「A Win Without Pitching Manifesto」Blair Enns

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
デザイナーとして他のデザイナーやデザイン企業と差別化を図る方法について語る。
本書で繰り返し主張していることはタイトルにあるように「Win Without Pitching Manifesto」である。クリエイティブな業界で仕事をする人は、仕事を得るためにコンペに参加して、無料で提案内容を披露したり、値段を安くすることで、勝負するデザイナーや企業を見たことがあるだろう。ひょっとしたら自分自身がそのようにして仕事を取ってきているかもしれない。
しかし、値段を安くすることをしている限り、クライアントを完全に満足する仕事はできないというのである。そして、一度値段を安くすると、その負のスパイラルから永遠に抜けられないというのだ。「楽しい仕事をしているから、忙しくても満足」では続かない。本書はそんなクリエイティブ業界のよくある状況から抜け出すための次の12の話を語っている。

We Will Specialize
We Will Replace Presentations With Conversations
We Will Diagnose Before We Prescribe
We Will Rethink What It Means to Sell
We Will Do With Words What We Used to Do With Paper
We Will Be Selective
We Will Build Expertise Rapidly
We Will Not Solve Problems Before We Are Paid
We Will Address Issues of Money Early
We Will Refuse to Work at a Loss
We Will Charge More
We Will Hold Our Heads High

印象的だったのは、コンペでプレゼンをすることを、医者に例えてさとしている点である。「医者は診察をしないうちに薬を処方したりしない」と。つまり、クライアントの問題点をしっかり調査しないうちに提案をするのは間違っているというのである。
読み終えて思ったことだが、本書はクリエイティブな仕事の仕方について書いているが、自らの価値を少しずつ高めていく考え方としては、必ずしも仕事に限ったことではなく、人間関係にも適用できるかもしれないと感じた。

「Webサイト設計のためのペルソナ手法の教科書」Steve Mulder,Ziv Yaar

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
Webサイト設計のためのペルソナの作り方についてまとめている。
ペルソナ設計という考え方は昨今多くの企業で認識されるようになってはきたが、その設計の仕方となるとよくわからない。本書はそんな人のためにペルソナの作り方を丁寧に説明している。
まず、ペルソナを作成するためのユーザー調査の油断として、定性的なアプローチ、定性的なアプローチと定量的な検証、定量的なアプローチという3つのアプローチがあり、それぞれの長所と短所を理解すべきだろう。またもう一つの軸として本書ではユーザーの発話とユーザーの行動という指標を用いている。定性的な調査は「なぜ」を明らかにし定量的な調査は「何が」を明らかにする、という言い方もしているがこちらのほうがわかりやすいかもしれない。
本書はそんな考え方の大枠だけでなく、調査の方法、質問の作り方、そして調査結果をもとにどのようにしてどれだけのペルソナを作ったらいいかまで、非常にわかりやすく解説している。実際にペルソナ設計の際に、常に手元に置いておきたいと思える内容である。
後半では作ったペルソナをどのようにプロジェクトに組み込んでいくかの方法が書かれている。ペルソナは作って終わりではなく、プロジェクトに関わる人が常にペロソナの存在を意識するようになってこそ成功なのである。
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「ダメだ!この会社 わが社も他社も丸裸 」山崎元/倉田真由美

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
11回の転職をした著者が自らの経験を基に、いい会社や悪い会社の傾向について、会社勤めをしたことのない漫画家倉田真由美と共に語る。
「こんな会社はだめだ」と端的に言い切るところが面白い。いくつか挙げると次のようなものだ

意味不明の肩書きが多い会社
役員フロアがゴージャスすぎる会社
上司・同僚を肩書きで呼び合う会社に未来なし

そんな表面的なことばかり書かれているかというとそんなことはない。本書で語られていることのなかで印象的だったのは、悪い会社も務める人の心の持ちようによってはいい会社になり、またその逆もありえるというところ。結局大事なのは自分の価値観に見合う会社を選ぶということなのだろう。こうやって書いてみると当たり前のようのことのように思えるのかもしれないが、しっかりと自らの価値観を見極めるまでにはある程度の年月を、価値観の合わない会社で働く必要があるのだ。
本書で書かれていることの多くが真実であったとしても、自ら経験するからこそしっかり理解できることなのだろう。それでも知識として持っておいて損はない。
【楽天ブックス】「ダメだ!この会社 わが社も他社も丸裸 」

