「The Perks of Being a Wallflower」Stephen Chbosky

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
高校生のCharlieが日常の出来事を日記に綴っていく。兄や姉や家族の話や、高校の友人たちの話を語る。

前半は、本当に普通の高校生が日常を綴っているという印象である。基本的には仲のよいPatrickと大好きなSamを描くことが多い。他にもさまざまな高校の友人たちが描かれ、Charlieが描く友人たちが、みんな非常に優しい人たちなのが伝わってくる。ただ、高校生活の些細な出来事が多く、なかなか物語が大きく動かないので若干飽きてしまうかもしれない。

しかし、中盤以降、少しずつCharlieが、普通の高校生とは少し違った感覚の持ち主で、過去の出来事によって心に大きな傷を抱えていることがわかってくる。そして、Charlieが日記をつけ始めたのは、精神科医に勧められて始めたということである。

やがて、Charlieは周囲の家族や周囲の友人たちの支えもあって、少しずつ自分の人生に向き合うようになっていくのである。

作品としては映画化もされており、大きく評価されてはいる。しかし、読んでみるとそこまで本を読み慣れている人に響く作品には感じられなかった。どちらかというと、その日記というスタイルから、主人公のCharlieと同年代の十代の若者の共感を集めたのだろうと感じる。

一方で高校生であるCharlieが日記をつづる、というスタイルの物語なので、時々出てくる高校生らしいスラング以外は出てくる英単語は非常に簡単である。

英語新表現
somebody's crush 誰かの片思いの人
designated hitter 指名打者
do acid 幻覚剤を摂取する
behind by one run 一点差で負けている
the beer starts to hit him ビールで彼は酔っぱらい始めた
second string 補欠(2番手)選手

「El cuco de cristal」Javier Castillo

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
心臓移植で命を救われたCora Merloは、自分の命を救ってくれたCharlesがどんな人生を送ってきたのかを知るためにCharlesの故郷のミズーリ州Steelvilleを訪れることとなる。しかし、Steelvilleでは未解決の行方不明事件が繰り返し起こっていた。

物語としては、CoraとCharlesの兄のJackが、行方不明の事件の真実に迫っていく様子を描く現在の様子と数年前の様子を交互に描いている。CoraはドナーであるCharlesの生前の様子を知るためにSteevilleに滞在し、そのなかで偶然行方不明のこどもを発見したことから事件に巻き込まれていくこととなる。一方Jackは、CoraのドナーとなったCharlesを弟に持つだけでなく、行方不明者を捜索していた警察官だった父親も失踪しているという過去を持つのである。

現代と並行して描かれる過去の物語では、失踪前のJackの父のEdwinが、子供の頃に行方不明になった姉を探す様子を描く。姉は田舎町の生活に嫌気が出て家族も顧みずに出ていった、と思っていたEdwinだったが、警察官として町の事件の解決に奔走する中で姉と思われる写真を見つけ、姉は実は拉致され殺害されていたのではないかという疑いが濃くなるのである。

Edwinの姉が行方不明になった1980年とEdwinが警察官として行方不明者の捜索に奔走する2000年、そしてCoraとJackがEdの父親Jackを含む行方不明者の謎に迫る2017年と、40年近くを隔てた3つの時代に起こった未解決行方不明事件の謎に迫るという、こんなに風呂敷を広げて大丈夫なんだろうかと思うほど謎満載の物語である。

マラガ生まれの著者のスペイン語の物語であるにもかかわらず舞台はアメリカという点がちょっと残念であるが、物語自体はしっかり楽しませてもらった。

スペイン語新表現
a hurtadillas こっそりと
de costado 脇腹から、横向きに
una camisa a cuadros チェック柄のシャツ
los juegos de mesa ボードゲーム
a merced de … 〜に翻弄されて、〜のなすがままに

「A Dead Draw」Robert Dugoni

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
釈放されたErik Schmidtは、2人の女性を殺害した疑いがあり、Tracyの妹のSarhaを殺害したEdmund Houseと刑務所で親しかったという。出所したSchmidtは少しずつTracyに狙いを定めTracyの家族に接近し始める。

Tracy Crosswhiteシリーズの第11弾で、久しぶりに第一作目の大きな事件、妹のSarahの死や犯人Edmund Houseの話が登場する。

Schmidtに出会ってから過去の悪夢が復活し、射撃の腕にまで影響が出始めたTracyは、釈放されたScmidtから家族を守るために故郷のCeder Groveにしばらく滞在すこととする。また、その間なまった射撃の腕を回復するために、子供時代の射撃の先生であるMasonとその娘のLydiaとともにトレーニングに打ち込むこととなる。

しかし、そんななかSchmidtと思える男性が少しずつ夫のDanや娘の周囲に現れ、やがてTracyはSchmidtと、現在は廃墟と鉱山の町で対決することとなるのである。

久しぶりに犯人との直接対決というわかりやすい展開である。唯一興味深かったのはLydiaが自閉症で様々な能力に長けているにもかかわらず、人とのコミュニケーションを苦手とする点である。

