「スリジエセンター1991」 海堂尊

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
東城医大へ赴任した天才外科医天城雪彦(あまぎゆきひこ)は常識はずれな行動で注目を浴びる。それに対抗しようとする未来の病院長高階(たかしな)や佐伯(さえき)病院長など病院内の権力争いは熾烈をきわめていく。
「ブラックペアン1988」「ブレイズメス1990」に続くチームバチスタの10年以上前を描いた物語。「チームバチスタの栄光」など現代のシリーズの方を読んでいる読者は、高階(たかしな)は病院長になるはずだし、本書では生意気な新人の速水(はやみ)は天才外科医になるということを知っているから、きっと物語とあわせてその関連性を楽しむ事ができるだろう。
本書では高階(たかしな)、佐伯(さえき)、天城(あまぎ)など、それぞれの思惑で病院内の主導権を握ろうとする。ただ単純に多くの支持を集めるために医療のあるべき姿を語るだけでなく、それぞれが状況に応じて手を組んだり裏切ったりしながら地位を固めようとする様子が面白い。
医療はすべての人に平等であるべき、という高階(たかしな)や看護婦たちの語る内容も正しいと思うが、一方で天城(あまぎ)の主張するように、お金がなければ高い技術の医療は提供できないという意見にもうなずける。そこに正しい答えはないのだ。その時の世間の意識が医療の形を変えていくのだろう。

患者を治すため、力を発揮できる環境を整えようとしただけなのに関係ない連中が罵り、謗り、私を舞台から引きずり下ろそうとする。

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「Web文章上達ハンドブック」森屋義男

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
Webコンテンツの文章をよりよくしていくための方法を語る。
「てにをは」や「である調」「ですます調」など基本的なライティングの考え方は特に新しくもなかったが、むしろライティングという全体の作業を、ディレクター、ライター、エディターという3つの視点から捉えている点が新しい。つまり、通常では少なくとも3人の人間が文章を作成するうえで必要で、世の中の人が思っているほどライティングも簡単な作業ではないという事なのだ。
全体として視点としては悪くないものの、ページ数が少ないため浅い内容で終わってしまっている。値段を考慮するとあまり満足できるものではないだろう。
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「だから御社のWebは二度と読む気がしない」戸田覚

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
インターネットというものが人々の生活に入り込んですでに10年以上が経過している。印刷物と異なるのは企業が頻繁にサイト上の情報を更新できるというものだ。いつでも変更できるという意識があるからだろうか、多くの企業はウェブサイト上に書かれる文言には、印刷物に書かれる文言ほどコストも時間もかけていないのである。
本書は企業がサイト上の文言を考える上で注意するべきことを、大手企業サイトの悪例を参考にしながら語る。

世の中は、読んでも内容のわからないWebページであふれ返っている。まともな感覚で読めない文章をどういう考えで公開しているのか、理解に苦しむ。

個人的に現在のインターネット事情に感じることと著者の言う事がぴったりだったので興味深く読む事ができた。また、現場での作業に活かせそうな内容にもいくつか出会うことができた。

原則的に見出しは16文字程度に収めるのがベストなのだ。

本書が発行されたのがすでに6年が経っているが、世の中にあふれるサイトは相変わらず読みにくいものばかりである。制作に関わる企業はもっとライティングの重要性を理解するべきなのだろう。
ライティングの重要性を語りながらも本書中にかなりの脱字があったことはやや気になったが特に内容に影響する物でもない。著者が行っているというライティングのセミナーも参加してみたくなった。
【楽天ブックス】「だから御社のWebは二度と読む気がしない」

「ヤバい経済学」スティーブン・D・レヴィット/スティーブン・J・ダブナー

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
1990年代の後半のアメリカ。誰もが犯罪の増加を予想する中、殺人率は5年間で50%以上も減少した。多くの人がその理由を語り始めたという。銃規制、好景気、取り締まりなど、しかしどれも直接的な理由ではない。犯罪が激減した理由はその20年以上前のあるできごとにあったのだ。

わずか数ページで心を引きつけられた。経済学と聞くと、どこか退屈な数学と経済の話のように感じるかもしれないが本書で書かれているのはいずれも身近で興味深い話ばかりである。大相撲の八百長はなぜ起こるのか。なぜギャングは麻薬を売るのか。子供の名前はどうやって決まるのか。こんな興味深い内容を、数値やインセンティブの考え方を用いて、今までになかった視点で説明する。

