「深夜特急6 南ヨーロッパ・ロンドン」沢木耕太郎

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
イタリアについた著者はローマ、フィレンツェ、マカオ、マドリート、リスボンを経てロンドンへ向かう。
旅が終わりに近づいていくことで、著者が感じる淋しさがにじみ出てくる。全体としてヨーロッパは先進国であるためアジアや中東の国々に比べて文化や人々の振る舞いのなかに特に大きな目新しさはないのだろう。描かれるないようも、旅全体に対しての著者の感想の方が多いように思う。

外国ってわからない。ほんとにわかっているのは、わからないということだけかもしれないな。

そしてやがて最終目的地であるロンドン中央郵便局に向かうのである。
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「3分でダンスが踊れた」中谷彰宏

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ダンスを趣味として楽しむ著者がダンスに対する考え方を語る。
冒頭で著者が書いているように、著者自身は別にダンスの先生の資格を持っているわけではなく生徒の一人だと言う。そんな著者が自身のダンスを通じた経験や考え方を語ってくれるのだが、競技ダンスよりも、パーティでのマナーや技術の向上の仕方に多く触れている点が面白い。姿勢やパートナーとの調和、そしてマナーを語ってくれるので、競技ダンスとしてどうしても技術や体力やスピードに偏ってしまいがちにとってはいろいろ考えさせられる内容が多い。
ダンス経験者には新しい視点を与えくれるだろう。また、ダンス未経験者もひょっとしたら興味をかき立てられてダンスを始めようと思ってくれるかもしれない。
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「珍妃の井戸」浅田次郎

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
列強諸国に侵略された清。そんななかひとりの妃、美しい姫、珍妃(チェンフェイ)が井戸に突き落とされて殺されたという。一体誰がどんな目的で珍妃(チェンフェイ)を殺したのか。日本、ロシア、ドイツ、イギリスの高官が協力してその真実に迫ろうとする。
光緒帝が愛した珍妃(チェンフェイ)が西太后によって殺害されたという実話に基づいているのであるが、そもそもその事実についてさえ中国史に疎い僕は知らなかった。著者はそんな歴史に疎い日本人にも楽しめるようにいくつかの謎を交えながら読者を物語に引き込んでいく。
真実の究明に協力することになった日本、ロシア、ドイツ、イギリスの高官4人は関係者に事実をたずねるのだが、それぞれ異なることを語るので、謎は次第に深まっていく。一体どれが真実なのか。その究明の過程で伝わってくるのは、一つの偉大な国を身勝手な理由から滅ぼした列強諸国への非難である。今、世界の中心にいる国々は過去の自分たちの非道な行いにもしっかり目を向けるべきなのだろう。
「蒼穹の昴」の続編ではあるが、物語の構成は大きく異なる。また「蒼穹の昴」を読んだときにも思った事だが、この物語を楽しむためには、もっと中国史に関する知識を持っている必要があるように感じた。
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「リクルートのDNA 起業家精神とは何か」江副浩正

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
多くの起業家を排出するリクルート。リクルートの創業者である著者がリクルートが成長する過程の出来事や社内の精神について語る。
むしろ著者の自伝的色合いが濃く、「リクルートの歴史」といったタイトルの方がふさわしいような印象を受けた。本書で語られるそのリクルート創業当時のいろんな困難は人間関係の重要さを教えてくれる。実際本書でも第二章で「私が学んだ名起業家の一言」とあるように、著者自身も非常に人とのつながりを大事にしている事が伝わってくる。また、リクルートが世の中に必要とされる物を提供する事を第一に考えた結果、大きくなってきた点も印象的である。
最後の章ではこれまでに失敗した事業も紹介している。失敗から学ぶことの大きさも本書では繰り返し触れられているのである。何か世の中のためになる仕事がしたくなってくる。
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「情報を捨てるセンス選ぶ技術」ノリーナ・ハーツ