英語新表現
chopped liver 無視される存在、おまけ扱い
horse around 馬鹿騒ぎする
put your asses on the line 命懸けでやる、全力でやる
tucker out 疲れさせる
easy peasy 楽勝
sass you back 反論する
belie the spite 悪意を隠す
refuse to give ground 一歩も引かない
I'm locked and loaded! 準備完了だ、行くぞ!
on the spectrum 自閉スペクトラム症(ASD)である

「Malibu Rising」Taylor Jenkins Reid

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
カリフォルニアの海辺の街Malibuでレストランを経営しながら生活するNina, Jay, Kitの4人の兄弟を描く。4人は恒例行事となったパーティの準備を進めることとする。

著名なサーファーでかつプロテニス選手との結婚していたNinaは、夫との破局直後だったため、パーティで人に顔を合わせるのが憂鬱な状態であった。そんなNinaを気遣って弟たちJay, Hud, Kitはパーティの準備を手伝いつつ、Ninaを外に連れ出そうとする。

パーティの準備が進む中で、少しずつ4人の兄弟の置かれた状況が明らかになっていく。彼らの父親は著名なアーティストですでに何年も前に家を出てって帰ってきていないこと。Hudは実は同じ母の子ではなく父親が別の女性と作った子であること。また、数年前に母が突然亡くなって、それ以来、長女のNinaが学業などあらゆることを我慢して3人の兄弟の面倒をみているということである。

特にNinaの生き方が印象的である。Ninaは弟たちの学費や、家事のために自分の学業を諦め、また必要なお金を稼ぐために世の男性の下心ある視線にさらされることを知りながらも自分の写真を世に出すことを決意したのである。

そんななかパーティが始まり、著名人たちがあつまってくるのである。さまざまなことが同時に起こる中で疲れ切っているNinaに友人のTarineがぶつける言葉が印象的である。

I suspect you have not lived a single day for yourself.
あなたは一日たりとも自分のために生きたことがないんじゃない?

そして、パーティにはやがて、長く帰ってこなかった父親までもが姿を見せる。4人は父の正直な思いを前に、長く抱えてきた思いをぶつけるのである。自分は父親にはなれなかったと語る父にぶつけるNinaの言葉が強烈である。

I didn't feel capable of any of that! But did that matter? Of course not. So I've gotten up every single day since Mom dies and I have done what needed to be done. Capable is a question I never had the luxury of asking.
私は自分ができるなんて思わなかった。でもそれが重要?もちろん重要じゃないわ。だからママが死んでから毎日起きてやるべきことをやった。私は「できるか?向いているか?」なんて自分に問いかける贅沢すら与えられなかった。

自らを犠牲にして誰かを支える生き方は、尊い生き方ではあるが、本人が幸せかどうかは別問題である。本人も周囲の人間も何が本当に最適な生き方なのかしっかり考えなければならないだろう。

やがてNinaもあるべき自分の生き方を悟っていく。

And Nina understood maybe for the first time, that letting people love you and care for you is part of how you love and care for them.
そしてNinaはおそらく初めて悟った。愛してもらったり世話してもらったりすることは、誰かを愛して世話することの一部でもあるということを。

良好な人間関係に必要なのは、自立や強さだけではないということである。

あまり出会ったことのない種類の物語で新鮮である。家族の愛の物語ではあるが、Nina目線だと自己犠牲側面も強くあり、考えさせられる。

英語新表現
with abandon 後先考えずに
stave off 食い止める、しのぐ
fend for ourselves 自力で切り抜ける
be in someone's hair 〜を煩わせる、〜にまとわるつく
be out on bond 保釈中である

「Nightcrawling」Leila Mottley

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
父が亡くなり、母もいなくなった家庭で、兄のMarcusと生活をする17歳のKiaraの様子を描く。

Kiaraは兄のMarcusとともに生活していたが、家賃の値上げをきっかけに、アルバイトを探し始める。兄のMarcusは音楽家になる夢を捨てられずに仕事が続かないことから、やがてKiaraは自分の体を売ることとなる。そして少しずつ、大きな売春へと関わることとなっていく。

これまであまり黒人女性を描いた物語に触れたことがなかったので新鮮だった。Kiaraが自分や友人のために少しずつ体を売る生活をせざるを得なくなる点が印象的で、映画などで見る白人の豊かな生活はアメリカ社会の一部でしかないのだと感じた。あまり描かれることのないアメリカの貧困層の生活を知ることができるだろう。

英語新表現
neighborhood staple 近所になくてはならない存在
zip-tie 結束バンドで結ぶ
take a beat 一拍置く、少し間を置く
tug-of-war 綱引き

「メタバース未来戦略」久保田瞬/石丸尚也

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
メタバースについての現状と起こりうる未来を説明している。

メタバース議論のなかでつねに発生するのが15年以上前に同様の考えで広まったSecondLifeである。僕自身SecondLifeを時間をかけて楽しんだ人間なので、メタバースが実現しようとしている世界だけでなく、その限界も一般の人よりもわかっているつもりではいるが、よりその認識の精度を上げたくて本書を読むに至った。

SecondLifeとの違いとして、技術や通信速度の向上による違いはよく言われることだが、メタバースにおいては、モデリングの技術の発達も大きな成功を予感させる要因だという。つまり現実の世界をスキャンしてメタバース上に複製することが比較的簡単にできるのだという。SecondLifeで人々がやっていたように、世界の有名な場所を一生懸命作り上げる必要はないのである。