個人的には冒頭のアメリカの犯罪率の話だけでなく、お金を渡したら献血が減った話や、保育園で迎えにくる母親の遅刻に罰金を与えたらなぜか遅刻が増えた話などが印象的だった。お金を使って物事を重い通りに運びたいならそこで与えるお金の量は常に意識しなければならないのだろう。
なんだか世の中の仕組みが今まで以上に見えてくるような気にさせてくれる一冊。
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「社長の時間の使い方 儲かる会社にすぐ変わる!」吉澤大

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
時間の使い方を自由に選択できる社長は、その時間をどういうふうに使うべきか、という視点に立って語る。
基本的に本書で書かれているのは、時間とお金を常にその効果に見合うかを考慮して選択するということに尽きるが、普段から心がけている人にとっては特に新しい内容ではないだろう。
Googleカレンダーなどの新しい技術にも触れているが、基本的には著者が普段やっている事をそのまま本にしただけといった印象である。
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「心を動かすリーダーシップ」鈴木義幸

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
一親から会社を引き継いだ社長を例にとって、社長のあるべき姿を描く。
大きな組織を動かそうとするとき、そこには様々な障害が予想される。企業にとってもっとも厄介なのは、社員が社長の意図した通りに動いてくれない事なのだろう。
本書では、これからの時代は社員一人一人の想像力を生かす経営を行う必要があるという。そして、そんな社員それぞれが自ら考えて行動するような企業を創るために、社長がするべきこと、とるべき態度を対話形式で説明している。必ずしも企業の社長だけでなく、部下に指示を出す立場の人にとっては役に立つであろう内容ばかりである。

チーダーといえども、時にはミスを犯す。
そのとき率直に謝ることで、かえって部下やメンバーの信頼とやる気を獲得することができる

タイトルを読むと何か古くさいリーダー像を押し付けられるのではないか、といった不安とともに読み始めたが、いい方向に裏切ってくれた。
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「奇跡の脳」ジル・ボルト・テイラー

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
脳解剖学者である著者が、脳卒中を経験しそこから回復する過程を、その脳解剖学者という視点で振り返る。
脳卒中というと、どちらかというと不幸な病気と言う印象を持っていたが、本書で著者が描くその体験はむしろ恍惚とした幸福な体験として描かれている。母親のジジと辛抱強く協力して、脳卒中によって失った脳の機能を回復していく様子に、脳の未知の力を感じてしまう。また、合わせて思うように話したり行動できない脳卒中患者に対する考え方も改めてくれる。
後半はやや宗教的とも聞こえるような、著者の脳卒中体験が基になった感覚的な説明だったため理解しにくいと感じたが、全体としては脳卒中や脳に対して興味を抱かせてくれた。
【楽天ブックス】「奇跡の脳」

「ウェブで学ぶ オープンエデュケーションと知の革命」梅田望夫/飯吉透 

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
現在アメリカを中心に教育機関がインターネット上で高品質な授業を無料で受けられる仕組みが整いつつある。その背景と現状、問題点を語る
1年ほど前にカーンアカデミーの取り組みを知ってオープンエデュケーションに非常に興味を持った。本書は手にとったのもそんな理由からだ。
面白いのはその発端となった出来事である。最初、アメリカの各大学は、利益を見込んでオンライン上で授業を公開しようとしたのだが、あまり収益があがらないと気付き各大学が撤退するなか、マサチューセッツ工科大学が「であればいっその事無料で公開しよう」となったというのだ。これはまさに日本では起こりえない発想なのだろう。そして、そんな流れは、iTunesやYoutubeなどさまざまなインターネットやIT技術の発展によって加速する事になったのだ。
CourseraやEdX、Udacityといった様々なオープンエデュケーションフォーマットについて語るとともに今後の課題についても語っている。
そんな中でも興味ひいたのは大学などの教育機関が持つ「強制力」の話。誰もが無料で勉強できるようになったかといってすべてが解決する訳ではないというのだ。つまり、宿題をやってこなければ怒る先生がいて、落ちこぼれになったら馬鹿にする嫌な生徒がいて、ある程度の点を試験でとらなければ落第するシステムがある。そういうシステムがあって初めて勉強を全う出来る人が世の中の大部分だと言うのである。オープンエデュケーションの今後の課題は、無料であるなかでどうやってその強制力をつけるか、ということなのだ。
とても勉強したくさせてくれる一冊。そして、改めて今後のオープンエデュケーションの流れを考えると、英語ができない日本人のハンデは世界との知識の格差を広げていくだろうと実感させられた。
【楽天ブックス】「ウェブで学ぶ オープンエデュケーションと知の革命」