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
インターネットの普及によって情報が溢れかえるなか、どのように情報を取捨選択していくべきか、著者が語る。
いろんなメディアから様々な情報が発信され、毎日大量にその情報を受け取っているが、常にその情報の正しさに疑いを持っているだろうか。その情報が情報の受け手を意図した方向に導こうとしている可能性を考慮しているだろうか。同じグラフでも縦軸、横軸の取り方一つで見え方は大きく変わるのである。また、今ではどこの通販サイトにも取り入れられているユーザーレビューも、多くのサクラが存在するのである。本書が語ってくれるのは、そんな情報のすべてを鵜呑みにせず、真実を見極める方法である。
人は同じ考えを持つ人と一緒にいようとする傾向があるが、真実を見極めるためには反対意見を言ってくれる人を近くにおいておくべきだ、という考え方は何も情報のあふれる今に限った事ではなくずっと使える考え方のような気がする。
アフガン戦争に向かうブッシュを支持したアメリカ人や、2000年問題を過剰に警戒した世界の人々など、記憶に新しい過去の出来事のなかから、人々が間違った情報に操作された例をいくつか紹介している。真実を見抜く目を育む手助けになるかもしれない。
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「できる上司は「教え方」がうまい」松尾昭仁

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
組織における教えることのメリットやその効果的な方法を説明する。
序盤は教える事の利点を語る。教える側にとっては「自分でやった方が早い」という考えを持つことは多く、その結果、部下を育てる事ができずに組織の効率性を損ねている例が多々あるのだろう。実際には、部下を育てて自分と同じ能力の人間を複数持つ事でこそ組織は効果的に機能するのである。
中盤以降は、教えるために有効な方法を順を追って説明している。ほめる事の重要性や、相手のレベルを見極めることなど、普段から教えることに慣れている人にとっては当たり前のことばかりではあるが、改めて教えることに重要な1つ1つの要素を本書を通じて見直すことができるだろう。
人間のタイプによって教え方を変えるという点が本書でもっとも面白い部分ではないだろうか。部下を「理論派」「行動派」という2つのタイプにわけるだけでなく、「まったくの初心者」「教え方に文句をつける部下」「根拠のない自身がある部下」「すぐにリスクを考えてしまう部下」「自分よりも年上の部下」「自分よりはるかに年下の部下」「本気で学ぶ気が感じられない部下」「頑張り過ぎる部下」と8つのタイプにわけでそれぞれの対処方法を説明している。必ずしも教える側、教えられる側としてだけでなく、人間として成長するためにはどう行動すべきか、という点で考えさせられる部分もあるだろう。
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「わたしはマララ 教育のために立ち上がり、タリバンに撃たれた少女」マララ・ユフザイ

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
パキスタンのスワート地区で育った女性、マララ・ユフザイがタリバンの圧力や不安定な国政のもとでの人々の生活の様子を描く。
2001年の9.11直後はタリバンという言葉を何度も耳にしたが最近はあまり耳にしなくなったように思う。しかしそれは9.11から時間が経って人々の関心が薄れたから、メディアも取り上げる回数が少なくなったというだけなのだろう。本書で描かれるパキスタンの人々の生活の様子は、タリバンの脅威が国内ではその後もずっと続いていたことを教えてくれる。
タリバンは、女性が教育を受けることや肌をさらすことをイスラムの教えに背いているとして強制的にやめさせたり、そのような行いをしている人やそれに貢献している人を殺害したりするのである。著者マララは、そんななか教育の重要性を認識して学校を運営する父親と、強い信念をもった母親のもとで育つ。しかし、タリバンへの恐怖から多くの人は行動を制限され、公に逆らったひとは次々と殺されていくのである。友人や知り合いが殺され、死体が町に放置されるという、僕ら日本人から見れば異常としか思えない出来事が、著者の周囲では日常だったことが伝わってくるだろう。日本という安定した国でしっかりとした教育を受け、自由に外出できるような環境で生きられることの幸せを改めて感じられることだろう。
そして後半はタリバンによって顔に弾丸を受け、生死の境をさまよう様子が描かれている。顔に弾丸を受けてもなお、タリバンの攻撃は私の声を世界に届けることにつながった、と考えることのできるマララの姿勢が印象的である。女性の地位の向上や教育の重要性を語る一方で、十代の女の子らしい振る舞いや想いが文中に散りばめられている点も印象深い。マララのように恵まれない者は、試練を経て強い信念を育む一方、僕らのように恵まれた者はその価値を見失い、信念を持たずにただ悶々と生きているのだ。自らを律したくなる一冊。
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「十字軍物語3」塩野七生

