「Red Rising」Pierce Brown

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
将来移住してくる人類のために、火星の地下を掘り続けるRedと呼ばれる人々、そんななかの一人Darrowは、妻のEoが処刑されたことを機に、自分達を欺いてきた世の中の仕組みに気づく。

序盤は火星の地下の開拓のために、重労働を強いられる人々が描かれる。そんななかDarrowの妻は体制に歯向かって処刑される。Darrowは自暴自棄になったところでようやく現実に気づくこととなる。それは、すでに火星の地表には多くの人々が移住して快適に生活しており、将来の人類のために地下を開拓する、というのはRedの人々を働かせるための方便だったのである。

表向きには処刑されて死んだことになったDarrowは、肉体改造を経て、火星の頂点の種族であるGoldとして、将来のRedの反乱を確実に成功させるために、Goldの社会へと潜入する。そして、Goldの社会の中での地位を手に入れるためにGold同士の生き残りのゲームに参加することとなるのである。

火星を舞台にしたサバイバルということで、「The Hunger Games」のような印象である。未来の火星を舞台としているだけでなく、道具や技術も架空のものが多いので、なかなかその世界観についていくのが難しい。架空の世界の物語については常に言えることだが、世の中に活かせるような学びはほとんどない。本書は三部作の最初の作品ということで、物語はまだ道半ばではあるが、この労力を費やしてまで続きを読むのかは悩ましいところである。

以前よりよく名前を聞く作品で、完成度の高いファンタジー作品を期待していたのだが、若干期待はずれという印象である。

英語新表現
a game of merit 実力主義のゲーム
square up with … …と決着をつける
bent on … …に夢中になっている。
standard deviation 標準偏差
buck for … …を得ようと躍起になる
get their jollies off 楽しむ、満足感を得る、喜びを得る

「Cause of Death」Patricia Cornwell

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
海軍の船の近くを潜水中に亡くなったジャーナリストは毒殺されたことが判明した。調査の過程で少しずつKay Scarpettaの周辺で不審な出来事が起き始める。

Kay Scarpettaシリーズの第7弾である。「The Bone Collector」シリーズに飽きて、事件捜査だけでなく家族や恋人との人間的な側面の描写の多いこちらを読み続けており、今回もそんななか惰性で手に取った。今回も、事件捜査と同じぐらいKay自身の複雑な人間関係についての悩みが描かれる。不倫関係にあるWesleyとの関係、長年のパートナーで離婚とともに少しずつ堕落していく様子を隠さないMarinoとの関係、成人して少しずつ危険な警察組織としての道へと進んでいく姪のLucyとの関係などである。

事件自体は警察の汚職なども絡んでくるが若干深みに欠けて物足りない。このシリーズの良い点は事件が解決した後にダラダラその後の物語を描かない点である。前作品と今回の作品は、事件解決の余韻に浸る間も無く終わってしまった。

英語新表現
pass on 亡くなる
run-in 口論、衝突、いざこざ
have my head in the sand 見て見ぬふりをする
blow off steam 不満を発散する
do a number on … …に損害を与える

「Nightcrawling」Leila Mottley

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
父が亡くなり、母もいなくなった家庭で、兄のMarcusと生活をする17歳のKiaraの様子を描く。

Kiaraは兄のMarcusとともに生活していたが、家賃の値上げをきっかけに、アルバイトを探し始める。兄のMarcusは音楽家になる夢を捨てられずに仕事が続かないことから、やがてKiaraは自分の体を売ることとなる。そして少しずつ、大きな売春へと関わることとなっていく。

これまであまり黒人女性を描いた物語に触れたことがなかったので新鮮だった。Kiaraが自分や友人のために少しずつ体を売る生活をせざるを得なくなる点が印象的で、映画などで見る白人の豊かな生活はアメリカ社会の一部でしかないのだと感じた。あまり描かれることのないアメリカの貧困層の生活を知ることができるだろう。

英語新表現
neighborhood staple 近所になくてはならない存在
zip-tie 結束バンドで結ぶ
take a beat 一拍置く、少し間を置く
tug-of-war 綱引き

「The Starless Sea」Erin Morgenstern

The Starless Sea

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
大学の図書館で不思議な本と出会ったZacharyは、その本のなかに自分自身が描かれていることを知り、その本の秘密に迫っていくこととなる。

前半は大学生のZacharyが図書館でSweet Sorrowsという、蔵書記録のない本と出会う。Zacharyは子供の頃家の近所にドアの絵が描かれていたにも関わらず、そのドアを開けないとい選択をしたことが強く記憶に残っており、その出来事がSweet Sorrowsに描かれており、またその主人公の親もZacharyの親と同様に占い師であることからSweet Sorrowsが描かれた理由を探し始めるのである。

やがてZacharyはわずかな手がかりからStarless Seaの世界へと入り込んでいくこととなる。

前半の壁に描かれたドアの描写などは久しぶりに出会った面白いファンタジーの入り口のようで期待感高まったが、中盤以降は登場人物たちが物語のなかを彷徨っている様子をひたすら描いているだけなのでかなり焦れて退屈だった。自分の好みには合わなかったが、このような物語が好きな人もきっといるだろう。日々忙しい人よりも、ゆっくりとした時間のなかで過ごしている人向きの物語である。