「翻訳の基本 原文通り日本語に」宮脇孝雄

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
翻訳家である著者が、翻訳者の間違えやすい英語表現、文や、翻訳者がやってしまいがちなことについて語る。

英語の本を読んでいるとたまに意味のとれない文章や表現に出会う。自分一人で読んでいる場合は、物語全体の流れに差し支えない限り特に問題はないのだが、翻訳をするとなるとそうも行かないだろう。本書を読んで最初に驚いたのが、プロである翻訳者もそこらじゅうで間違った訳をしてそれが売り物として世に出回っているのである。

序盤は翻訳者が陥りがちなよくない翻訳傾向について語っている。例えばやたらとカタカナ言葉を翻訳に使ってしまう訳。外来語がカタカナとして定着してきてはいるが、どこまでそれを用いるのかが難しいのだという。例えば現代ではすでに「wine」は「葡萄酒」ではなく「ワイン」と訳した方が通じやすいだろうが、「店がオープンした」とか「道がカーブしている」あたりから翻訳者としては許容できなくなってくるそうだ。この辺の感覚はまた何年か経つと変わっている事だろう。

中盤からは英語のなかの間違えやすい表現について紹介している。例えば

「midnight」などは僕ら日本人は「真夜中」と訳しがちがだ、僕自信は「真夜中」というと夜中の12時から3時ぐらいをさすような印象を持っているが、英語の「真夜中」は「深夜12時」のことなのだという。またイギリスの駅のシーンで「entrance」を「改札」と訳すのも間違いだそうだ。なぜならイギリスの駅には改札がないから、だとか。
読めば読むほど、もはや翻訳は英語力ではなく文化に対する知識と言う気がしてくる。また、海外の作家の本は出来る限り英語で読もうと本書を読んで決意させられた。
【楽天ブックス】「翻訳の基本 原文どおりに日本語に」

「小笠原クロニクル 国境の揺れた島」山口遼子

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
先日読んだ垣根涼介の「人生教習所」という物語が小笠原諸島を舞台としていたため島の歴史に興味をもって本書を手に取った。
戦争に大きく影響を受けた場所について考えると、どうしても沖縄がすぐに思い浮かぶが、小笠原の歴史も予想以上に興味深い。小笠原の所属している国がアメリカから日本に変わるときはもちろん、そこに住んでいいた人たちには国籍の選択権と3年という猶予が与えられたのだが、そのタイミングでどの段階まで教育を受けていたか、という点が、アメリカか日本かを選択するうえでとても重要だったようだ。
兄弟、家族で異なった国籍を持ち、違った文化で生きる事を強いられるというのはどんな気持ちなのだろう。
本書のなかでそんな時代を生きた人々が当時を語る様子が描かれている。その内容はいずれも印象的である。アメリカ支配から日本支配になったことによって、過去の方が現在よりも豊かだった。という時代がこの島には存在したのである。
遠い場所で行われた国同士の取り決めによって翻弄されてた島。そこでは一体どんな文化ができあがるのだろう。いつか小笠原にいってみたいと思った。
【楽天ブックス】「小笠原クロニクル 国境の揺れた島」

「チェ・ゲバラ伝」三好徹

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
アルゼンチン人の革命家チェ・ゲバラの生涯を描く。
医者を目指した旅行が好きな青年が、キューバ革命に関わっていき、その革命が成し遂げられたあとも革命を求めて生きていく様子が詳細に描かれている。著者の調べた事実が書かれているだけなので残念ながらチェ・ゲバラの心の内などはわからないが、すでに名前だけ一人歩きしている感のあるチェ・ゲバラのことを知るのには申し分のない一冊である。
見えてくるのは、陽気で時間や約束を守らないのが当然のように文化に染み付いているラテンアメリカにおいて、チェ・ゲバラがどれほど異質な存在だったかという事だ。引き続き彼に関する書籍を読んでいきたい。
【楽天ブックス】「チェ・ゲバラ伝」

