「In the Dream House」Carmen Maria Machado

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
女性同性愛者である著者の、恋人との出会いとその後の同棲の様子を語る。

著者自身が、ある女性と恋に落ち、ともに生活を始め、やがてその女性から振り回されるまでの様子や心のうちをを描いている。その過程で恋人に対する感情たけでなく、社会や家族のレズビアンに対する考え方も吐露していく。同時に、女性の同性愛者間で起きた数々の事件などに触れ、思うことを語っていく。

回想録ということで、物語の展開自体が面白いということは特にないし、有名人の伝記のように、自らの生き方に対して、良い刺激になることもない。

おそらく、この本がベストセラーとなった理由は、内容の面白さよりも、そのレズビアン視点のカップル間の暴力という、斬新さゆえなのだろう。今までに考えたこともなかった、同性愛者視点の社会の見方を知ることができた。世の中が同性愛者を理解していないことに対する、著者のストレスを行間から感じた。そして、さまざまな映画やMVなどのシーンが語られるので、アメリカの文化を知る上では面白いだろう。

一方で、日本ではあまり有名ではない出来事やアーティストや映画の話題にもたびたび触れられているので、アメリカの文化にかなり詳しくないと楽しめないだろう。徹底的に引用される出来事を調べるつもりで読むぐらいが面白いかもしれない。また、スラングがかなり多く登場する。こちらも普通に読んでいくよりも、アメリカ英語を徹底的に学ぶつもりで調べながら読むと面白いかもしれない。

面白かったとか刺激になったとかではないが、間違いなく新しい世界観や視点をもたらしてくれる。

「Fluent forever」Gabriel Wyner

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
多言語話者であり音楽家でもある著者が、語学学習の効率的な方法を語る。

著者の学習方法は

発音→単語→文法→その他

という優先順位で行われ、発音が最初に来る点が面白い。音楽家であることから音から入るのかもしれないが、五感を多く使った方が記憶に刻まれるという点で、読み方を先に知っておかないと記憶するのに時間がかかるという点には間違いないだろう。

そして、本書で何よりもページ数を割いて説明しているのがフラッシュカードの使い方である。誰もが学生時代に単語帳は使った経験があるだろう。フラッシュカードとは単語帳のことでインターネットやアルゴリズムによって現在はさらに効率的に利用できるのである。

何よりもページ数を割いて説明しているのがフラッシュカードの使い方である。誰もが学生時代に単語帳は使った経験があるだろう。フラッシュカードとは単語帳のことでインターネットやアルゴリズムによって現在はさらに効率的に利用できるのである。

本書ではそんなフラッシュカードを利用して、効果的に学ぶコツをいくつも説明している。興味深かったのは、言語によって必要な、男性名詞、女性名詞、中性名詞をどのように覚えていくかということである。著者の方法は新しい言葉を、自分の言語に変換して覚えるのではなく、常にイメージと結びつけることと重視しており、男性名詞はそれが爆発している状態で記憶し、女性名詞は燃えている状態で覚える、など印象的なシーンにして記憶に刻み込ませるためのさまざまな工夫が見られる。必ずしも著者の進める方法に従う必要はないが、効率的に記憶するためのさまざまなヒントが詰まっている。

僕自身もう10年ほど前になるが、フラッシュカードでかつ少しずつ間隔を開けて繰り返す機能を備えたAnkiというアプリを以前使っていた。結局、単語や表現は文脈とともに覚えていかないと使えるようにはならないと悟ってやめたのだが、本書によって考え直すきっかけになった。

「A Man Called Ove」Fredrik Backman

「A Man Called Ove」Fredrik Backman

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
子供もなく妻に先立たれたOveは死ぬことを考える。しかし、Oveは近所のルールが守られているかを見回るという日課があった。そんなOveの様子を描く。

Oveは常に、自らの命を絶って妻のところに行こうと考えているにも関わらず、頑固なOveに惹かれていく周囲の人々の様子をコミカルに描いていく。死にたいという人生の一大事を滑稽に描くところが面白い。

物語が進むに従って、少しずつ過去のOveの人生が描かれていく。父親の教え、妻との出会い、そして、コミュニティの友人たちとのやりなどである。どちらかというとOveの生き方は、古き頑固な生き方で現代に合わないようにも見えるが、その人生に触れる過程で、現代に生きる人たちが忘れがちな大切なことが見えてくる。

But we are always optimists when it comes to time, we think there will be time to do things with other people. And time to say things to them.
しかし時間に対しては人は楽観的である。周囲の人との時間や、伝えるべきことを伝える時間がかならず来ると思っている。
It is difficult to admit that one is wrong. Particularly when one has been wrong for a very long time.
間違っていることを認めるのは難しい。特に、間違っていた時間が長いほど難しい。