英語新表現
she took it upon oneself to 自ら進んで~することを課す
bail on A Aとの約束をすっぽかす
waxing moon 上弦の月
waning moon 下弦の月
lunar new year 旧正月
collect oneself 気を落ち着ける
spot on 正しい、どんぴしゃりである

「Artemis」Andy Weir

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
人類が月面の都市で生活をするなか、配達をして生計を立てる女性Jazzを描く。

序盤は月面での生活を詳細に描いていく。重力が少ないゆえに起きる出来事や、都市の機能が未発達ゆえに起きる治安上の問題など、しっかり科学的に説明していく点が著者Andy Weirらしい。

やがて、月面生活の中で少しでも理想の生活を手に入れたいとお金を稼ぐことに勤しむJazzに、危険な仕事を持ちかけられたことから物語は大きく動いていく。そしてやがれそれは月面都市全体の未来を守る使命へと発展していく。

"Artemis" by Andy Weir

Jazzの父親が製錬工の職人であり、Jazz自身も十代の頃には一緒に仕事をしたことがあるだけに、そんな親子の仲違いや絆も描かれる点も面白い。

普通にいろいろ興味深く物語としても楽しめるが、やはり前作「Project Hail Mary」が想像を超えた面白さだったせいで、期待値が上がってしまっているのを感じる。残念ながらそれを超えるほどのものではない。

英語新表現
tourist trap 観光客向けの罠
foot trafic 歩行者交通量
make a stand 断固として抵抗す
hit on people 人々を口説く
in red tape お役所仕事、形式的で非効率な仕事
five by five 音声の大きさと明確さが最高レベル
conk out 意識を失う
take a sniff かぎまわる
cardiac arrest 心停止

「Bringing Down the House: The Inside Story of Six M.I.T. Students Who Took Vegas for Millions」Ben Mezrich

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
MITで将来に悩む学生だったKevinはMITで長きにわたって存在してきたブラックジャックチームに加入することとなり、さまざまなカジノでお金を稼ぐ生活に入り浸っていく。

物語は進路に悩むMITの学生の20歳のKevinが、カードカウンティングチームに勧誘され、カジノで大金を稼ぐ様子が描かれている。

「Bringing Down the House: The Inside Story of Six M.I.T. Students Who Took Vegas for Millions

序盤は、そんなKevinがカードカウンティングの技術を学んで、カジノで仲間と協力して大金を稼ぐ様子が描かれている。

中盤以降は、少しずつカジノ側も対応してきて、次第にMITチームはカジノから出入り禁止や、脅迫を受けることとなる。そんななか、カジノで稼ぐことと自分の辿り着きたい人生とのギャップに苦しむKevinと、カードカウンティングで生きることにこだわる他のメンバーとの意識の差が大きくなっていく。

Was this where he belonged? Was this who he had become?
これが自分がいるべき場所か? これが自分がなりたかった人間か?

カードカウンティングというのは聞いたことがあったが、出たカードを記憶しておくことで、残りのカードを推測することかと思っていたが、実際にはもっと単純なものであることがわかった。

本作品では後半には「マネー・ボール」のBilly Beaneについても触れられているが、数字を重視して、一般的な人が陥りがちな先入観から解放され、ブラックジャックやプロ野球など特定の分野で成功することは、理系の人間には最高に楽しく爽快な瞬間だろうなと感じた。まだ数値的な分析が未開拓な分野を探してみたくなった。

英語新表現
trespass act 不法侵入行為
crash out 眠りにつく
hit the pool プールで泳ぐ、プールに入る
face cards トランプの絵札
break a sweat 汗をかく
raise a sweat 汗をかく
arbitrary point 任意の時点
failure point 限界点、機能停止点
grounded family 地に足の着いた家族、現実的な家族

「Rejection Proof: How I Beat Fear and Became Invincible Through 100 Days of Rejection」Jia Jiang

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
拒否される恐怖心を克服するために始めた拒否セラピー、それは100日かけて毎日拒否に出会うというもの。

何年か前に著者のTedTalkと拒否セラピーのクリスピークリームの回が印象に残っていた。それは拒否されるためにクリスピークリームで作るのが難しそうなドーナツを注文するにもかかわらず、店員は拒否することもなくそのドーナツを作って出してくれる、というもの。久しぶりにその動画が見たくて検索したところ、書籍化しているということでくその前後の出来事も知りたくなり本書を読むに至った。

驚いたのはクリスピークリームの出来事は拒否セラピーを始めて間もない3回目の出来事だということ。著者にとって拒否セラピーを始めてすぐにこのような印象を変える出来事に出会ったことは幸運だったことだろう。改めて、無茶な依頼にも親切に対応したクリスピークリームの店員Jackieのように、真剣な依頼には真剣に対応する人間でありたいと思った。