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
第三次十字軍から第七次十字軍を描く。
十字軍物語の第3作目であるが、1作目、2作目で第一次十字軍、第二次十字軍を扱っていたのに対して、本書では第三次から第七次までの5つの十字軍を描く。お互いを認め合うサラディンとイギリスのリチャードの第三次十字軍の章以外では十字軍はむしろ政治的な要素が強かったり、惨憺たる結果に終わったりする。
印象的なのは惨憺たる結果に終わりながらも神に尽くした聖人とされたフランス王ルイである。自らの利益を考えずに神に尽くそうとし、それゆえに十字軍に参加した人々に大きな傷跡を残した彼の行動は、当時の世の中の人の考え方の現代との違いを示しているようだ。神には逆らってはならない。神に尽くせば救われる。今よりもずっとそう信じられていたのだろう。また、いずれの十字軍でも大きな戦力となった騎士団の動向も面白い。聖ヨハネ騎士団は十字軍の後ロードス島へ本拠地を移し、一方で聖堂(テンプル)騎士団は弾圧の末に消滅するのである。
ヤッファやアッコンなど拠点となった町にいつか行ってみたくなった。
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「届け物はまた手の中に」石持浅海

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
恩師である益子(ましこ)先生を殺害した犯人を殺して復讐を果たした楡井和樹(にれいかずき)は、同じく復讐を誓いながらも、起業家としての幸せな家庭を築くことを選んだ友人設楽宏一(したらこういち)にその報告に向かう。
この奇抜な設定がすでに石持ワールドへの入り口である。この設定に抵抗がある人は石持浅海の世界はあまり楽しめないのかもしれない。さて、友人設楽(したら)の家に復讐の報告に向かった楡井(にれい)は設楽の妻、妹、秘書の女性3人と設楽(したら)の子供の4人の歓迎を受ける。設楽(したら)は急な仕事で部屋から出てこないのだと。不自然な女性3人の行動と、友人が久しぶりに訪れているにも関わらず部屋から出てこない設楽(したら)。そんなか、楡井(にれい)は訪問の目的を果たそうと試行錯誤するのである。
ほとんど設楽(したら)邸で物語が進むという石持らしい作品。女性3人のわずかな不自然な動作を元に真実に近づいていく楡井(にれい)の思考を楽しめるだろう。
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「深夜特急5 トルコ・ギリシャ・地中海」沢木耕太郎

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
トルコで著者は友人から託されたこの旅唯一の目的を果たすこととなる。
旅の最終目的地が近づいてきたことによる著者の喪失感がにじみ出てくるところが興味深い。

旅は人生に似ている。どちらも何かを失うことなしに前に進むことはできない・・・・・・。

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「成功の法則92ヶ条」三木谷浩史

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
楽天を大きくした三木谷浩史氏がその成功の法則について語る。
若干前作の「成功のコンセプト」と重なる部分もあるが、個人的には本書の方が印象的だった。タイトルの通り本書は92の細かい内容に別れているが、そのなかでも印象的だったのは35の「WIN-WIN関係を創造せよ」との83の「ロングテールを理解せよ」である。「WIN-WIN関係の創造」というのは長く生き残るビジネスを行ううえでは必須の考えだが、どうしても忘れてしまいがち、また「ロングテール」というのは今の時代の変化である「多様化」を言い変えた言葉でもあり、あらゆる面において、ロングテールの考えを適用していかないと企業は生き残れないというのである。
毎朝英語を勉強していたことや、海外から情報を取得することの重要性を説くところなど含め、なんか僕とやっていることに共通点があるな、と思った。
【楽天ブックス】「成功の法則92ヶ条」

「宰領 隠蔽捜査5」今野敏

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
管内で国会議員が失踪した。署長の竜崎伸也(りゅうざきしんや)は極秘の捜査によって誘拐殺人事件であることが明らかになる。
例によって、地位の上下や私欲に縛られずに正義を全うしようとする竜崎(りゅうざき)の姿勢に触れられる本シリーズは面白い。今回の事件は神奈川県警も巻き込んでいることから、神奈川県警、警視庁、双方の立場を考慮して行動していく。また、事件のほかに、息子の大学受験という家族の問題も同時に抱えている。様々な業務を洗い出してそれぞれを優先順位をつけて的確な解決方法を見つけ出して処理していく様子はなんとも爽快である。
毎回、自分自身の行動についても見つめ直させてくれる一冊。
【楽天ブックス】「宰領 隠蔽捜査5」

