「ローマ人の物語 危機と克服」塩野七生

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
悪名高き皇帝ネロの後のローマ帝国の物語で、紀元69年から98年までを描いている。
ガルバ、オトー、ヴィテリウス、ヴェスパシアヌス、ティトゥス、ドミニティアヌスと皇帝が次々と変わる時代だが、ローマ帝国自体は比較的安定していたようである。首相が次々と変わる日本のように国民がどこか政治に無関心な様子である。それは見方を変えると、すでに国自体がそう簡単に不安定な状態にならないという確信が国民のなかにあったのだろう。
次々変わる皇帝のその政策やふるまいをここまで連続して見せられると、どのような人間が信用を失いやすく、どのような人間が長く信頼を勝ち取れるかという傾向が見えてくるようだ。「歴史から学ぶことは多い」と言葉としては多くの人が知っていて、使ったりもするが、ローマ帝国の皇帝たちから学べることは、企業の経営者たちにも共通している気がする。まだローマ帝国の歴史なかばではあるが、結局カエサルとオクタビアヌスに勝る皇帝はいないのではないかと思えてくる。
本書のもう一つの個人的な見所はポンペイで有名なヴォスヴィオ火山の噴火である。当時ヴォスヴィオ火山の麓の町で生きていた男性がタキトゥスという当時の作家に送った手紙の全訳はそれが確かに現実に存在した悲劇であることを伝えてくれる。
トライアヌスが皇帝になったことで終わる本書。ローマ帝国はこの後「五賢帝時代」と呼ばれる時代に入っていくのである。
【楽天ブックス】「ローマ人の物語 危機と克服(上)」「ローマ人の物語 危機と克服(中)」「ローマ人の物語 危機と克服(下)」

「自律神経が整う時間コントロール術」小林弘幸

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
自律神経を整えるための生活方法を書いている。
正直僕自身も人生の効率化はかなり強く意識していて、本書に書いてある多くのこと、例えばミニマリズムや早起きや整理整頓、毎日の同じことを繰り返す、などはすでに生活に取り入れている。そんな僕でもいくつか現在できてなくて取り入れたいなと思えることがいくつかあった。

カバンの整理
朝はメールを見ない
スマホの通知機能はオフ
夕食は就寝の3時間前までに
記念日を大切に

どれも説明するまでもないかもしれないが、なかなかわかっていてもできないものだ。また、著者がロンドンの病院で働いていたときに出会った尊敬できる人の考え方が印象に残った。

I don’t believe anybody.

一見冷たく寂しく聞こえる言葉だが、人のせいにしないで常に冷静にいるために、また人の励ましや行為に心から感謝できる心構えなのだと、語っている。僕自身の普段の心構えと似ている部分もあるが、人へのアドバイスとして心に留めておきたいと思った。
全体的にはものすごい特別な内容が書かれているわけではない。試行錯誤をして生きてきた人がある程度の年齢に達すれば誰しもそれなりに独自の生き方や習慣を身につけており、そんななかの1人がそれを本にしてシェアしてくれたという印象である。もちろん上に書いたようにそのなかからも得られるものはあるが特別、知人にお勧めするほどの内容ではない。
【楽天ブックス】「自律神経が整う時間コントロール術」

「「引きずらない」人の習慣 怒り、悲しみ、不安のワナにハマらない」西多昌規

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
人生において、怒りや悲しみを引きずるのは悪い事ではないが、早く立ち直って前向きに冷静に生きることができれば人生はきっと良くなるはず。僕自身、どちらかというとまさに「引きずらない人」なのだが、「引きずる人」に今以上にいいアドバイスを与えられたらと考え、本書を手に取った。
気になったのは次の項目。

引きずる人は興味を持てるものが少ない、引きずらない人は好奇心が強い
引きずる人は白黒二択で考える、引きずらない人はグレーでも納得できる
引きずる人はまず言い訳をする、引きずらない人はまず素直に謝る
いい汗をかくことは、メンタルにもプラスの効果がある

