「教誨」柚月裕子

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
親戚の死刑囚三原響子(みはらきょうこ)の遺品の受け取り人として指定されていた吉沢香純(よしざわかすみ)は、三原響子(みはらきょうこ)が幼い子を二人殺めた理由を知ろうとする。

幼い自らの子供だけでなく、近所の女の子まで殺害した三原響子(みはらきょうこ)は死刑を執行された。遺品と遺骨を受け取った香純(かすみ)の記憶では、小学校の頃に一度言葉を交わしたことがあるだけであるにも関わらず、そんなことをするような女性には感じられなかった。遺骨を納める地を探すとともに、同年代の響子(きょうこ)に起きた出来事を知ろうとするのである。

世の中の伝統や仕組みゆえに、犯罪が起こる。という物語は、宮部みゆきの名作「火車」を思い起こさせる。ただ、このような、物語の展開よりも心の描写を中心に描くのであれば、よくある物語の何倍も深く、鋭く人の心を描写しないと、傑作にはなりえないなと感じた。そういう意味では、悪くはないが長く心に残るほどの作品には至ってない。

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「Hamnet」Maggie O’Farrell

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
Hamnetは双子の妹のJudithが高熱で倒れたことから母を探していた。

物語は序盤は、Judithの高熱に対応する母を探して近所を歩き回るHammnetの様子、そして、その15年前、風変わりなAgnesと手袋職人の家の長男がやがてAgnesと結婚するまでの様子が交互に描かれる。

後半は家族を失ったことと、父親がロンドンで仕事をすることで、心が少しずつ離れ離れになる様子が描かれる。

正直、最後の最後まで、この物語がシェイクスピアを扱った物語だということに気づかなかった。HamnetとHamletが同じ意味の単語であることも知らなかったし、そもそもハムレットの物語自体を知らなかったから、重要な部分を見逃しているのかもしれない。やはり退屈でも古典には触れないといけないと感じた。

ただ、物語としてはかなり展開が少ない。Judithの高熱が、ひと段落するまで物語の半分以上を消費してしまう。

見どころは、子供を失った両親の描写だろう。きっとその描写から得られる感情は、独身の読者と子供を持つ読者では異なるのではないだろうか。そんなことを子供を持つ立場になってみるといろいろ伝わってくるものが違うのに気付かされた。

英語新表現
at odds with … …と矛盾する
Will-o'-the-wisp 欧米の神話に登場する不思議な光のこと
by-your-leave あなたの許可
chimney breast 暖炉や煙突などの部屋の中に出ている部分
chest cold 気管支炎

「氷点」三浦綾子

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
辻口家の娘のルリ子を殺した犯人は、自分も生まれたばかりの娘を遺して自殺した。辻口啓造(つじぐちけいぞう)は浮気をしていた妻夏枝(なつえ)への復讐のために、犯人の子供を引き取ることとする。

タイトルは何度も耳にしたことがある作品にもかかわらず読んだことがなかったので、今回手に取ってみた。

犯人の子を陽子(ようこ)と名づけて、長男の徹(とおる)とともに我が子として育てる夫辻口啓造(つじぐちけいぞう)と妻夏枝(なつえ)の様子を描く。夏枝(なつえ)の一時の気の迷いから生まれた行為が誤解を生み、そんな夏枝(なつえ)への復讐のための陽子(ようこ)が犠牲になっているという流れである。

強い嫉妬や復讐が描かれることが多い展開の中、唯一の救いは、母から辛くあたられるという苦難の中でも、前向きに生きようとする陽子(ようこ)の姿である。しかしそんな困難をプラスに変える生き方が、さらに母夏枝(なつえ)の敵対心を増していくのである。

個人的に気になったのは、自らの子供を殺した犯人の娘だかという理由で、真実を知ってから陽子(ようこ)につらく当たる夏枝(なつえ)の行動である。子供には何の罪もなく、幼い頃から育ててきだ子供であれば、血が繋がっているいないに関係なく愛情を注げると感じるのだが、この違和感は2020年代に読むからこそ感じるのだろうか。本書が出版された1970年代にはこの「殺人者の血」という考えが、今よりも自然に受け入れられていたのかもしれない。