僕自身はそれほど他人からの拒否に恐怖心はないが、拒否に恐怖心を抱く人の気持ちが本書を通じてよくわかった。速い話が、拒否されるのが怖い人は、拒否は自分自身の性格や能力の否定と感じるのである。一方で、僕のように拒否に恐怖心のない人は、もともと自信があるせいもあるが、拒否はたまたまタイミングが悪かったり依頼側と回答側の相互利益が成立していないだけだと捉え、自分自身の性格や能力の欠如とはほとんど関連づけないのである。

中盤以降は、拒否セラピーで有名になったせいで、著者にもさまざまな依頼が舞い込む様子が描かれる。そんななか、著者はたびたび断る側にまわることとなる。その過程で拒否される側だけでなく、拒否する側の考え方にも気づいていくのである。

When you deliver a rejection to someone, give the bad news quickly and directly. You can add the reasons afterward, if the other persons wants to listen. No one enjoys rejection, but people particularly hate big setups and "yes-buts." They don't lessen the blow––in fact, the often do quite the opposite.
誰かの依頼を断る時は、簡潔にかつ直接伝えてください。相手が理由を知りたい時に、理由は後から付け加えればいいのです。断られるのが好きな人などいませんが、人は特に、長い前置きや、「はい、でも」のような言葉を嫌います。そんなものは衝撃を和らげるどころか時にはまったく反対に作用します。

終盤では拒否セラピーの最後の挑戦として、著者は、妻の転職の手助けをする。それは妻のもっとも働きたい会社であるGoogleへの転職を成功させることである。

上で書いたように、僕自身は著者ほど拒否されることに抵抗はないが、むしろ本書では拒否する側としての姿勢に学ぶ点が多かった。何かを依頼された時に単純にNOと言って終わりにするのではなく、自分の好みや都合が合わないことを説明することで、依頼側は自分自身の否定と捉えずに済むのである。この点は早速取り入れたい思った。

ぜひ日本語化して日本にも広まってほしい内容である。

英語新表現
cuss out 罵る、罵倒する
psych out 不安にさせる、心理的に見抜く
strike a nerve 神経質になる
conform to the norm 規範に従う
sell a bridge 騙す
stick up for 支持する、応援する
break out in hives じんましんがでる
measure up to 見合う、匹敵する
off the wall 型破りな、突飛な
far cry ほど遠い

「Ugly Love」Colleen Hoover

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
看護師を目指して勉強中のTate Collinsはパイロットの兄のアパートでしばらく過ごすこととした。そこで同じように他のパイロットの男たちと出会う中、そのうちの一人Miles Archerに惹かれていく。

少しずつ惹かれ合うTateとMilesだが、Milesは二人の関係に2つの条件をつける。過去は詮索しないこと。未来を期待しないこと。そんな条件に抵抗感を抱きながらもMilesが好きでたまらないTateは、その条件を受け入れて関係を続けるが、もっとMilesのことを知りしたい、というジレンマに苦しんでいく。

物語はそんなTateとMilesの恋愛と並行して6年前のMilesの恋愛が描かれる。まだ大学生だったMilesが大学に転校してきたRachelという女性に恋をするのである。

そして次第に、6年前のRachelとの出来事がMilesの心に大きな傷を遺し、そのためにMilesはTateと必要以上に親密にならないようにブレーキをかけているとわかる。TateとMilesの現代の物語では少しずつそんな中途半端な関係に苦しむ様子が描かれ、6年前のRachelとMilesの物語では、一見幸せに見える二人の関係が描かれるが、6年後のMilesの苦しみを知っているからこそ、悲劇が起きる予感が漂うのである。

そんななかTateやMilesが住むマンションの管理人であり80歳のCapがTateやMilesの相談役となりの、しばしば深い言葉を吐く。

Some people… they grow wiser as they grow older. Unfortunately, most people just grow older.
年齢と共に賢くなる人がいる。しかし、残念ながら多くの人はただ歳をとるだけだ

最後は予想通り泣かせてもらった。「November 9」の印象からColleen Hooverの本は軽い部分と重い部分のコントラストが激しい傾向にあると知っていて、今回もきっと期待を裏切らないだろうと思ってはいたが、それでも前半はTateとMilesのラブシーンが多さには辟易してしまった。ラブシーンに突入するたびに「またこの学びのないラブシーンを時間をかけて読まなければならないのか」、と正直うんざりしてしまった。最後が思いっきり泣かせる展開なだけに、そのような前半のバランスの悪さが残念である。

英語新表現
talk myself down 自分を卑下する
I'm beat. 私はへとへどです。
outie 出べそ
closed off 心を閉ざしている
sell myself short 自分を安売りする

「Whistleblower: My Unlikely Journey to Silicon Valley and Speaking Out Against Injustice」Susan J. Fowler

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
Uberで日常的に起こっていた女性差別を世の中に公表した著者が、その生い立ちや公表に至るまでの経緯や心のうちを語る。