本書自体すでに出版から3年経っており、いつのまにかメタバースという言葉が話題に上がることも少なくなってきた。読みながら、本書で触れられているHorizonWorldなどのメタバースアクセスを試みるが限られた地域でしかアクセスできないとのことである。本書の出版からあまりメタバース世界に大きな進歩はないようだ。

進歩が滞っている理由はわからないが、一時期の熱が冷めて、世間のメタバースへの見方は冷静になっていくだろう。改めてクリエイターとしてまた一人のユーザーとしてどのような使い道があるのか考えるきっかけとなった。

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「Bringing Down the House: The Inside Story of Six M.I.T. Students Who Took Vegas for Millions」Ben Mezrich

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
MITで将来に悩む学生だったKevinはMITで長きにわたって存在してきたブラックジャックチームに加入することとなり、さまざまなカジノでお金を稼ぐ生活に入り浸っていく。

物語は進路に悩むMITの学生の20歳のKevinが、カードカウンティングチームに勧誘され、カジノで大金を稼ぐ様子が描かれている。

「Bringing Down the House: The Inside Story of Six M.I.T. Students Who Took Vegas for Millions

序盤は、そんなKevinがカードカウンティングの技術を学んで、カジノで仲間と協力して大金を稼ぐ様子が描かれている。

中盤以降は、少しずつカジノ側も対応してきて、次第にMITチームはカジノから出入り禁止や、脅迫を受けることとなる。そんななか、カジノで稼ぐことと自分の辿り着きたい人生とのギャップに苦しむKevinと、カードカウンティングで生きることにこだわる他のメンバーとの意識の差が大きくなっていく。

Was this where he belonged? Was this who he had become?
これが自分がいるべき場所か? これが自分がなりたかった人間か?

カードカウンティングというのは聞いたことがあったが、出たカードを記憶しておくことで、残りのカードを推測することかと思っていたが、実際にはもっと単純なものであることがわかった。

本作品では後半には「マネー・ボール」のBilly Beaneについても触れられているが、数字を重視して、一般的な人が陥りがちな先入観から解放され、ブラックジャックやプロ野球など特定の分野で成功することは、理系の人間には最高に楽しく爽快な瞬間だろうなと感じた。まだ数値的な分析が未開拓な分野を探してみたくなった。

英語新表現
trespass act 不法侵入行為
crash out 眠りにつく
hit the pool プールで泳ぐ、プールに入る
face cards トランプの絵札
break a sweat 汗をかく
raise a sweat 汗をかく
arbitrary point 任意の時点
failure point 限界点、機能停止点
grounded family 地に足の着いた家族、現実的な家族

「WHYから始めよ!」サイモン・シネック

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
WHYを中心としてWHAT、HOWと外に向かう図をゴールデンサークルと呼び、WHYの重要性を語る。

TEDトークで、WHYの重要性を語る、有名な著者サイモン・シネックのプレゼンテーションを見たことがあったので、そのコンセプト自体は理解しているつもりでいたが、初めて動画を見てから数年経ち、改めてその世界に触れたいと思って書籍を手に取った。

WHYの重要性をさまざまな角度から例を交えて解説している。興味深かったのはのイノベーションの普及を示した図として有名な鐘形曲線で説明している章である。図の右側にいるレイト・レイトマジョリティ(後期多数派)やラガード(出遅れ)は値段、つまりWHATしか気にしないために、この層をターゲットにすると企業として低価格競争に巻き込まれてしまうのだ。つまり図の左側の層の、イノベーター(導入者)、アーリーアダプター(初期採用者)、アーリー・マジョリティ(初期多数派)や忠誠心を抱いてもらうことこそ成功への近道で、そのためにWHATではなくWHYを広めるべきだと語る。

いくつかの企業の例を交えて説明している。サウスウェスト航空、マイクロソフト、ウォルマート、アップル、どれも興味深い話ばかりである。面白いのはWHYは重要だがWHYだけでも組織は動かないとしている点である。例えばアップルは常に企業の成功物語で名前の上がる企業であるが、著者はWHY型のスティーブ・ジョブズと、WHAT型のスティーブ・ウォズニアックの組み合わさったことが成功の大きな要因だとしている。アップルの成功の話を「Quiet」では、外向型人間と内向型人間が組み合わさったことを成功の要因として語っていたので、いろんな見方があるのだと感じた。

全体的に、本書の内容には自分の経験からも思い当たるふしが多々ある。常々多くの企業がWHYを明確にしないことでブランディングに失敗していると感じるし、株主の圧力ゆえにか、売上至上主義のなかでABテストなどでデータを重視しすぎた結果、WHYを見失ったWHAT型になっていると感じる。

例えば、Photoshopなどのクリエイティブツールを生み出したAdobeは、すでに当初の創造力を広める哲学を見失い、現在は詐欺まがいの手法で短期的な売り上げを上げることしか考えていない。iPhone以降10年以上革新的な製品を生み出していないアップルもAdobeほど惨憺とした例ではないが、WHYを失いかけている企業と言えるだろう。