すでに40年以上前に出版された物語であり、その舞台はさらにその10年以上前の戦後を舞台としているので、描かれる生活の様子が古いのはもちろんだが、登場人物の心情の描き方が表面的である点が、読んでいて古臭さを感じた。

一つの古典作品として読むのならまったく問題ないが、単純に一つの物語として楽しめるかと言われれば、やはり現代の深い心情描写や、息もつかせないような物語展開の作品と比べると見劣りしてしまう。

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「営業の神様ヤマナシさんが教えてくれたこと」早崎郁之

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
不動産会社の営業として成績がふるわない早崎(はやさき)はある日、ヤマナシさんと出会い、営業に対する考えを変えていく。

売るために物件のスペックばかりを説明していた早崎(はやさき)がヤマナシさんの助言によって、少しずつお客の本当に実現したいことは何かに耳を傾けるようになっていく。

その後は早崎(はやさき)がさまざまなお客に対して同様の考えをすることで、営業の成績をあげていく。結局本書で重要なのは次のことである。

その人がその商品やサービスを通じて得たいと思っているもの。誰かに愛されること、受け入れられること、認められること。これこそが真の欲望、『スーパーウォンツ』なんだよ

営業だけでなくさまざまなサービスにおいてもよく聞く話ではある。ブランドのひけつについて書いた「Building a storybrand」にも、サービスをスターウォーズにたとえて、私たちはヨーダになるべきでルークルカイウォーカーになってはならない。という言葉があった。結局、成功するサービスは常にお客様が主人公であることを意識しているのである。

そしてそれを常に実行するために、本書の「スーパーウォンツ」ように、共通の言葉を与えているのは有益だろう。

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「日本一わかりやすい ひとり社長の節税 〜税理士YouTuberが“本音”で教える〜」田淵宏明

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
個人で仕事をしている人向けの節税方法について語る。

確定申告でかなりの税金をとられることから、他にも節税方法がないかと思っていたところで知人に本書を勧められた。

独立後の働き方としては、個人事業主として働くか、法人化するかという二つの選択肢があり、本書は基本的に法人化を進めており、全体的にも法人化したのちの節税方法について書いている。

大きな学びは、よく言われる年収1,000万円付近が法人化の目安、というのは特に信憑性がなく、年収500万円程度でも法人化した方が節税になるということである。

とはいえ、法人化した後の節税方法を知れば知るほど、考えなければいけないことが複雑になっていくという点が非常に悩ましい。法人としての税金計算に加え、個人としての計算も必要になり、単純に考えても計算にかかる手間が二倍以上になる。また、それを税理士に依頼するとさらに複雑になり、法人化すると税務調査が入る可能性も大きく高まるという。

漠然と法人化したのちのイメージはついたが、なかなか手間を考えると簡単には決断できないと感じた。人生の豊かさは持っているお金だけでなく、どれだけ生活を単純化するかにも大きく依存すると感じているので、節税のためとはいえむやみに人生を複雑にすべきではないだろう。

本書はすでに法人化を決断した人が読むと、使える情報にたくさん出会えるかも知れない。

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「The Perks of Being a Wallflower」Stephen Chbosky

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
高校生のCharlieが日常の出来事を日記に綴っていく。兄や姉や家族の話や、高校の友人たちの話を語る。

前半は、本当に普通の高校生が日常を綴っているという印象である。基本的には仲のよいPatrickと大好きなSamを描くことが多い。他にもさまざまな高校の友人たちが描かれ、Charlieが描く友人たちが、みんな非常に優しい人たちなのが伝わってくる。ただ、高校生活の些細な出来事が多く、なかなか物語が大きく動かないので若干飽きてしまうかもしれない。

しかし、中盤以降、少しずつCharlieが、普通の高校生とは少し違った感覚の持ち主で、過去の出来事によって心に大きな傷を抱えていることがわかってくる。そして、Charlieが日記をつけ始めたのは、精神科医に勧められて始めたということである。

