オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
西太后(シータイホウ)の支配する清。貧しい少年春児(チュンル)は幼なじみの文秀(ウェンシウ)とともに都へ向かう。
清朝の末期を描く。偉くなるためには科挙の試験を受けなければならない中国という国で、文秀(ウェンシウ)はそんな過酷な試験に挑もうとする。その一方で文秀(ウェンシウ)の幼なじみの春児(チュンル)は自ら性器を切り取って宦官(かんがん)となり、貧しい生活から脱しようとする。
同じアジアの国の出来事にも関わらず、あまりにも知らない事が多い事に驚かされた。冒頭では、文秀(ウェンシウ)が挑んだ科挙というし試験の過酷さと、虚勢を施す刀子匠(タオズチャン)という職業とその処置の方法に驚かされる。どちらも同じ東アジアの国に長い間文化として根付いていたものなのである。
やがて、文秀(ウェンシウ)は科挙の試験で素晴らしい成績をおさめて地位を向上させていく。また一方で、春児(チュンル)も方法こそ違えど、自らの力で少しずつ都への道を切り開いていくのである。文秀(ウェンシウ)と春児(チュンル)を中心に物語は展開していくが、その過程で西太后(シータイホウ)や、中国を守ろうとする人々の苦悩や駆け引きが見て取れる。また、中国国内だけでなく、中国という大きな土地を巡るイギリスやフランス、日本の利権争いも興味深い。
登場人物が多いので、なかなか本書だけでこの当時中国で起こった事の全体像を理解するのは難しい。どこまでが歴史上実際に存在した人物で、どこまでが物語中の架空の人物や出来事なのかをしっかり理解してもう一度読んでみたいと思った。
カテゴリー: ★3つ
「ビブリア古書堂の事件手帖4 栞子さんと二つの顔」三上延
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ビブリア古書堂シリーズの第4弾。毎回本を絡めた興味深い物語を展開してくれる。今回は江戸川乱歩のコレクターが遺した謎に栞子(しおりこ)と五浦(ごうら)は挑む。
本シリーズは今まで多くの有名な本を扱ってきたが、今回扱う江戸川乱歩シリーズはまさに僕自身が小学生の頃親しんできたシリーズで、物語中で触れられるタイトルの数々に懐かしさを感じてしまった。
また、そんな本に絡めた謎やそれぞれの本や作家が持つ深い歴史だけでなく、栞子(しおりこ)への五浦(ごうら)の想いもまたほのぼのと描かれている。そして、本書で何よりも注目すべきなのは失踪していた栞子(しおりこ)の母、篠川智恵子(しのかわちえこ)が登場する点だろう。栞子(しおりこ)よりもさらに深い本に対する知識と行動力のある智恵子(ちえこ)に対して、栞子(しおりこ)と五浦(ごうら)は謎解きで挑むのである。
まだまだこの先一波乱ありそうな流れである。
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「はじめてのトポロジー つながり方の幾何学」瀬山士郎
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ポアンカレ予想を理解するためにはやはりトポロジーを理解する必要があり、その入門書として手に取った。
トポロジーの考え方では球も立方体も直方体も同じ形として扱われる点は、1度考え方を受け入れれば非常にわかりやすく興味深い。また、メビウスの輪の考え方の延長でクラインの管ができることも理解できた。また、4次元空間の数学的考え方の一端にも触れる事が出来た。
ホモローグやホモトープなど、覚えにくい言葉も多々登場したが、トポロジーの最初の一冊としては悪くないだろう。
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「The Light Between Oceans」M L Stedman
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
Tomとその妻Isabelはオーストラリアの無人島で灯台の光を維持することを仕事としていた。ある日その島にボートが流れ着く。そのボートにはすでに息を引き取った男と赤子が乗っていた。
戦争でのつらい経験を引きずって生きていたTomは、人のいない島で灯台の光を管理するという仕事を選ぶ。そんな折に出会ったIsabelと結婚し、2人で家族を作ろうとするがIsabelは3人の子供を流産してしまうのだ。そして、そんな失意の2人のもとに赤子を乗せたボートが流れ着く。
戦争中の自らの行いによって良心の呵責に苦しむTom。そんなTomの過去に対する言動や、自らの正義感や信念を反映した生き方が印象的である。
1920年代を舞台にした物語という事でおそらく今とはかなり異なるのだろうが、灯台を管理するという仕事やその役割、そして灯台そのものについても興味をかき立ててくれる。また、オーストラリアを舞台としている事からその時代の人々の言動に触れるうちに、オーストラリアのこの時代の歴史をほとんど知らない事に気づかされた。
