「A Mind for Numbers」Barbara Oakley

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
効果的に勉強するためにはどうすればいいのか。著者自身も学生時代は数学の能力をまったく伸ばす事が出来なかったが、軍隊に入ってロシア語を学び数学の必要性を感じてその方法に気付く。多くの例とともに効果的に学ぶ方法を語る。

数学や試験や言語だけでなく、学ぶというのは運動や楽器演奏などすべてに適応されるもので人生を生きていくうえで欠かせないもの。しかし、勉強しているけれども成績が上がらない、練習しているけれど上達しない、ということはたびたびある。誰もが1度は、●時間勉強したけどこの時間に意味があったのだろうか。と疑問に思うような時間を経験した事があるだろう。上達しない練習に時間をさくのであればその時間を他の事に費やした方がいいだろう。そういう意味では、人生を豊かに効率に過ごすために方法を本書は教えてくれると言える。

まず印象的なのは、Diffuse ModeFocus Modeの使い分けである。僕らは勉強するときに「集中する」ことを良いこととしているが、本書では、Diffuse Mode、つまり集中していない状態も同じように効果的に学ぶためには大切だと語る。もちろん集中していない状態が進歩を助けるのは、集中している時間に積み重ねたものがあってこそであるが、それによって集中していない時間にも脳が無意識下で情報を処理し続けるのだという。集中している時間と集中していない時間を適切に配置することで効率的に学ぶことができるのである。

また、「勉強した気になってしまう行動」や、「無駄な勉強」というのにも触れているので、知っておくと非常に役に立つだろう。例えば僕自身も過去やったことがあるのだが、蛍光ペンで教科書の重要な部分を塗っていくという方法。これは手を動かした事によって学んだ気になってしまうが実際にはほとんど効果がないのだそうだ。また、教科書を読んだだけでわかった気になるのもしばしば陥りがちな無駄な勉強法である。多くの教科書はそれぞれの章末に問題をつけているが、多くの人はこの重要性に気付いていない。本書では、必ず自分で問題を解いて自分の理解をテストすることの重要性を強調している。

その他にも、勉強を先延ばししてしまう人がとるべき対策方法や、多くの勉強に適用できそうな記憶方法についても触れている。向上心のある人には多いに役立つ内容と言える。

「Fluent in 3 Months」Benny Lewis

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
多くの言語を話す著者が言語学習の方法や考え方を語る。
著者自身スペインにスペイン語を学びにいって半年以上経過しても何も話せなかったという経験を持つ。そんな著者が今では10言語以上を自在に操るというのだからその内容は言語学習者にとっては有益な物ばかりである。最近書かれた本なので、インターネットやスマートフォンを使って効果的に言語学習をするためのツールや方法がたくさん書かれている。
面白かったのは、インターネットのチャットを利用するという方法。もちろんそれぐらい誰でも思いつくのだが、著者が紹介するのはあえて女性の名前でログインするということ。そうすればいろんな男が話しかけてくる、というのである。これは学ぶ言語によらず世界共通なのだろう。
また、言語学習の方法だけでなく、言語学習者が陥りがちな考え方のワナについてもふれている。そもそも「流暢に話す」の定義は何か。母国語でできないことをその学習言語でやろうとしていないだろうか。「言語が話せる」とはどのレベルのことを言うのか。「訛り」がまったくなくなるのが理想なのか。
そして、多くの言語学習者がそれを諦める際に言う言い訳についても著者は一蹴している。「準備ができたらネイティブと話す」と言っていつまでも一人で勉強している人に対しては「準備ができる日など永遠に来ない」と。
言語学習や異文化交流など、改めてその意味を考えさせてくれる一冊。著者が引用しているいくつかの名言が印象的だった。

The best time to plant a tree is twenty years ago. The second best time is now.
The difference between a stumbling block and a stepping stone is how high you raise your foot.