やがて、Charlieは周囲の家族や周囲の友人たちの支えもあって、少しずつ自分の人生に向き合うようになっていくのである。

作品としては映画化もされており、大きく評価されてはいる。しかし、読んでみるとそこまで本を読み慣れている人に響く作品には感じられなかった。どちらかというと、その日記というスタイルから、主人公のCharlieと同年代の十代の若者の共感を集めたのだろうと感じる。

一方で高校生であるCharlieが日記をつづる、というスタイルの物語なので、時々出てくる高校生らしいスラング以外は出てくる英単語は非常に簡単である。

英語新表現
somebody's crush 誰かの片思いの人
designated hitter 指名打者
do acid 幻覚剤を摂取する
behind by one run 一点差で負けている
the beer starts to hit him ビールで彼は酔っぱらい始めた
second string 補欠(2番手)選手

「El cuco de cristal」Javier Castillo

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
心臓移植で命を救われたCora Merloは、自分の命を救ってくれたCharlesがどんな人生を送ってきたのかを知るためにCharlesの故郷のミズーリ州Steelvilleを訪れることとなる。しかし、Steelvilleでは未解決の行方不明事件が繰り返し起こっていた。

物語としては、CoraとCharlesの兄のJackが、行方不明の事件の真実に迫っていく様子を描く現在の様子と数年前の様子を交互に描いている。CoraはドナーであるCharlesの生前の様子を知るためにSteevilleに滞在し、そのなかで偶然行方不明のこどもを発見したことから事件に巻き込まれていくこととなる。一方Jackは、CoraのドナーとなったCharlesを弟に持つだけでなく、行方不明者を捜索していた警察官だった父親も失踪しているという過去を持つのである。

現代と並行して描かれる過去の物語では、失踪前のJackの父のEdwinが、子供の頃に行方不明になった姉を探す様子を描く。姉は田舎町の生活に嫌気が出て家族も顧みずに出ていった、と思っていたEdwinだったが、警察官として町の事件の解決に奔走する中で姉と思われる写真を見つけ、姉は実は拉致され殺害されていたのではないかという疑いが濃くなるのである。

Edwinの姉が行方不明になった1980年とEdwinが警察官として行方不明者の捜索に奔走する2000年、そしてCoraとJackがEdの父親Jackを含む行方不明者の謎に迫る2017年と、40年近くを隔てた3つの時代に起こった未解決行方不明事件の謎に迫るという、こんなに風呂敷を広げて大丈夫なんだろうかと思うほど謎満載の物語である。

マラガ生まれの著者のスペイン語の物語であるにもかかわらず舞台はアメリカという点がちょっと残念であるが、物語自体はしっかり楽しませてもらった。

スペイン語新表現
a hurtadillas こっそりと
de costado 脇腹から、横向きに
una camisa a cuadros チェック柄のシャツ
los juegos de mesa ボードゲーム
a merced de … 〜に翻弄されて、〜のなすがままに

「親子で学ぶどうしたらお金持ちになれるの?人生という「リアルなゲーム」の攻略法」」橘玲

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
合理的に生きればお金持ちになれるとして、その方法を子供にもわかりやすく説明する。

全体的にはコスパやタイパ、複利の話などをわかりやすく説明している。常に合理的な考え方をしている人にとってはあまり新しい内容はないだろう。

しかし、本書でも繰り返し語られるように、世の中には不合理な人たちが溢れているのである。宝くじを買ったり、ギャンブルに大金を注ぎ込んだり、わずかなお金を節約するために多くの時間や労力を消費したりする人はたくさんいるのである。

全自動洗濯乾燥機や食洗機があるのに、毎日洗濯や食器洗いに1時間以上かけている人など数えきれないほどいるだろう。そういう人はお金の大小ばかりに目を奪われて、時間という有限の資源の重要性を理解できないのだ。

