「オードリー・タンが語るデジタル民主主義」大野和基

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
台湾のデジタル担当大臣であるオードリー・タンが民主主義へのデジタルの活用法を語る。

オードリー・タンの政治に興味をもったきっかけや、これまでにプロジェクト、そして台湾の政治の動向などを語る。

印象に残ったのはクアドラティックボーティングという投票手法である。各自99ポイント持っていて1票の投票のためには1ポイント、2票の投票のためには4ポイント、3票の投票のためには9ポイント消化するシステムである。これの良いところはそのシステムの仕組み上必ず複数案に投票せざるを得ないということである。

また、ネット上で表明される意見に対して、返信機能をつけずに賛成と反対のみの意思表示にすることで、挑発などの発生を防ぐことができるというのも新鮮で、さまざまなプラットフォームに導入できる思った。

誰もが選挙などの政治の世界が遅れていて、ITを活用することでもっと改善できると感じていることだろう。それをまさに実現に動いているオードリー・タンの考え方は新鮮である。

台湾は日本よりも人口が少ないからこのようなことが可能なのだと言って、切って捨てることはできる。しかし、オードリー・タンは、東京都などの都道府県なら台湾と同じぐらいの人口なのでできるはずだとと語る。

いろんなことを考えるきっかけとなった。日本の政治にももう少し目を向けたいと感じた。

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「濁り水 Fire’s Out」日明恩

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
台風で水かさが上がり、各地で警戒が強まるなか、大山雄大(おおやまたけひろ)を含む消防隊員たちの活躍を描く。

鎮火報 Fire’s Out」に始まる消防士大山雄大(おおやまたけひろ)の日常を描く物語の第4弾である。

火災ではなく台風で物語が始まる点がシリーズの過去の作品と異なるところである。そんななか、台風で増えた水かさに溺れた女性の救助が間に合わず悔やむ隊員たちのなかで雄大(たけひろ)は、友人守(まもる)と裕二(ゆうじ)の言葉から、不審な点があることに気づくのだ。

他の日明恩(たちもりめぐみ)作品と同じように、単純に善と悪に分けられない出来事のなかで、深く考えさせられる。大山雄大(おおやまたけひろ)のやる気がないような態度をとりながらも、根底には正義感がある点もいつもの流れであるがどこか憎めない。

全体的には、消防士の事情の説明が多く、物語のスピード感が損なわれてしまっている印象である。シリーズ第1弾ならともかく、すでにシリーズ4作品目なので、もう少し説明を省いて物語の展開を優先してもよかったのではないだろうか。

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「優しい水」日明恩

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
石塚洋(いしづかひろし)は近所の川で不思議な水を見つけ、その水の性質を調査し実験を始める。

石塚洋(いしづかひろし)は、見つけた水を人に飲ませると、その人は大人しくなるということに気づく。そんな悪戯心からの行動がやがて、大きな事件へと繋がっていく。

世の中にはさまざまな種類の病気や細菌があることが伝わってくる。また、少しずつ広まっていく不思議な水の調査をする警察や研究者たちが、オンラインゲーム上でコミュニケーションをとっている点が面白い。

日明恩の作品といえば「鎮火報」や「それでも、警官は微笑う」が印象的であるが、本作品は今までの作品とはまったくことなり、別の人物が書いているかのようである。日明恩にとっても、新たな試みを込めた作品なのだろう。つまらないとは言わないが、これまでの日明恩のような、深さのある問いかけを期待して読み始めると、裏切られた気になるかもしれない。

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「ジェフ・ベゾス 発明と急成長をくりかえすAmazonをいかに生み育てたのか」ブラッド・ストーン

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
アマゾンの創業者でありCEOのジェフ・ベゾスを中心に彼の関わってきた事業や私生活を描く。

面白いのはアマゾンの物語ではなく、ジェフ・ベゾスの本であるということだ。そして、事業やサービスをベースにそこで起こった出来事を描いている点が興味深い、それゆえに、ジェフベゾスとトランプ大統領とのやりとりや、ジェフ・ベゾスが所有する他の会社、ワシントンポストやブルーオリジンについても知ることができた。