僕のの未来に対する大きな不安として、妻に先立たれたらどうやって生きていこうか、というのがある。本書はそんな、人生に希望を失いがちな晩年でも、愛しき人との思い出とともに、周囲の人と関わりながら幸せに生きる生き方を示してくれる。常に、世のため人のため、そう考えて生きていればつながりは自然と生まれていくのだろう。

和訳版はこちら。

「Design is Storytelling」Ellen Lupton

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
デザインは「問題解決」と言われてきたが、現代のデザインはすでにそれだけに止まらない。本書は「問題解決」であると同時にStorytellingとしてのデザインを語る。

次の3つの章に分けてStorytellingとしてのデザインの考え方を語る。

  • Action
  • Emotion
  • Sensation

つまり問題解決だけではなく、行動、感情、感動に働きかせてこそStorytellingなデザインと言えるだろう。そして、それぞれの章では、それを実現するための細かい手法を説明している。例えば、Actionの章では次の手法に触れている。

  • Narrative Arc
  • Hero’s Journey
  • Storyboard
  • Rule of Threes
  • Scenario
  • Planning
  • Design Fiction

同様にEmotionの章では次の手法を説明している。

  • Experience Economy
  • Emotional Journey
  • Co-creation
  • Persona
  • Emoji
  • Color and Emotion

ペルソナやCo-creationはすでにデザインスプリントやリーンスタートアップの考え方にも取り入れられており、どれもすでに一般的で特に驚きはなかったが、Emotional Jorneyで説明されている、ピーク・エンドの法則はデザインにも適用できると感じた。特に、全体のUXを改善しようとすると時間もコストもかかりすぎる場合はピーク・エンドの法則と照らし合わせて優先順位を決めるという考えは有効だと感じた。

後半は一般的なデザインに含まれる内容が多かった。むしろ、おまけとして書かれていた最後の、文章ライティングの考え方は参考になった。

As you write, focus on being clear, not clever.

比較的他のデザイン書籍にも書かれている内容ばかりだったのでものすごいおすすめの書籍ではないが、同じような内容でも定期的に触れることに意味があるのだろう。

「The Girl You Left Behind」Jojo Moyes

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
戦時のフランスで生きる姉妹SophieとHélène、それぞれ夫が出兵し不在の中、子供達の面倒を見ながらレストランを経営する。

1916年、第一次世界大戦のドイツの占領下のフランスで、SophieとHélèneはレストランを営み続ける。そして、そこにはSophieの夫であるÉdouardの描いたSophieの肖像画が飾ってあるのである。そして、かつては地元で有名なホテルだったこを聞きつけたドイツ人将校は、2人、食材を提供するのでドイツ兵のために夕食を用意することを依頼されるのである。

一方で、並行して描かれるのは、2006年のロンドンに住む30代女性Livであり、彼女は建築家の夫と死別したのち、1人で夫が遺したマンションの部屋に住み続けている。そしてそこには、人の手を渡り歩いてたどり着いたSophieの肖像画が飾ってあるのである。

物語は、Édouardの描いた作品の価値が高まり、Édouardの子孫がその作品を子孫の元へと返すように訴えることで大きく動き出すのである。彼らの主張は、戦時にドイツ軍によって略奪されたものだから元の持ち主に返すべきということである。一方、早くに亡くなった夫からのプレゼントであり、その肖像画に愛着を持つLivは、お金のためだけに絵を取り戻そうとするそのÉdouardの子孫たちに返すのを避けるために、略奪によって絵がうばされたわけではないという証拠を見つけ出そうとする。

戦時中と21世紀という大きくへだたる時代のなかで、ドイツ兵、フランス、どちらの内側にも、善と悪が描かれている点が印象的である。誰もが戦争という大きな流れのなかの犠牲者でしかなく、そんな過酷な状況ではどんな人も強くいられず、潔癖でもいられず、時には、弱さをさらけ出し、人を傷つける言動をせざるを得ない。その場を経験した人間にしかわからないようなその空気感を見事に表現し、それを物語のなかに組み込んでいる。

今年最高に涙した作品。

「Building a storybrand」Donald Miller

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
ブランディングの手法について語る。

映画に必要な要素とブランディングに必要な要素は基本的には同じで、次の7つの要素だという。

1.登場人物 Character
2.問題 Problem
3.案内役 Guide
4.計画 Plan
5.行動 Calls Them to Action
6.失敗 Failure
7.成功 Success

次の3つの質問に答えられるだろうか。

1.What does the hero want? ヒーローは何を求めているのか
2.Who or what is opposing the hero getting what she wants? 誰がまたは何がヒーローがそれを手にすることを妨げているのか
3.What will the hero's life look like if she does(or does not)get what she wants? ヒーローがそれを手にした時、ヒーローの人生はどうなるべきか