「コンサル一年目が学ぶこと」大石哲之

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
外資系のコンサルティング会社出身者はその後さまざまな分野で活躍している。そんな彼らが1年目に学ぶ、その後の人生にずっと影響を及ぼすような内容とは何なのかを語る。

本書は4つの章に分かれている。「話す技術」「思考術」「デスクワーク術」「ビジネスマインド」である。どれも非常に論理的な考え方なので、普段から論理的な考え方をしている人にとっては、当たり前のことばかりなのかもしれないが、改めて自分の行動を見直し、それをさらに磨くためには本書はいいきっかけになるのではないだろうか。

話す技術のなかで、「PREPの型に従って話す」というのがある。PREPとはPoint、Reason、Example、Pointで、まず結論を話し、その理由を説明し、具体例を語った上で再度結論を繰り返す、という流れである。「結論を先に話す」というのはよく言われることではあるが、改めて自分自身の本日、昨日の職場での言動を振り返ってみるとすべてにおいてそのように実行できていたかは怪しい。

また「Quick and dirty」という考え方も、常にできているとは言い難い。「Quick and dirty」とは完璧ではないものでも早く人に精査させることによって軌道修正を行うということである。必要以上に間違ったものを作り込んで無駄な時間とエネルギーを使うことを避けるために非常に有効な考え方で、アジャイル開発などでも取り入れられている考え方だが、人の目を考えるとついつい作り込んでしまいがちである。

コンサルタントがなぜあれほど高い給料をもらえるのだろうか、というところに興味を持って本書を手に取ったのだが、彼らも特別なことをやっているわけではないということがわかった。本書では多くの参考図書が紹介されていたのであわせて読んでみたい。

参考図書
「まだ「会社」にいるの?」山口揚平
「得点力を鍛える」牧田幸裕
考えながら走る グローバル・キャリアを磨く「五つの力」」秋山ゆかり
なぜゴッホは貧乏でピカソは金持ちにだったのか?」山口揚平
「観想力・空気はなぜ透明か」三谷宏治

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「リーンスタートアップ ムダのない起業プロセスでイノベーションを生み出す」エリック・リース

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
いくつかの事例を交えてリーン・スタートアップについて説明する。改めて実例と共にそのコンセプトを読み進めると理解が深まる。

特に印象的だったのがMVP(Minimum Viable Product)の重要性である。制作に関わる人間はどうしても、「できるかぎりいいものを世の中に出したい」と思って作りこむことに時間をかけてしまうが、実際に作っているものが世の中の求めているものとは限らないのである。実用に耐えうる最低限のものを、アーリーアダプターに提供することによって世の中でどんなものが求められているかを早く知り、早く軌道修正することができるのである。

もう一つ印象に残ったのがバッチサイズの縮小のメリットである。バッチサイズとは繰り返しの作業による1つの工程から次の工程への作業量の大きさである。例えば100通の手紙を用意するのに、100枚の手紙をまず折って、その後100枚の手紙を封筒に入れる、という作業の流れだとパッチサイズ100となる。これに対して手紙を1枚ずつ仕上げる方法がパッチサイズ1である。僕らは、作業は繰り返すほどに習熟するという思い込みがあるため、バッチサイズが大きいほど効率的という思い込みがあるが、バッチサイズが小さい方が問題が早く浮上し、すばやく修正を反映することができるのである。

非常に読みやすく、リーン・スタートアップについて理解するのに非常にわかりやすい本である。

参考図書
「イノベーションのジレンマ 技術革新が巨大企業を滅ぼすとき」
イノベーションへの解 利益ある成長に向けて
「製品開発フローの原則 第2世代リーン製品開発」ドナルド・G・レイナーツェン
教育 × 破壊的イノベーション 教育現場を抜本的に変革する
「ザ・トヨタウェイ」ジェフリー・ライカー
「トヨタ生産方式 脱規模の経営をめざして」大野耐一
「プランB 破壊的イノベーションの戦略」ジョン・マリンズ、ランディ・コミサー
「リーン・シンキング改訂増補版」ジェームズ・P・ウォーマック、ダニエル・T・ジョーンズ