どれも思い当たることばかり、引きずるか引きずらないかという性格と直接関連性があるとは思っていなかったが、どれも「引きずらない」自分自身に当てはまることばかり。周囲を見渡しても「引きずらない」人は往々にして、多趣味で忙しく、運動をしていることが多いように感じる。
前半は日常的な出来事に対して「引きずらない」ための方法を書いているが、後半では、身近な人の死や、失恋など、引きずらないわけにはいかないような大きな悲しみに対する方法としても触れている。僕自身それほど大きな悲しみにはまだ出会っていないがぜひ次のことはぜひ覚えておきたいと思った。

自分と同じ経験をした人を探す

思ったのは、こういう本を読む人も大部分は「引きずらない人」なのではないかということ。
【楽天ブックス】「「引きずらない」人の習慣 怒り、悲しみ、不安のワナにハマらない」

「Justin Bieber: First Step 2 Forever: My Story」Justin Bieber

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5

ジャスティンビーバーのことは正直、その名前と、YouTubeから火が点いて人気が出たということしか知らなかったが、若くても違う国の話でも、違う分野の話でも、サクセスストーリーのなかには学ぶ部分があり、本書も目についたのは偶然だが、何か学ぶ部分があるのではないかと思って手に取った。
やはりジャスティンが音楽に興味を抱いたときに、周囲の人間が誰も止めずにむしろサポートしたことが、子育てに関心のある僕にとっては印象的だった。モノをドラム代わりにスティックでたたいて壊すジャスティンをきっと家族や周囲の人間は暖かく見守ったのだろう。同じようにジャスティン自身も家族やファンの大切さを何度も繰り返しているのが素敵だった。このような本を読むといつも感じることだが、成功している人ほど周囲の人間のありがたみをしっかり認識しているという点は、見習うべきことなのだろう。
その若さゆえに、さすがにアラフォーの僕の心に響くような言葉は多くはなかったが、カナダという遠い地の一つの素敵な家族の形を垣間見ることができたきがする。もちろん、本書を読んでから、いろんなジャスティンの音楽をYouTubeで検索してみてみたし、ジャスティンが本書の中で触れている、ジャスティンの憧れのアーティストたちにも改めて興味を持った。YouTubeで一度ずつチェックして自分の視野の範囲を音楽の範囲にも広げていきたいと思った。

「超ひも理論をパパに習ってみた 天才物理学者・浪速阪教授の70分講義」橋本幸士

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
数学関連の書籍というとだいたい途中からついていけなくなるもの。それでも部分的にで新しい考え方に触れられたり、新しい方面に好奇心をかきたてることができればいいと思って本書も読み始めた。
超ひも理論とはなんだろう。一時期ポアンカレ予想を理解しようとした時も似たような話が出てきたが、どうやらこの話はそれとは別物で、どうやら次元の話のようだ。

僕の理解した範囲で説明すると、陽子は3つのクオークから成り立ち、そのクオークを説明するのに異次元の存在を考えたほうが都合いいということなのだとか。そして超ひも理論はその次元の存在を根底から覆すものなのだそうで、本書はそこに至るまでを高校生にもわかるように説明している。

個人的には、高次元の存在が低次元の世界に存在したときには、消えることが可能という考え方はすごく印象に残ったが、納得するほど理解できたとはとても言えないので、いくつか気になる単語や参考文献を残しておいて今後の読書につなげたい。

本書はタイトルからもわかるように、物理学者のパパが娘に超ひも理論を少しずつ説明していくという体裁をとっているが、パパが「娘に仕事を説明できることができて幸せだった。」と書いている点が印象的だった。やはり父親は、自分が人生で大きな時間を費やす分野を娘に理解してほしいんだろうなと感じた。

新語
クオーク
グルーオン
ファインマン図
マルダセナ予想
ヤンミルズ理論

 

関連書籍
「大栗先生の超弦理論入門」

【楽天ブックス】「超ひも理論をパパに習ってみた 天才物理学者・浪速阪教授の70分講義」

「暗幕のゲルニカ」原田マハ

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
イラクへの武力行使を発表された国連安保理ロビーにあるゲルニカには暗幕がかけられていた。戦争の悲惨さを訴えるゲルニカに武力行使を発表する場で暗幕をかけた理由が何なのか。ピカソに人生をかけたMomaのキュレーター八神瑤子(やがみようこ)はそんなピカソ騒動に巻き込まれていく。