そしてユーザーが疑問に思うであろう、次の点が明確だろうか。

1.What do you offer? あなたは何を提供しているのか?
2.How will it make my life better? 私の人生をどのようによくするのか
3.What do I need to do to buy it. それを買うために私は何をする必要があるのか

改めて、本書に書いてあることを考えながら、僕が仕事で取り組んでいるサービスを考えた時に、ユーザーへのその成功をはっきりと見せられていないと感じた。

ヒーローの問題を外面的、内面的、哲学的と3つの領域に分けている点も印象的である。それぞれをよりわかりやすくすると次のようになる。

  • 外面的… 目の前にある問題を解決したい
  • 内面的… こんな人間になりたい
  • 哲学的… 世の中に貢献したい

僕自身が関わっている仕事やサービスなど、様々なものについて、改めてその価値をうまく見せられているか考え直すきっかけとなった。

「The Seven Husbands of Evelyn Hugo」Taylor Jenkins Reid

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
その人生のなかで7回の結婚をしたことで知られる大女優Evelyn Hugoに、伝記を書くように名指しで指名されたMoniqueはその理由に不信を抱きながらもその仕事を請けることとなる。そして、伝記を書くためのインタビュー取材を通じて少しずつEvelyn Hugoの人生が明らかになっていく。

もちろんフィクションではあるが、Evelyn Hugoの語るその人生を通じて、結婚や離婚が有名になるための一つの手段でしかないことを思い知らされる。また、映画のチケット販売を伸ばすために情報をコントロールすることを日常的にやっているんだろうと改めて思った。

やがて、取材からEvelyn Hugoが人生を通じて本当に愛していた人間が明らかになっていく。また、取材を通じてMonique自身にもその心や振る舞いに変化が生じていく。自らも夫と別居状態のMoniqueは自分自身の結婚生活にも区切りをつける決意をする。そして、最後には、なぜ、Moniqueをその担当者として指名したのかも明らかになるのである。

女性がこの著者を勧めることが多いので、本書も、ひょっとしたら女性の方がもっと感じる部分が多いのではないだろうか。特にEvelyn Hugoがスターとして活躍した60年代、70年代は、今以上に人種間差別は根強かっただろうし、またLGBTに対する理解も進んでいなかったことだろう。そんななか自らの本来の姿と、キャリアとの間で悩み生きていく女性の様子は、ひょっとしたら現代にも通じる部分があり、多くの女性の心を打つのかもしれない。

Taylor Jenkins Reidの本は本作が2作目である。前回読んだ「After I do」は比較的軽い印象を受けたので、本作とはかなり雰囲気が異なるのを感じた。他の有名作品もぜひ読んでみたいと感じた。

「The House in the Cerulean Sea」TJ Klune

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
孤児院の監査を仕事にしているLinusはその徹底した仕事からMarsyas島の孤児院の調査を依頼され、飼い猫CalliopeとともにMarsyas島に向かう。

Linusすぐにその孤児院には多くのいわくつきの子供たちがいることを知る。特に大きな問題は反キリストであるLucyである。しかし、やがて子供たちと触れ合う中で少しずつLinusの心は変わっていき、彼らも世の中のすべての子供達と同じように、守られるべき存在だと気づいていく。そして、それまで味気ない生活をしてきたLinus自身の人生も豊かな感覚が蘇ってくるのである。

一方、その孤児院を閉鎖しようとするExtremely Upper Managementは、Linusからその孤児院の問題を指摘する報告を待っている。やがてLinusは自らの仕事を守るために行動すべきか、それとも、暖かい孤児院の人や子供達を守るために行動すべきか葛藤するようになるのである。

なんといってもLucyを中心に、その孤児院にいる子供たちの様子がかわいい。彼らの異質な見た目が小説からだとなかなか伝わってこないのが残念だが、その振る舞いの愛らしさは伝わってくる。

見た目や生まれにかかわらず、人には生きる権利があり、特に、守られるべきだということを、このような形にすることで強く訴えてくるようだ。

「In Her Tracks」Robert Dugoni

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
産休から復帰したTracyは、人員の都合から未解決のままお蔵入りとなった過去の事件を担当することとなる。数年前に行方不明になった女の子や、売春婦の操作に乗り出す。

Tracy Crosswhiteシリーズの第8弾である。すでにシリーズを通じて、再婚し、妊娠し、出産するという40歳を過ぎて人生の転機を次々に迎えているが、今回は出産後の職場復帰にあたる。犬猿の中である上司のNolascoの計らいで、元々のチームに戻ることができずに、未解決事件を時間の許す範囲で単独で捜査することとなる。やがて、過去の経験から少しずつ行方不明になった若い女性の事件に感情的に入れ込んでいくこととなる。