【楽天ブックス】「リーンスタートアップ ムダのない起業プロセスでイノベーションを生み出す」

「指を置く」佐藤雅彦/斎藤達也

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
指を置くことで意味を持つ絵や図形をまとめている。
1時間ほどで読み終わる内容ではあるが、そのコンセプトを理解するのは中々難しい。冒頭で本書はこおように語っている。

通常の絵画や彫刻などの美術の鑑賞では、作品の前面に向かうのは、あなたの眼です。手や指は関与してきません。しかし、本書では自分の存在を敢えて、コンテンツに参加させます。そのとき、果たして自分の存在は、メディアへの没入感にどのような干渉を及ぼすのでしょうか。

僕が本書に辿り着いたのはユーザーインターフェースデザインの関連からだった。スマートフォンのタッチパネルがメインであるユーザーインターフェースデザインは、まさに本書の言う「自分の存在がコンテンツに参加したデザイン」である。そのための手がかりになるものが本書から得られたかどうかはまだわからないが、引き続き模索し続けたいと思った。
【楽天ブックス】「指を置く」

「It’s not how good you are, it’s how good you want to be.」Paul Arden

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
クリエイティブに関わる人間が心がけるべき言葉に溢れている。手元に置いておいていつでも見返せるようにしたいと思える本。

Don’t look for the next opportunity. The one you have in hand is the opportunity.
次のチャンスを探すな、今目の前にあるものがチャンスなのだ。
Do not seek praise. Seek criticism.
賞賛を求めるな、批判を求めろ

ぜひ手にとって、1つ1つの言葉を噛み締めてもらいたい。

「薬剤師は薬を飲まない」宇多川久美子

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
薬を飲まない薬剤師である著者がその理由を語る。
著者によると、世の中の年配者の多くがやっている薬を常用している状態というのはおかしいのだそうだ。なぜなら、薬が病気を治してくれるなら一定の期間飲めば薬は必要なくなるはずなのだから。実際には多くの場合、薬はただ症状を抑えるもので、完治させるものではないのだという。痛みや苦しみが発生する根本の原因を解決しないで、場当たり的に薬に頼って症状を抑えている限り、永遠に改善することはない。薬を手放して、自然治癒力や自己免疫力を維持することこそ健康な生活を送るために必要なのだそうだ。
言われてみればどれももっともな内容でたびたび頭痛薬を飲む自らの生活を反省する部分もあると感じた。内容としてはもっと年配の人に向けられて書かれているように感じたが考え方として持っておくことに早すぎるということはないだろう。
後半は健康な体を育むためのエクササイズも紹介している。薬剤師のエクササイズがどれほど本書の読者の役に立つかは疑問である。健康のための運動を日常的に行っている人にとっては後半は退屈かもしれない。
【楽天ブックス】「薬剤師は薬を飲まない」

「世界史を変えた薬」佐藤健太郎

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
世界を大きく変えた薬について紹介する。
世の中にはわずかな違いで、歴史が大きく変わっていたかもしれないことがある。クレオパトラの鼻がもう少し低かったら、というように。本書はそれを薬について語っているのだ。実際100年ほど前までは日本人の平均寿命は40歳程度だったのだというから驚きである。言い換えるなら「世界史を変えた薬」が生まれていなければ、僕はもう死んでいたかもしれないのである。
本書で扱っているそんな「世界史を変えた薬」とは、ビタミンC、ペニシリン、アスピリンなどである。薬のど素人の僕でさえ知っている名前ばかりである。つまりそれは現在ではそれほど広範囲で使用されているということなのだろう。大航海時代に多くの航海者が悩まされた壊血病を解決するビタミンCの発見に始まり、多くの興味深い歴史的事実を交えて、薬の発明を紹介している。薬という世界の入り口としては非常に面白い一冊である。
【楽天ブックス】「世界史を変えた薬」