「Talent Code」Daniel Coyle

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
ブラジルはなぜ多くの有名なサッカー選手を長年にわたって排出するのか。ロシアの一つしか室内コートを持たないテニスクラブはなぜ世界で20位以内の女子テニス選手をアメリカ全体よりも多く生み出すのか。そんな問いかけとともに、著者は才能の育成のための方法を語る。

最初に著者が説明するのはDeep Practiceというもの。現在の持っている技術の及ぶぎりぎりの場所で練習を繰り返す事により、技術はもっとも効果的に伸びるのだという。様々な実例や過去の事実を交えてその内容を説明する。そして最初の問いかけ、ブラジルが有名なサッカー選手を生み出す理由にも触れる。その答えは、ブラジルがずっと強かったわけではなく、ペレの出現以降急激に力をつけたことや、昨今のブラジルの世界の舞台での失速を見事に説明してくれる

また、後半では幼少期にどのように子供に接することが才能を育むために効果的なのかについても、いろいろな実例から説明している。才能というのはDeep Practiceに長い時間を費やす事によってもっとも効果的に伸ばす事ができる。つまり、子供達は、結果よりも努力の量を評価されてこそ長い時間を練習に費やそうとするのである。

本書で語られているのはスポーツや音楽の発展に関するものばかりだったが、Deep Practiceはあらゆる面で有効に見える。僕らは日常生活を送る中で、いろいろな技術を改善しようと努めているが、果たしてしっかりとDeep Practiceできているだろうか。そんなことを考えさせられる。また、子育てをしている人は子供への接し方を考えさせられるだろう。

「Leading at a Higher Level」Ken Blanchard

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
いくつかの企業を紹介しながら、リーダーシップのあるべき姿を説明する。

一般的な組織はピラミッド型で上に行けばいくほど決断できる部分が大きくなるが、理想の組織は顧客に近い下の人間ほど決断できる部分を大きくすることで、それぞれの社員もモチベーション高く効果的な組織を作る事ができるという。

真のリーダーは、そんな組織のために顧客に接する部下達に奉仕(serve)することが理想なのだと言う。どうしても組織は、部下は上司に奉仕(serve)する形になりがちだが、それが顧客よりも上司を重視してサービスやモチベーションの低下に繋がるのである。また、後半では組織に「変化」を起こすために行うべき事についても触れている。常に組織のなかの多数派である「一般社員」目線で考えことの重要性を教えてくれる。

残念ながら僕が今従事している業務に適用するのは難しそうだが、理想の組織を作りたくさせてくれる一冊。

「Pardonable Lies」Jacqueline Winspear

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
戦時中ドイツ軍に撃ち落とされて死んだとされた息子。しかし妻は病気で死ぬ間際、息子は生きているはずだから探して欲しいと夫に依頼する。夫は妻との最後の約束を守るため、Maisieに息子が死んでいる事を確認するよう依頼する。
Maisie Dobbsシリーズの第3弾。終戦直後の混乱のヨーロッパを舞台に描く探偵物語で、いずれの物語も戦争中に人々が負った傷に深く関連して描かれる点が面白い。依頼によって戦争中に戦闘機のパイロットをしていた男の消息に迫る中、親友で兄3人を戦争で失ったPricillaからも長男のPeterがどこで死んだのか突き止めて欲しい、と依頼される。
僕らは普段、歴史上の事実からしか戦争というものを捉える事ができないが、本シリーズを読むと、戦争が終わって10年以上経過しても、人々の生活や心のなかに戦争の傷が残っている事を感じさせてくれる。
過去と向き合う親友を見て、Maisie自信も過去と向き合おうとする。戦争中に看護婦として働き、恋人を失った野戦病院の場所をもう一度訪れる事を決意するのだ。
ややできすぎな偶然と感じる部分もあったが、戦後の人々の苦しみを登場人物の感情や行動を通じて伝えてくれる一冊。