また、未解決事件の捜査と並行して、女性のジョギング中に行方不明になった事件を担当するKinsがTracyに助けと求めてくる。早くから、最後の目撃証言があった場所の近所に住む3人兄弟の言動に疑いを持ち、少しずつ証拠集めをしていく。

複数の事件捜査と並行して、久しぶりにTracyとKinsのコンビが復活したのが嬉しい。すでに3人の子供たちを育て終わったKinsがTracyに子供たちとの貴重な時間を語るシーンは、シリーズの中では初めてではないが、以前にも増して印象的である。

Every night when I get home. I keep asking myself where the years went. Don’t get me wrong, I love with Shannah, but those years with the boys… those quiet times when their eyes lit up and they believed that anything in the world is possible.
毎晩家に帰るたびに思う。あの日々はどこへ行ったんだろう。もちろん妻との時間は良いものだが、子供たちとの日々は…それは彼らの目が輝いて、世の中はなんでも可能なんだと信じている感じる静かな時間・・・。

すでに8作品目となるとネタが尽きそうな気もしてくるし、凶悪事件ばかりを扱うのも不自然であるが、本作品では発生直後の事件と、未解決事件を並行して捜査するという新しい描き方で飽きさせず、しかも最後は久しぶりに泣きそうになった。

現在、Patricia Cornwell、Louise Penny、Jeffery Deaverなどいくつかの警察小説シリーズを読み続けているが、実はあまり学びがなく時間の無駄なのではと感じ始めていたのだが、本作品が面白かったために考え直さなければと感じた。

「The Midnight Library」Matt Haig

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
人生に失望し自殺を決意したNoraは生と死の間で不思議な図書館にたどり着く。

Noraがたどり着いた図書館で、学生時代の図書館の先生だったMrs Elmは案内する。そこの本はすべてNoraの人生の一つ一つの決断によってできる違う人生のパターンで、どれでも好きなだけ体験できると言う。

Noraはいくつかの人生を体験する。選んだ人生によって、元の人生と同じように悲しいことが起きることもある。一方、元の人生では死んだ父がある人生では健在だったり、元の人生では普通に生活している友人が、他の人生では交通事故で死んでいたりするのである。

印象的だったのは、元の人生で外で死んだ飼い猫Voltaireを外に出さない人生を体験したシーンである。

The year you had him was the best of his life… you don’t see yourself as a bad cat owner any more.
あなたが彼を飼っていた時間は、彼にとって最高の日々だったのです。…これであなたはもう自分を悪い飼い主だったとは思わないでしょう。

さまざまな自分の人生を体験する中で、Noraは人生について重要なことを学んでいく。

Every life she had tried so far had really been someone else’s dream… if she was to find a life truly worth living, she realised she would have to cast a wider net.
ここまで体験した人生はどれも他の誰かの夢だった。本当に自分自身に価値のある人生を見つけるためには、もっと広く体験しなければだめだと悟った。

他人の夢を生きないで自分の夢を生きる。当たり前のこととはいえ、世の中このように苦しんでいる人がたくさんいる。周囲の人の勧めたことを人生として選んで、「あの人のせいで自分はこんな不幸だ」と文句を言い続ける人である。今幸せではないと感じている人はもちろん、十分幸せな人生を送っている人もその幸せの密度を高めるために読んでほしいと思った。

「The Push」Ashley Audrain

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
BlytheはFoxと結婚して娘が生まれるが、やがて娘と打ち解けられない自分に気づいていく。

Blytheの母としての苦悩を描く。興味深いのは、並行して時代を遡ってBlytheの母Ceciliaとその母Ettaの、親子の様子や、Blytheの子供時代、つまりBlytheとCeciliaの親子の様子も明らかになっていく点だろう。Ceciliaを愛することができないEttaはやがて別の人生を選ぶし、母から愛されなかったCeciliaもBlytheに対して良い母でいることができないのである。

そして現代に戻り、Violetとの仲がうまくいかないと感じるBlytheだったが、2人目のSamが生まれたことで人生が好転していくのである。

正直、なかなか受け取り方が難しい内容である。親から愛されなかった子供は、親になった時に子供をうまく愛することができない、とはたびたび聞く話ではあるが、必ずそう言う悪循環が続くわけでもないだろう。また、Blytheは娘のVioletとは難しい時期もあったが、息子のSamに対しては最初から愛情を持っており、性別によって感じる行動が異なることもあるのかもしれないと感じた。

むしろ母を経験した女性の意見を聞いてみたいと思った。男性にはなかなか面白さがわからないかもしれない。

「The Rose Code」Kate Quinn

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
第二次世界大戦中にドイツの暗号解読に関わった女性たちを描く。

物語はOsla,Mab,Bethという10代、20代の女性3人を中心に描いたている。彼女らは戦時中にそれぞれの人生を送っていたが、あるきっかけからBletchley Parkにおける暗号の解読に関わるようになるのである。