もちろんアマゾンの事業の過程やそこで起きる困難についても同じように興味深く読むことができた。アマゾン内広告、マーケットプレイスの話からは、アマゾンも常にフェイスブック、グーグルの影響を受けながら事業を展開していることが伝わってきたし、また中国やインドなど国によって文化が異なるため、それぞれマーケットを広げるためには特有の難しさがあることが改めて伝わってきた。

個人的にはブルーオリジンとスペースXの話が面白かった。今後もアマゾンの動向に注意していきたいと思った。

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「絶叫」葉真中顕

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
マンションで飼い猫に食べられて身元不明となった遺体が見つかった。国分寺警察署の奥貫綾乃(おくぬきあやの)は自殺か事件かを解明していくなかで不思議な事実に気づく。

捜査する警察の側と、一方でマンションの持ち主でおそらく遺体の身元であろう鈴木陽子(すずきようこ)側を交互に描きながら、少しずつ核心へと近づいていく。そこでは、母から愛されなかった一人の女性の不幸な人生が浮かび上がっていく。

また、捜査の過程で、少しずつ綾乃(あやの)自身の過去の失敗した結婚生活も描かれている。世の中をうまく生きることができない、鈴木陽子(すずきようこ)に綾乃(あやの)は、共感に近いものを感じていくのである。

誉田哲也の「ストロベリー・ナイト」シリーズや宮部みゆきの「火車」連想させる世界観である。つまらなくもなかったが特に新鮮さも感じなかった。過去の名作をうまく寄せ集めて書き上げたという印象である。もう少し綾乃(あやの)の生き方を深く描いて人間味を出したほうが良かったのかもしれない。

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「フェイスブックの失墜」シーラ・フレンケル/セシリア・カン

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
マーク・ザッカーバーグとシェリル・サンドバーグを中心に困難の時代のフェイスブックを描いている。

これまであった多くのフェイスブックの起業を描いた成功物語とは異なり、タイトルにあるように企業として大きくなった上の困難の時代を描いている。

序盤はマーク・ザッカーバーグとシェリル・サンドバーグの出会いやシェリル・サンドバーグのそれまでの経歴を描いる。シェリル・サンドバーグ個人がフェイスブック参加後に向き合ってきたフェイスブックの男尊女卑文化や縄張り争いについても触れている。広告部門にリソースを割けないことに苛立つサンドバーグの立場も容易に想像できる。マーケット部門とエンジニア部門が敵対する感じも容易に理解できる。

後半は、フェイスブックが通ってきた多くの歴史的な出来事と、それに対するフェイスブックの対応、主にザッカーバーグとサンドバーグの振る舞いを中心に描いている。その経緯やフェイスブック内部の議論や不和を知る中で改めて大企業の社会的責任の大きさを再認識させられる。

人と人をつなげることをミッションに掲げながら、人がつながることで起こる悲劇に会社としてどのような対応をすべきなのだろう。他者を貶めるヘイトスピーチやフェイクニュースなど、間違った情報だからといって削除できないのは納得できる。しかし、それでもその結果大きなマイナスの動きになってしまう要因は、人と人との繋がりを容易にしているフェイスブックにあり、企業としてどのように対応すべきなのだろうか。自分が彼らの立場だったらどんな答えを出しただろうと考えさせられた。

全体的に、マーク・ザッカーバーグとシェリル・サンドバーグの苦悩ばかりが見えてくる内容だった。また、並行して、多くの大きな事件を知ることができた。たとえば、トランプ大統領の大統領選の裏にあったフェイスブックの重要性は噂程度にしか知らなかったし、その後の国会議事堂襲撃事件や、ミャンマーのロヒンギャ族の件は本書を読んで初めて知った。やはり国内のニュースに触れているだけではわからないことが多すぎると改めて気づいた。

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「Verity」Colleen Hoover

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
二流作家のLowenは、交通事故で続編を書けなくなった人気作家Verityの続編を任され、その執筆のためにVerityの残した資料を調べ始める。