「数学ガール」 結城浩

数学の好きな「僕」と同じクラスの数学を得意とする才女ミルカさん。そして一学年下で数学を学ぶテトラちゃんの3人が数学に取り組む物語。
なぜかシリーズ第二弾の「数学ガール フェルマーの最終定理」を先に読んでしまったので、若干人間関係が前に戻っているが、タイトルから想像できるようにそれはあまり重要ではない。本作品でも、同様に数学の面白さを読者に教えてくれる。
面白かったのは、フィボナッチ数列の一般項の話。1,1,2,3,5・・・と誰もがフィボナッチ数列というのは学生時代に見聞きしたことがあるだろうが、本書ではその一般項を導きだす。そもそもフィボナッチ数列の一般項を求めるなどという発想自体なかったので楽しく読ませてもらった。
すべて完璧に理解したとは言いがたいが、複素平面なども含めて数学の楽しさを思い出させてもらった気がする。ノートを微分や積分などの式で一心不乱に埋めたい気持ちにさせてくれるが残念ながら今のところその時間がとれない。いつかしっかり本書のすべての問題を鉛筆とノートで書きながらもう一度読んでみたい。
【楽天ブックス】「数学ガール」

「「アラブの春」の正体」重信メイ

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
2010年にチュニジアから起こったデモがアラブ諸国に大きな動きをもたらした。そんな「アラブの春」と呼ばれる出来事の実態をアラブ社会で育った著者が語る。
「アラブの春」という言葉は知りながらもその実情はほとんどの日本人は知らないだろう。もともと日本と交流の多い欧米の国々のメディアはアラブ社会での出来事についてあまり多くを報道しようとはしないし、なんといっても日本は時を同じくして東北大震災に見舞われていたのだから。
本書を読むと、そんなアラブ社会に対する偏見が見えてくる。アメリカやヨーロッパのメディアは常にアラブ諸国での出来事を、視聴者に意図した形でねじ曲げて伝えようとする。アルジャジーラでさえも物事を完全に客観的に報道してはいないのである。それはスポンサーなくしては存在し得ないメディアにおいては避けられない事なのだろう。
さて、本書ではアラブ諸国について、チュニジア、エジプト、リビアだけでなく、カタール、サウジアラビア、シリアなど多くのアラブ諸国についてその実情を語っている。本当に表面的な部分だけなので、本書だけで理解できるとは言えないだろう。それでもアラブ諸国の実情や、イスラム教などの宗派など興味を喚起させてくれる内容である。
印象的だったのは、革命後の国々の多くの人々が革命前よりも不幸になるだろうという著者の見解である。

政府を倒すまでは民衆蜂起でできるのです。リーダーが必要になるのは、政権を倒し、新しい政権を作るときです。

革命後のアラブ諸国にもしっかり目を向けていきたいと思った。

パンナム機爆破事件
パンアメリカン航空103便爆破事件(パンアメリカンこうくうひゃくさんびんばくはじけん、通称:ロッカビー事件〔ロッカビーじけん〕、パンナム機爆破事件〔パンナムきばくはじけん〕)は、1988年12月21日に発生した航空機爆破事件。(Wikipedia「パンアメリカン航空103便爆破事件」
GCC
中東・アラビア湾岸地域における地域協力機構。(Wikipedia「湾岸協力会議」

【楽天ブックス】「「アラブの春」の正体」

「それがぼくには楽しかったから 全世界を巻き込んだリナックス革命の真実」リーナス・トーバルズ

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
リーナス・トーパルズはヘルシンキ大学在学中にOSを作り始めた。インターネット上でソースコードを公開し、ネット経由でたくさんのプログラマーの強力を得てLinuxを作り上げていった。その過程やリーナス・トーパルズの考え方などをまとめている。
そもそも「オープンソース」とは何なのか、単純に「ソースを公開する」とはいうけれど、それをどうやって管理するのか、そんな点の興味から本書に入った。残念ながらオープンソースの管理という面では、どうやら本書を読むと結構行き当たりばったりな部分が多かったようで、期待にそう内容とは言えない。しかし、本書で触れられているリーナスのプログラムに対する情熱にはとても刺激を受けた。何よりお金に執着しないで楽しみを求めるリーナスの行き方に感銘をうけるだろう。

多少なりとも生存が保証された世界では、お金は最大の原動力にはならない。人は情熱に駆り立てられたとき、最高の仕事をするものだ。

専門用語も多く残念ながらとてもすべてを理解できたとは言いがたいが、読み終わった後、久しぶりにプログラミングがしたくなる。寝る間も惜しんでパソコンの前にへばりつき、プラグラムに明け暮れる。そんな時間が恋しくなる一冊。