Bletchley Parkには暗号解読に関わる男女が多く集まって日夜仕事に励んでいた。第二次世界大戦中、彼らの業務は極秘事項であり、彼らは外では一切自分の仕事を明かすことができず、それゆえに多くの葛藤を抱えるのである。男は拘束されて暗号の解読のことを漏らす危険性から戦争に志願することができない。そのため、Bletchley Parkで働く男性たちは、頭脳を使って戦争に貢献しているにも関わらず世間からは白い目で見られる。また、女性たちも恋人や家族に毎日何をやっているのかを一切伝えることができないのである。しかし、だからこそBletchley Park内部では特別な連帯感が生まれていくのである。そんなか、戦争の終結が近づくにしたがって、Osla,Mab,Bethと他のBletchley Parkのメンバーたちは少しずつ異なる道を歩むこととなる。

物語は戦時中の1939年から1944年のBletchley Parkの様子と終戦後の1947年、Bethから裏切り者の存在の示唆によって3人が再び連絡を取り合う様子を交互に動きながら進んでいく。

戦争の様子と暗号解読に奮闘する様子以外にもいくつか見所がある。まずはBethの家庭の様子である。Bethの家は元々はBletchley Parkで働くOsla,Mabのための宿として提供されていたが、母親の厳しい管理下におかれているBethを心配したOsla,Mabが、その暗号解読向きの才能に気づいてBletchley ParkにBethを雇うように進言し、それによってBethは少しずつ母親の束縛から解放されて自由を手に入れていくのである。

また、Osla,Mabは自身の文学好きであることから、Bletchley Park内の文学好きを集めて会合を定期的に行うのである。そこでは「Gone with the Wind」など、過去の有名な文学作品が多々議論されている。知らない作品ばかりであるが、時間があったらぜひ触れてみたいと思った。

また、Oslaの恋人がのちのエリザベス女王の夫となるPhilipである点も面白い。イギリスやヨーロッパの皇族の関係やその葛藤についても触れることができるだろう。

最初はなかなか物語が進まない印象を受けた。過去のKate Quinnの「Alice Network」や「Huntress」に比べると物語展開よりも登場人物の心の動きに焦点が当てられているように感じる。ただ、BethによるBletchley Park内の裏切りのもの存在の示唆によって、Osla,Mabが行動を開始した後半は一気に動き出す。

戦時下という中で自分たちができることに尽くした人々の熱い生き方に何度も泣きそうになった。イギリスに行く機会があったらBletchley Parkも行ってみたいと思った。

「Atomic Habits」James Clear

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
事故による怪我から習慣の力で復活し大きな成功を築いた著者が、習慣の力とそれを作り出す考え方や方法を語る。

僕自身もさまざまなことを習慣にしていて、比較的習慣の力や習慣を作り出す能力に長けているほうだと思うのだが、さらにそれを強化したいとおもっているなか、さまざまな人が本書を進めているのを知ってたどり着いた。

基本的に本書で語っているのは、習慣に対する機会、障害、心構えに対して、良い習慣は取り組みやすく、もしくは取り組まざるを得ない方向に変更し、悪い方向はその逆、つまり、取り組みにくく、もしくは取り組むのを不可能にする、という方法である。おそらく習慣化が得意な人はすでに大部分のことをやっていることだろうが、こうして改めて言語化してみてみると、習慣化の重要な部分がはっきり見えてくる。

印象的だったのが実際の行動であるActionと準備や下調べなどのMotionを分けて次のように語っている点である。

Motion makes you feel like you're getting things done. But really, you're just preparing to get something done.
下調べや準備は行動を起こしたように感じさせる。しかし実際には準備しているだけである。

何よりもまず行動することこそ大切で、常に意識しておきたいと思った。また、そのほかにも取り入れたいなと思ったのは次の定期的に行うセルフレビューである。。著者は自分のレビューを実践することを進めているのだ。

1.What went well this year?
2.What didn't go so well this year?
3.What did I learn?

また、自分自身の信念や理想からずれていかないために次のような問いかけも実践しているという。

1.What are the core values that derive my life and work?
2.How am I living and working with integrity right now?
3.How can I set a higher standard in the future.

