアノやキーボードなのだが、ただただ音符を追って好きな曲を弾いているだけだと、いつまで経っても深みを感じられないと思い、新たな視点を得たく本書に辿り着いた。

本書は著者がブログに書いている内容をカテゴリごとにまとめて書籍化したものである。そのため体系的に順番に書かれているわけではなく、その場で思いついたことを羅列している感じではあるが、僕のように特定の目的もなくピアノの上達に関しての刺激や気づきを探している人間にとってはぴったりである。

「ちょっとピアノ 本気でピアノ 〜ブログでおなじみ、川上昌裕のレベルアップピアノ術〜」川上昌裕

結果的にいくつかの気づきが得られた、難しい曲をスムーズに弾くためには、指の筋肉をつけたり、指の感覚を研ぎ澄ます必要があり、そのためにハノンなどの練習にも力を入れるべきと感じた。また美しい音色を出すためには的確なペダリングをマスターすることも必要で、どんな練習があるのか知りたいと思った。

印象的だったのが著者がピアノ演奏のアルバイトの面接での出来事である。それなりにピアノの技術に自信を持っていた著者が、即興演奏ができないこと、同じ志願者のピアニストの即興演奏に驚いたことなどの体験を語っている。その出来事からはジャズピアノとクラシックピアノの考え方の違いの大きさが伝わってくる。今のところなんとなくピアノを練習しているが、上達するとどんなピアノを引きたいかを考えなければいけない時期が来るのだろう。

期待通りの刺激を与えてくれた。ピアノの練習や上達や進路で悩んでいる人にはちょうどいいのではないだろうか。

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「この夏の星を見る」辻村深月

★★★★☆ 4/5
コロナ禍で思い通りにいかない学生生活を送る日本各地の中高生たちが、星を見ることで繋がっていく。

茨城、東京、長崎県の五島列島の中高生たちの様子を描く。それぞれがコロナ禍の影響によって、部活動の大会などが自粛を余儀なくされる。期待していた学生生活とは程遠い現実に戸惑いながらも、星を見る活動へと導かれていく。やがてそんな動きは、同じ思いを抱く学生同士を結びつけることとなるのだ。

「この夏の星を見る」辻村深月

著者の久しぶりの学園ものである。また、著者辻村深月の作品によく見られる人間関係の暗い部分はあまり描かれず、珍しいほど爽やかな青春物語という印象である。新鮮なのはコロナ禍の学生たちの様子を描いている点である。東北大震災も震災から数年経って各物語に震災を扱った物語が増えたが、コロナ禍もまざまな物語の題材として描かれる時期なのだろう。

序盤はコロナ禍で思い通りにいかない学生生活が、終盤には、コロナ禍だからこそ開けた世界、としてプラスに描いている点が素敵である。社会人としてコロナ禍を経験していると、比較的問題なくリモートワークに移行したので、対面が基本の学生生活にコロナ禍が影響を与えたのかなかなか想像し難いが、そこに一つの視点を与えてくれる。また、舞台となる登場する高校の一つが五島列島の高校である点も面白い。沖縄ほど注目されない離島ではあるが、いつか行ってみたいと感じた。

物語の学生たちの情熱に感化されて、望遠鏡で星を見たくなった。人工衛星を作って打ち上げたくなった。いろんな刺激をもたらしてくれた。

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「WHYから始めよ!」サイモン・シネック

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
WHYを中心としてWHAT、HOWと外に向かう図をゴールデンサークルと呼び、WHYの重要性を語る。

TEDトークで、WHYの重要性を語る、有名な著者サイモン・シネックのプレゼンテーションを見たことがあったので、そのコンセプト自体は理解しているつもりでいたが、初めて動画を見てから数年経ち、改めてその世界に触れたいと思って書籍を手に取った。

WHYの重要性をさまざまな角度から例を交えて解説している。興味深かったのはのイノベーションの普及を示した図として有名な鐘形曲線で説明している章である。図の右側にいるレイト・レイトマジョリティ(後期多数派)やラガード(出遅れ)は値段、つまりWHATしか気にしないために、この層をターゲットにすると企業として低価格競争に巻き込まれてしまうのだ。つまり図の左側の層の、イノベーター(導入者)、アーリーアダプター(初期採用者)、アーリー・マジョリティ(初期多数派)や忠誠心を抱いてもらうことこそ成功への近道で、そのためにWHATではなくWHYを広めるべきだと語る。

いくつかの企業の例を交えて説明している。サウスウェスト航空、マイクロソフト、ウォルマート、アップル、どれも興味深い話ばかりである。面白いのはWHYは重要だがWHYだけでも組織は動かないとしている点である。例えばアップルは常に企業の成功物語で名前の上がる企業であるが、著者はWHY型のスティーブ・ジョブズと、WHAT型のスティーブ・ウォズニアックの組み合わさったことが成功の大きな要因だとしている。アップルの成功の話を「Quiet」では、外向型人間と内向型人間が組み合わさったことを成功の要因として語っていたので、いろんな見方があるのだと感じた。