「問題解決に効く「行為のデザイン」思考法」村田智明

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
デザインの考え方について語る。
例えばハンガーにスーツをかける場合、ハンガーはズボンを先にかけてから上着をかけるようにできているが、それが人間のスーツを脱ぐ順番と一致しているだろうか。本書はそんなわかりやすい事例を盛り込みながらデザインについて語る。多くの人は「デザイン」というと、色や形を作る「デザイナー」と呼ばれる人だけが気にしていればいいことのように聞こえるが、本書を読めば、実際には世の中のすべての人が考え、関わることのできる分野なのだということがきっと伝わるだろう。
普段からデザインという業務に関わる人にとっても、改めて思い出させられる内容がいくつか含まれている。例えば「デザインは使う人になりきって考える必要がある」という考えは、言葉にすれば当たり前だが多くの人が忘れがちである。また「時間軸を考える」という考えもついおろそかになりがちである。
普段のデザイン業務を見直したくさせてくれる一冊。
【楽天ブックス】「行為のデザイン」思考法

「ザ・ギフティッド 14歳でカナダのトップ大学に合格した天才児の勉強法 」大川翔

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
タイトルにあるように14歳でカナダのトップ大学に合格した大川翔が自分の勉強やこれまでの学校や家庭での過ごし方について語る。
経歴だけを見ると、このような偉業は才能のある特別な人間にしかできないものと思うかもしれないが、本書を読んでみるとそんなことはないとわかる。
まず、日本にはない飛び級というものがカナダには存在するのである。日本でも授業中に授業のスピードが遅くて退屈しているような人間を見た覚えがあるだろう。日本ではそのような人間は、他の生徒にあわせてゆっくりと進むしかないが、カナダではそのような生徒は飛び級という選択ができるのである。それによって大川翔くんは常に「ほどよいがんばり」を求められる環境に置かれたのである。本人のレベルよりも高すぎる環境は諦めを生む一方で、低い環境は「慢心」を生むのだろう。そういう意味では翔くんも日本の学校では慢心に溺れた「小学校のとき頭が良かった」生徒になったかもしれない。
もう一つ驚いたのは、何よりも弁護士である母親が勉強する能力と方法を熟知しており、それを翔くんに対してもしっかり実践したことである。それによって翔くん自身も効率的な勉強方法を身につけて行ったのである。
例えば、何かを達成するために必要なことは、その能力を伸ばすだけではなく、何をどこまでやればいいのかという分析である。試験のようなものの場合、実力を上げることはもちろん重要だが、同じように重要なのは、必要以上に時間をかけて他の分野や強化にかける時間が減ってしまうことである。
本書では翔くんがスピーチコンテストで優勝する様子が描かれているが、その過程はまさに分析と必要な技能のマスターに集中しており、目的達成のための理想形である。僕ら大人がそれを今語ることができることにそれほど驚きはないが、それを14歳の時点ですでにマスターしているということは人生のなかで大きな利益になるだろう。
本書を読んで思ったのは、14歳の天才時はしっかりと両親が計画して子育てを行えば、育てることができるということである。
【楽天ブックス】「ザ・ギフティッド 14歳でカナダのトップ大学に合格した天才児の勉強法」

「嫌われる勇気」岸見一郎/古賀史健

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
人生に悩む青年が「人は変われる、世界はシンプルである、誰もが幸福になれる」と言う哲人のもとを訪ね、その内容を問いただす。自分の人生を嘆きそれと比較しながら、哲人の話す内容はただの理想論と言う青年だったが次第にその考え方に心を奪われていくのである。

昨今アドラー心理学という言葉をよく聞くようになったので、比較的新しい考え方だと思っていた。しかし実際にはアドラーはフロイト、ユングと並ぶ心理学の三大巨頭なのだそうだ。

まず、興味をひいたのは原因論と目的論という考え方。例えば、とある引きこもりの男性がいて、ある人がその原因を幼少期の虐待にあるとする。これが原因論による考え方である。一方で目的論をベースにするアドラー心理学は次のように捉える。その男性は社会に出たくない故に幼少期の虐待を理由に引きこもることを選んでいる、と。アドラー心理学では常に「今」の「目的」に目を向けており、「過去に人はとらわれない」という考え方をしている点が興味深い。