たしかに、人間は自分の好き嫌いよりも周囲の視線を気にして、好きでもないことに時間を費やすことが起こりうることを考えると、このように自分の本当にやりたいことかをやっているかを問いかけることは人生において重要なのだろう。

昨今習慣の本は溢れているが、本書に比べたら内容の薄い本が多く、そのような本を読むことに時間を費やすよりも、本書を一冊読んでひたすら実践する方が何倍も効果があると感じた。また、それぞれの章に読者を納得させる興味深い物語を語っている点も面白い。どれも面白く、ぜひ覚えて人に聞かせたいと思った。長続きしない人には必読の一冊である。

和訳版はこちら。

「Getting to Yes: Negotiating Agreement Without Giving In」Roger Fisher

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
世の中には交渉が溢れている。そんな交渉をうまく進めるための考え方を語る。

交渉が重要だと気付いたのは30代になってからである。転職時の給料の交渉などはうまくいくかいかないかでその後の数年間の自分の人生に大きく影響を与えるし、毎日の同僚との会話で締め切りや誰が担当を決めるのも交渉である。以前、オンラインコースで交渉を学んでその重要性を知り、さらに深めたいと思い本書にたどり着いた。

本書の面白いところは、よくある交渉術のような、前もってポジションを決めて臨む交渉(例えば「私は5000円以上のお金を絶対払わない」のように)を否定しており、むしろ相手と自分自身の相互に利益をもたらす着地点を見つけることを推奨している。そして、そのために踏むべきステップと、そのために陥りやすい罠と回避方法を例を交えて細かく説明している。

本書の基本的な考えは次のものである。

Seperate the People from the Problem
人と問題を別に考える
Focus on Interests, Not Positions
自分の立ち位置に固執しないで利益を考える
Invent Options for Mutual Gain
相互の利益になる新たな選択肢を考える
Insist on Using Objective Criteria
客観的な指標を用いることを主張する

本書の核となる考え方は前半に詰まっており、後半は、交渉相手が相互利益に向かう交渉に乗ってこなかった場合などの進め方など、うまく進まない場合の対処方法について書いている。こちらは問題にぶつかったときにさらに読み返すべきだろう。

以前に受けた交渉術コースはどちらかというとポジションにこだわっており、人間関係を軽視しがちな印象を受けたので、本書の両者の利益を考える姿勢は新鮮で、取り組みやすいと感じた。僕自身すでにやっている部分も多いが、こうして言語化して整理して並べてもらうとさらに考えやすく受け入れやすい。なかでも、客観的な指標を用いるという考え方は考えたこともなかったので次回から心がけてみたいと思った。

「Project Hail Mary」Andy Weir

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
記憶を失った状態で、宇宙船のなかで目を覚ました彼は、少しずつ記憶を取り戻し、自分が地球を救うために宇宙を旅していることを思い出す。そんな宇宙飛行士の地球を救う物語を描く。

ビル・ゲイツやバラック・オバマなどの著名人が本書を2021年のおすすめとして挙げていたことから、「これは読まなくては」と手に取った。

物語は宇宙船のなかで記憶を取り戻しながら自らの使命を悟り奮闘する男Graceと、彼の回復した記憶による過去の様子が交互に描かれる。

過去では、太陽の光を弱める物質が認められ太陽の光が少しずつ弱まっているため、30年以内に人類の半分が死滅するだろうという予想が立てられる。そんななか、宇宙を調べると、その物質は太陽系以外も汚染しているが、唯一汚染されてない宇宙があり、その原因を調べて地球に汚染されないための情報を送るというのが、宇宙船のミッションなのである。

記憶を失った状態で物語が始まるという少々使い古された展開によって、期待値が最初はしぼんでしまったが、物語が進むごとに面白さが増しどんどん引き込まれていった。物語の展開自体はよくあるSFであることに変わりはないのだが、面白いのは、登場人物たちの試行錯誤や行動をかなり科学的に描いているという点である。もちろんどこまで信憑性があるかどうかは実際に宇宙について研究している人でもない限り明言できないが、少なくとも古臭い、重力や相対性理論や宇宙に空気がないことを無視したSFではないということだ。

そのため、宇宙船を作るために試行錯誤する様子や、言葉の通じない、未知の生物とコミュニケーションを図る様子など非常に興味深い。また、人工重力や相対性理論についても描かれており改めて勉強したくなった。

今までにないSF小説。マット・デイモン主演で映画になった「オデッセイ」も同じ著者の小説を基にしているということで、そちらもぜひ読んでみたいと思った。

和訳版はこちら。

「A/B Testing:The Most Powerful Way to Turn Clicks Into Customers」Pete Koomen, Dan Siroker

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
ABテストプラットフォームの先駆者であるOptimizelyのCEOである著者が、そのサービスやクライアントを通じて得られたABテストの知見を語る。

最近我が社でもまたABテスト熱が再燃しており、少しでも組織として意味のあるABテストができるようにと思い本書にたどり着いた。

ABテストを専門的に取り上げた書籍を読むのは本書で3冊目になるが、ABテストのプラットフォーマーとしての視点で書かれたものに触れたのは本書が初めてである。 序盤はオバマ大統領の大統領選におけるABテストの貢献の大きさなど、さまざまな形のABテストによる改善例を示している。