「One for the Money」Janet Evanovich

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
お金がなくて困ったStephanie Plumは法廷に現れない犯罪者を捕まえる仕事、Bounty Hunterをすることを決意する。最初のターゲットは殺人を犯して逃亡したもと警察官で、なんとStephanieの学生時代の知り合いの男Morelliだった。
ターゲットであるMorelliを追ううちに、逆にStephanieは窮地を救われることとなる。そして次第にMorelliとStephanieの間に妙な協力関係が生まれていく。
Stephanieが失敗を繰り返しながらも、少しずつBounty Hunterという仕事に慣れていく様子が面白い。Stephanieが住んでいる町が非常に狭くて、そこら中に知り合いや元同級生がいて、みんなが結婚相手を世話しようとしている点が、懐かしい温かさを感じさせる。Bounty Hunterという職業自体が日本では馴染みが薄いので、文化の違いが反映されているような気がする。そもそもなぜ日本にはBounty Hunterという職業が存在しないのだろう、と考えてしまう。
続編もあるようだが、Stephanieが成長する様子が見れるかもしれない。

「TEDトーク世界最高のプレゼン術」ジェレミー・ドノバン

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
TEDのプレゼンはなぜあれほど人々を魅了するのか。著者は過去のさまざまなTEDトークを例に出しながら、効果的にプレゼンをするための方法を語っている。
「ストーリー」とか「ユーモア」といった、いいプレゼンを語る上で誰もが盛り込む内容だけでなく、「キャッチフレーズ」や「紹介の仕方」などについても語る。TEDトークはどれもインターネットで公開されているから、本書の説明だけでわからないものはすぐにチェックすることができるだろう。
本書で語られているなかでもっとも印象的だったのは、プレゼンのなかで自分を主人公にしてはいけないということだ。見習うべき行動について語るのであれば、自分ではなく第三者にするべきで、自分を主人公にするとただの自慢話になって聴衆を遠ざけてしまうのだと言う。
その人自身の持っているキャラクターもあるから、本書で紹介されている方法をすべてプレゼンの中に取り入れるのは難しいかもしれない。TEDではその日初めて会う人に語るが、実際には上司や仲間など、すでに知っている人にプレゼンをすることもあるだろう。鵜呑みにすべきではないと警戒しながらも取り入れられる部分は取り入れたいと思った。
また、本書はプレゼンの技術を教えてくれる本というだけでなく見るべきTEDトークをたくさん紹介してくれる本としても役に立った。
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「Mobile First」Luke Wroblewski

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
スマートフォンの普及によってWebの作り方は大きく変わった。著者はMobile Firstというコンセプトでその考え方を語る。
その考え方は、Mobileという限られたスペースに情報を入れようとするために、不要な情報や要素はすべて削ぎ落とす必要がある。その上で出来上がったMobile用のWebからPC用のWebを作成する際に、本当に役立つものだけを付け加える、という、まさにMobileサイトを中心とした考え方である。
面白いのは、冒頭で著者は言っている。

今までは日本人でもない限り誰もモバイルでWebを閲覧しようなどとはしなかった。

つまり、数年前まで日本はモバイルでのWeb閲覧という分野においては世界でも進んでいたのだ。にもかかわらず、海外のWeb情報サイトではそこらじゅうで目にする「Mobile First」という言葉、日本ではまったく聞かない。すでに世界から遅れをとっているということなのか、それとも単に文化の違いなのか。

「成功のコンセプト」三木谷浩史

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
楽天市場を立ち上げた三木谷浩史がその成功のコンセプトを語る。
成功者というのは、その成功はすべて自分の決断によって達成されたと語りがちだが、実際には幸運にも恵まれているのだ。そういう意味では本書のような成功者の本を読む際には多少傲慢な物言いも覚悟しているのだが、それほど悪い内容ではなかった。
本書で語られている5つのコンセプトのうち、最初の4つはいろんなところで語られることでそれほど新しい物ではないが、5つめのコンセプトとして「スピード!スピード!スピード!」というのは面白い。最近だらだらした会議が多くなってきた僕の会社の重役たちもぜひ本書を読んでスピードの重要性を理解して欲しいと思った。
【楽天ブックス】「成功のコンセプト」

「深夜特急(4) シルクロード」沢木耕太郎

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
インドを後にした著者は、パキスタン、アフガニスタンを経由してイランへ向かう。
毎回のごとくそれぞれの国の個性が面白い。特にパキスタンの長距離バスの運転手のその運転の様子が著者の興味をひいたようだ。旅が進むにしたがって、著者の視点が文化やその土地の人よりも、旅や自分と同じ旅人に向かっている気がする。