昨今安定した売り上げを目指してサブスクリプション型のサービスを提供する企業が多く見られるが、WHYに共感できない企業のサブスクリプションサービスを利用しても、最終的にお金をむしり取られるだけである。著者が言うように、企業が本当に相手にすべき相手は低価格につられて簡単に動く人間ではなく、WHYを重視している人なのである。

当たり前ではあるが、動画で見ただけではわからない深みとともに著者の言いたいことが理解できた気がする。多くの企業のマーケター、ブランドデザイナーの必読の本とであろう。

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「Rejection Proof: How I Beat Fear and Became Invincible Through 100 Days of Rejection」Jia Jiang

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
拒否される恐怖心を克服するために始めた拒否セラピー、それは100日かけて毎日拒否に出会うというもの。

何年か前に著者のTedTalkと拒否セラピーのクリスピークリームの回が印象に残っていた。それは拒否されるためにクリスピークリームで作るのが難しそうなドーナツを注文するにもかかわらず、店員は拒否することもなくそのドーナツを作って出してくれる、というもの。久しぶりにその動画が見たくて検索したところ、書籍化しているということでくその前後の出来事も知りたくなり本書を読むに至った。

驚いたのはクリスピークリームの出来事は拒否セラピーを始めて間もない3回目の出来事だということ。著者にとって拒否セラピーを始めてすぐにこのような印象を変える出来事に出会ったことは幸運だったことだろう。改めて、無茶な依頼にも親切に対応したクリスピークリームの店員Jackieのように、真剣な依頼には真剣に対応する人間でありたいと思った。

僕自身はそれほど他人からの拒否に恐怖心はないが、拒否に恐怖心を抱く人の気持ちが本書を通じてよくわかった。速い話が、拒否されるのが怖い人は、拒否は自分自身の性格や能力の否定と感じるのである。一方で、僕のように拒否に恐怖心のない人は、もともと自信があるせいもあるが、拒否はたまたまタイミングが悪かったり依頼側と回答側の相互利益が成立していないだけだと捉え、自分自身の性格や能力の欠如とはほとんど関連づけないのである。

中盤以降は、拒否セラピーで有名になったせいで、著者にもさまざまな依頼が舞い込む様子が描かれる。そんななか、著者はたびたび断る側にまわることとなる。その過程で拒否される側だけでなく、拒否する側の考え方にも気づいていくのである。

When you deliver a rejection to someone, give the bad news quickly and directly. You can add the reasons afterward, if the other persons wants to listen. No one enjoys rejection, but people particularly hate big setups and "yes-buts." They don't lessen the blow––in fact, the often do quite the opposite.
誰かの依頼を断る時は、簡潔にかつ直接伝えてください。相手が理由を知りたい時に、理由は後から付け加えればいいのです。断られるのが好きな人などいませんが、人は特に、長い前置きや、「はい、でも」のような言葉を嫌います。そんなものは衝撃を和らげるどころか時にはまったく反対に作用します。

終盤では拒否セラピーの最後の挑戦として、著者は、妻の転職の手助けをする。それは妻のもっとも働きたい会社であるGoogleへの転職を成功させることである。

上で書いたように、僕自身は著者ほど拒否されることに抵抗はないが、むしろ本書では拒否する側としての姿勢に学ぶ点が多かった。何かを依頼された時に単純にNOと言って終わりにするのではなく、自分の好みや都合が合わないことを説明することで、依頼側は自分自身の否定と捉えずに済むのである。この点は早速取り入れたい思った。

ぜひ日本語化して日本にも広まってほしい内容である。

英語新表現
cuss out 罵る、罵倒する
psych out 不安にさせる、心理的に見抜く
strike a nerve 神経質になる
conform to the norm 規範に従う
sell a bridge 騙す
stick up for 支持する、応援する
break out in hives じんましんがでる
measure up to 見合う、匹敵する
off the wall 型破りな、突飛な
far cry ほど遠い

「移民大国アメリカ」西山隆行

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
アメリカの移民問題についてこれまでの歴史から現在の状況まで詳細に説明する。

日本も高齢者社会となり、経済を維持するためには移民の受け入れは避けられないだろう。そんななかアメリカが現在直面している移民関連の問題は、日本が近い未来に遭遇する問題と考えて知りたいと思い本書に辿り着いた。

多くの知らない事実を知ることができた。まず、移民問題といっても、不法移民、合法移民などざまざまな視点があり、多くの人が混在した視点で移民問題を語っているということ。また、二大政党の共和党、民主党の基本的な考えとして、民主党の方が移民に肯定的と捉えられ、非白人からの支持を集めているとされているが、それぞれの党の中でも移民賛成派、反対派がおり、党をまたがった議論になっているということなどである。

移民への国としての対応方針を決定する連邦政府に対して、州内住み着いて移民を社会に溶け込ませるための教育や福祉等の対応を強いられる州政府の関係も興味深い。決めるだけの連邦政府と、負担を強いられる州政府という構図になってしまうのも仕方のない話である。

中盤以降、キューバ系、メキシコ系、日本系、中国系、韓国系、ユダヤ系などの視点で、アメリカの中での影響力とロビー活動について触れている。ある国の中で特定の文化の人々が生きやすい環境を作るには、その国の中で影響力を強める必要がある。そのためにはロビー活動が欠かせないのだという。以前は強かった日本系コミュニティのロビー活動が最近は下火で、一方で韓国系や中国系が影響力を強めているのだという。