まず自分の無知さを知ったのが、ピカソが作成したゲルニカは、絵画の他に3つのタペストリーがあり、その1つがニューヨークの国際連合本部にあるのだという。本書はそんな「もう一つのゲルニカ」と、ピカソ自身がゲルニカを描く様子とそのときの世界の情勢を描いている。

本書は2001年の同時多発テロ直後の現代と、1937年のゲルニカ爆撃時のピカソとその周囲の人々を交互に描いている。1937年の場面ではパリ博覧会のための絵画を依頼されたピカソが、描く絵画の題材に悩む様子からゲルニカができるまで、そしてゲルニカがアメリカに渡るまでを描いており、現代の場面では同時多発テロからアメリカのイラク侵攻を描いている。

ゲルニカがゲルニカという町で起きた惨劇の様子を描いているということは知っていたが、その惨劇がどのような状況のもとで起こったのかは本書を読むまで漠然としか知らなかった。本書によって、ヒトラー、ムッソリーニ、フランコの独裁政治という歴史とあわせてゲルニカを理解する事ができた。

また、ゲルニカという絵画が公開当初から大きな物議を引き起こし、混乱する世界状況の中で秘密裏にアメリカに渡ったというのも今回始めて知った事実である。

1937年を場面としたゲルニカとピカソにまつわる物語はとても印象的だったが、現代の物語の描き方は若干安っぽい印象を受けた。必ずしも現代と絡めて物語を構成しなくてもよかったのはないだろうか。一つの有名な絵画を生み出すまでの画家の苦悩や当時の状況を描くだけでも十分魅力的な物語になるのではないかと感じた。
【楽天ブックス】「暗幕のゲルニカ」

「星野リゾートの教科書 サービスと利益両立の法則」中沢康彦

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5

星野社長がどれほど教科書を重視しているかを語っている。
古い旅館を再生する際に、星野社長がどれほど、過去に書かれた教科書となる本を重視してきたかを描いている。個々の再生エピソードも含まれているが、基本的には本に書かれた内容をどのようにしっかりと実践してきたかである。
印象的だったのは、本で読んだ内容を中途半端に実践するのではなく、しっかり書かれた通りに実践することが大切、という部分である。賛否両論あるかもしれないが、確かに部分的にだけ取り入れて満足してしまうことも往々にあるだろう。
内容はそれほど印書的なものではなかったが、これまで星野社長が読んで実際に役立った多くの本を紹介している。今後の読書の幅を広げるという意味では意義のある内容である。ぜひ読みたいと思った本を挙げておく。

「イノベーターの条件」 ピーター・F・ドラッガー
「エクセレント・カンパニー」
「柔らかい心で生きる」矢代静一
「1分間エンパワーメント」
「1分間顧客サービス」
「サービス・リーダーシプトは何か」ベッツィ・サンダース
「顧客ロイヤルティの時代」内田和成、嶋口充輝
「経験価値マーケティング」バーンド・H・シュミット
「ブランディング22の法則」アル・ライズ、ローラ・ライズ
「ニューポジショニングの法則」
「ブランド・エクイティ戦略」デービッド・A・アーカー
「ONE to ONEマーケティング」
「競争の戦略」マイケル・E・ポーター
「The Myth of Excellence」Fred Crawford, Ryan Mathews
「ストラテジック・マインド」大前研一
「戦略サファリ」ヘンリー・ミンツバーグ