そういう意味では、本書のような本とともに、子供の頃から、一番大切で取り返しのつかないものは時間である、という考えを育てるのは非常に良いことなのかもしれない。

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「データサイエンス「超」入門 をウソと見抜けなければ、データを扱うのは難しい」松本健太郎

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
いくつかの事例とともにデータの読み方を語る。

最近の新聞記事を題材としてデータの見方を説明する。面白かったのはGDPの章である。GDPは経済成長について語る時によく出てくる言葉ではあるが、どれほどの人がGDPという数字の意味についてわかっているのだろう。本書では名目GDPや実質GDPなどの言葉から、GDPという数値が生まれた経緯も含めて説明している。

他にも失業率や貧困率、地球温暖化などのデータを題材としてその仕組みを説明している。

結局データをみる時に心に留めておくべきことは次の点だろう

聞き方が違うため、同時点のマスコミの各社の世論調査どうして支持率を比較しても意味がありません。マスコミそれぞれの支持率の推移に意味があります。
何ら偏っていない、真の精緻な世論調査はどこにあるのでしょうか?

つまり、データは常に多少の偏りがあり、質問や収集の仕方でいくらでも恣意的に示すことができるということである。

改めて、偏ってないデータなどは存在しいないこと、推移を示した時系列の連続したデータではなはない、一時的な調査結果を示したデータは疑ってかかるべきことを心に留めておきたいと思った。

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「看守眼」横山秀夫

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
警察や司法、報道に関わる人々を描いた6つの物語。

今回も横山秀夫の人間描写力が際立っており、わずか数ページの短編で登場人物の人間味が深く描かれている。物語の面白さというよりも、優れた人間描写術としてみると、本書のような短編集でも十分楽しめるだろう。

個人的に印象的だったのは三篇目の「口癖」である。家庭裁判所の調停委員のゆき江の物語で、調停に訪れた人が知っている人物だった、というものである。調停委員という職業について初めて知ったが、知人への出会いが、結果的にゆき江の娘の過去を明らかにするまでの流れも面白かった。

どの物語も、それほど大きな事件ではなく、原稿が見つからない、とか、ミスをバレないようにしたい、などむしろ世の中の誰にでも起こりうる小さな出来事から始まる。しかし一人ひとりの個人にとっては世間からみたら小さくみえる出来事が、その日の最大の挑戦なのである。そんなそれぞれが感じる緊迫感と共に描かれるから、どの物語からも分厚い人間味が感じられるのだろう。

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「1%の努力」ひろゆき

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
世の中の「頑張ればなんとかなる」と思っている人たちに向けて、サボる才能を磨く方法を語る。

世の中の出来事に対して、独自の視点で語るのが面白い。「サボる」という言葉をそのまま受け取ると強烈だが、もう少し受け入れられやすそうな表現にすると、何も考えずに努力するのではなく、ベストな場所と方法を見極めようというものである。

確かに日本では未だ、努力を過大評価している点があるし、未だに結果が出てないのに「一生懸命やっているんだから・・・」と自分を正当化しようとする人が多いのも事実である。ひょっとしたらそんな人には本書は響くかもしれない。

本書を読んで初めて知ったのだが、実は著者ひろゆきは自分と同じ年齢であるということ。以前から考え方で似ているところがあると思っていたのだが、それはこの世代に共通のものかもしれない。ただ、自分は著者ほどサボることが好きではなく、それを努力と呼ぶかは別にして、毎日何かに打ち込んでいる行き方の方が好きな点が大きく考え方の違う点だと感じた。

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「A Dead Draw」Robert Dugoni

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
釈放されたErik Schmidtは、2人の女性を殺害した疑いがあり、Tracyの妹のSarhaを殺害したEdmund Houseと刑務所で親しかったという。出所したSchmidtは少しずつTracyに狙いを定めTracyの家族に接近し始める。

Tracy Crosswhiteシリーズの第11弾で、久しぶりに第一作目の大きな事件、妹のSarahの死や犯人Edmund Houseの話が登場する。

Schmidtに出会ってから過去の悪夢が復活し、射撃の腕にまで影響が出始めたTracyは、釈放されたScmidtから家族を守るために故郷のCeder Groveにしばらく滞在すこととする。また、その間なまった射撃の腕を回復するために、子供時代の射撃の先生であるMasonとその娘のLydiaとともにトレーニングに打ち込むこととなる。