Colleen Hooverは「November 9」が面白かったので、同じくおすすめとして挙がる本書にたどり着いた。

Verityとその夫Jeremyは、双子の娘を事故で亡くしており、Verityは交通事故で満足に話すこともできなくなったことを知る。そんなVerityの続編を書くためにLowenはVerityの書斎の大量の資料を自由に見ることを許されるが、そんななかVerityのそれまでの生活を描いた手記を発見する。

そんな一方、Lowenは健気に身動きのできない妻の看病をし、唯一残された息子Crewを可愛がるJeremyは惹かれていくのである。

時間を見つけて少しずつVerityの遺した手記を読み進めるLowenは、その夫婦関係が経験した悲劇の経緯とVerityがどのように考えていたかを知ることとなるのである。

November 9」が結構印象的だったので期待したのだが、比較的ありがちなサスペンスで終わっている気がする。

「経営者のためのウェブブランディングの教科書」佐野彰彦


オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
経営者向けに、ウェブブランディングを説明する。

本書ではウェブブランディングに3S6G法というプロセスを用いて取り組んでいる。

  • 1.ターゲットの心理を先読みする
  • 2.与えるべき結論を設定する
  • 3.1と2をつなぎ合わせるアイデアや演出方法を考える
  • コンセプト
  • ラインナップ
  • 特徴
  • 実例・実証
  • 温度感
  • ニュース性

どれも自分の考えと特に違和感なく重なった。タイトルの通り経営者にとってわかりにういウェブの使い道をしっかり指南している。なんといっても体系化して説明している点がわかりやすいだろう。

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「食堂かたつむり」小川糸

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
失恋して故郷に帰った倫子(りんこ)はレストランを開くことにする。

「ツバキ文具店」の小川糸のデビュー作品である。

倫子(りんこ)失恋して声を失い、母親の元に帰る。空いている物置小屋を見て、そこを利用してレストランを開くことを決意し、少しずつその料理の腕前から人を幸せにする道を見出していく様子を描く。

そして、故郷でそこの人々や、母ともう一度向き合うことにより、いろんなものに気づいていくのである。

故郷や田舎の暖かさを感じさせる物語である。悪くはないが、最近このような物語が比較的多く、あまり新鮮さを感じなかった。

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「エクストリームプログラミング」Kent Beck/Cynthia Andres

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
エクストリームプログラミング(以下XP)について説明する。

XPでは次の5つの価値を重視している。

  • コミュニケーション
  • シンプリシティ
  • フィードバック
  • 勇気
  • リスペクト

良いことを書いているような感じはするのだが、正直読みづらい。スクラムや基本的なアジャイルの考えと何が異なるのかというと、ペアプログラミングや自動テストによって品質を担保しようとしている点だろう。

正直、本書を読んだだけだとなかなか理解できた気がしないので、他の人の解釈なども聞いてみたいと思った。

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「ローマ人の物語 終わりの始まり」塩野七生

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
紀元160年から210年頃のローマ帝国の様子を描く、ハドリアヌスの後、アントニヌス・ピウスからマルクス・アウレリウスに始まり、セヴェルスまでの時代である。

今回は「終わりの始まり」ということで、すでにローマ帝国の滅亡を知っている著者の立場から、それを予感させる動きに目を向けさせている。

マルクスの死の誤報に、皇帝を名乗って謀反を起こしたアヴィディウス・カシウスの言葉が特に印象的である。

哀れなローマ帝国よ。すでに持っている資産の保持しか頭にない者どもと、新たに資産家になることしか考えない者どもに苦しまされているのだ。哀れなマルクスよ。偉大なる徳の持ち主ではあるが、寛容な指導者という評判を欲するあまりに、貪欲な者どもが闊歩するのを許している。