そんななか本書ではABテストの流れを次の5つのステップとしている。

1.Define Success
2.Identify bottlenecks
3.Construct a hypothesis
4.Prioritize
5.Test

1の成功の定義は必ず言われることで(とはいえ抜けがち)特に新しくはないが、2のIdentify bottlenecksという考え方は他のABテスト関連の書籍にはなかったので新鮮に感じた。向上などの生産効率を上げるためにはボトルネックという考え方は一般的だが、より良いサイト制作においても、目的のコンバージョンに対して、トラフィックがどこで止まっているのか、そんなボトルネックにもっと意識を向けるべきなのだろう。

またMicroconversionとMacroconversionというように、コンバージョンを二つに分けて考えている点も興味深い。3のConstruct a hypothesisでは、単純に思う仮説ではなく、ユザーインタビューやご意見フォーム、フォーカスグループなどを通じてより精度の高い仮説を挙げることを推奨している。この辺はかけられる工数によって実践していきたいと思った。

中盤以降では、実際に組織にABテストの文化を組織に浸透させる方法について、外部のサービスを利用する方法や新たにエンジニアを雇って組織内にテストチームを作る方法など、それぞれのメリットやデメリットを書いている。

全体のなかで特に印象的だったのは次の言葉。

A question worth asking about every test is, "Would you be happy showing the winning variation to all of your traffic" 
「勝ったテストパターンをすべてのユーザーに喜んで見せられますか?」と尋ねてみるべきです。

つまり、結果が良かったテストパターンが必ずしも正解というわけではなく、例えばユーザーがクリックするボタンが絶対的に正しければ、世の中のボタンはすべて女性の裸になってしまうということである。組織として、ブランドとして、そのテストパターンを世の中に自信をもって出せるのか。それを考えずに思いつくままテストをしてしまうと、ただ時間や労力の無駄になりかねないのである。

また次の冗談も、いきすぎたABテスト主義を抑制するために使えることだろう。

 There's a joke among A/B testing veterans that almost any variation of a button loses to a button that says "Free Beer." ABテスト業界にはこんな冗談があります。どんなボタンバリエーションも「無料ビール」というボタンには叶わないと。 

ABテストの方法にさらなる理解を与えてくれる内容である。本書の上の言葉に出会って、早速醜い見た目、誤解を招きかねないABテストパターンを実践している自社のABテストを改善したくなった。

「All That Remains」Patricia Cornwell

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
4組の男女のカップルが失踪し白骨死体で発見された。そして五組目のカップルが失踪する。

FBIの検死官Kay Scarpettaの物語の第3弾である。白骨死体として発見されたこれまでの被害者はいずれも靴を履いていなかったこと、トランプのカードが現場に残されていたことから同一犯とされており、失踪した五組目のカップルの女性は、権力者の娘であったことから、大きく報じられてFBIやCIAの上層部が絡んだ政治的な局面を強くしていくのである。

そして、そんななか、ワシントンから報道記者でありかつてはKayの天敵でありながらも、妹の殺害を機に友人となったAbbyも事件を探りやってくる。Abbyの話によると、事件を調べ始めてから、Abbyの周囲でも少しずつ不穏な動きが感じられるという。CIAやFBIは何を隠しているのかも犯人追跡と並行して大きな謎となっていく。

今回は現場にトランプが残されていたことから、スペードのエースに関するベトナム戦争における意味などの興味深い話に触れることができた。

相変わらず物語が描かれたのがすでに20年以上前とは思えないほど色褪せない物語で、今読んでも十分にその緊迫感が感じられる。実際、検死官である人物がここまで現場に足を運ぶものなのだろうか、という疑問は感じなくもないが、その辺は物語の都合上多少脚色があるのかもしれない。アメリカという国の司法やCIA、FBIなどの権力の構造や、地域や州の管轄についても好奇心を刺激してくれる点もありがたく、存分に楽しませてもらった。

「How to Win Friends and Influence People」Dale Carnegie

オススメ度 ★★★★☆ 4/5

人にどのように好意的な印象を与え、自分の求めている人間関係を作り出すのか、そんな方法について書いている。 なんといっても驚くのは、本書の初版が1937年に書かれているということ。その後の改定では、書かれている例などを時代の変化に合うように、また新たな年代の人にもわかりやすいように書き換えただけと言うこと。つまり、人間の本質は時代を経てもほとんど変化がないということである。しかし、人に怒りをぶつけたり嫉妬に狂って物事をまっすぐ考えられない人はいつの世の中にもたくさん存在するのである。

基本的にどのように人に好印象を与えるか、どのように自分の意見を相手が受け入れやすい形で伝えるか、という点が多く書かれている。 昨今コーチングなどの書籍も多く、ただ叱るだけでは何も解決しないことを認識している人も多いだろう。そんなわけで本書に書かれているすべてが新鮮だというわけではなかったが、ぜひ今後実践したいと思ったのが次の項目である。