海外で同じ国の人間同士でつるむことをどこか馬鹿にした見方をすることがあり、日本人街などを敬遠する人も多いが、そこにはメリットもあるのだと再認識させられた。

改めて、アメリカの移民問題は思っている以上に複雑な問題であることがわかった。移民の国という理念があり国自体も移民によって作られた国という認識があるから、移民を受け入れるのが当然という考えも未だ根強く、そしてすでに大量の移民を受け入れてきたから、移民や不法移民の労働力に依存した社会構造ができあがっているから複雑な問題となっているのである。

引き続き、アメリカだけではなく世界の移民問題を知りたいと思った。次はフランスやドイツ、イギリスの移民問題などヨーロッパの国の実情について知りたい。

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「Whistleblower: My Unlikely Journey to Silicon Valley and Speaking Out Against Injustice」Susan J. Fowler

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
Uberで日常的に起こっていた女性差別を世の中に公表した著者が、その生い立ちや公表に至るまでの経緯や心のうちを語る。

Uberでの出来事が中心と思っていたが、その生い立ちや大学時代の出来事、Uberに転職するまでの社会人としての様子についても詳細に語っている。

小学校時代は学校に行かずにクリスチャンの両親の元て家庭で教育を受けていたために、なかなか他の生徒と打ち解けられずにいる様子が描かれている。そんな、どちらかというと一般的な生徒に対して遅れをとっていた著者のキャリアは、目標を持ったことで、主体的な生き方に目覚めてから一気に動き出す。そこからの著者の行動力には驚かされることばかりである。

中盤からは大学での生活に触れている。大学では自殺願望の強い同僚の存在によって、研究者としての道を諦めざるを得なくなり、スタートアップで働くことを決意するのである。最初はなかなか良い会社に恵まれず、そんな経緯も含めて最終的なUberでの大きな行動につながっていくのだとわかる。

そして後半はUberに入社してからの様子と、組織の中で少しでも会社の文化を良い方向に変えようと奮闘する様子や、退職を決意してからから内部に蔓延っていた差別を公表するまでの経緯や葛藤を描いている。これほど行動力や信念を持った人間でも、正しさと、その行動が自分や友人家族へもたらすだろう影響の大きさの間で悩みながら行動に至ったことが伝わってくる

どちらかというとスタートアップは新しい文化を体現していることが多い印象を持っていたので、Uberでここまで女性差別が行われていたと言う事実に驚かされた。また、そんななかある程度のところで妥協点を見つけて組織の中で止まる人々の行動も理解できるからこそ、著者のように頑なに理想を追い求めて戦う姿は新鮮である。女性ではないので、残念ながら著者の行動に共感できるわけではないが、その信念に従った行動には大いに刺激を受けた。

英語慣用句
forced arbitration 強制仲裁
amicas curiae brief 裁判所に対する意見書
in the hot seat 厳しい立場にいる
blow the whistle 暴露する
take them up on their offer 申し出に応じる、お言葉に甘える
smear campaign 組織的中傷
gag order 発言禁止命令、報道禁止命令
turn the other cheek 甘んじて受け入れる

「Salvage the Bones」Jesmyn Ward

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
2011年全米図書賞受賞作品。ミシシッピ州に住むEschと3人の兄弟はハリケーンカトリーナの上陸に備える。

母を失った家庭で父と3人の兄弟と生きる女の子Eschの視点で描く。一番上の兄Randallはバスケットに情熱を注ぎ、二番目の兄Skeetahは闘犬に入れ込む。物語はSkeetahのお気に入りの闘犬のChinaが子供を産むシーンから始まる。

弟のJuniorの面倒を見ながらもSkeetahとともに犬の世話をしながら日々を送るEschは、自分の体調の変化から、妊娠に気づくのである。弟のJuniorの誕生とともに母を失った家族の中で唯一の女性であるEschは戸惑いながらも日々を送る。1人秘密を抱えながら生きるEschからは男の中で強く生きなければいけない女性の葛藤が見えてくる。

After Mama died, Daddy said, What are you crying for? Stop crying. Crying ain't going to change anything. We never stopped crying. We just did it quieter. We hid it.
ママが死んでからパパは言った
「泣いてどうするんだ? 泣くな、泣いたって何も変わらないぞ」
でも人はなくのをやめない。静かに泣くようになるだけ。隠れて泣くようになるだけ。

そして、少しずつハリケーンカトリーナの上陸が近づいてくるのである。大きな台風を話でしか聞いたことのないEschやその兄弟は、台風に備える父をどこか冷めた目でその様子を眺めるのである。

アメリカ南部の裕福とは言えない黒人の家族の様子を見せてくれる点が新鮮である。また、ハリケーンカトリーナという出来事を当事者の目線で伝えたものに触れたのが今回初めてだったので、ニュースで触れるのとはまた違った視点で大きなハリケーンの様子を知ることができた。