他人の評価などのように、自分ではどうしようもないことに干渉するためにエネルギーをかけない、という点は、選択理論などでも語られ、最近では一般的な考え方になってきたが、それでも改めてアドラー心理学の中でそれを考え直すのも悪くない。

やはりもっとも印象的だったのは「貢献感で幸せを感じる」という考え方である。人はどうしても人や社会に貢献すると、金銭や感謝の言葉などのような見返りを求めてしまうが、そこから解き放たれて自ら満足することこそが幸せになる方法なのだ。
実はこの考え方、僕自身がこの1,2年至った考え方だったので、もう少し本書を早く読んでいればもっと早くここにたどり着いたのかもしれない、と思った。


【楽天ブックス】「嫌われる勇気」

「忍びの国」和田竜

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
父、織田信長に認めてもらうため、織田信雄(おだのぶかつ)は伊賀を攻めることを決める。強力な部下に恵まれながらも自らの能力のせいでその忠誠を勝ち取ることのできない信雄(おだのぶかつ)と、とてつもない強さを持ちながらもお金のためにしか動かない伊賀の忍びたちの戦いが始まる。

伊賀という言葉からイメージするのは、やはり忍術というなにか胡散臭いもの。子供時代にみたハットリくんの世界が現実ではないとわかっていながらも、それでは実際に歴史上の伊賀の忍者とはどのような存在だったかと聞かれると未だによくわからない。そんな曖昧な「忍者」の認識に新たな視点をもたらしてくれるのが本作品である。

物語は、織田と伊賀という非常にわかりやすい構図で描かれる。織田方は誰もが天下を統一したことで知っている織田信長と、その息子、信雄(のぶかつ)を中心に展開する。すごい父を持った故に、自らの能力のなさを嘆き、父に認められるようとする信雄(のぶかつ)の姿に、400年という時を超えて共感する読者も多いのではないだろうか。そして伊賀の方では、類まれなる強さを持ちながらも妻に頭のあがらない無門(むもん)の様子が繰り返し描かれる。こちらもどこか現代の男性の共感を呼ぶのではないだろうか。

戦国の時代というと、日本の立派な武士道が見られるかとおもいきや、伊賀の人々は裏切りなど当たり前で、お金のためにしか動かないというのが面白い。また、信雄(のぶかつ)に仕える武士たちも、混乱の世の中で生き抜くために、仕える先を頻繁に変わるために必ずしも忠誠を誓っていない者も多いのである。

そんななか、信雄(のぶかつ)の維持と伊賀がぶつかるのである。信雄(のぶかつ)と無門(むもん)を中心とする物語に、個性のある脇役が加わり、軽快に楽しめる物語に仕上がっている。

【楽天ブックス】「忍びの国」

「あと少し、もう少し」瀬尾まいこ

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
中学校の駅伝にかける青春を描く。
追い詰められたときに力を発揮する設楽(したら)、素行は悪いが走ることは好きな大田(おおた)、バスケ部から参加したジロー、吹奏楽部から参加した渡部(わたべ)、桝井(ますい)に憧れて力をつけてきた俊介(しゅんすけ)、そしてずっと陸上部の駅伝をひっぱってきた桝井(ますい)。個性豊かな中学生たちが最後の駅伝にかける様子が、それぞれのそれまでの回想シーンなどと合わせて描かれる。
個人的には不良の大田(おおた)の心の描写が印象的である。すでに先生からも敬遠されるなか、桝井(ますい)からの誘いにしぶしぶ応じて駅伝に参加することになった大田だったが、走ることは好きでみんなの期待を越える活躍を見せるのである。

「やってもできない」それが表に出てしまうことを、俺はずっと避けてきた。できそうにない問題にぶつかると、できないと証明される前に投げ出した。そのうち投げ出すことに慣れてきて、ちょっとしたハードルでも俺は手を出そうとしなくなった。そして、その分、できないことも増えていった。
中学校の教師も、「お前はやればできrんだから」と馬鹿の一つ覚えみたいに言った。だけど、残念ながらそれは違う。俺はやったってできない。だいたいやればできるやつは、ちゃんとやっている。何にも力を注がない時間がこれだけ積み重なった俺にできることなど、一つもなくなっていた。