Techniques in Handling people 人をうまく扱うには
3.Arouse in the other person an eager want. 相手の中に欲求を起こせ

Make People Like You 人に自分を好きにさせるには
2.Smaile 笑顔でいなさい。
6.Make the other person feel important and do it sincerely. 相手に自分が大事にされていると思わせ、それを誠実に行いなさい。

Win People to Your Way of Thinking 人に自分の考え方を伝えるには
5.Get the other person saying “yes, yes” immediately. まずは相手にはいと言わせなさい。
7.Let the other person feel that the idea is his or hers. 相手にそのアイデアは彼のものだと思わせなさい。
10.Appeal to the nobler motives. さらに崇高な目的のためだと主張しなさい。

Be a Leader リーダーになるためには
4.Ask questions instead of giving direct orders. 直接の命令をするのではなく、問いをなげかけなさい。

すべての考え方が新鮮だったわけではなかったが、本書には多数の歴史的事実が例として含まれており、それらはどれも面白く好奇心を刺激してくれた。こうして事実を話として聞くと、単にフレーズを聞くよりもはるかに記憶に残る。その点でも本書は評価が高いのだと感じた。時々読み返したいと思える一冊である。

「The Cruellest Month」Louise Penny

オススメ度 ★★★★☆ 4/5

カナダの長閑な田舎町Three Pinesで、町の知り合いの間で開かれた交霊会の最中に女性が亡くなった。Armand GamacheはBeauvoirとNicholなどとともに真相の究明に乗り出すのである。

三作目であるが、前二作と同様にThree Pinesで起こった事件を扱う。今回亡くなったのはMadeleineという町中の人から好かれていた女性で、誰からも好かれる女性だったからこそその殺人の動機が事件解決のカギとなる。そして、今回もThree Pinesの人々の魅力は健在である。詩人のRuth Zardoは見つけた卵から鳥の雛を孵化させる。画家のClaraは夫のPeterの助けを借りて、自らの作品作りに悩む。そんななか、本を愛する黒人女性Myrnaの人間関係をするどく指摘した言葉が深く印象的である。

Attachment masquerades as Love, Pity as Compassion and Indifferences ad Equanimity.
依存は愛を装い、憐れみは思いやりを装い、無関心は冷静さを装う。

また、事件解決と並行して、前二作品でGamacheの過去の大きな出来事としてほのめかされてきた、Gamacheが警察内部の不正を明らかにしたArnot事件の全貌が、Beauvoirの口から語られることで明らかになっていく。

今まで名前としてしか存在してなかった登場人物のGamacheと一緒に働く理由や、Gamacheの過去を不安に思っている様子が描かれ、個性を際立たせてくる回である。せっかく個性が立ってきた登場人物を忘れないうちに続編を楽しみたい。

「The Girl Who Lives Twice」David Lagercrantz

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
Salanderは妹Camillaとの対立を激化させていく。一方でBlomkvistは自分の電話番号を持ったまま亡くなった、不可解のホームレスの死の謎に惹かれていく。

ミレニアムの第6弾である。最初の3作品の面白さゆえに著者が変わっても続編ということで読み続けている。

BlomkvistはSalanderの力を借りて、亡くなったホームレスは特別な遺伝子を持ったネパール生まれのシェルパであることを突き止める。彼はなぜスウェーデンの地に現れたのか。そして、彼が死の間際に口にしていた言葉の意味とはなんなのか。やがて、Blomkvistはやがて世間を騒がせたエベレストの事件にたどり着くのである。

一方でSalanderは妹Camillaの動向を常に観察し、Camillaもまた、Salanderを見つけるために躍起になり、まさに殺すか殺されるかという状況に陥っていく。

エベレスト登山の過酷さを扱った物語は、実際に起こった第遭難事故を暑かった映画「エベレスト」や「淳子のてっぺん」などでこれまでにそのいくつかに触れているため知識としては知っていたが、本作品はそこに改めてシェルパとしての立場からの視点をもたらしてくれた。

ただ、それ以外には特に新鮮さや際立った驚きはなく、特に、SalanderとCamillaの追跡劇は、ようやく向かい合った因縁の対決にしては、古いアクション映画のような展開の薄っぺらさや稚拙さを感じてしまった。

このシリーズは最初の著者Stieg Larssonからに引き継がれて3作品目になるが、全体的にも、展開が安っぽくなったという印象は否めない。むしろ人の作り出した世界観に習ってここまで3作品書いてきた著者David Lagercrantzを評価すべきなのだろう。Stieg Larssonの作り出した世界観を壊してはならない一方で、作家として生きる以上自分の個性を出していきたい、など、いろんな葛藤があったに違いないが、そろそろ潮時なのかもしれない。