「日本語から考える!スペイン語の表現」長谷川信弥/山田敏弘
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
自然な日本語の持つ微妙なニュアンスをスペイン語でどのように表現するかを説明している。
自然な日本語というのは必ずしも、主語や目的語が含まれていない事も多い。そんな日本語をスペイン語で表現しようとしたときにどのように表現すべきか、という視点で書かれている。たとえば「私は」と「私は」の違いや、「しか」と「も」の違いなどである。もちろんスペイン語の方が表現しやすい表現や、日本語の方が表現しやすい表現などあり、本書を通じて、いろいろスペイン語の表現の幅が広がるだろう。
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「宮本武蔵(八)」吉川英治
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
宮本武蔵の最終巻。武蔵は小次郎との決闘へ向かう。
8冊にわたって続いた宮本武蔵の物語も本書で完結する。伊織やお通、お杉や又八などが武蔵のもとに集まるのである。それぞれがすでにその道で有名になっており、世間も2人の決闘への関心が高い。決闘当日までの周囲の七人の行動や、武蔵の態度が読みどころと言えるだろう。
個人的には小次郎との決闘の後の武蔵の人生にも触れて欲しかったがそのあたりは他の作家や漫画家に譲って、これを1つの有名な武蔵の物語として受け入れるべきなのだろう。
1つの有名な小説をようやく読み終える事ができた。個人的には武蔵が伊織と出会う5巻あたりが好きである。
【楽天ブックス】「宮本武蔵(八)」
「ローマ人の物語 勝者の混迷」塩野七生
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
カルタゴが滅亡して大国となったローマ。しかし領土が増えて人が増えれば様々な問題が噴出する。タイトルが「勝者の混迷」と付けられていることからも想像できるように、とりたてて大きな出来事があるわけでもないが、平和ゆえに噴出する多くの問題が見えてくる。
ローマは領土が拡大する過程で、すべての市民に平等な市民権を与えれば旧市民の反感を招き、平等な市民権を与えなければ新しく支配下に入った領土の人々に不信感を与える。というジレンマに陥るのである。また、世界を完全に制覇しない限り常に隣国は存在し、隣国との関係や争いは常に発生するのである。この「勝者の混迷」で見せてくれるのは、まさにそんな組織を維持する事の難しさである。
投票権や税金は言うまでもなく、新しい制度への段階的移行など、現在僕らが生きているこの社会が、過去の何千年もの人類の試行錯誤の結果などだと思い知る。
【楽天ブックス】「ローマ人の物語 勝者の混迷(上)、「ローマ人の物語 勝者の混迷(下)
「宮本武蔵(七)」吉川英治
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
宮本武蔵の物語の第7巻。全8巻のこの物語もいよいよ終盤に近づいていく。
過去の登場人物が勢揃いするような一冊。武蔵と別れた城太郎(じょうたろう)は立派な青年となって、現在の武蔵の弟子である伊織(いおり)と遭遇する。そしてかつて武蔵と勝負した夢想権之助(むそうごんのすけ)は伊織(いおり)とともに旅することとなる。
特に際立った大きな動きはないが、物語が終わりに向かっている事を感じさせる。
【楽天ブックス】「宮本武蔵(七)」
「完全なる証明 100万ドルを拒否した天才数学者」マーシャ・ガッセン
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
懸賞金のかけられたミレニアム問題の1つポアンカレ予想が2003年にロシアの数学者によって証明された。しかし彼は懸賞金を受け取る事を拒否して行方をくらました。彼はどのような理由からそのような行動をとったのだろうか。
ポアンカレ予想に関連する本を読もうと思って本書に出会った。残念ながらポアンカレ予想についてはあまり多く触れられておらず、むしろそれを証明した数学者ペレルマンの生い立ちや、証明を発表したときの彼の言動について書かれている。彼がロシア人という事で、むしろ数学よりもペレルマンやその周囲の人々が育った時代の厳しいロシア社会が印象的である。言いたいことを言う事ができず、海外に出るためのパスポートを手に入れる事さえ難しい時代、あらゆる学問や教育がその体制ゆえに被害を被ったという。
本書にはペレルマン自身へのインタビューなどは一切掲載されていない。そういう意味では読者の予想を裏切る事が多いのかもしれない。個人的にはそれでもいろいろ学ぶ部分はあったと感じるし、さらにポアンカレ予想や位相幾何学というものを理解してみたくなった。
【楽天ブックス】「完全なる証明 100万ドルを拒否した天才数学者」
「ドルチェ」誉田哲也