英語慣用句
cuss 悪口を言う
fishing pole 釣竿
concession stand 売店
lead sinker (釣りの)おもり

「The Body Farm」Patricia Cornwell

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ノースカロライナで11歳の女の子Emily Steinerが教会の帰りに遺体となって見つかった。逃亡中のシリアルキラーと手口が似ていることからFBIとKay Scarpettaは事件の捜査に関わることとなる。

Kay Scarpettaのシリーズ第5弾である。序盤からGaultというシリアルキラーが捕まっていない状態という設定なのでシリーズ前の作品を飛ばしてしまったか、展開を忘れてしまったのでは、と思ったが、そんなことはなく本書が急展開の設定らしい。

物語はEmily Steinerの死の真相を突き止めるために、地方警察とFBIが協力して捜査を進めていく。しかし、Kayの周囲では事件以外にもさまざまな問題が生じる。一つ目は長年の相棒であるMarinoが、離婚をしたことを機に少しずつ自暴自棄になって、それが捜査にも悪影響を与え始めたこと。2つ目は、同僚であるWesleyとの仲である。妻がいるWesleyに惹かれる自分に戸惑い罪悪感を抱えるのである。

そして3つ目は、姪であるLucyとの関係である。大学を卒業してKayと同じくFBIで働き始めたLucyではあるが、FBIでは働いてほしくないKayの想いで干渉するKayとの心の距離は次第に広がっていくのである。そんななかLucyがFBI情報に不正にアクセスしたという疑惑が持ち上がるのである。

そんな多くの問題に悩まされながらも、事件は少しずつ解決に近づいていく。Emily Steinerを殺害したのは本当にシリアルキラーGaultの仕業なのか。シリーズ作品というのは少しずつマンネリ化していくものだが、続きも楽しみになった。

英語慣用句
as a crow flies 最短距離で
crib death 幼児突然死症候群
heat exhaustion 熱中症

「The Diamond Eye」Kate Quinn

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
父親のいない息子に射撃を教えるために、射撃のコースを受けていたMila Pavlichenkoは、ドイツがソ連に侵攻したことで歴史家になる夢を保留して祖国を守るために兵士に志願する。

若くしてシングルマザーとなったMilaが狙撃手としてドイツ兵と戦う物語である。物語は若くして子を持ち夫との離婚手続きを進めながらも歴史家を目指すMilaが、ドイツがソ連への侵攻を開始したことによって大きく人生を狂わされ、やがて多くの仲間と共に狙撃手として活躍する様子と、一方でその数年後、Milaを含むソ連の兵士たちがアメリカのホワイトハウスを訪れる様子を並行して描いている。

「The Diamond Eye」Kate Quinn

ドイツ兵と戦う戦場での物語では、少しずつ信頼できる仲間と出会い、女性ながらも確固たる地位を築いていく様子が描かれる。一方、ホワイトハウスででは、女性が戦場で狙撃手として戦うことに理解のないアメリカ人を相手に、ヨーロッパ戦線にアメリカも加わってもらうことの必要性を各地で訴えるMilaと、それを理解しようとするルーズベルト夫人の様子が描かれ、また、Milaを大統領殺人の犯人に仕立て上げようとするる悪意ある視線が描かれていく。

序盤はオデッサが美しい。本書はロシアのウクライナ侵攻以前に執筆されたということであるが、Milaがウクライナ出身でありながらもロシア人として埃を持って戦っている点が、現在の状況を考えるとなんとも悲しく感じる。

全体を通じて、Milaはどこにでもいる普通の母親だったことがわかる。普通の母親が、息子、友人、家族のためにできることをしようとした結果、狙撃手となったのである。最初はフィクションだと思って読み進めていたが、あとがきによると実はかなり実話に近く、実際にMilaはエレノア・ルーズベルトと親しくしていたことがわかる。エレノア・ルーズベルトという人物に対してももっと知りたくなった。

また、The HuntressのNinaもそうだが、ソ連は女性を兵士として戦場に送り出していた数少ない国だったのだと知った。今回の物語のなかでまたMilaの友人たちで魅力的な登場人物が出ており、著者もあとがきでそのうちその女性たちを主人公に物語を書きたいと書いてあったので楽しみである。

「NO RULES: 世界一「自由」な会社、NETFLIX」リード・ヘイスティングス、エリン・メイヤー

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
現在AppleやGoogleなどのGAFAと同列に語られるNetflixのカルチャーについて語る。

本書はネットフリックスの創業者であるリード・ヘイスティングスとエリン・メイヤーが交互に語ることで進んでいく。リード・ヘイスティングスは以前の会社で会社の規則を細かく規定して行った結果、多くの優秀な人材やクリエイティブな環境が失われて行ったと感じており、その反省がネットフリックスの文化に反映されているという。

まずネットフリックスは社内の能力密度を上げることを目指している。そんな文化を築くために繰り返し出てくる言葉がが次の2つである。

フリーダム&レスポンシビリティ(自由と責任)
コンテキストによるリーダーシップ

本書では休暇、退職、情報共有、フィードバック、経費の承認などの事例を交えながら、ネットフリックスのカルチャーとそこに至った経緯を説明していく。どれも驚かされながらも、納得のいくものばかりである。そんななか、特に取り入れたいと思ったのは、フィードバックの文化である。フィードバックで意識する要素をネットフリックスでは4Aとして次のように定義している。