「One for the Money」Janet Evanovich

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
お金がなくて困ったStephanie Plumは法廷に現れない犯罪者を捕まえる仕事、Bounty Hunterをすることを決意する。最初のターゲットは殺人を犯して逃亡したもと警察官で、なんとStephanieの学生時代の知り合いの男Morelliだった。
ターゲットであるMorelliを追ううちに、逆にStephanieは窮地を救われることとなる。そして次第にMorelliとStephanieの間に妙な協力関係が生まれていく。
Stephanieが失敗を繰り返しながらも、少しずつBounty Hunterという仕事に慣れていく様子が面白い。Stephanieが住んでいる町が非常に狭くて、そこら中に知り合いや元同級生がいて、みんなが結婚相手を世話しようとしている点が、懐かしい温かさを感じさせる。Bounty Hunterという職業自体が日本では馴染みが薄いので、文化の違いが反映されているような気がする。そもそもなぜ日本にはBounty Hunterという職業が存在しないのだろう、と考えてしまう。
続編もあるようだが、Stephanieが成長する様子が見れるかもしれない。

「Mobile First」Luke Wroblewski

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
スマートフォンの普及によってWebの作り方は大きく変わった。著者はMobile Firstというコンセプトでその考え方を語る。
その考え方は、Mobileという限られたスペースに情報を入れようとするために、不要な情報や要素はすべて削ぎ落とす必要がある。その上で出来上がったMobile用のWebからPC用のWebを作成する際に、本当に役立つものだけを付け加える、という、まさにMobileサイトを中心とした考え方である。
面白いのは、冒頭で著者は言っている。

今までは日本人でもない限り誰もモバイルでWebを閲覧しようなどとはしなかった。

つまり、数年前まで日本はモバイルでのWeb閲覧という分野においては世界でも進んでいたのだ。にもかかわらず、海外のWeb情報サイトではそこらじゅうで目にする「Mobile First」という言葉、日本ではまったく聞かない。すでに世界から遅れをとっているということなのか、それとも単に文化の違いなのか。

「Beautiful Lies」Lisa Unger

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
車にひかれそうになった子供を助けたところを報道され、世間からの注目を浴びたRidleyだが、それを機にいろいろなことが起きるようになった。やがてそれは彼女自身の出生の秘密にまでおよんでいく。
本書は兄Aceと父と母の家庭に育った女性Ridleyの物語。自分の姿が報道されたあと、本当の父と名乗る人から手紙を受け取るのである。自らの出生に疑問をもつRidleyは少しずつ大きな陰謀に巻き込まれていく。実は自分は過去・・・とか、疾走したあの人が実は・・・、という流れの本が多くて読み終わってあまり時間が経たないうちに記憶から薄れてしまっている。
さて、本物語りでは、Ridleyの叔父が何年も前に行っていた福祉制度が物語の鍵となるのだが、昨今日本で議論になったことと非常に似ているため、いろいろ考えさせられる物があるだろう。子供を育てることができない母親に、「それが母親の責任」とその義務を強いて不幸な子供達を増やすのか、それとも子供を手放す自由を社会が受け入れ、子供達を育てる施設を整えるのか。
本書ではRidleyと同じように自分の出生に悩んで家を飛び出したAceもたびたび登場する。ドラッグから抜け出せなくなったAceの存在が日本とアメリカの文化の違いを際立たせているような気がする。
一度両親を、自分の本当の親じゃないかも、と思い始めたRidleyには過去のすべてのできごとが嘘っぽく見え始める。考えてみると、人は他の家庭がどのように子供に接するか、ほかの家庭の親と子供接し方が自分の家庭のそれとどのように異なるかというのは、本当に知る機会がないんだな、と考えさせられた。

「Tell No One」Harlan Coben

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
Beckの妻Elizabethは8年前にが凶悪な犯罪者によって殺された。しかしある日匿名のメールを受け取り、8年経った妻の姿を目にする事となる。
匿名のメールによって妻の存在を知らされる、しかしそのことは誰にも話してはいけない、という読者を物語に引き込む手法としてはありきたりな流れである。それでもBeckに協力してくれる友人達が個性豊かで特にモデルのShaunaやBeckの妹のLindaなどは物語を現代風に印象づけている。
特に文化や歴史的な事実と物語が絡んでいるわけでもないので、気楽に読む事ができるだろう。