1日早く帰ったからといってそれが何になるだろう。むしろ、早ければ早いほど、青春そのものといった日々から足早に遠ざかってしまいそうな気がする。それらの日々は必ずしも自由で甘美なばかりではなく、多くは過酷ですらあったろうが、いざ失う日が近づいてくるとなると、たまらなく貴重なものに思えてくる。

4冊目を読み終わって思うのは、あまり沢木耕太郎という著者は観察力にすぐれた人間ではないということ。もちろん、「自ら経験しないとわからない」として、あえて細かい部分を書かないようにしているということも考えられるし、日本に帰ってきてから記憶をたよりに書いたため本当に印象に残ったことしか欠けなかったのかもしれないが、これだけの国を旅したらもっとたくさん書くことがあるのではないかと感じてしまう。
【楽天ブックス】「深夜特急(4) シルクロード」

「Qrosの女」誉田哲也

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
人気ブランドQrosのCMに登場した美しい女性は名前も年齢も国籍も明かされなかった。やがて彼女は「Qrosの女」と呼ばれてさまざまな憶測を呼ぶ事となる。ジャーナリストの矢口慶太(やぐちけいた)や栗山孝治(くりやまこうじ)も「Qrosの女」の情報も探ろうとする。
ジャーナリストや女優の視点で物語は展開する。興味深いのは女優や俳優として成功したいという人間と、容姿に恵まれながらも人から注目されるような生き方をしたくない人間がいることだ。また、一般の人にとっては人の秘密を暴くことを仕事にしているように見えるジャーナリストも、それぞれ独自の信念や良心を持っているのだ。
非常に多才な誉田哲也であるが、本作品のなかで長く印象に残る部分は少なそうだ。気楽に読める作品ではある。
【楽天ブックス】「Qrosの女」

「Beautiful Lies」Lisa Unger

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
車にひかれそうになった子供を助けたところを報道され、世間からの注目を浴びたRidleyだが、それを機にいろいろなことが起きるようになった。やがてそれは彼女自身の出生の秘密にまでおよんでいく。
本書は兄Aceと父と母の家庭に育った女性Ridleyの物語。自分の姿が報道されたあと、本当の父と名乗る人から手紙を受け取るのである。自らの出生に疑問をもつRidleyは少しずつ大きな陰謀に巻き込まれていく。実は自分は過去・・・とか、疾走したあの人が実は・・・、という流れの本が多くて読み終わってあまり時間が経たないうちに記憶から薄れてしまっている。
さて、本物語りでは、Ridleyの叔父が何年も前に行っていた福祉制度が物語の鍵となるのだが、昨今日本で議論になったことと非常に似ているため、いろいろ考えさせられる物があるだろう。子供を育てることができない母親に、「それが母親の責任」とその義務を強いて不幸な子供達を増やすのか、それとも子供を手放す自由を社会が受け入れ、子供達を育てる施設を整えるのか。
本書ではRidleyと同じように自分の出生に悩んで家を飛び出したAceもたびたび登場する。ドラッグから抜け出せなくなったAceの存在が日本とアメリカの文化の違いを際立たせているような気がする。
一度両親を、自分の本当の親じゃないかも、と思い始めたRidleyには過去のすべてのできごとが嘘っぽく見え始める。考えてみると、人は他の家庭がどのように子供に接するか、ほかの家庭の親と子供接し方が自分の家庭のそれとどのように異なるかというのは、本当に知る機会がないんだな、と考えさせられた。

「深夜特急(3) インド・ネパール」沢木耕太郎

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
マカオ、香港、マレーシアを経てついにインドに到達した著者。インドの生活に触れる。
前の2冊はどちらかというとややおおざっぱなアジアという感じがして、日本でも歌舞伎町や新大久保あたりで味わう事ができそうで、あまり興味がわかなかったが、本書のインドの様子は、どこか日本では決して経験できない雰囲気があって楽しんで読む事ができた。
インドにいくと人生観が変わる、とよく言われるが、本書はそんな様子の一部を見せてくれる。しかし、印象的だったのはむしろ、ここまで長く旅をしてきた著者が、旅というものに対して、どこか達観した見方をするようになった点である。

彼はただ通過するだけの人です。今日この国にいても明日にはもう隣の国に入ってしまうのです。どの国にも、人々にも、まったく責任を負わないで日を送ることができてしまいます。

また、隣国のネパールの様子も描いている。若いうちにこの2つの国に行ってみたいと思った。
【楽天ブックス】「深夜特急(3) インド・ネパール」