しかし、そんななかSchmidtと思える男性が少しずつ夫のDanや娘の周囲に現れ、やがてTracyはSchmidtと、現在は廃墟と鉱山の町で対決することとなるのである。

久しぶりに犯人との直接対決というわかりやすい展開である。唯一興味深かったのはLydiaが自閉症で様々な能力に長けているにもかかわらず、人とのコミュニケーションを苦手とする点である。

英語新表現
chopped liver 無視される存在、おまけ扱い
horse around 馬鹿騒ぎする
put your asses on the line 命懸けでやる、全力でやる
tucker out 疲れさせる
easy peasy 楽勝
sass you back 反論する
belie the spite 悪意を隠す
refuse to give ground 一歩も引かない
I'm locked and loaded! 準備完了だ、行くぞ!
on the spectrum 自閉スペクトラム症(ASD)である

「昭和の犬」姫野カオルコ

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
第150回(2013年下半期)直木賞受賞作品。滋賀県に生まれた声の小さな女の子の柏木イクが、高度経済成長期で大きく発展を遂げる昭和を、さまざまな犬と関わりながら生きる様子を描く。

少し難しい家庭の父と母の下で育ったイクが、どちらかというと冴えない女の子である点が面白い。

さまざまな犬を描いているだけでなく、大きく変貌を遂げる日本のなかで、少しずつ文化や習慣が変わっていく様子も伝わってくる。

昭和という時代も、イクの生き方も、どちらも少し変わっているので共感するのは難しいかもしれない。それでも昭和という時代が令和とは少しずつ異なることが十分に伝わってくる。どの家にもテレビがついていたな、とか、放し飼いの犬がうろちょろしていたな、とか、昭和を知っている世代には懐かしく感じるだろう。

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「イクサガミ 天」今村翔吾

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
大金を求めて多くの武芸に秀でるものが京都の寺に集まった。そこで始まったのは、命をかけた戦いであった。

すでにこちらの物語はドラマにもなっているらしく、今村翔吾作品のなかではめずらしく、ややフィクションの要素が強いドラマ向きの物語である。家族を救うためにお金が必要な嵯峨愁二郎(さがしゅうじろう)と同じくそこに参加していた12歳の少女双葉(ふたば)とともに、主催者から与えられた掟にしたがって、東京を目指す様子を描く。

その掟とは、与えられた札を奪い合うというもので、関門ごとに指定の枚数以上の札を持っていないと通過できないという、つまり実質の殺し合いである。

愁二郎(しゅうじろう)と双葉(ふたば)は他の参加者と協力などもしながら、可能な限り人を殺さずにゴールを目指すこととする。そして、その過程で、愁二郎(しゅうじろう)の過去が明らかになっていくとともに、他の参加者たちの素顔が明らかになっていく。

まだ物語が始まったばかりなので全体的な感想は言いようがないが、とりあえず続きも読もうと思った。

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「El mentiroso」Mikel Santiago

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
数日の記憶を失ってた庭師のAlexは、記憶をとりもどすために自分の足取りを辿り始める。

金曜日の夜からの記憶のないAlexだが、わずかな記憶の中で隣で見知らぬ男が死んでいたことを覚えていた。自分の足取りを辿ると、記憶通りの使われなくなった工場があり、そこでは記憶と同じ男の遺体があった。そして、その男は著名な作家Félixという男であることを知る。自分が殺したかもしれないという不安のなか記憶の回復に努めるAlexは、少しずつその作家Félixが、地元の地域の秘密を小説として暴露しようとしていたことを知るのである。

記憶喪失モノというと宮部みゆきの「レベル7」や真保裕一の「奇跡の人」、最近だと「Project Hail Mary」など、小説では使い古された題材ではあるが、ハズレの少ない題材だけに、本作品も程よく楽しませてもらった。ただ、学びは残念ながらほとんどない。