MINIX
1987年にオランダ・アムステルダム自由大学(蘭: Vrije Universiteit Amsterdam)の教授であるアンドリュー・タネンバウムが、オペレーティングシステム (OS) の教育用に執筆した著書 Operating Systems: Design and Implementation の中で例として開発したUnix系のオペレーティングシステム (OS) 。(Wikipedia「MINIX」
Shell
ユーザの操作を受け付けて、与えられた指示をOSの中核部分に伝えるソフトウェア。キーボードから入力された文字や、マウスのクリックなどを解釈して、対応した機能を実行するようにOSに指示を伝える。(e-words「shell」

【楽天ブックス】「それがぼくには楽しかったから 全世界を巻き込んだリナックス革命の真実」

「ザ・コピーライティング 心の琴線にふれる言葉の法則」ジョン・ケープルズ

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
コピーを書いてその効果を検証し続けた経験を著者が語る。
過去の分析の結果からどのコピーが優れた結果を残し、どうしてそれが優れているのかを多くの事例とともに解説していく。どれも納得のいくものばかりで、コピーライティングに関わる人にとってはまさに「読むべき本」と言える。

たとえ少人数でも信じてもらえるほうが、大勢から半信半疑に思われるより大事なのだ!

本書を読み進めていくと、世の中にあふれるコピーの多くが実際にはその目的を果たしていない事がわかる。例えば、商品のコピーであれば、その商品を売る事が目的であり、「このコピーはうまい!!」と言われることではないのである。
また同時に、そのような意味のないコピーが世の中にあふれる理由として、理解のないクライアントやそもそもその効果を測定すら使用としない一般的な姿勢についても語っている。後半は複数のコピーの効果の測定方法についても書かれている。
広告の主体が紙からインターネットへと移る昨今、本書で書かれている事をすべて鵜呑みにしていいというわけではないが、基本的な考えは適用できるだろう。

コピーライターがコピーを書くときには「文学性」を捨てなければならないのと同じように、アートディレクターも広告をデザインするときには「芸術性」を捨てなければならない。

本来手元に置いて繰り返し読むべき本なのだろう。
【楽天ブックス】「ザ・コピーライティング 心の琴線にふれる言葉の法則」

「成功する人たちの企業術 はじめの一歩を踏み出そう」マイケル・E・ガーバー

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
20年間にわたってスモールビジネスを対象にした経営コンサルティング活動を行ってきた著者がその経験を生かして多くの起業家が陥りやすい謝った考え方をいくつかの例を交えて分かりやすく教えてくれる。
非常にいいと思うのは本書ではパイの店を開いたサラという人間に対してアドバイスする形で説明してくれる点だろう。祖母から教えてもらったパイの焼き方が非常においしくて、パイを焼くのが好きで、毎日好きな事をして過ごせると思って店を開いたサラ。しかし、実際にはやらなければならないことがあふれていて、ついにはパイを焼く事さえ嫌になってしまった。
一体何が問題なのかを著者は、人間を3つの人格に分けて説明する。起業家、マネージャー、職人である。この3つの人格がバランスよく機能しなければ会社は成長しないのだという。
全体を通じて印象的だったのはシステムの話。システム化、マニュアル化という言葉を聞くと、どこか冷淡で、仕事に誇りをもって取り組んでいる人のなかには毛嫌いする人もいるかもしれないが、本書がマクドナルドや、著者が偶然であったらすばらしい接客をしたホテルを例にとって書いている内容を読むと考え方が変わるだろう。
特に職人タイプの人は、自分の仕事を「自分にしかできない」として自らの価値を高めているのかもしれないが、その状態のままでは永遠に自分は現場を離れられず、永遠に忙しいままなのである。僕自身現在はまだ職人職が強い職業に就いているので、とても新鮮だった。
本書はなにもこれから起業しようとする人だけが読むべき本ではない。会社で働いている人間にも、マニュアル化やシステムの必要性が見えてくるだろう。もちろん起業家が読めば参考になるだろうが、企業に興味がない人でも、本書を読むと、自らが長年かけて育んだ技術を会社として機能させてみたいと思うのではないだろうか。
【楽天ブックス】「成功する人たちの企業術 はじめの一歩を踏み出そう」