Uberでの出来事が中心と思っていたが、その生い立ちや大学時代の出来事、Uberに転職するまでの社会人としての様子についても詳細に語っている。

小学校時代は学校に行かずにクリスチャンの両親の元て家庭で教育を受けていたために、なかなか他の生徒と打ち解けられずにいる様子が描かれている。そんな、どちらかというと一般的な生徒に対して遅れをとっていた著者のキャリアは、目標を持ったことで、主体的な生き方に目覚めてから一気に動き出す。そこからの著者の行動力には驚かされることばかりである。

中盤からは大学での生活に触れている。大学では自殺願望の強い同僚の存在によって、研究者としての道を諦めざるを得なくなり、スタートアップで働くことを決意するのである。最初はなかなか良い会社に恵まれず、そんな経緯も含めて最終的なUberでの大きな行動につながっていくのだとわかる。

そして後半はUberに入社してからの様子と、組織の中で少しでも会社の文化を良い方向に変えようと奮闘する様子や、退職を決意してからから内部に蔓延っていた差別を公表するまでの経緯や葛藤を描いている。これほど行動力や信念を持った人間でも、正しさと、その行動が自分や友人家族へもたらすだろう影響の大きさの間で悩みながら行動に至ったことが伝わってくる

どちらかというとスタートアップは新しい文化を体現していることが多い印象を持っていたので、Uberでここまで女性差別が行われていたと言う事実に驚かされた。また、そんななかある程度のところで妥協点を見つけて組織の中で止まる人々の行動も理解できるからこそ、著者のように頑なに理想を追い求めて戦う姿は新鮮である。女性ではないので、残念ながら著者の行動に共感できるわけではないが、その信念に従った行動には大いに刺激を受けた。

英語慣用句
forced arbitration 強制仲裁
amicas curiae brief 裁判所に対する意見書
in the hot seat 厳しい立場にいる
blow the whistle 暴露する
take them up on their offer 申し出に応じる、お言葉に甘える
smear campaign 組織的中傷
gag order 発言禁止命令、報道禁止命令
turn the other cheek 甘んじて受け入れる

「From Potter’s Field」Patricia Cornwell

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
セントラルパークで女性が殺害された。手口が逃亡中のシリアルキラーTemple Brooks Gaultのこれまでの犯行と酷似していることから、ニューヨークで捜査協力という形で、KayやMarinoは事件捜査に関わることとなる。

検視官シリーズの第6弾である。今回はニューヨークを舞台としてシリアルキラーGaultを追い詰めていく。KayやMarinoだけでなく、前回に引き続き、警察関係者であるKayの姪であるLucyも活躍する。

Kayは足取りの掴めないGaultの行方を追うために、殺害された女性の身元を割り出そうとする。その過程で、Gaultの両親にたどり使い、単にシリアルキラーとしてしか描かれなかったGaultの過去や家族の様子が少しずつ明らかになっていく。

終盤はニューヨークの地下鉄を中心とする追跡劇が繰り広げられるのでニューヨークの地下鉄の駅名や地理をより詳しく知りたくなった。

Bone Collectorシリーズでも言えることではあるが、小説のシリーズもので複数冊にまたがって犯人を登場させられても、前作品の展開を覚えていないことも多く物語についていけなくなってくる。もちろん著者としては他の本を買ってもらう戦略だったりマンネリ化を防ぐ方法だったりするのもわかるが、すぐに次の回を読む漫画やドラマとは違うのである。

英語慣用句
rub our nose しつこく言い続ける
make a statement 自分らしさを表現する
entertainment center 音声と映像のシステムを含む壁の装置
pull hens' teeth 無駄なことをする、暖簾に腕押し
have a full house 満員である

「The Danish Way of Parenting」Jessica Joelle Alexander, Iben Dissing Sandahl

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
世界一幸福な国と言われるデンマークの子育てを、アメリカの子育てと比較しながら説明する。

デンマークの子育ての鍵となる行動をPARENTの頭文字を使って6つ紹介している。

  • Play
  • Authenticity
  • Reframing
  • Empathy
  • No Ultimatum
  • Togetherness and Hygge

アメリカでは個人主義を尊重するあまり、近年自分勝手な人間が増えているようだが、本書では共感量を高めるために「私」よりも「私たち」の利益を考えるように教えることを勧めている。

When You Substitute "We" for "I", Even "Illness" Becomes "Wellness"

本書ではデンマークの子育てと比較しながら、アメリカの親の振る舞いや子育てを嘆いている点が多いが、現在の日本の子育てはそこまで卑下するほどデンマークの子育ての考え方と変わらない印象を受けた。しかし、日本はアメリカに20年ほど遅れて追随しているので、今のまま個人を尊重しすぎることで思いやりの欠けた自己中心的な人をたくさん生み出さないかと懸念してしまった。

世の中の母親たちについたえたいと思ったのは次の言葉である。

You lose control, and yet we expect our children not to.
自分は子供にブチ切れるくせに、子供には自制心を求めている。

本書のなかで意識的に取り入れたいと思ったのはReframingとTogetherness and Hyggeである。Reframingとは、物事の悪い面ばかりにとらわれるのではなく、良い面を見つめるための考え方である。ポジティブな考え方は両親の言動からも伝わるだろうが、その考え方を言葉にして伝えることでより確実に、次の世代に受け継がれるのだと感じた。