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
警視庁練馬警察署の巡査部長である魚住久江(うおずみひさえ)の関わる6つの事件を描く。
40歳を超えた女性目線ということで、警察小説といえども、本書で扱われる事件は、殺人といった派手なものではなく暴行、傷害、虐待などである。事件自体は些細な物に見えるが、それゆえにその事件を通じて見えてくる、いろんな人間の側面は他人事とは思えないものを感じる。
多くの登場人物が30代以降であるのも興味深い。希望を持って生きている20代に対して、未来の可能性が急激に狭まっていく30代は、世の中に絶望して犯罪に走りやすい傾向があるのだろうか。人生をやり直すのに遅いならば、人生自体を壊してしまう事をためらわないのだろうか。
「ストロベリーナイト」シリーズや「ジウ」で派手な警察小説を描いている著者誉田哲也があえてこういう質素な物語を描くと、ここから何を伝えようとしているのだろう、と必要以上に考えてしまう。
【楽天ブックス】「ドルチェ」
「図解 橋の科学」田中輝彦/渡邊英一他
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
橋についてわかりやすく語る。
先日、日本の明石海峡大橋がどうやらすごいらしいことを知った。急に橋とはどのように作れるのか知りたくなった。対岸にどうやって最初の一本の板を渡すのか、海や河の中にどうやってあの大きな橋桁を作るのか。そうして本書に行き着いた。
本書ではまずさまざまな橋の形状について語っている。わかりやすいものだと吊橋(つりばし)や桁橋(けたばし)、そして他にはトラス橋、斜張橋、ラーメン橋、アーチ橋で、それぞれの簡単な構造や世界の例について書いている。
また、中盤では橋の建築方法、そして後半では過去の橋の崩落事故や、橋を長く維持するための方法について触れている。本書自体が橋に興味を持った中学生や高校生に向けて書かれているので、本当にわかりやすく基本的な内容にとどまっているが、橋についてちょっと知りたい、といった人にはちょうどいいだろう。
個人的にはレインボーブリッジはずっと吊橋だと思っていたのでようやく斜張橋と吊橋の区別がつくようになった。世界にはいろんな橋があることがわかったし、また行きたい場所が増えた。普段生活している町のなかにまた1つ興味を持って見ることのできる対象が増えた気がする。
【楽天ブックス】「図解 橋の科学」
「モルフェウスの領域」海堂尊

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
日比野涼子(ひびのりょうこ)は未来医学探究センターの唯一の職員。彼女の仕事は世界初の人工冬眠について少年モルフェウスを維持する事だった。そしてやがてモルフェウスが冬眠から目覚める時が近づいてくる。
人口冬眠、コールドスリープなど言葉の使い方はいろいろあるけれども、人が眠りについて未来にそのままの姿で生き返る、というのは過去多くのSF作品で使われてきたできごと。本書は医療を専門としている著者海堂尊(かいどうたける)が描く事で、より現実世界に関連した内容に仕上がっている。
これまで同じ著者の物語に多く触れてきたなかでは、現実的な医療技術を物語に取り込んでいるという印象を持っていた。そのため、ひょっとしたらコールドスリープもすでに実現可能な技術なのかもと検索したが、どうやらそのような事実はまだないようである。
本書では、目を摘出しなければならなくなった少年が、その治療薬の開発・認可を待つためにコールドスリープを選択する、という過程をとっている。関係者や政治家がコールドスリープをした対象の人権をどのように守るかという議論や、その技術をどのように維持するかの駆け引きが面白い。むしろ過去さまざまなSF作品に描かれていたような、コールドスリープをする前とした後での時代の間の文化の違いやその人やその人に接する人々が感じる違和感などは本書でほとんど描かれていない。
またほかのシリーズ作品同様、東城医大の高階医院長や田口先生など本書にもたくさん別シリーズの主要人物が登場する。海堂尊(かいどうたける)作品に多く触れている人はそういう意味ではさらに楽しめるのではないだろうか。近いうちに続編が出るようなのでそちらも楽しみにしたい。
【楽天ブックス】「モルフェウスの領域」
「Song of Susannah」Stephen King
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
Callaの町でWolves達との勝利にわくRoland一行だが、妊娠したSussannahが行方をくらました。Roland、Eddie、Jakeそして神父のCallahanがSusannahを追ってニューヨークに向かう。
多重人格者のSusannahが行方をくらましたことで、それぞれが別の世界へのドアをくぐる。EddieとRolandは1977年のメーン州、JakeとCallahanは1999年のニューヨークだった。それぞれの登場人物が別々に行動するため、今までのようなそれぞれの個性が団結した展開を見る事はできないが、それぞれまた違った側面が見えてくる。