全体的に、本書の内容には自分の経験からも思い当たるふしが多々ある。常々多くの企業がWHYを明確にしないことでブランディングに失敗していると感じるし、株主の圧力ゆえにか、売上至上主義のなかでABテストなどでデータを重視しすぎた結果、WHYを見失ったWHAT型になっていると感じる。

例えば、Photoshopなどのクリエイティブツールを生み出したAdobeは、すでに当初の創造力を広める哲学を見失い、現在は詐欺まがいの手法で短期的な売り上げを上げることしか考えていない。iPhone以降10年以上革新的な製品を生み出していないアップルもAdobeほど惨憺とした例ではないが、WHYを失いかけている企業と言えるだろう。

昨今安定した売り上げを目指してサブスクリプション型のサービスを提供する企業が多く見られるが、WHYに共感できない企業のサブスクリプションサービスを利用しても、最終的にお金をむしり取られるだけである。著者が言うように、企業が本当に相手にすべき相手は低価格につられて簡単に動く人間ではなく、WHYを重視している人なのである。

当たり前ではあるが、動画で見ただけではわからない深みとともに著者の言いたいことが理解できた気がする。多くの企業のマーケター、ブランドデザイナーの必読の本とであろう。

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「Rejection Proof: How I Beat Fear and Became Invincible Through 100 Days of Rejection」Jia Jiang

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
拒否される恐怖心を克服するために始めた拒否セラピー、それは100日かけて毎日拒否に出会うというもの。

何年か前に著者のTedTalkと拒否セラピーのクリスピークリームの回が印象に残っていた。それは拒否されるためにクリスピークリームで作るのが難しそうなドーナツを注文するにもかかわらず、店員は拒否することもなくそのドーナツを作って出してくれる、というもの。久しぶりにその動画が見たくて検索したところ、書籍化しているということでくその前後の出来事も知りたくなり本書を読むに至った。

驚いたのはクリスピークリームの出来事は拒否セラピーを始めて間もない3回目の出来事だということ。著者にとって拒否セラピーを始めてすぐにこのような印象を変える出来事に出会ったことは幸運だったことだろう。改めて、無茶な依頼にも親切に対応したクリスピークリームの店員Jackieのように、真剣な依頼には真剣に対応する人間でありたいと思った。

僕自身はそれほど他人からの拒否に恐怖心はないが、拒否に恐怖心を抱く人の気持ちが本書を通じてよくわかった。速い話が、拒否されるのが怖い人は、拒否は自分自身の性格や能力の否定と感じるのである。一方で、僕のように拒否に恐怖心のない人は、もともと自信があるせいもあるが、拒否はたまたまタイミングが悪かったり依頼側と回答側の相互利益が成立していないだけだと捉え、自分自身の性格や能力の欠如とはほとんど関連づけないのである。

中盤以降は、拒否セラピーで有名になったせいで、著者にもさまざまな依頼が舞い込む様子が描かれる。そんななか、著者はたびたび断る側にまわることとなる。その過程で拒否される側だけでなく、拒否する側の考え方にも気づいていくのである。

When you deliver a rejection to someone, give the bad news quickly and directly. You can add the reasons afterward, if the other persons wants to listen. No one enjoys rejection, but people particularly hate big setups and "yes-buts." They don't lessen the blow––in fact, the often do quite the opposite.
誰かの依頼を断る時は、簡潔にかつ直接伝えてください。相手が理由を知りたい時に、理由は後から付け加えればいいのです。断られるのが好きな人などいませんが、人は特に、長い前置きや、「はい、でも」のような言葉を嫌います。そんなものは衝撃を和らげるどころか時にはまったく反対に作用します。

終盤では拒否セラピーの最後の挑戦として、著者は、妻の転職の手助けをする。それは妻のもっとも働きたい会社であるGoogleへの転職を成功させることである。

上で書いたように、僕自身は著者ほど拒否されることに抵抗はないが、むしろ本書では拒否する側としての姿勢に学ぶ点が多かった。何かを依頼された時に単純にNOと言って終わりにするのではなく、自分の好みや都合が合わないことを説明することで、依頼側は自分自身の否定と捉えずに済むのである。この点は早速取り入れたい思った。

ぜひ日本語化して日本にも広まってほしい内容である。

英語新表現
cuss out 罵る、罵倒する
psych out 不安にさせる、心理的に見抜く
strike a nerve 神経質になる
conform to the norm 規範に従う
sell a bridge 騙す
stick up for 支持する、応援する
break out in hives じんましんがでる
measure up to 見合う、匹敵する
off the wall 型破りな、突飛な
far cry ほど遠い

「宇宙になぜ我々が存在するのか 最新素粒子論入門」村山斉

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
宇宙の観測の歴史と共に素粒子論について説明する。

ここ最近素粒子論をもう少し理解しようと思っていろんな本を漁っている中で本書に辿り着いた。素粒子論の本の中では珍しく数式がほとんどなく文章を中心とされている。

これまでいくつか素粒子論の本に触れてきて思うのは、素粒子論の理解を難しくしているのは、どこまでが確認された事実で、どこまでが研究者の中で受け入れられている仮説なのかの線引きが曖昧なことだと感じる。それに対して、本書では歴史の流れに沿って、生じた仮説とその後の観測による確認を順を追って説明してくれるので、どのようにして現在の素粒子論に辿り着いたかが比較的わかりやすかった。