日本語版はこちら

誤解を与える日本語タイトルなので一言添えておくが、本書は子供を誉めることを否定していない。過剰に誉めることがよくないと書いているだけである。

英語慣用句
attention deficit disorder 注意欠陥障害
at one's wit's end 途方に暮れて、困り果てて
corporal punishment 体罰
pit people one another 人々を競わせる
health boundary 健全な境界線

「The Wish」Nicholas Sparks

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
2019年写真家として名声を得たMaggie Dawesは癌で余命が限られたものとなった。そんなおり、アルバイトのMarkに請われて若い頃の恋愛の話を聞かせることとした。それはMaggieがノースカロライナの島Ocracokeで過ごした十代のときの話である。

物語は2019年の、写真家としてニューヨークで共同ギャラリーを経営するMaggieの様子と、Markに生涯最高の恋愛として十代の頃の恋愛を語って聞かせる1996年の物語が交互に展開する。

2019年の物語では、余命わずかとなったMaggieが自らの終活を始めると共に、その頃アルバイトとしてギャラリーで働き始めたMarkの優秀さ優しさによって、少しずつ家族のことや人生のことを打ち明け始める様子が描かれる。

一方で、1996年の物語は、高校生にも関わらず一夜の過ちから妊娠してしまったMaggieが、周囲に知られずに子供を出産し養子に出すために、叔母のLindaの住むノースカロライナの離島Ocracokeで過ごす様子を描く。Ocracokeにいる間に家庭教師としてMaggieの元に訪れたBryceと、Maggieは妊娠中であるという事実にもかかわらず距離を近づけていくのである。

物語として大きな驚きはないが、それでも最後は涙してしまった。死期を知ったMaggieがそれを家族に知らせるためにクリスマスを避けようとしたり、それまで不仲だった人々にも感謝を伝える点が印象的である。こんな生き方をしてみたいと思った。

著者Nicholas Sparksの本を読むのは本書が初めてであるが、映画化された作品のなかには「メッセージ・イン・ア・ボトル」や「君に読む物語」のように名作といえる恋愛物語が多い。ありがちな若い男女の恋愛物語の印象を持っていたが、死を目の前にしたMaggieの生き方に感銘を受けた。

英語慣用句
hit it off 意気投合する
Ferris wheel 観覧車
mobility assistance dog 移動補助犬
seeing-eye dog 盲導犬
have a second helping おかわりをする
with flying colors 見事に
measure up to 応える

「Tomorrow, and Tomorrow, and Tomorrow」Gabrielle Zevin

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
Samは大学のキャンパスで、小学生の頃一緒にゲームを楽しんだSadieと再会する。やがて二人はゲーム作りに夢中になっていく。

序盤はSadieとSamの再会と出会いのシーンから始まる。出会いは小学生の時、母を交通事故で失って言葉を失ったSamは、入院していた病院でSadieとゲームを通じで出会ったことによりに救われるのである。再会は二人の大学生時代である。Samは恋人と別れて落ち込んでいるSadieをゲーム作りに誘うことですこしずつゲーム作りに情熱を注ぐこととなる。

もう一人の主要な登場人物は、SamのルームメイトであるMarksである。Marksはさまざまな人から好かれる人物で、主張が強く他人を遠ざけがちなSamやSadieとは異なる存在である。当初はゲーム開発用に部屋を貸してくれるだけの存在だったMarkは、少しずつゲーム作りのプロデューサーとしての役割を担っていく。

その3人がゲーム作りや、会社を経ちあげるなかで、時には分裂したり衝突しながら物作りに打ち込んでいく。

SamとMarksはそれぞれ韓国人と日本人の血をひいているし、Sadieも白人ではないとうい点も面白い。アメリカという国で少数派として暮らすがゆえに見えてくる悩みにもところどころで触れられている。そして彼らが作るゲームも日本やアジアの文化を大きく反映する点も面白い

終盤、ある不幸からSadieは共同のゲーム作りから離れていく。それでも必死にSamはSadieにもう一度一緒にゲームを作ろうと声をかけ続ける。SadieがSamに語った言葉が印象的である。

There's no point in making something, if you don't think it could be great.
良いものができると思わないで、何かを作ることに何の意味もない。

物作りに関わる人間としては耳の痛いことがである。

僕自身はゲーマーといえるほどゲームにのめり込んではいないが、ゲームを愛する人の気持ちが伝わってくる。物語中に多くの名作ゲームの名前が唐書酢売るのでもう一度ゲームをやりたくなった。

英語慣用句
remission rate 寛解率
candy striper ボランティア看護助手
distinguish oneself 他者より抜きん出る
keep it close to the vest 手の内を見せない
at each other's throat お互いに攻撃し合う
swing for the fences 大きな目標を狙う
sun oneself 日に当たる
take it in stride 冷静に受け止める
take a gander at 見る、一瞥する

「Salvage the Bones」Jesmyn Ward

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
2011年全米図書賞受賞作品。ミシシッピ州に住むEschと3人の兄弟はハリケーンカトリーナの上陸に備える。