子供を産んで育てようとするSusannahの中の人格Miaと、後から追ってくる救いを待つために少しでも時間を延ばそうとするSusannah。2人が1つの体のなかで駆け引きを繰り返すのが面白い。そしてそんななかにもう1つの人格Odettaが割り込んでいくのだ。
一方で、鍵となる駐車場を管理している本屋のオーナーを追うEddieとRolandは、やがてその近所にある小説家が住んでいることを知る。その小説家はStephen Kingというそうだ。現実世界がKingの小説のなかに取り込まれたのか、それともRolandやEddieが現実世界にでてきたのか、Stephen Kingのそんな試みが見られるのが本書の一番の山場かもしれない。
長く続いたシリーズの最後に繋がる一冊。これまでのシリーズと比較すると面白さとしてはやや不足しているかもしれないが、その後の展開には必要な一冊なのだろう。
「宮本武蔵(五)」吉川英治
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
宮本武蔵の物語の第5話。吉岡道場との決闘の後を描く。
ようやく後半に差し掛かった武蔵の物語。吉岡道場との決闘の後を描く本書は物語のなかでも山場の少ない内容となっている。おつう、城太郎と再び行動を共にしてはまたはぐれるなど、それぞれ新たな人生の方向へと導かれていく。
個人的に印象に残ったのは、はぐれた城太郎、おつうの行方を探すのを手伝ってくれた見知らぬ人へ、御礼に残り少ないお金を渡そうとする武蔵の心の内である。
これまでは悩み葛藤を続けてきた武蔵だが、ここへきてその心のありようが結構な境地に達してきたような気がする。残り3冊も楽しみである
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「1%の人だけがやっている 会社に「使われない人」になる30のヒント」渡辺雅典
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
アフィリエイターとして著名な著者が会社に使われない人間になるための心得を語る。
序盤は、高校を中退し、仕事でもあまりいいスタートを切れなかった著者自身の過去に触れ、その後、インターネットでの仕事を始めてからの成功と、現在の心がけについて語っている。書かれている内容はどれも特別な事ではなく、むしろその内容からは読者としてもっと本当に会社にいくのが嫌でしょうがないネガティブな思考の会社員を対象にしているようにさえ思える。
書かれている内容に信憑性がないわけではなく、むしろどれも納得のいくものばかりなのだが、世の中に溢れかえっている「成功のための本」の多くに書かれていそうなことばかりで、あまり印象に残らなかった。しかし、定期的にこのような本を読む事はいろんな意味でモチベーションの維持に役立つ気がする。
【楽天ブックス】「1%の人だけがやっている 会社に「使われない人」になる30のヒント」
「四色問題」ロビン・ウィルソン
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
すべての地図は4色で塗り分ける事ができる。経験的に受け入れられてきたこの事実の証明は何年も数学者達を苦しめてきた。そんな四色問題が証明されるまでを描く。
コンピュータを使った美しくない証明として議論を呼んだ証明として興味を持っていた。もちろん問題自体(つまり地図が4色で塗り分けられるという考え)がわかりやすいというのも理由の1つだろう。こういう本は数学者でもない限りすべてを理解するのは不可能なのだが、それでもその雰囲気や数学者達の努力が感じられれば僕にとっては十分なのである。
序盤は「四色問題」がどのように始まり、どのように数学界に広がっていったかを描き、中盤からは、簡単な塗り分けから考え方を説明し、四色問題が難しい理由などを説明する。その過程では11年間にわたって信じられてきた間違った証明も含まれている。
興味深いのは、この証明の「美しくなさ」である。証明をしたアッペルとハーケンは非難されてさえいるということである。
数学の証明の難しさ、あるべき姿、など考えさせられる一冊。
【楽天ブックス】「四色問題」
「主よ、永遠の休息を」誉田哲也
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
記者の鶴田吉郎(つるたよしろう)は14年前に起きた女児誘拐殺人事件の映像がアダルトサイトに流されていたことを知る。
誉田哲也の初期の作品。物語として「ストロベリーナイト」や「ジウ」といったシリーズと繋がっているわけではないが、著者の原点とも言える。記者である主人公が、すでに過去のものとなった誘拐殺人事件を調べるうちに少しずつ奇妙な点に気づいていくのだが、全体的にはとくに予想を超えたひねりがあるわけでもなく、心情描写も最近の誉田哲也作品と比較すると少なく印象的な部分は少ないように思える。