「The Pillars of the Earth」Ken Follett

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
現代と違って何年もかかる建築の過程で周囲の政治も変われば建築家も財政状況も変わる。1つの大聖堂の建築に関わる人々の物語。
物語は大聖堂の建築に関わりたいと願う建築家のTomとその家族がとある修道院を訪れてそこでPhilipと出会う事から始まる。やがてPhilippは不幸なできごとによって焼け落ちてしまった教会をTomの力で再建する事を決意する。物語の序盤はそんなTomの恋愛や家族のことやPhilipの苦悩で占められる。
そして、中盤からは様々な登場人物が生き生きと躍動してくる。一人はTomの2番目の妻Ellenの息子Jackであり、彼は彫刻に非凡な才能を見せ、やがて大聖堂の建築を担うようになる。また領主の娘に生まれたAlienaはWilliamの策略によって、その地を弟Richardと追われるが、自分たちの地位を取り戻す事を決意し強く生きていく。
大きな建物も2,3年で、気がついたら出来上がってしまっている現代の感覚だとなかなか想像できないが、政治の不安定な当時は、大きな建物を建築するためには相当の月日が必要な事がこの物語から見えてくる。次回、海外旅行で建築物を見る際はまた違った視点でみることができるだろう。
壮大な物語で読み終わるのにかなり時間がかかった。続編もあるらしいのでぜひ読んでみたい。

「Birds of a Feather」Jacqueline Winspear

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
Maisie Dobbsは食料品店のチェーンのオーナーから、家出をした娘を捜して欲しいという依頼を受ける。しかし、その消息をたどるうちに、その娘の友人の何人かが死亡していることに気づく。
Maisie Dobbsのシリーズの第2弾である。このシリーズは舞台を終戦直後に設定しており、内容も戦争体験に関わる部分が多い事は第1作「Maisie Dobbs」の感想で触れた。本作品でもその内容は単純な家出人の捜査ではなく、やがて戦時中の人々の行いにつながっていく。
また捜査とは別に、Maisieの人間関係にも問題が生じる。特に唯一の肉親である父親の素っ気ない態度に悩むのである。その感覚は父親が入院した事によってその想いはさらに加速する。そしてMaisieの元で一緒に働くBillyの振る舞いにも変化が現れるのである。
MaisieのメンターであるMauriceの存在は本作品でも大きいが、医師でありMauriceの友人のDeneの言葉もまた興味深い。

聞いた感じでは、あなたの父親はきっとすぐに回復することだろう。彼はすでに事実を受け入れて、回復した先にある未来を想像しているのだから。すでに自分が進むべきステップを意識しているのだから。

ただの探偵物語では終わらない深さがある。引き続き続編を楽しみたい。

「Maisie Dobbs」Jacqueline Winspear

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
終戦からまだまもないなか、Maisie Dobbsはロンドンで探偵事務所を始める。浮気調査の過程で、戦争で体に傷を負った人々が集団生活をしている施設に行き当たる。
体裁としては私立探偵が依頼された内容を解決する、というよくある形をとっているがシリーズ第一弾となる本作品では、Maisiの幼い頃の経験と、その後の従軍看護師として戦地に赴き、恋愛や友人達の悲劇と出会う様子が描かれている。むしろ謎を解明していく流れよりも、Maisieの過去の物語の方が本書においては重要な役割を担っているような気がする。
また、依頼された内容も、ある男性の妻の浮気調査でありながら、最終的に行き着いた先は戦争によって体に傷を負った元兵士達が集団生活を送る施設、というように戦争の悲劇に関することが多くを占めている。そのため、ただの現代を舞台とした事件解決物語とは違った雰囲気を持っている。
Maisieの考えのなかで重要なのは、MaisieのメンターであるMauriceからの教えである。Maisieは迷ったとき常にその考え方に戻って考え直すのである。そんなMauriceの言葉はどれも深く印象的である。