母を失った家庭で父と3人の兄弟と生きる女の子Eschの視点で描く。一番上の兄Randallはバスケットに情熱を注ぎ、二番目の兄Skeetahは闘犬に入れ込む。物語はSkeetahのお気に入りの闘犬のChinaが子供を産むシーンから始まる。

弟のJuniorの面倒を見ながらもSkeetahとともに犬の世話をしながら日々を送るEschは、自分の体調の変化から、妊娠に気づくのである。弟のJuniorの誕生とともに母を失った家族の中で唯一の女性であるEschは戸惑いながらも日々を送る。1人秘密を抱えながら生きるEschからは男の中で強く生きなければいけない女性の葛藤が見えてくる。

After Mama died, Daddy said, What are you crying for? Stop crying. Crying ain't going to change anything. We never stopped crying. We just did it quieter. We hid it.
ママが死んでからパパは言った
「泣いてどうするんだ? 泣くな、泣いたって何も変わらないぞ」
でも人はなくのをやめない。静かに泣くようになるだけ。隠れて泣くようになるだけ。

そして、少しずつハリケーンカトリーナの上陸が近づいてくるのである。大きな台風を話でしか聞いたことのないEschやその兄弟は、台風に備える父をどこか冷めた目でその様子を眺めるのである。

アメリカ南部の裕福とは言えない黒人の家族の様子を見せてくれる点が新鮮である。また、ハリケーンカトリーナという出来事を当事者の目線で伝えたものに触れたのが今回初めてだったので、ニュースで触れるのとはまた違った視点で大きなハリケーンの様子を知ることができた。

英語慣用句
cuss 悪口を言う
fishing pole 釣竿
concession stand 売店
lead sinker (釣りの)おもり

「The Friend」Sigrid Nunez

オススメ度 ★★★☆☆ 2/5
2018年全米図書賞受賞作品。自殺した友人が遺した犬Apolloを飼うこととなった女性の日々を描く。

物語は、自殺した友人の過去の妻と話したり、友人が遺した犬と過ごす中で彼女が考えることを書いている。彼女自身も作家であり、作家志望の人々向けにワークショップを開催しているため、小説を書くという生き方についてのさまざまな、考えが書かれている。

But remember, there is at least one book in you that cannot be written by anyone but you.
My advice is to dig deep and find it.

その一方で、さまざまな文学作品や著名な作家が引用されるので、世界の文学作品に普段からどっぷりつかっているような人にはもっと楽しめるのかもしれない。

作家という独自の視点からの面白い考えもあったが、物語としては大きな動きもなく、文体自体もかなり読みにくい。正直な感想として同じ作家の本を読みたいとは思わなかった。本書が全米図書賞受賞ということでかなり玄人受けする作品なのかもしれない。

英語慣用句
john sting 性犯罪利用者を対象とした囮捜査
sting operation 囮捜査
gang up on 団体で攻撃する

「The Body Farm」Patricia Cornwell

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ノースカロライナで11歳の女の子Emily Steinerが教会の帰りに遺体となって見つかった。逃亡中のシリアルキラーと手口が似ていることからFBIとKay Scarpettaは事件の捜査に関わることとなる。

Kay Scarpettaのシリーズ第5弾である。序盤からGaultというシリアルキラーが捕まっていない状態という設定なのでシリーズ前の作品を飛ばしてしまったか、展開を忘れてしまったのでは、と思ったが、そんなことはなく本書が急展開の設定らしい。

物語はEmily Steinerの死の真相を突き止めるために、地方警察とFBIが協力して捜査を進めていく。しかし、Kayの周囲では事件以外にもさまざまな問題が生じる。一つ目は長年の相棒であるMarinoが、離婚をしたことを機に少しずつ自暴自棄になって、それが捜査にも悪影響を与え始めたこと。2つ目は、同僚であるWesleyとの仲である。妻がいるWesleyに惹かれる自分に戸惑い罪悪感を抱えるのである。

そして3つ目は、姪であるLucyとの関係である。大学を卒業してKayと同じくFBIで働き始めたLucyではあるが、FBIでは働いてほしくないKayの想いで干渉するKayとの心の距離は次第に広がっていくのである。そんななかLucyがFBI情報に不正にアクセスしたという疑惑が持ち上がるのである。

そんな多くの問題に悩まされながらも、事件は少しずつ解決に近づいていく。Emily Steinerを殺害したのは本当にシリアルキラーGaultの仕業なのか。シリーズ作品というのは少しずつマンネリ化していくものだが、続きも楽しみになった。

英語慣用句
as a crow flies 最短距離で
crib death 幼児突然死症候群
heat exhaustion 熱中症

「One Plus One」Jojo Moyes

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
母親一人で2人の子供を育てるJessは数学が得意な娘Tanzieの入学金のため、数学オリンピック出場を目指しスコットランドまで旅することを決意するのである

以前読んだJojo Moyesの「The Girl You Left Behind」が素晴らしくて、同じような過去の歴史事実と現代をそれぞれの時代に生きてきた人たちの視点とともにつなぐような作品を期待して本書にたどり着いた。