相変わらず理解できないことが多いが、発見しにくいニュートリノの存在や性質。電荷に影響を与える6種類のクォーク、重さのきっかけとなるヒッグス粒子など、漠然とであるが粒子の特徴について知識を深めることができた。引き続き本書で軽く触れられていたインフレーション理論、標準理論、核融合反応について知りたいと思った。

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「メディアの闇「安倍官邸 VS. NHK森友取材全真相」」相澤冬樹

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
森友事件の取材の様子を語る。

森友事件について知りたいと思って本書を手に取った。

森友事件について詳細に説明するためには、その周辺の出来事や情報の確度を伝えるために情報を得た流れなどを説明する必要があるのは理解できる。しかし、それにしても、著者が認める優れた記者とそのエピソードの紹介に数ページ割いているにも関わらず全て仮名とするなど、脱線が多すぎる。

また、同時に著者自身の報道記者としての行動に自画自賛する雰囲気が滲み出ており、客観的な事実を知りたい側としては、その主観性の強さが本書の信頼性を損ねているように感じた。

全体的に「全真相」というには内容が薄い上に脱線が多すぎる。タイトルから森友事件に関する事実が書かれていると期待する読者は、自分と同じように期待を裏切られたと感じるだろう。内容としても残念だったし、売るために中身と一致しないタイトルを平然とつける出版社の存在を認識させられたことも含めて残念である。この出版社の本を読むのはしばらく控えたいと思った。

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「フラットランド」エドウィン・アボット・アボット

★★★★☆ 4/5
二次元の国フラットランド、三次元の国スペースランドなど異なる次元の世界を描く。

序盤は二次元の国フラットランドの様子を描いている。立体世界ではない、つまり高さのない世界なのですべての人間が線としてしか認識できず、色の濃淡でその形を判断し、その形から相手の地位を知る。

面白いのは中盤以降である。二次元の国の住人が、一次元の国ラインランドやゼロ次元の国ポイントランドの人と会話して、自分達の世界のことを伝えようとする。また、一方で二次元の国の住人が、三次元の国スペースランドからやってきた訪問者の説明に混乱する様子を描いている。次元の多い側の人間が次元の少ない側に自分達の世界の説明に四苦八苦する様子や、次元の少ない側が理解できなくて最後には怒り出す様子から、自分達の住む世界よりも多い次元の世界を理解することの難しさを感じる。

一方で、その異次元間の交流から、僕らが四次元世界を理解するための手がかりも含まれている。本書を読んだからと言って四次元より上の世界がすぐに理解できるわけではないが、考えやすくはなるだろう。他の本にはない不思議な感情を刺激する作品である。上から下は見えるが、下から上は見えない、という先日読んだ「具体と抽象」と共通するテーマを感じた。

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「移民大国アメリカ」西山隆行

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
アメリカの移民問題についてこれまでの歴史から現在の状況まで詳細に説明する。

日本も高齢者社会となり、経済を維持するためには移民の受け入れは避けられないだろう。そんななかアメリカが現在直面している移民関連の問題は、日本が近い未来に遭遇する問題と考えて知りたいと思い本書に辿り着いた。

多くの知らない事実を知ることができた。まず、移民問題といっても、不法移民、合法移民などざまざまな視点があり、多くの人が混在した視点で移民問題を語っているということ。また、二大政党の共和党、民主党の基本的な考えとして、民主党の方が移民に肯定的と捉えられ、非白人からの支持を集めているとされているが、それぞれの党の中でも移民賛成派、反対派がおり、党をまたがった議論になっているということなどである。

移民への国としての対応方針を決定する連邦政府に対して、州内住み着いて移民を社会に溶け込ませるための教育や福祉等の対応を強いられる州政府の関係も興味深い。決めるだけの連邦政府と、負担を強いられる州政府という構図になってしまうのも仕方のない話である。

中盤以降、キューバ系、メキシコ系、日本系、中国系、韓国系、ユダヤ系などの視点で、アメリカの中での影響力とロビー活動について触れている。ある国の中で特定の文化の人々が生きやすい環境を作るには、その国の中で影響力を強める必要がある。そのためにはロビー活動が欠かせないのだという。以前は強かった日本系コミュニティのロビー活動が最近は下火で、一方で韓国系や中国系が影響力を強めているのだという。

海外で同じ国の人間同士でつるむことをどこか馬鹿にした見方をすることがあり、日本人街などを敬遠する人も多いが、そこにはメリットもあるのだと再認識させられた。

改めて、アメリカの移民問題は思っている以上に複雑な問題であることがわかった。移民の国という理念があり国自体も移民によって作られた国という認識があるから、移民を受け入れるのが当然という考えも未だ根強く、そしてすでに大量の移民を受け入れてきたから、移民や不法移民の労働力に依存した社会構造ができあがっているから複雑な問題となっているのである。

引き続き、アメリカだけではなく世界の移民問題を知りたいと思った。次はフランスやドイツ、イギリスの移民問題などヨーロッパの国の実情について知りたい。

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