  • 1.相手を助けようという気持ちで Aim to Assist
  • 2.行動変化を促す Actionable
  • 3.感謝する Appreciat
  • 4.取捨選択 Accept of Discard

最後には文化の違いなども考慮して5つめの適応させる Adaptを追加している。やはりフィードバックの前に良いところを伝えたり、オブラートに包んだりすることは、相手の育ってきた文化によっては必要なのだろう。

また、イノベーションを生み出すためのイノベーションサイクルも印象的である。

  • 1.「反対意見を募る」あるいはアイデアを「周知する」
  • 2.壮大な計画は、まず試してみる
  • 3.「情報に通じたキャプテン」として賭けに出る
  • 4.成功したら祝杯をあげ、失敗したら公表する。
承認など要らない、判断するのは自分なのだ

どれもさっそくできる範囲で実践してみたいと思った。会社の文化を変えるのは難しくても、自分が行動することは今日からできるはずだと感じた。

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「ジェフ・ベゾス 発明と急成長をくりかえすAmazonをいかに生み育てたのか」ブラッド・ストーン

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
アマゾンの創業者でありCEOのジェフ・ベゾスを中心に彼の関わってきた事業や私生活を描く。

面白いのはアマゾンの物語ではなく、ジェフ・ベゾスの本であるということだ。そして、事業やサービスをベースにそこで起こった出来事を描いている点が興味深い、それゆえに、ジェフベゾスとトランプ大統領とのやりとりや、ジェフ・ベゾスが所有する他の会社、ワシントンポストやブルーオリジンについても知ることができた。

もちろんアマゾンの事業の過程やそこで起きる困難についても同じように興味深く読むことができた。アマゾン内広告、マーケットプレイスの話からは、アマゾンも常にフェイスブック、グーグルの影響を受けながら事業を展開していることが伝わってきたし、また中国やインドなど国によって文化が異なるため、それぞれマーケットを広げるためには特有の難しさがあることが改めて伝わってきた。

個人的にはブルーオリジンとスペースXの話が面白かった。今後もアマゾンの動向に注意していきたいと思った。

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「フェイスブックの失墜」シーラ・フレンケル/セシリア・カン

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
マーク・ザッカーバーグとシェリル・サンドバーグを中心に困難の時代のフェイスブックを描いている。

これまであった多くのフェイスブックの起業を描いた成功物語とは異なり、タイトルにあるように企業として大きくなった上の困難の時代を描いている。

序盤はマーク・ザッカーバーグとシェリル・サンドバーグの出会いやシェリル・サンドバーグのそれまでの経歴を描いる。シェリル・サンドバーグ個人がフェイスブック参加後に向き合ってきたフェイスブックの男尊女卑文化や縄張り争いについても触れている。広告部門にリソースを割けないことに苛立つサンドバーグの立場も容易に想像できる。マーケット部門とエンジニア部門が敵対する感じも容易に理解できる。

後半は、フェイスブックが通ってきた多くの歴史的な出来事と、それに対するフェイスブックの対応、主にザッカーバーグとサンドバーグの振る舞いを中心に描いている。その経緯やフェイスブック内部の議論や不和を知る中で改めて大企業の社会的責任の大きさを再認識させられる。

人と人をつなげることをミッションに掲げながら、人がつながることで起こる悲劇に会社としてどのような対応をすべきなのだろう。他者を貶めるヘイトスピーチやフェイクニュースなど、間違った情報だからといって削除できないのは納得できる。しかし、それでもその結果大きなマイナスの動きになってしまう要因は、人と人との繋がりを容易にしているフェイスブックにあり、企業としてどのように対応すべきなのだろうか。自分が彼らの立場だったらどんな答えを出しただろうと考えさせられた。

全体的に、マーク・ザッカーバーグとシェリル・サンドバーグの苦悩ばかりが見えてくる内容だった。また、並行して、多くの大きな事件を知ることができた。たとえば、トランプ大統領の大統領選の裏にあったフェイスブックの重要性は噂程度にしか知らなかったし、その後の国会議事堂襲撃事件や、ミャンマーのロヒンギャ族の件は本書を読んで初めて知った。やはり国内のニュースに触れているだけではわからないことが多すぎると改めて気づいた。

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「ローザ・パークス自伝」ローザパークス

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
公民権運動の母と言われるローザ・パークスがその人生を語る。

ローザ・パークスとは、1955年に白人にバスの席を譲ることを拒否して逮捕された黒人女性で、その後大きな公民権運動のきっかけとなった人物である。先日読んだ「Quiet」のなかで、内向的な人が歴史を変えた例としてローザ・パークスの名前が挙がっていたので本書にたどり着いた。

本書では、ローザ・パークスの幼い頃からの家族や親戚との様子を時系列で語っていく。その中で奴隷解放のあとも引き続きたくさんの黒人に対する差別が行われてきたことがわかる。正直、自由の国を謳うアメリカという国でなぜつい最近までこんなことが平然と起こっていたのか不思議である。

やがて、物語は1955年のローザ・パークス逮捕とその後の出来事について語るのである

初めてこの物語を聴いた時、ローザ・パークスのとった行動は、日常の中で一般的な黒人女性に起こったことのように見えた。しかし、実際には彼女の夫は早くから黒人の権利を勝ち取る運動に関わっていて、ローザ・パークス自身にも、公民権に関する強い意志があったのだということを知った。