【楽天ブックス】「星野リゾートの教科書 サービスと利益両立の法則」

「サラリ-マンでも勝てる!年利400%「スイングトレ-ド」術」大橋幸司

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
スイングトレードで年利400%を稼ぐ著者が、その手法を語る。
ここ数年の目標は、給料以外の収入を少しずつ増やしていくことである。そのうちの一つが株式投資を含む資産運用で、その手法の一つとして本書を手に取った。
序盤はスイングトレードを、デイトレード等と比較してどのようなメリットがあるのかを説明し、同様にテクニカル分析とファンダメンタル分析を比較してそれぞれのメリットデメリットを語っている。もちろんタイトルが示すように本書はテクニカル分析のスイングトレードを推しており、序盤は、すでにスイングトレードをメインに行っている人にとってはそれほど新しい情報はないかもしれない。
むしろ著者の手法について触れている中盤にいくつか自分の取引にも取り入れたいと思える内容があった。それは本書の中で「Uターン注文」として書かれている注文方である。すでに10年以上前に書かれた書籍なので、おそらく「Uターン注文」と同様の機能は現在多くの証券会社で取り入れているのではないだろうか。
この一冊でスイングトレードがうまくいくとは思わないが、スイングトレードを勉強している人が読む本の中の一冊として含めておいても損にはならないだろう。
【楽天ブックス】「サラリ-マンでも勝てる!年利400%「スイングトレ-ド」術」

「The Trapped Girl」Robert Dugoni

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
湖の底で身元不明の女性が見つかった。Tracyは事件の捜査に向かう。
通常の事件解決の物語に見えたが、一人の引っ込み思案な読書女性の物語が並行して進む。その女性はやがて男性と出会い結婚して幸せな生活を築き始める。この女性がどのように事件と関係するのか、そして湖の底で見つかった女性がこの女性なのかを考えながら読み進めることになるだろう。
物語は事件解決だけの様子でなく、Tracyと恋人のDanの様子も描いている。どちらも40歳を過ぎており一度結婚を経験しているカップルということで、今後の展開は事件解決と同じぐらい気になる部分である。
残念ながら第1作目の「My Sister’s Grave」や第3作目の「The Clearing」ほど印象的な展開ではなかった。シリーズ全体として楽しむためには本書も読まなければならないが、もしTracyシリーズを読んだのが本書が初めてなのであれば上に挙げた2作品を読んだ上で判断してほしい。

「鉄道員」浅田次郎

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
もう10年以上も前に映画になった作品で、一度読んでみたいと思いながらようやく今回手に取った。
映画になった印象から、長くしっかりとした物語という印象を持っていたが、実際には本書は表題作である「鉄道員」を含む8つの短編からなる短編集である。
いずれも、少し不思議な奇跡を描いているように感じる。残念ながらそれほど強く印象に残ったわけではないが、どの物語も30代、40代もしくはそれ以上の人生のもっとも華やかなときを過ぎた人物を中心に描いており、それぞれの物語のなかでそれぞれの境遇で生きるその人物の心のうちを読み進める中で、読者の心になにか残すものがあるのではないだろうか。
誰しも人生思った通りには進まないけれど、心の持ちようによっては幸せと思える部分もあり、楽しむことができるのだと、感じられるのではないだろうか。そういう意味では、10代20代ではなく、もっと年上の人に向けられた本のように感じた。
【楽天ブックス】「鉄道員」

「陽気なギャングが地球を回す」伊坂幸太郎

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
4人の銀行強盗を描いた物語。
物語の中心となる4人の銀行強盗は、演説が得意な響野(きょうの)、体内に正確な時計を持つ雪子(ゆきこ)、スリの久遠(くおん)、人の嘘を見破るのが得意な成瀬(なるせ)と個性的なメンバーで構成されている。いつものように銀行の襲撃を終えたところで別の窃盗団と鉢合わせたところから物語は動き出す。
大人がただ単に走り回るだけでなく、雪子(ゆきこ)の息子である慎一(しんいち)の友人との問題などが盛り込まれている点が面白い。それ以外の大部分は予想通り展開されてとくに驚く部分はなかった。
他の伊坂幸太郎作品に比べると読みやすく、理解のできない話や登場人物もいないため、力を抜いて読むことができた。ただ、複数の個性的で特技を持った人物がチームを組んで大きなことをする、というのはよく使われる手法なので特に新しさは感じず、正直この作品がなぜそこまで有名かは理解できなかった。この辺りは僕には理解できない良さがあるのかもしれない。
【楽天ブックス】「陽気なギャングが地球を回す」