「レパントの海戦」塩野七生

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
レパントの海戦とは、1971年オスマン帝国のキプロス遠征に対して、カトリック教国の連合艦隊が挑んだ戦いのこと。本書はカトリック教国側に焦点をあててその歴史的海戦を描く。
「ロードス島攻防記」で初めて塩野七生の著書に触れて、その一冊の読書から見えてくる歴史の面白さに驚いた。本書は僕にとって塩野作品2冊目となるが、こちらも同様にカトリック教国とイスラム教国の歴史的物語を面白く描いている。
今回印象に残ったのは「ヴェネチア共和国」という国名。オスマン帝国は歴史の教科書に必ずと言っていいほど登場するが、「ヴェネチア共和国」という名前を聞いたのはおそらく今回が初めてで、調べてみると「歴史上最も長く続いた共和国」ということで、大いに興味をそそられた。またヴェネチアという町自体、いつか行ってみたい場所でもあるので、本書を読んだことで、きっとヴェネチア旅行がまた違った角度から楽しめることになるだろう。
さて、本書はキプロスに向かって勢いを増すオスマン帝国に対抗するために四苦八苦する連合艦隊の様子が描かれている。当時は櫂と帆で船を動かしていた時代。そのため大量の人員を必要とし、乗船するだけでもかなりの時間がかかるという。
また、スペイン王国の微妙な立場も面白い。連合艦隊に属しながらも、ヴェネチア共和国の勢いは弱まってほしい、そのため連合艦隊に参加しながら、必死で戦争の開始を遅らせようとする。こういったところが歴史の教科書からはわからない一面だろう。
前後の歴史にもさらに興味を抱かせる一冊。

レパントの海戦
1571年10月7日にギリシアのコリント湾口のレパント(Lepanto)沖での、オスマン帝国海軍と、教皇・スペイン・ヴェネツィアの連合海軍による海戦。(Wikipedia「レパントの海戦」
ヴェネチア共和国
現在の東北イタリアのヴェネツィアを本拠とした歴史上の国家。7世紀末期から1797年まで1000年以上の間に亘り、歴史上最も長く続いた共和国。(Wikipedia「ヴェネチア共和国」

【楽天ブックス】「レパントの海戦」

「数学ガール フェルマーの最終定理」結城浩

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
数学な好きな「僕」は従姉妹の女の子ユーリ、学校の後輩のテトラ、そして数学がずば抜けて得意な才女ミルカさんと、数学の先生の村木先生が出してくれる問題をもとに数学の話を繰り広げる。
過去フェルマーの最終定理に関する本を何度かトライしてみたが、どれも残念ながら大して理解することもできずに諦めてしまった。しかし本書は「フェルマーの最終定理」とサブタイトルを持ちながらも序盤は、本当に簡単な数学の知識だけで楽しめる内容で構成されている。
例えば

原点中心の単位円周上に、有理点は無数に存在するか。
aとbが偶数の原始ピタゴラス数(a,b,c)は無数に存在するか。

などである。それぞれの証明をしっかり理解しながらついていくのはやや根気がいるし、時間もかかるが、最初はまったく違う証明だと思っていたものが、実は本質的に同じ問題だったと気づく瞬間の、その驚きは伝わってくるかもしれない。きっとそんな驚きが多くの数学者たちを数学の世界にひきこんでいったのだろう。
終盤ではついにフェルマーの最終定理に話が及ぶ。とはいっても、本書で触れているのは本当にそのさわりの部分だけ。フェルマーの最終定理の証明の鍵となる谷山・志村予想やモジュラー。結局本書を読んだ後もやはりそれらの詳細は分からないままだが、読む前よりもその感覚的な部分がつかめた気がする。
【楽天ブックス】「数学ガール フェルマーの最終定理」

「悪者見参」木村元彦

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
残念なのは本書のタイトルや表紙はその内容を的確に伝えてないということ。むしろストイコビッチがJリーグでイエローカードをもらいながらも、すばらしい実績を残していく様子を描いていそうな、タイトルと表紙だが、実際にはユーゴ紛争を描いていてサッカー選手もそのうちの一つの要素に過ぎない。

しかし、紛争の悲劇を伝えるために、本書は何人かのサッカー選手の体験を紹介する。印象的なのは悪魔の左足と恐れられた正確無比なフリーキックで有名なミハイロビッチがようやく自らの家に帰ったときの体験である。