指導者は常に寛容さと厳しさの間で揺れ動き、どの立場を取っても非難されることになるのだろう。

マルクス・アウレリウスにだけでなく、セヴェルスも含めて、皇帝たちの苦悩を見る中で、改めて国とは大きな組織でしかないことを認識させられる。つまり、会社やチームなどの運営のあらゆる面にも同じ問題が起こる可能性があり、彼らの苦悩の中に現代に活かせることはたくさんなるのだ。

時に指導者は、市民や後継者に理解されない政略でも、未来を考えて遂行しなければならないのである。そしてそのためには、その有効性を確信していなければならない。

どの皇帝の行動も理解できる部分があり、改めて大きな人を束ねることの難しさを感じた。

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「ただいま神様当番」青山美智子

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ある朝目を覚ますと腕に「神様当番」という文字が現れ、神様を名乗る老人が現れる。そんな奇妙な体験をした男女5人の物語である。

突如神様当番となった、OL、小学生、男子高校生、イギリス人の大学非常勤講師、零細企業社長の5人を描く。それぞれが、自分の日々の人生に悶々とした思いを抱えながらも、神様と出会うことによって新たな視野が開くまでを描いている。

青山美智子さんの作品には常に、今あるものに目を向けて、前向きに生きようという温かいメッセージが詰まっている気がする。

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「A Clash of Kings(A Song of Ice and Fire)」George R. R. Martin

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
A Song of Ice and Fireの第二弾である。Stark家とLannister家の関係が緊張状態に入り、一方Targaryen家のDaenerysはついに竜を手に入れた、その後の物語を描く。

第一弾を読んでからずいぶん間が空いてしまったが、久しぶりに壮大なファンタジーの世界に浸りたくなって続きを読むことにした。

Lannister家のCerceiが、出自に疑問がある我が子Joffreyを王したことによって、各地から大きな反対の動きが起こる。自らこそ真の王であると自負するBaratheon家の兄弟、Renly BaratheonとStannis Baratheonが動き出し、一方夫をLannister家に裏切り者として殺されたStark家のCatelynはRenlyとStannisに協力してLannister家を討つことを提案するのである。

そんななか少しずつStannis Baratheonが持つ不思議な力が明らかになっていき、そんななかやがてLannister家とStannis率いるBaratheon家は対決の時を迎える。

Jon Snowを中心とした北の動きや、Targaryen家の生き残りであるDaenerysの旅など、謎は深まるばかりである。

登場人物が多くて、逐一、前に戻って復習しながら読み進めていった。竜や魔法というファンタジーの要素のみに物語を依存するのでなく、あまくでも人間同士のプライドや地位を中心に描いている点が、面白さの所以だろう。

日本のファンタジーは物語の壮大さにおいてまったく敵わないと感じてしまう。

「UXライティングの教科書」キネレット・イフラ

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
UXライティングについて語る。

全体で3つの章に分かれており、重要なのはPart1のボイス&トーンとPart3のユーザビリティである。Part2のエクスペリエンスとエンゲージメントはさまざまな会社の解決策を紹介しており、参考程度に見るのがいいだろう。

ボイス&トーンでは、会話体ライティングの重要性について語っている。ヒントとおさえるべき原則は次の項目である。

  • 思い浮かんだままの言葉を使う
  • 音読する
  • 味気ない定型文は避ける
  • 質問をする

会話体ライティングの6原則

  • ユーザーに直接語りかける
  • あくまでも自然に
  • 短くまとめ、ポイントを押さえる
  • 耳慣れた、いつもどおりの言葉を使う
  • 能動態を使う
  • 流れを作る

また、ライティングによってモチベーションを高める考え方も次のように説明している。

1.行動の方法ではなく、行動することの価値を伝える
2.ニコニコ効果、ワクワク効果
3.ユーザーに敬意を払う
4.ソーシャルプルーフ(社会的証明)

全体的に特に新しいと思える内容はなく、今まで持っていたライティングの知識の再確認の機会となった。ちなみに、本書が英語圏の文化によって書かれた書籍であることを意識しなければならない。例えば、日本語圏では、会話で「あなた」を使うことはかなり稀である。普通は相手の名前を呼ぶか、そもそも動作の主体を文章に含めない。その点で「You」を多用する言語のライティングと同じに考えてはならないだろう。