「入門クラウドファンディング スタートアップ、新規プロジェクト実現のための資金調達方法」山本純子

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
KickstarterやCampfireなど、クラウドファンディングという言葉が世に広まってすでに5年ほど経つが、僕自身クラウドファンディングによって資金を調達したことも、投資したこともない。何か大きなことをやろうと思って資金が足りないとなったときに、クラウドファンディングというものをどのように利用できるのか知りたくて今回本書にたどり着いた。
序盤は、クラウドファンディングというものがオンラインを通じてできるようになり、その資金調達の額が次第に大きくなっていく様子を、いくつかの事例を交えて説明している。すでにクラウドファンディングという手段が特殊なものではないということがわかるだろう。
面白かったのは中盤で描かれている、参加者の心理である。「なぜクラウドファンディングで資金調達に協力するのか?」。きっと世の中にはその心理がまったく理解できない人もいるのではないだろうか。もちろんクラウドファンディングには資金調達が成功した暁には「リワード」として、完成した製品や記念品などを資金提供者に送るというのは一般的なので、そのリワードを求めて資金を提供してくれる人も多いが、もう一つの要素を忘れてしまうと、そのクラウドファンディングは失敗に終わることが多いという。それは「仲間になりたい」という心理である。したがって、クラウドファンディングによって資金を調達する側は、常にプロジェクトの進行具合を報告し、参加者とのコミュニケーションを重視する必要がるのだ。
だからこそ、本書の最後を締めくくっているこの言葉が響いた。

「資金提供者に対し永久的な負債を抱える覚悟があるか」。このことは、クラウドファンディングにおいて決して忘れてはいけない問いかけなのです。

ただでお金が手にはいる、というのは非常に便利に聞こえるが、そのために費やさなければいけない誠意、態度などは、中途半端な覚悟でできることではないのだろう。
【楽天ブックス】「入門クラウドファンディング スタートアップ、新規プロジェクト実現のための資金調達方法」」

「Nudge: Improving Decisions About Health, Wealth, and Happiness」Richard H. Thaler, Cass R. Sunstein

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
世の中はほんの少しの変更で劇的に変わる。本書はそんな世の中の人々の傾向について語る。このような知識を持って入れば、わずかな変更で世の中を求める方向に導くことができるかもしれない。
保険、住宅ローン、学費ローンなど、しっかり考えれば自らの選択がベストではないことは明らかなのに、複雑かつ多すぎる選択肢のせいで多くの人々は深く考えもせずに選択しており、それによって人々は本来受けるべき幸せを手にすることができていない。なぜなら僕らは忙しいし、考えたり分析をするために大量の時間を費したくなどないからだ。
そんな過剰な選択をせまられてベストな選択をできない人々に、適切な選択をさせるために知っておかなければならない人間の傾向は次のようなものだ。

Anchoring

僕らは知っている情報を元に別の情報を判断しようとする。

Availability

何かが起きる可能性を、どれだけ身近にその事例があるかで判断する傾向がある。例えば近いうちに大きな地震が起きる可能性を考えた時、大きな地震を経験したことがある人とない人ではその想定する可能性に違いがある。

Representatives

AがBに所属するかを判断する際に、AがどれだけBのイメージに近いかで判断する傾向がある。

Optimism and Overconfidence

人々は自分のことを平均以上だとみなす傾向がある。

Gain and losses

同じ物でも、得ることきより失うときのほうがその損失を高く見積もる傾向がある。

Status Quo Bias

人は現在の状況に固執する傾向がある。

Framing

人はどのように表現をするかに影響を受ける。例えば人は「この手術で10人に9人が生き延びる。」の方が「10人に1人が死ぬ」よりも手術を前向きに捉える傾向がある。
後半は上の傾向をどのように実際に生かすかを年配者の薬、臓器提供をどのように増やすかなどについて書いている。それぞれのNudgeを用いた例が細かすぎてあまり読みやすいとは言えない。もっと例を増やしながらも重要なポイントだけ整理したほうがわかりやすく読みやすく仕上がったのではないだろうか。