散々荒らされた室内に足を踏み入れ、眼を凝らすと真っ先に飛び込んできたのは、壁に飾られた旧ユーゴ代表の集合写真だった。そこには彼の顔だけがなかった。銃弾で打ち抜かれていたのだ。
「あの時の悲しさ、淋しさは一生忘れない。僕は帰らなければよかったとさえ思った。帰らなければ思い出が何もなかったように、僕の中でそのまま残っていただろう。

とはいえ、本書の焦点はむしろアメリカ、イギリスなどNATOが中心となって、その空爆の正当性を訴えるためにつくりあげる、セルビアの悪者のイメージである。10万人のアルバニア系住民を監禁したと報道されたスタジアムは実際には8000人も入れそうもない大きさだったという。報道によって世の中に「悪者はセルビア」のイメージが徐々に世の中に刷り込まれていくのに、それに対して何も出来ない著者の歯がゆさが伝わってくる。

絶対的な悪者は生まれない。絶対的な悪者は作られるのだ。
味方なんかじゃない。あんたたちが思っているような国じゃない。
アメリカの戦争に協力する法案を国会で通し、ユーゴ空爆に理解を示した国なんだ、我が日本は!

本書を読んで感じるのは、「僕らが見ている真実とは何なのだろう?」ということ。僕自身それほどあの当時コソボ紛争に関心があったわけではないが、サッカースタジアムで、クロアチアの選手であるズボニミール・ボバンが警官に飛び蹴りして、国内で英雄視されていたのを知っているし、それを疑いもなく信じていたのだ。
【楽天ブックス】「悪者見参」

「砂のクロニクル」船戸与一

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
第5回山本周五郎賞受賞、1993年このミステリーがすごい!国内編1位作品。

独立国家の建設を求めて放棄しようとするクルド人。イランはホメイニ体制の下でそれを抑えようとする。そんな混乱のなかの中東に2人の「ハジ」と名乗る日本人がいた。

イランイラク戦争。まだ政治に関心を持つような年齢でもなかった僕は、その名前しか知らない。しかし、戦争というのは、他の国で豊かな暮らしを送っている人にとっては他人事でも、当人にとっては人生を左右するもの、人に寄っては人生そのものでもあったりする。本書が描いているのはまさにそんな人達である。

本書は「ハジ」と名乗る2人の日本人のほかに、イランの共和国軍である革命防衛隊に属するサミル・セイフ、クルド人でクルド国家の樹立を目指すハッサン・ヘルムートの視点からも語られる。サミル・セイフは国を守るためにそのすべてを注いでいるが、革命防衛隊内の腐敗に葛藤を続ける。また、ハッサン・ヘルムートもクルドの聖地マハバードの奪還を目指す中で、イランクルドとイラククルドの諍いなどの不和にも頭を悩まされる。

そんな状況のなか、「ハジ」と名乗る日本人の一人駒井雄仁によって2万梃のカラシニコフがカスピ海をわたってクルド人に届けられようとしている。そしてその後武器を得たクルド人たちはマハバードへ向かうこととなる。

かなりの部分が史実に基づいているのだろう。これほど大きな混乱を知らずに今まで生きていた自分がなんとも恥ずかしくも感じた。

本書はハッピーエンドとは言えないだろう。そもそも戦争とは悲しみしか生まないのなのかもしれない。それでも、そんな時代だからこそすべてをかけて人生を全うする登場人物たちが羨ましく思えてしまう。

イスラム革命防衛隊
1979年のイラン・イスラム革命後、旧帝政への忠誠心が未だ残っていると政権側から疑念を抱かれた従来の正規軍であるイラン・イスラム共和国軍への平衡力として創設されたイラン・イスラム共和国の軍事組織。(Wikipedia「イスラム革命防衛隊」
ルーホッラー・ホメイニー
イランにおけるシーア派の十二イマーム派の精神的指導者であり、政治家、法学者。1979年にパフラヴィー皇帝を国外に追放し、イスラム共和制政体を成立させたイラン革命の指導者で、以後は新生「イラン・イスラム共和国」の元首である最高指導者(師)として、同国を精神面から指導した。(Wikipedia「ルーホッラー・ホメイニー」
イラン・イラク戦争
イランとイラクが国境をめぐって行った戦争で、1980年9月22日に始まり1988年8月20日に国際連合安全保障理事会の決議を受け入れる形で停戦を迎えた。(Wikipedia「イラン・イラク戦争」

【楽天ブックス】「砂のクロニクル(上)」「砂のクロニクル(下)」