スペイン語新表現
contra las cuerdas 窮地に立たされて、絶体絶命で、追い詰められて
tomar a pecho 深刻に受け止める、気に病む
morder el polvo (戦いなどで)敗れる、打ち負かされる、屈辱を味わう
de segunda fila 二流の、目立たない
bala perdida 厄介者、無責任なやつ、問題児、ろくでなし
hablar por los codos べらべらとしゃべる、とめどなく話し続ける

「東大卒キックコーチが教える本当に正しいキックの蹴り方」田所剛之

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
サッカーにおける正しいキックの蹴り方を、科学的に分析して説明する。

すでにサッカー歴を超えて長くプレーしているスカッシュで、最近理想に近いスイングに近づいたと感じている際、著者の登場しているYouTubeにたまたま出会い、改めてサッカーにおいてももっと効率の良い蹴り方があったのではないかと思い、将来の指導目的もふまえ本書にたどり着いた。

なかなか言葉だけで理論的に理解するのは難しいし、理論的に理解できたからといって即実践できるとは限らない。ただ、結局のところすべての野球のバッティング、サッカーのキック、ラケットスポーツのスイング等おいて必要なのは次の3点の考え方だろう。

  • 自然な振り子運動とムチのような動き
  • 回転と狙った方向を実現するための打点
  • 打点の重さ(本書では重さとしているが、実際には「硬さ」のほうがしっくりくる)
  • 空気抵抗によるマグヌス効果

印象的だったのは、スパイクの傾向なども考慮した利用的なインサイドキックの蹴り方である。スパイクに遊びがあるインサイドよりも踵よりで蹴った方が、足が硬いため、正確なインサイドキックが蹴れるというのである。

子供がサッカーをはじめたら、戦術だけでなく蹴り方も含めて、もう一度サッカーを理論的にやり直してみたいと思った。現在サッカーをしている人にもなにかしら一方上に進むためのヒントがあるかもしれない。

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「記憶に残る人になる トップ営業がやっている本物の信頼を得る12のルール」福島靖

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
リッツ・カールトン、アメリカン・エキスプレスを経て営業コンサルティングとなた著者が良い営業になるための秘訣を語る。

著者自身の営業としての哲学は一貫して、得るものやサービスを語るよりも、信頼できる人間になるということである。そして、同時にタイトルにあるように記憶に残る人になるということである。そのための方法として著者が実践していることを本書では解説しているが、なかでも印象に残ったのは「感謝」の方法を決めないの章である。

僕自身謝罪を感謝に置き換えられるなら可能な限り感謝の言葉を伝えたい、という考えではあるが、感謝を伝えようとすると、どうしても言葉で「ありがとう」と伝える以外の方法が思いつかず、その形の制約から伝えられる相手や状況が限られてしまっていた。だからこそ本書の

感謝の方法や対象にこだわってはいけない

は非常に印象的でぜひとも取り入れたい考え方である。実際、本書では名刺に感謝のメッセージを書いて渡したり、ゴミ箱に清掃員への感謝のメモを貼ったりするシーンが描かれていて、決して難しい行動ではないと感じた。

著者は次のようにも語っている。

  • 感謝されるようなことをするよりも、小さな感謝を伝えることで人の心は動く…
  • 「すべての人」に、感謝を伝えているだろうか?

もちろん人は感謝されるために行動しているわけではない。だからといって感謝を伝えない理由はない。ぜひ実践していきたいと思った。

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「国宝」吉田修一

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
長崎の極道の家に生まれた立花喜久雄(たちばなきくお)は、抗争で父を失ったのち、歌舞伎の家で生活しながらその道へと進んでいくこととなる。

すでに本作品は映画化されており、すでに複数の人からその映画を勧められた。同じ物語の本と映画があったら本から入るべきという哲学から、本書を読むに至った。

物語は極道の過程に生まれ育った立花喜久雄(たちばなきくお)が、父親の死をきっかけに勢力を失っていくなか、知り合いの歌舞伎役者の花井(はない)家の下に預けられる。元々演技をすることが嫌いではなかった喜久雄(きくお)は、本家の息子である俊介(しゅんすけ)とともに、歌舞伎の未来を担う役者として成長していく。