また、それまでにも白人とのトラブルから大きな運動に発展させられる出来事がないかを、常に黒人の権利を求める行動をしていた人々が探していたことも初めて知った。つまり、素行不良の黒人が白人とトラブルを起こしても大きな運動のきっかけにはならないが、ローザ・パークスのような前科も素行不良もなく真面目な女性であることが多くの人々の心に触れると考えて、黒人の権利を求める人々が利用したのである。

公民権運動を扱った物語に触れると毎回思うことだが、むしろ、自分達の権利のために行動した黒人たちより、そのままの状態のほうが自分達の権利が守られるのに、他の白人たちからの敵意を恐れずに黒人の権利拡大に手を貸した一部の白人たちの行動に心を動かされる。こういう白人たちの行動はそれほど多くは語られないが、本書でも描かれているし、映画にもなった物語「The Help」でも語られている。そのような、自分の利益よりも正しいと感じることに従って生きられる人間でありたいと改めて思った。

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「シリコンバレー・アドベンチャー ザ・起業物語」ジェリー・カプラン

オススメ度 ★★★★☆ 4/5

シリコンバレー・アドベンチャー ザ・起業物語


ペン型のコンピューターのアイデアを思いついた、起業して実際に製品を作ることを決意する。

先日読んだ「社長失格 ぼくの会社がつぶれた理由」でその著者が、失敗したことを本に遺すきっかけとなったのが本書ということで、たどり着いた。

著者はペン・コンピューターを実現するためにGOという会社を立ち上げる。しかしすぐにIBM、アップルやマイクロソフト、AT&Tなどの名だたるIT起業が探りを入れたり、そのアイデアから利益を得ようと近づいてくるのである。

登場人物が多く、法律的な話も多く入ってくるのでなかなか細かいやりとりまではわからないが、当時のIT業界の勢力図はわかるだろう。IBMはすでに動きの鈍い大企業になっていたことが読み取れる。アップルは残念ながらスティーブ・ジョブズのいない期間なので、ジョン・スカリーの記述が多いが、それでもアップルは、当時から良いものを良いとする企業だということがわかる。また、ビル・ゲイツのマイクロソフトは、当時から、著作権に引っかからない範囲で良いものを模倣し、強い企業を作っていくというスタイルだったことが伝わってくる。

中盤からは「1兆ドルコーチ」の本でも有名なビル・キャンベルがやがてペン・コンピューターのCEOになる。本書から垣間見えるわずかなその言動からも、ビル・キャンベルが情熱的で熱いリーダーだったことがわかる。

資金調達だけでなく、契約書の細かい一字一句のすり合わせなど、経営者はこんなにも多くの事柄に対応しなければならないのかと改めて驚かされた。それでも、こんな風にすべてを捧げても惜しくないと思えるような、情熱を注げる仕事に人生を費やすことを幸せだろうと感じた。

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「The Sun Is Also a Star」Nicola Yoon

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
アメリカの移民2世韓国人青年のDanielと不法滞在中のジャマイカ人女性のNatasha出会いを描く。

Natashaは、アメリカで俳優になる夢を追いかける父についてきて、観光ビザでそのままアメリカに不法滞在で生活していた。しかし、父が飲酒運転でつかまったことからジャマイカへ帰国をしなければならなくなる。Natashaは弁護士をあたってアメリカに留まる方法を探し続ける。一方で、Danielは両親の勧めで医者になるために、イェール大学の面接を受けようとしている。なりたくもない医者になるという葛藤を抱えながら面接に向かう際、Natashaに一目惚れするのである。

DanielとNatashaの出会いの1日を描く。Danielは運命を信じる一方で、Natashaはどちらかというと現実主義者であり、そんな二人の考え方の違いと、それを反映するように、少しずつ二人の家族の人間関係や歴史が見えてくるのが面白い。その過程で、韓国とジャマイカという国と、その家族がアメリカで生活することの現実が見えてくる。

アメリカ移民の話は本書に限らずよく耳にする。移民一世は子供の将来のためにと、母国を離れ慣れない土地に移り住み、その結果、人がやりたがらない仕事をやって生計を立てなければならない。一方、その子供の移民二世は、親が自分たちのために苦労して生きてきたことを見ているため、親の期待を裏切る生き方ができない。それが子供の心に葛藤をうむのである。

Natashaの不法滞在者という形は今回初めて触れたので印象的だった。見つかったら即強制送還というわけではないという点も、今回初めて知った。確かに、子供から見れば親についてくるしか選択肢がなかったなかでアメリカに留まる選択肢を与えたくなる心情も理解できるが、一方で、そんなことをしていたらアメリカは人口が増え続け、治安をまもるのも大変だろうと感じた。

全体的には、1日で恋に落ちる若者2人を描いているので、非現実的すぎるという批判もありそうである。映画化されたようなので心情描写が表現しにくい映像の方はなおさらただの非現実な恋愛物語になっている可能性が高いだろう。ただ、個人的には、上に挙げたように、移民二世、不法滞在者という普段触れることのない人生を体験できたのが新鮮で楽しめた。