同様に、日本語圏では顧客対応においてしばしば過剰に尊敬語、丁寧語、謙譲語を織り交ぜる傾向があり、これを「会話体」と認識してしまうとライティングは悲惨なものになってしまうだろう。

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「影響力の武器[第三版]」ロバート・B・チャルディーニ

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
社会心理学者の著者が、人から承諾を引き出すテクニックにはどんなものがあるのかを語る。

人が承諾をしやすいパターンを6つの章に分けて解説している。次の6つである。

  • 返報性
  • コミットメントと一貫性
  • 社会的証明
  • 好意
  • 権威
  • 希少性

いずれの例についても、それに関連するエピソード、研究結果だけでなく、防衛法についても語っている。つまり、本書を読むことによって、このパターンを利用するだけでなく、このパターンで利用されないようにすることもできるのである。

どのエピソードも面白かったが、個人的に印象的だったのは、玩具メーカーがクリスマス後の売上の落ち込みを防ぐためにたどり着いた戦略である。コミットメントと一貫性を利用したその戦略には感心するしかない。

ある意味、最後の章で紹介されていた次の読者からのエピソードに、返報性、コミットメントと一貫性、社会的証明、好意、権威、希少性の全ての要素が含まれている気がする。

スーパーマーケットにちょっとした試飲コーナーがありました。感じのいい女の子が飲み物を差し出してくれました。飲んでみると悪くありません。それからその飲み物の感想を聞かれました。「美味しい」と答えたら、四缶パックの購入を勧められました。… 購入は断りました。けれども、そのセールスウーマンは諦めませんでした。「一缶だけでもいかがでしょう?」と言いました。でも私も諦めませんでした。
そうしたら彼女は、その飲み物がブラジルからの輸入品で、今後のこのスーパーマーケットで手に入るかどうかはわからないと言いました。

さっそく自分の仕事や趣味や、毎日の人間関係のなかに取り入れられないか、考えてみようと思った。

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「育ちのいい人が身につけているちょっとした習慣」菅原圭

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
育ちのいい人が身につけている習慣について語る。

特に決まった順番もなく、著者が思う良い習慣をひたすら書き連ねている。

実際にその習慣をする人が、育ちのいい人なのかは一切関係ない。あまりにも特異な状況について書いている点もあり、著者が日常で行き交う人や、電車や公共の場所で見かける人に対して、目について不快な行動をひたすら並べてページを増やしているといった印象である。

どんなに普段から洗練された行動を心がけている人でも、1つ2つ、新しい気づきがあるかもしれない。ただ、目次を読むだけで十分である。

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「SIMPLE RULES「仕事が早い人」はここまでシンプルに考える」ドナルド・サル/キャスリーン・アイゼンハート

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
単純なルールによって成功したさまざまな事例を紹介し、シンプルなルールの力とその方法を説明する。

イエズス会やミツバチの行動など、あらゆる組織の例をあげて、シンプルなルールが機能することを説明していく。中盤ではビジネスシーンを中心に成功した例を紹介しており、後半ではうつ病や婚活などプライベートでの例を紹介している。

そんななかでシンプルなルールを3つのカテゴリに分けている。

  • 境界線ルール
  • 優先順位ルール
  • 停止ルール

である。

シンプルなルール=簡単にできるルール

ではないということである。シンプルなルールだからこそ、外部から押し付けるのではなく、現場の経験や長い時間をかけて発展や試行錯誤が重要なのである。シンプルなルールをつくる基本として4つ挙げている

  • 「自分の経験」をとことん利用する
  • 「他社の経験」をうまく拝借する
  • 「科学的証拠」で巧みに補強する
  • 「話しあい」でレベルを上げる

である。

改めてシンプルなルールはを作ることで行動を起こしやすくなると気づいた。今までも無意識に作っているものなどあったが、さっそく意識して会社やチームのコミュニケーション指標や毎日の趣味にとりいれてみたいと思った。