一般的には本と映画があったら本のほうが良い作品であることが多い。それはそもそも良い物語を2時間の尺に詰め込むのはむずかしいし、人の心情を表情などの映像で伝わる表現だけで表現するのは不可能だということからだろう。しかし、本書に関しては、歌舞伎の描写の説明が多く含まれており、よっぽどの歌舞伎愛好家でなければ理解できないような内容が多く、映画の方が多くの人にとって入りやすいだろうと感じた。

歌舞伎の歴史や描写以外でも、喜久雄(きくお)を中心にした人間の物語はそれなりに読み応えはあるのだが、歌舞伎の描写の部分になかなかついていけなかったこともあり、物語を存分に満喫したような感じは味わえなかった。

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「Red Rising」Pierce Brown

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
将来移住してくる人類のために、火星の地下を掘り続けるRedと呼ばれる人々、そんななかの一人Darrowは、妻のEoが処刑されたことを機に、自分達を欺いてきた世の中の仕組みに気づく。

序盤は火星の地下の開拓のために、重労働を強いられる人々が描かれる。そんななかDarrowの妻は体制に歯向かって処刑される。Darrowは自暴自棄になったところでようやく現実に気づくこととなる。それは、すでに火星の地表には多くの人々が移住して快適に生活しており、将来の人類のために地下を開拓する、というのはRedの人々を働かせるための方便だったのである。

表向きには処刑されて死んだことになったDarrowは、肉体改造を経て、火星の頂点の種族であるGoldとして、将来のRedの反乱を確実に成功させるために、Goldの社会へと潜入する。そして、Goldの社会の中での地位を手に入れるためにGold同士の生き残りのゲームに参加することとなるのである。

火星を舞台にしたサバイバルということで、「The Hunger Games」のような印象である。未来の火星を舞台としているだけでなく、道具や技術も架空のものが多いので、なかなかその世界観についていくのが難しい。架空の世界の物語については常に言えることだが、世の中に活かせるような学びはほとんどない。本書は三部作の最初の作品ということで、物語はまだ道半ばではあるが、この労力を費やしてまで続きを読むのかは悩ましいところである。

以前よりよく名前を聞く作品で、完成度の高いファンタジー作品を期待していたのだが、若干期待はずれという印象である。

英語新表現
a game of merit 実力主義のゲーム
square up with … …と決着をつける
bent on … …に夢中になっている。
standard deviation 標準偏差
buck for … …を得ようと躍起になる
get their jollies off 楽しむ、満足感を得る、喜びを得る

「シューメーカーの足音」本城雅人

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ロンドンで靴職人として働く斉藤良一(さいとうりょういち)と、日本で靴職人を夢見る榎本智哉(えのもとともや)の二人を描く。

すでにロンドンで靴職人として独り立ちしながらも、さらにそのブランド価値を高めようとする斉藤良一(さいとうりょういち)を描くとともに、日本で、靴の修理という小さな対応を重ねながら、将来を夢見て自らの技術の向上に励む榎本智哉(えのもとともや)を描く。

物語が進むに従って少しずつ二人の過去が明らかになっていく。現在は成功している斉藤良一(さいとうりょういち)だが現在の地位を掴むための苦労が見えてくる。そんな斎藤の過去からは、靴づくりにかける情熱と並行して、狂気のようなものも見えてくる。

一方で、榎本智哉(えのもとともや)の日常からは、斉藤良一(さいとうりょういち)を過剰なまでに意識していることがわかる。そこには父親の最期が大きく関わっていた。

やがて、智哉(ともや)の計画が功を奏して、二人は対決することとなる。

若干物語の展開が少ない。一方で靴職人の靴づくりにかける思いは十分に伝わってきて、ものづくりに没頭することのすばらしさを改めて感じた。

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