「センスは知識からはじまる」水野学

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
確かにデザインの仕事をしていると僕自身は練習すればできると思うものに対して「やっぱりセンスが違うね」という言葉を投げかけられることがよくある。デザインも色もすべて繰り返すことによって身につくもので、デザインの道で働く僕自身も未だ試行錯誤の毎日である。本書のタイトルにもある「センスは知識からはじまる」は、僕自身の考えとも近く興味をひいた。
著者は本書の中で、「普通を知ること」の重要性を説いている。普通がわかっているから、どれほど尖ったアイデアなら受け入れられるかわかるし、複数の「普通」を組み合わせて、一般の人が受け入れられる程度の「新しさ」を生み出すことができるのである。もし「普通」を知らないで斬新なものばかりをつくっても、それを受け入れてくれる人がいなければ結局役に立たないということである。
また、もう一つ面白いと思ったのは「技術からセンスへの揺り戻し」という考え方である。歴史のなかで技術の進化のあとには、もう一度芸術的視点を取り戻そうという動きが起きるのだという。羅針盤や印刷技術の発明の後にルネサンスが起き、産業革命の後にアーツアンドクラフツ運動が起こったように。そして今、インターネットによる情報革新がひと段落してまた芸術的ん視点に向かうのだという。
自分自身の考えを再確認させてくれる内容だった。著者がセンスを磨く方法として、普段読まない雑誌を読む、というのを進めているが、なんらかの形で取り入れたいと思った。
【楽天ブックス】「センスは知識からはじまる」

「西村雅彦の俳優入門」 西村雅彦

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
俳優の西村雅彦が自らが主催する演技のワークショップで参加者を指導する中で学んだ発声方法について語っている。
本書のなかでは特に西村雅彦の俳優としての人生を描いているわけでもなく、俳優になるための方法を語っているわけでもなく、大部分がセリフの発声方法である、なので「俳優入門」というのはかなり誇張が入っている気がする。
それほど分厚い本ではないため内容もそれほど濃いわけではないが、西村雅彦が言葉を非常に大切にしている人間であることはしっかり伝わってくるだろう。「語尾を伸ばさない」「語尾をあげない」「言葉のアタマを強く言う」など、どれも当たり前と思えることばかりではあるが、もう一度自分自身の発声方法を見直したくなる。
【楽天ブックス】「西村雅彦の俳優入門」」

「椿山課長の七日間」浅田次郎

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
大手デパートの勤務中に亡くなった椿山和昭(つばきやまかずあき)は、あの世の入り口で交渉の末、現世に戻って心残りを解決することにした。
本書はデパート勤務の椿山和昭(つばきやまかずあき)と、人違いで殺されてしまったヤクザの武田勇(たけだいさむ)、若くして交通事故で亡くなった7歳の少年根岸雄太(ねぎしゆうた)の3人が現世に戻ってやり残したことをやり遂げる様子を描いている。
それぞれ異なる姿で現世に戻ることになるのでその新しい姿に戸惑う様子が面白い。椿山和昭(つばきやまかずあき)は30代後半のキャアウーマンに、ヤクザの武田勇(たけだいさむ)は弁護士に、少年根岸雄太(ねぎしゆうた)は少女となって現世に戻るのである。
そのあとの物語の流れは予想通りで、それぞれいくつかの障害を乗り越えながら解決していくのである。
自らの正体を隠したまま現世に戻る、という物語はおそらくそれほど目新しいものではなく、残念ながら本書を読むことで何か新しいことを学べるようなことはないが、コメディタッチで気軽に楽しむことはできるだろう。
【楽天ブックス】「椿山課長の七日間」」