真実は抑圧されればされるほど強力になり、やがてわずかなひびでその壁は崩れ世に出る。

そしてラストはMaisieの過去の一部が明らかになる。シリーズ作品なのでぜひ続編も読んでみたい。

「The Light Between Oceans」M L Stedman

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
Tomとその妻Isabelはオーストラリアの無人島で灯台の光を維持することを仕事としていた。ある日その島にボートが流れ着く。そのボートにはすでに息を引き取った男と赤子が乗っていた。
戦争でのつらい経験を引きずって生きていたTomは、人のいない島で灯台の光を管理するという仕事を選ぶ。そんな折に出会ったIsabelと結婚し、2人で家族を作ろうとするがIsabelは3人の子供を流産してしまうのだ。そして、そんな失意の2人のもとに赤子を乗せたボートが流れ着く。
戦争中の自らの行いによって良心の呵責に苦しむTom。そんなTomの過去に対する言動や、自らの正義感や信念を反映した生き方が印象的である。
1920年代を舞台にした物語という事でおそらく今とはかなり異なるのだろうが、灯台を管理するという仕事やその役割、そして灯台そのものについても興味をかき立ててくれる。また、オーストラリアを舞台としている事からその時代の人々の言動に触れるうちに、オーストラリアのこの時代の歴史をほとんど知らない事に気づかされた。

「A Prisoner of Birth」Jeffrey Archer

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
結婚目前だったDannyは親友のBernieを殺した罪を着せられて終身刑を言い渡される。Dannyの刑務所生活と真犯人への復讐の計画が始まる。
もともと読み書きのできないDannyは刑務所で同じ部屋になったNickによって多方面の教育を受けてその才能を開花させていく。そして、偶然の出来事によって刑務所の外へ出る機会を得たDannyは、真犯人グループへの復讐を始めるのだ。
やや出来過ぎの感もあるが、全体的には目覚ましく動き続ける物語は読者を飽きさせる事はないだろう。また、物語自体が、ロンドンからスコットランド、スイスのジュネーブなど、いろんな場所へ展開される点も面白い。イギリス人でもスコットランドの発音に戸惑う場面など、日本にいてはわからない現地の人々の感覚が見えてくる。
Jeffrey Archerの物語は法廷の場面が多いという印象があるが、本書も同様に緊張感あふれる法廷シーンを見せてくれる。
個人的には物語の終わり方が好きだ。もちろんここで詳しく書く事ができないのが読んでもらえればこの余韻に浸れる終わり方をわかってもらえるかもしれない。
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「Song of Susannah」Stephen King

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
Callaの町でWolves達との勝利にわくRoland一行だが、妊娠したSussannahが行方をくらました。Roland、Eddie、Jakeそして神父のCallahanがSusannahを追ってニューヨークに向かう。
多重人格者のSusannahが行方をくらましたことで、それぞれが別の世界へのドアをくぐる。EddieとRolandは1977年のメーン州、JakeとCallahanは1999年のニューヨークだった。それぞれの登場人物が別々に行動するため、今までのようなそれぞれの個性が団結した展開を見る事はできないが、それぞれまた違った側面が見えてくる。
子供を産んで育てようとするSusannahの中の人格Miaと、後から追ってくる救いを待つために少しでも時間を延ばそうとするSusannah。2人が1つの体のなかで駆け引きを繰り返すのが面白い。そしてそんななかにもう1つの人格Odettaが割り込んでいくのだ。
一方で、鍵となる駐車場を管理している本屋のオーナーを追うEddieとRolandは、やがてその近所にある小説家が住んでいることを知る。その小説家はStephen Kingというそうだ。現実世界がKingの小説のなかに取り込まれたのか、それともRolandやEddieが現実世界にでてきたのか、Stephen Kingのそんな試みが見られるのが本書の一番の山場かもしれない。
長く続いたシリーズの最後に繋がる一冊。これまでのシリーズと比較すると面白さとしてはやや不足しているかもしれないが、その後の展開には必要な一冊なのだろう。