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「四十九日のレシピ」伊吹有喜

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
亡くなった妻乙美(おとみ)は夫に四十九日までのタスクを与えていた。夫と別れて実家に戻ってきた娘の百合子(ゆりこ)と、妻の愉快な友人たちと共に熱田良平(あつたりょうへい)は四十九日の準備を始める。

失意の熱田良平(あつたりょうへい)の元に、井本(いもと)と名乗る19歳の女性が訪れることから物語は始まる。乙美(おとみ)が生前関わっていた互助活動で知り合った井本(いもと)に、自分が死んだ後にやるべきことを頼んでいたのだという。良平(りょうへい)へ井本(いもと)に促されて49日の準備を始め、そこに娘の百合子(ゆりこ)やお手伝いのハルミが加わることで少しずつ賑やかになっていくのである。

楽しい雰囲気の展開のなかに、人生の深みを感じさせてくれる。特に新鮮さを感じるのは乙美(おとみ)は良平(りょうへい)の後妻であり、娘の百合子(ゆりこ)も子供がいないということである。

子供を持つ人生だけがあるべき姿でない、そんな生き方の多様性を教えてくれる。結局人をうらやむのではなく自分の人生のなかでできることに楽しみを見出すことが、幸せになる近道なのだと改めて感じた。

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「獣の奏者II 王獣編」上橋菜穂子

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
傷ついた王獣の子リランの世話をすることとなったエリンは、少しずつリランと会話をしようと試みる。

獣の奏者I 闘蛇編」を読んだのはすでに10年以上前で、物語の流れをほとんど覚えていなかったが、ファンタジー熱が再燃したので続きを読みたくなった。

物語は王獣リランと竪琴の音色を通じて少しずつ会話ができるようになるリランと、王獣を制御する力をみにつけたことによって政治の中に巻き込まれていく様子を描いている。

自らの権力を中心に考える者もいれば、人間や動物の種としての存続を優先に考えるものもいて、そんな考え方の違いから争いごとが起きるのは、現実も幻想世界も同じである。

闘蛇と王獣という2つの想像の動物を中心に作られるファンタジーであり、単純化されすぎているという批判はあるかもしれない。「十二国記」と並んで、知名度の高い数少ない日本初のファンタジーの一つであることを考えると、物語の面白さに関係なく読んでおくべきなのだろう。

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「The Song of Achilles」Madeline Miller

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
Patroclusは親の期待に応えることができず、知り合いの息子を誤って殺害したことで追放され、そこでAchillesと出会うのである。

PatroclusとAchillesが出会い、PatroclusはAchillesの美しさと強さに惹かれていく。やがて、スパルタの王Menelausの妻で絶世の美女であるHelenがトロイの王子パリスに連れ去られたことによりギリシャ軍とトロイ軍の間でトロイア戦争が始まる。AchillesとPatroclusはどちらもAchillesの母Thetisによって、トロイア戦争で自分達が死ぬと知らされながらも、栄誉のために参加を決意するのである。

常に強い存在感を示すのがAchillesの母で神に近い存在のThetisである。人間であるPatroclusを嫌うThetisは一方で息子であるAchillesの人生を常に見守り、その人生を良い方向に導こうとするのである。子離れできない母が神に近い存在だからなんともタチが悪い。

やがて、トロイア戦争はAgamemnonとAchillesの衝突によって、少しずつトロイア軍が優勢になっていく。Patroclusは自らのプライドを優先しようとしないAchillesのせいで多くの戦友が戦死していく様子に苛立ちを感じ始めるのである。

トロイア戦争の流れはの大きな流れは変わらない。しかし、AchillesとPatroclusの心の葛藤を中心に描かれている点が新しい。その一方で、それぞれの重要な戦いはなんともあっさり進む。たとえばAchillesとHectorとの戦いも例外ではない。

トロイア戦争という、神話の中でも有名な出来事で、結末も分かりきっている物語である。それにもかかわらず視点を変えるだけでここまで新鮮に面白く描けることに改めて驚かされた。