「日本のデザイン 美意識がつくる未来」原研哉

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
日本らしいこれからのデザインについて著者が見解を語っている。
「繊細」「丁寧」「緻密」「簡潔」という日本独自の価値観と、ミニマリズムという世の中の流れを重ね合わせて考えている点が興味深い。
そして、持論を語るだけでなく、多くのデザイン事例を引き合いにだしており、どれもすぐれたデザイナーのものの見方を知ることができるだろう。デザイナーとして長く生きた著者だからこそ、かっこいいデザインではなく、世の中をよくするデザインに目を向けている点が、自分の考えと重なる部分があり興味深く読むことができた。
印象的だったのは、いいデザインは万国共通ではなく、その場所や文化を生かしたものであるという点である。言って見ればあたりまえなのかもしれないが、日本にいながらアメリカやヨーロッパのデザインを何も考えずに真似してしまうのは、ついやってしまうことである。
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「穴」小山田浩子

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
第150回芥川賞受賞作品。
結婚して仕事をやめた「私」は、姑の隣の家に住むことになった。「私」の新しい生活を描く。
ほのぼのとした作品。タイトルの穴とは、「私」の引っ越した先である動物が掘る穴のことであるが、そこにどんな意味があるのかは最後までわからなかった。田舎町ののんびりとした生活が描かれている。都会の喧騒のなかで生きている人にとっては懐かしい雰囲気かもしれない。
「穴」を含めた三作品が含まれており、後半の2編にはいたちが出てきたので、ひょっとしたら最初の物語の穴を掘った動物の正体はいたちなのかもしれない。
純文学というものにもっと触れようとして本作品を選んだのだが、やはりなかなかよくわからない。
【楽天ブックス】「穴」

「考えながら走る グローバル・キャリアを磨く「五つの力」」秋山ゆかり

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
「キャリア磨きの達人」である秋山ゆかり氏が自身のキャリアについて語る。

正直、もっと順風満帆ななかでキャリアを築いてきたキャリアウーマンを思い描いていたが、新入社員の時はどちらかというと受身な働き方で、また途中かなり太っていた時期もあったようで、本書を読むと、見た目はどこにでもいそうな女性社員のであることがわかる。そういう意味では、決して能力的にまねできない人の話ではない点は希望が持てるかもしれない。

著者がそのキャリア形成のなかで学んだことなどを書いているので、新たに気づく部分もあれば、すでに取り入れている部分もあるだろう。ただ、読み終わってからタイトルを見直して、結局タイトルの「五つの力」とはなんだったのだろうというぐらい、書籍としてはまとまりのない本になってしまっているように思う。

また、著者の経歴だけ見ると誰もが認める「すごい人」なのだろうが、僕自身本書を読んで改めて考えてしまったのが、人は本当にここまで「社会で生き残ること」「年収を上げること」を望んでいるのだろうか、ということ。

また、著者自身「私は常に事業開発からブレていない」といっているが、世の中から求める人物を目指すあまり、自分自身が世の中をどうしたいか、自分自身がどうなりたいか、という視点があまり明確じゃないような印象も受けた。

一つの生き方を考えるきっかけにはなるかもしれない。
【楽天ブックス】「考えながら走る グローバル・キャリアを磨く「五つの力」」

「きことは」朝吹真理子

オススメ度 ★★☆☆☆ 3/5
2011年芥川賞受賞作品。
同じ別荘で過ごした小学校三年生の貴子(きこ)と高校三年生の永遠子(とわこ)が25年後に同じ別荘で再会する。

今まで、芥川賞受賞作品や純文学と呼ばれる世界があまり理解できずにいた。それでもこれだけ本を読みながら広く評価される分野の本を理解できないのはもったいないと、今年漫画大賞を受賞した「響」という小説家を扱った漫画を読んで思い、本書を手にとった。

物語が何かを教えてくれるのだろうと期待して読むというよりも、文体や空気を感じ取ろうとして読むと違った理解ができるかもしれない。本書は、貴子(たかこ)と永遠子(とわこ)という成人した女性同士の再会を描いているが、そんななかで25年前の出来事の回想シーンも多く含まれており、そんななかにいくつか不思議で印象に残る表現があった。

貴子が春子に妊娠されていたとき...
ひとしく流れつづけているはずの時間が、この家には流れそびれていたのか...

貴子(きこ)と永遠子(とわこ)の2人の長い髪が描写される場面も多く、「髪」というタイトルにもできそうだと思った。どこか優しさを感じさせる物語。
【楽天ブックス】「きことわ」