「Fahrenheit 451」Ray Bradbury

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
本を燃やす事を仕事とするMontagはある日近所の少女Clarisseと出会う。Clarisseの自由な言動によって、Montagは自らの行いを振り返り悩み始める。
日本語タイトルは「華氏451度」であり、本を燃やすための温度を示している。舞台となっているのは未来の世界で本来なら消防士として火災にあった家を消化する人にあてられるべき「fireman」という言葉が、本を燃やすことを職業にする人に使われている。そして本書はそんなfiremanであるMontagの様子を描いている。
知識や思想を根絶するために本を燃やす、という思想は何年も前からあったもので、映画や物語のなかでもそんなシーンをたまに目にする。おそらく宗教的な対立や独裁政権下で多く起こったできごとなのではないだろうか。本作品が未来を舞台にして、見せててくれるのは、本を燃やすということの意味とその危険や重要性である。
firemanとしての職業を放棄したMontagはやがて社会から逃れて生活している人々に出会う。彼らは多くの本が失われる中で、知識や思想を守り、それを次の世代に受け継ごうとするのである。
本書が言おうとしていることの崇高さはしっかり伝わってくるが、書かれた時代の古さが安っぽさのように感じられてしまう点が残念である。情景描写ばかりで心情描写がほとんどない点も原因なのだろう。同じ意図で現代のすぐれた作家が描いたらどうなるだろう、と考えてしまった。

「Wolves of Calla」Stephan King

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
Dark Towerシリーズの第5弾。Roland達一行はCallaという町の人々に救いを求められる。その町には何年かに一度仮面を被った「Wolves」と呼ばれるグループがやってきて、町に多くいる双子のうちの一人をさらっていくのだというのだ。
シリーズ中最長の本書。Roland、Eddie、Sussanna、Jake、Oyeは助けを求められてCallaという町に赴き、町の人々から情報を集めながら、約1ヶ月後に迫ったWolvesの来襲に備える始める。そこでは双子の一人がさらわれても残る物もいるのだからそれで甘んじようと言う人々と、これ以上今の状態を続けないために命の危険を承知で立ち上がろうとする人々がいる。
町の老人が昔のWolvesの来襲と一緒に戦って命を失った友人達について語るシーンが個人的にはもっとも印象に残った。

モリーは砕け散った夫の血と脳を浴びながらも、なお動かず。そして叫んで皿を放った。

さて、物語はWolvesの襲撃に備える一行だけでなく、夜になると不穏な行動を始めるSussannaや、Eddie達と同じようにニューヨークからやってきたCallaの町の神父Callahanにも及ぶ。Callahanの語る物語はどうやらStephan Kingの別の作品と繋がっているようで、そちらも読みたくなるだろう。
前作「Wizard and Glass」でも赤い水晶が物語の重要な役割を担っていたが、今回もCallahanが保持しているという水晶が鍵となる。今後この玉の存在が物語にどのように影響を与えていくのか、ようやく近づいてきたシリーズの終盤に対して期待感が高まる。
スピード感溢れる描写に著者の才能を感じた。早くシリーズを最後まで読みたくさせてくれる一冊。