仲間とともに何かに一生懸命取り組むことのすがすがしさを改めて思い出させてくれる一冊。
【楽天ブックス】「あと少し、もう少し」

「諦める力 勝てないのは努力が足りないからじゃない」為末大

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ハードルのメダリストである著者が、自らの経験を基に、現在の日本のスポーツのありかたについて語る。
成功者は言う「諦めなかったから夢がかなった」。僕らは成功者の言葉を聞くことはたくさんあっても、失敗者の言葉を聞くことは少ない。そのため、「諦めなければ夢は叶う」という間違った考えを信じてしまい、それによって多くの競技者たちが引き際を間違えてつらい人生を送ることになるのである。本書で著者は繰り返し言うのである。確かに成功者は諦めなかったから成功したのだろう。しかし、その裏で諦めなかったけれども成功できなかった人がその何倍も存在するのであるのだと。

「やめなかったからこそできた」
こう主張する少数派の言葉に嘘はないが、現実の社会においては、はるかに敗者のほうが多いという事実はわかっておくべきだ。

ちょうど本書を読み終えたころに、世の中はまだ、リオ五輪の余韻に浮かれていた。バドミントンで金メダルととった女性ペアに、4年後もオリンピックを目指してくれるように頼んでいるタレントがいた。このような世の中の態度が、競技者に不要なプレッシャーを与えるのだと感じた。
周囲の人間は、夢を追いかけることばかりを強要するのではなく、その人の人生がよりより人生であるように、別の選択肢を示してあるべきなのだろう。スポーツの世界に没頭できるのはせいぜい人生の1/3程度なのだから。何かに頑張っている人に対して、多くの選択肢を示せる存在でありたいと思った。
【楽天ブックス】「諦める力 勝てないのは努力が足りないからじゃない」

「働くアリに幸せを 存続と滅びの組織論」長谷川英祐

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
生物学者である著者が社会や組織を語る。
生物や昆虫の性質を引き合いにだしながら、世の中を説明して行く点が新鮮である。多くの人が知っているように生き物は種の存続を目的にそれぞれの行動が決まっている。しかし、そのような目的を持ちながらも種によっては群れを作ったり、1人のためにその他大勢が死ぬまで働いたり、ほかの生物の巣に入り込んだりと、戦略はさまざまである。ある種が、長い時間をかけてなぜ現在の行動に落ち着いたのかを考えると、その種にとってその生き方が、長期的なメリットがあることがわかる。
社会や組織や、人を新しい視点で見つめられるようになるかもしれない。
【楽天ブックス】「働くアリに幸せを 存続と滅びの組織論」

「フランス人は10着しか服を持たない」ジェニファー・L・スコット

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
フランスへのホームステイを機に考え方を大きく変えた、カリフォルニア育ちのアメリカ人女性の話である。

昨今「断捨離」や「ミニマリスト」「ミニマリズム」という考え方が浸透してきたが、本書もそんな考えを後押しするもの。つまり、物質主義にお分かれして「自分らしい生き方をしよう」ということである。ホームステイ先の家庭で、それまでのアメリカでの生活とはまったく異なる生活があることを知った著者はすこしずつその生活を取り入れて行くうちに、あるべき姿に気付いて行くのだ。

まず著者は、それまで持っていた大量の服のなかから本当に自分らしい物だけを残して捨てることにするのである。また、毎日化粧に多くの時間を費やすことを辞め、スナック菓子を食べながらテレビを見て過ごす事を辞めたのである。それによって彼女は、本当にいいものだけを持とうとするようになり、読書や散歩や美術鑑賞をすることに時間を費やすようになり、人生が満ち足りて行くのを実感するのである。

本書でもひしひしと伝わってくるが、このような生き方の本質は持ち物をなくすことではなく、本当に必要な物だけを持つ事であり、人生はそれによって豊かになる、ということである。