本書は、夫が実家に帰ってしまった結果、一人で子供を育てることとなったJessと女性関係のもつれからインサイダー取引の容疑がかかり、自ら立ち上げた会社を追われたEdの二人の出会いを中心に描いている。Jessはクリーニングの仕事でEdの家を訪れ、その後、EdがJessの働いているバーで酔い潰れたことで、JessはEdを認識する。

そして、数学オリンピック出場のための旅で困っていたJessたちに、Edが酔い潰れた時に送ってもらったお礼として運転手を買って出たことで大きく関係が変わっていく。狭い車内でぎこちない会話を続けるうちに、少しずつお互いを理解していくのである。

Rich is paying every single bill on time without thinking about it. Rich is being able to have a holiday or get through Christmas without having to borrow against January and February.
お金持ちは考えずに毎月の請求書を支払える人のこと。お金持ちとは祝日やクリスマスを1月や2月分の給料を前借りしなくて過ごせる人のこと

家族や人間関係を描いた優しい物語である。ギリギリの生活をしながらも、二人の子供に対して良い母、良い見本であろうとするJessは言うまでもないが、自らがインサイダー取引の裁判を控えていることで、余命短い父親に会う決断をすることができないEdの生き方もまた家族に対する優しさに溢れている。

旅のなかで2人の子供TanzieとNickyと仲良くなっていくEdがNickyに伝える言葉もそんな優しい振る舞いの一つである。

Everyone I've met who waw worth knowing was a bit different at school.
知り合いになってよかったと思った人はみんな、学校では少し変わり者だったよ。

終盤は、Jessとの関係に悩むEdに対して、Edの姉Gemmaが諭すシーンが印象的である。

I'm not saying she wasn't wrong to do it. I'm just saying maybe that one moment shouldn't be the whole thing that defines her. Or your relationship with her.
彼女が間違ってなかったとは言わない。ただ、その出来事だけで彼女のすべてや彼女との関係を決めつけるべきではないと言っているのよ。

期待していた物語をは少し違ったが、十分楽しむことができた。

英語慣用句
crap at maths 数学が苦手である
form tutor 担任の先生
borrow against お金を借りする
have the grace to … するだけの礼儀はわきまえている

「Pachinko」Min Jin Lee

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
1911年、日本の占領下の釜山にある島で家族の経営する宿を手伝っていた少女Sunjaの物語である。

母親の経営する宿を手伝っていたSunjaは市場である男性と恋に落ち、子供を身篭ったことで人生が大きく変わっていく。やがて、キリスト教信者のIsakとともに日本に渡りそこで新たな人生を送ることとなる。

歴史として過去を振り返って見ると日韓併合は日本が一時的に韓国を支配下に置いた時代にしか見えない。しかし、本書を読むと、当時を生きていた韓国の人々にとっては、それまで我が国として信じてきた国や文化が消滅するという不安のなかで生きてきたことが伝わってくる。本書はそんな混乱の時代の中で、自分自身や家族の最良の未来を考えて生きてきた韓国の人々の物語である。

日本で在日韓国人として育ったSunjaの子供たちであるNoaやMozasuの生き方はより複雑になっていく。日本で日本の教育を受けて育ったにもかかわらず、韓国人として差別されつづけるのである。

Living every day in the presence of those who refuse to acknowledge your humanity takes great courage.
自分の人間性を受け入れてくれない人たちとともに毎日暮らすのは本当に勇気がいることです。

やがて、ヤクザなどの犯罪集団やパチンコ店の経営に関わってくこととなる。そこでも韓国人の評判を傷つけないために綺麗な商売をして誠実に生きていきたいという思いと、手を汚さずには生きていけないという思いのなかで揺れ動く様子が描かれる。

… she knew that many of the Koreans had to work for the gangs because there were no other jobs for them. The government and good companies wouldn't hire Koreans.
彼女はたくさんの韓国人がヤクザと一緒に働かなければならないのを知っていました。なぜなら他に仕事がないから。政府や良い会社は韓国人を雇おうとしないからです。
..

基本的には在日として生きていく韓国人の物語であるが、日本人もたくさん登場する。正直、若い世代の人はともかく、上の世代の韓国人はみんな日本人を嫌っていると思っていたので、親切な日本人もたくさん登場することに驚かされた。また、本書のタイトルにもなっているパチンコは、日本と韓国にのみ広がっている文化だということを本書を読むまで知らなかった。

韓国人と比べて几帳面な日本人のいい部分も描かれているが、一方で、日本の他者を受け入れようとしない閉鎖的な考え方にも繰り返し触れている。終盤は、ニューヨークなどのアメリカ文化と比較されて描かれている。韓国、日本、アメリカの文化を体験している著者ならではの視点と言えるだろう。

日本に生まれ育ちながらも韓国籍を捨てない韓国人のことを不思議に思っていたが、そんな彼らの生き方を知ることができた。同時に日本の良いところや悪いところ、日本の韓国人の受け入れ方などいろいろ考えさせた。