「Holes」Louis Sachar

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
靴を盗んだ罪で更生施設に送られたStanleyはそこで毎日穴を掘る事を命じられる。その生活に慣れていくなかで少しずつその目的が見えてくる。
灼熱の大地で毎日穴を掘る、という情景になんか惹かれてしまうのは僕だけだろうか。物語にはその他にもなんだか魅力的な要素が詰まっている。主人公のStanleyの名前が、Stanley Yelnatsと逆から読んでも同じだったり、穴を掘っている近くには猛毒のトカゲが生息していたり、細かい設定がやけに印象的である。
さて、Stanleyが毎日の穴掘りに慣れ施設の生活にも慣れていく様子を描く中で、何度も過去の物語が展開される。どうやらそれはStanleyの曾祖父や祖父の物語のようである。アメリカに渡って財産を築いた曾祖父。強盗に襲われて財産を奪われた祖父。またその地域に長く伝わる伝説も描かれている。禁断の恋をした女性教師とタマネギ売りの物語である。
実は最後にはそんなすべての断片が1つに繋がるのである。正直1度読んだだけではなかなか細かい相関関係がわからない。すぐに読み返したくなる1冊。

「Mockingjay」Suzanne Collins

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
第13地区に逃げ延びたKatniss達は首都から迫害を受けていたすべての地区を率いて反乱を起こそうとする。一方で首都は爆撃だけでなく、捕らえたPeetaを利用して各地の暴動を治めようとする。Hunger Gameシリーズ完結編。
シリーズ3作目ということで、前2作品では脇役に過ぎなかった登場人物達が個性を持ち生き生きと躍動してくる。正直過去の作品の登場人物の名前を覚えてないとややわかりにくいかもしれない。
13地区はまず、他の各地区を同じように首都に対する反乱に向かわせようとする。電波ジャックによってKatnissを革命の象徴とした映像を流し、人々を煽動しようとするのだ。序盤はそんなメディア戦略の映像を撮るために、Katnissが首都の迫害に苦しんでいる各地区をまわり、そこで人々の支持を集めていく様子が描かれる。
一方、首都は捕らえたPeetaを使って革命の気運を抑えようとする。映像を通じて「反乱をやめるべき」というPeetaの言葉にKatnissは思い悩むが、それでも次第に革命の気運は高まり首都は孤立していく。
物語はむしろその後の戦場での悲惨な物語を描く。革命の象徴とたたえられながらも憎むべき独裁者Coinを倒そうとKatniss。GaleなどのHungerGameの生存者達とチームを組んで戦場に赴いていく。その残虐な首都の兵器に傷つき犠牲を払いながらも進んでいく場面が物語の最大の山場である。
シリーズ完結編にふさわしい内容。ハッピーエンドとは言い難いが、だからこそ現実の戦争の無意味さを訴えているように思える。ぜひ映像化されたものも見てみたいと思った。

「Wizard and Glass」Stephan King

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
暴走し始めた知能を持った機関車との対決を終えたRolandは旅する3人の仲間にSusanという女性との出来事を語り始める。
前作「The Waste Lands」の最後に暴走する機関車Blaineになぞなぞ対決を挑まれたRolandの一行だが、Eddieの機転でその場を勝利する。本書はむしろその後にRolandがJake、Eddie、Susuannahの要望に答えて語る自らの過去、Rolandの14歳の時の出来事が中心となる。
Rolandは同じ訓練をつんだCuthbert、AlainとともにHambryという町の調査に赴くのだが、その町にはBig Coffin Huntersと呼ばれる3人組が権力を持っていて、やがて外部から来たRoland達3人との対立を深めていく。また、RolandはSusanという、すでに町の権力者と結婚を約束した美しい女性と出会い恋に落ちるのである。使命を果たそうとするなかで恋に溺れるRolandに、CuthbertやAlainは不信感を強めていく。
今までその過去はほとんど謎に包まれたままだったRolandだが、本書でようやくその辛い過去が明らかになっていく。あまり感情を見せないRolandだが、若き日Rolandからはその感情の揺れ動く様子が見て取れる。
SusanやBig Coffin Huntersの存在は言うまでもないが、物語を面白くしている要因の1つは、Hanbryの町に住む赤い水晶を持った老婆Rheaの存在である。本書のタイトルはまさにそれであり、おそらくシリーズの今後含めて水晶も老婆の存在も大きな鍵となっていくだろう。
今後の感動的で壮大な展開を予感させる。日本人の間にももっと読まれて欲しいと思える作品。