物語自体を楽しむよりも、誉田哲也という著者を知る上では価値のある一冊かもしれない。
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「人間関係をしなやかにするたったひとつのルール」渡辺奈都子
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
人間関係をどのように良好に維持するか、と調べているうちに「選択理論」という言葉に出会った。本書は真理カウンセラーの著者がその「選択理論」について語る。
基本となるのは、「変えられるのは自分だけ」という考え方であり、「外的コントロール」つまり他者のコントロールをしないように勧めている。他人の行いに対してひたすら我慢をすることを理想とするように聞こえるかもしれないが、実際には希望を伝えることも勧めている。こちらの希望に沿わなかった場合に罰を与えたり、非難をしなければそれは「外的コントロール」にあたらないのだ。
また、人の感情や行動をいくつかのたとえを用いて興味深く説明している。1つは、車の4輪を用いて前輪を「思考」と「行為」、後輪を「感情」「生理反応」と例えている。つまり車の前輪と同じように「思考」と「行為」は自らの意思で操作できるが、後輪の「感情」「生理反応」はその前輪の結果についてくるものということである。
人の性格についての考え方もわかりやすい。人間は5つの基本的欲求「生存」「楽しみ」「自由」「力/価値」「愛/所属」のグラスを持っているが、それぞれのグラスの大きさは人によって異なるため、そのグラスを満たす量もことなるのだという。
全体を通じたのは、ここ数年自分が人間関係において意識していることとそれほど乖離してはいないということ。見方を変えれば、人によっては「他人に対する諦め」と否定的に受け取ることもあるのかもしれないが、個人的には、本書が推奨する「コントロールしない/されない関係」はもっとも相手を尊重した関係のように思える。人の見方に新たな視点を与えてくれる一冊。
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「「書」を書く愉しみ」武田双雲
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
書道家である著者が「書」について語る。
コンピューターが世の中に浸透し、文字を書く機会は本当に少なくなった。そのせいか、文字を書く事が嫌いな人は多い。実際、自分の書く文字が嫌いな人も多いという。僕自身もそんな一人で、特に字が汚いわけでもなく、むしろ「字がキレイ」と言われる事のほうが多いのだが、どうしても自分の書く字が好きになれない。本書はそんな人に、字に対して新しい考え方を与えてくれるだろう。
字がうまくなる方法として「下手な字競争」を紹介している。その名のとおり下手な字を書こうと努めるのだが、どうやったら下手に見えるか、という視点に立って字を眺める事に良って、より深い考察をすることができるという。また、お手本通りに書くという学校での書道の授業に異を唱えている。なぜなら同じ人物が書いたとしても二度と同じ文字は書けないのだそうだ。
その他にも中国や日本の歴史的な書を紹介している。有名な書のなかにも読みやすいものもあれば読みにくいものもあり、そこから伝わってくるのは、文字に正解はないということ。服装や姿勢や髪型などと同じように、文字もその人の個性を表すものなのだろう。
改めて文字というものと向き合ってみたくさせてくれる一冊。
【楽天ブックス】「「書」を書く愉しみ」
「本田式サバイバルキャリア術」本田直之
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ハワイと日本の二重生活を送る著者がその経験を基に今の時代を生き抜く考え方を語る。
成功した人は、その成功の多くが偶然的要素に左右された結果であるにも関わらず、本を出してあたかも自分の視点が正しく世間一般的な視点が間違っているように語ることが多い。そういう意味で本書にもあまり期待していなかったのだが、むしろ予想外にまともなことを語っている点が驚いた。
実は、著者の経歴から「思い切って行動すればなんとかなる」的な内容を想像していた。しかし実際には、社内や社外の人脈の作り方や、転職エージェントの利用のすすめなど、今の時代を生き抜くために、リスクを最小限に抑えて、利用できる物はなんでも利用すべき、という考え方が本書のなかで一貫としている。
著者が繰り返し使うのが「サバイバビリティ」という言葉である。何が起きるかわからない今、1つの会社や1つのキャリアに依存する事こそリスクが高く、「シングルキャリア」から「マルチキャリア」へ、「雇われ型」から「スキル提供型」への移行こそ、生き抜くために必要なのだろう。
【楽天ブックス】「本田式サバイバル・キャリア術」