英語慣用句
lion's share もっとも大きい部分
the pick of the litter 一番良いもの
blanket statement 曖昧で包括的な意見
pipe dream 叶うことのない夢
pin money 少額のお金
marionette lines 唇の両脇から顎に向かって伸びる2本の線
is game for 〜 〜に乗り気である
flunk out of school 学校を退学する
get into hot water 厄介なことになる

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「Shuggie Bain」 Douglas Stuart

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
2020年ブッカー賞受賞作品。1980年代にスコットランドのグラスゴーで家族と生活する少年Shuggie Bainを描く。

舞台は1980年代のサッチャー政権時代である。そんななか少年Shuggieは母Agnesとタクシーの運転手であるShug、姉のChatherineと兄のLeekと祖父母の狭いアパートで生活していた。やがて父親代わりだったShugが家を出たことで、Agnesはアルコールへと逃避していく。

生活保護に頼って公団住宅で貧しい生活を送る中、Shuggieや兄のLeekはAgnesに養われる側から、Agnesの面倒を見る側へと家のなかでの立場が変化していく。そして、そんななかShuggieは自分がどうやら周囲の少年たちとは異なることにも気づいていくのである。

家庭の都合から学校に行くこともできず、行っても自身の性格から周囲に溶け込むことができない、そんなShuggieが成長していく様子を描く。姉のCatherineは早々に母のAgnesを諦め、結婚して遠方へと生活の拠点を移し家に戻る機会が減っていく。思春期の兄もまた、少しずつ自分の居場所を定めていく。そんななか母が大好きなShuggieは一人母を気にかけて生きていく。ただのアルコール依存症であるだけでなく、プライドが高くと子供たちを守るという優しさをを見せてくれるから、Shuggieは母を捨られないのである。

並行して当時の経済や生活の様子に触れられる点も新鮮である。炭鉱が閉鎖して多くの炭鉱労働者が失業し、タクシーの運転手などで急場を凌ぐ様子が描かれている。日本でも一部観光地になっているが、炭鉱という古い産業が何故栄え衰退していったのか、そんななかサッチャーなどの当時の政治家はどんなことを考えどんなことに取り組んだのかに興味を持った。

終盤は頼れるのは兄LeekだけになったShuggieが、母を救いたい思いと、自分の人生の間で揺れ動く様子が描かれる。Shuggieを気にかける兄Leekの言葉にも同じ道を通った人間としての言葉の重みを感じる。

Don't make the same mistake as me. She's never going to get better. When the time is right you have to leave. The only think you can save yourself.
俺と同じ過ちをするなよ。ママは決して良くならないよ。時期が来たら家を出るんだ。それが自分を救う唯一の方法だ。

小学生の少年Shuggieが背負った過酷な人生に涙が溢れてきた。

英語慣用句
if he / she is a day, 少なくとも…(〜歳である)
give a belt たたく、ぶつ、殴る
milksop いくじなし、決断力のない、臆病者
get one's knickers in a knot 小さなことでビクビクする
get one's goat イライラさせる、怒らせる
not know one from Adam その人のことを認識しない
leave 〜 to chance 〜を成り行きに任せる
brass neck 自信がある、堂々としている

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「One Last Kill」Robert Dugoni

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
過去の未解決事件を担当するTracyは、30年前の連続殺人事件Seattle’s Route 99 serial killerを捜査するよう指示される。

Tracy Crosswhiteのシリーズの第10弾である。Seattle’s Route 99 serial killerは、上司Johnny Nolascoが担当していた事件だったことから、Tracyの人手が欲しいという依頼に応える形で、Nolascoが協力することとなる。

これまでTracyと犬猿の仲だったNolascoが事件解決のために少しずつ心をお互いに心を開いていく。またその過程で30年前の事件発生当時に捜査本部を指揮していたNolasco苦悩が明らかになっていく。

これまでのシリーズでは、理解力のない女性差別主義者としてしか描かれていなかったNolascoであるが、本書では過去の事件により、順風満帆なキャリアから外れて家庭まで崩壊していく様子を描いている点が新鮮である。

前回に引き続き、予算獲得のためにメディア露出を狙うWeberと事件解決を優先するTracyのやりとりも各所に見られる。過去に解体された麻薬取締のための組織Last Lineの応酬した麻薬を警察関係者が横領していたことを未だ明らかにできないことなど、前作に繋がっている部分が多い。

シリーズを途中から読むなら本書ではなく一つ前の「What She Found」から読むのが良いだろう。

英語慣用句
have the upper hand 優位に立つ、優勢になる
drop a gauntlet 宣戦布告する
get under one's skin 〜の気に触ることをする
save your breath 余計なことを言わないでおく
under the gun プレッシャーにさらされている
hit the fan 突然困った事態になる
have a shit fit 怒りを爆発させる
yank one's chain からかう
get ducks in a row タスクを整理する
face the music 立ちむかう
hindsight is twenty-twenty 振り返って考えればなんとでも言える(振り返った時の視力は2.0)
get someone's goat 怒らせる
pound sand 意味のないことをする
put soneone on a pedestal 尊敬する