僕自身の生き方と似ている部分がかなりあったが、身習いたいと感じる部分もたくさんあった。例えば、小さなものでもいいものを持つということ。小さなものだから安いもので間に合わせるのではないのである。また、部屋の中でも常にしっかりとした装いをすることや、家族への料理でさえもしっかりとした盛りつけをするというのも真似したいと思った。どんな服を着るかなど、すべての振る舞いが相手への敬意なのだそうだ。

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「走る哲学」為末大

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
トラック競技で日本人初のメダルを獲得した著者がツイッターでつぶやく内容を集めたのが本書である。
以前より著者為末大の語る言葉が深い、というのは友人から聞いていた。実際ネット上でも彼の語る内容が物議を醸し出していたりもして、一般的な「スポーツ選手」というイメージから想像される人物とは少し異なる考え方を持っているということは知っていた。それでも彼の書籍を読むのは本書が初めてだったので、その視点の深さに改めて驚かされた。いくつか心に響いたものを取り上げるとこんな感じである。

“継続は力なり”は、常に撤退を頭に入れている時に効力を発揮する。
辛い練習をすれば安心と満足感は約束される。楽な練習はこれでいいのかと不安になる。勇気があるから辛い練習をするのではなくて、臆病だから辛い練習をしている場合もある。

また、自分と強く一致する部分があったことのも印象的だった。

いい方法を探すのではなく、マシな方法を探すと思った方がいい。どんな方法にも問題はあり、問題がない方法を見つけようとし過ぎれば、実行が送れ、学習のサイクルが鈍る。

何度でも読み返したくなるような、素敵な言葉にあふれている。
【楽天ブックス】「走る哲学」

「コンスタンティノープルの陥落」塩野七生

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
東ローマ帝国の首都として栄えたコンスタンティノープルの陥落を描く。著者塩野七生自身「ローマ人の物語」という大作を描いていることからもわかるように、誰もが古代の大帝国としてしっている「ローマ帝国」それが最終的にどのように東ローマ帝国となって、そして滅びたのかを知っている人は少ないだろう。本書はそんな歴史の一部分を、そこに関わった多くの登場人物の目線で描く。
正直登場人物が多いのと、宗教的な背景に対する知識が乏しいせいか、戦がはじまるまでの流れはあまり深く理解できなかった。しかし、一度観光で訪れたことのある、イスタンブールの名所、ガラタ塔やボスポラス海峡など、などが物語中で出てくるたびに、歴史の延長に僕らがいることを実感する。
戦いのなかで印象的だったのが、この戦いで大砲が大活躍したという点である。そして大砲の活躍の目覚ましさ故に、この戦いの前と後では、特に地中海地域では城壁の作られかたが変わったのだそうだ。これから西洋の城を見る時は城壁の形にも注意してみてみたい。
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「六百万人の女性に支持される「クックパッド」というビジネス」上阪徹

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
今や料理をするとなったら欠かせないクックパッド。そのビジネスの根底にある理念を語る。
出版はすでに7年以上前なので新しい本とは言えないが、クックパッドの理念が伝わってくる内容である。Webサービスに関わっている人間であればいろいろ学べる部分があるだろう。まず、そのユーザーインターフェースについてはつぎのように語っている。

説明が必要なサービスは、レベルが低い

UIデザイナー等は常に意識していることであるが、なかなか企業という組織のなかで実現できないというのが実情である。ところがクックパッドは社員全員にその意識が徹底されているというのだから驚きである。また、検索結果でユーザーが求めている物を表示するためのシビアな取り組みも面白い。ただ単に検索キーワードに含まれているレシピを出すだけで満足していてはユーザーはすぐに離れて行ってしまうのだろう。
さらに印象的だったのは、いいレシピを選別する基準として「印刷された回数」という指標を用いている点である。「いいね」や「閲覧数」が簡単に測定できるとどうしても、その数でいいレシピを判断してしまうが、印刷というアナログな手法の回数こそがいいレシピである指標だと言う視点は見習いたい。また、ユーザーの利益になる広告しか掲載しないという強い意思にも感心してしまう。
理想を語ることは誰でもできるがなかなか実現できる企業は少ない中で、それを貫き続けた結果今のクックパッドがあるのだと感じた。自分でサービスと1から作りたいと思わせてくれる
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