「Como agua para chocolate」Laura Esquivel

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
生まれた時から料理が大好きだったTitaだったが、末っ子だったため一生母親の面倒を見ることを運命づけられていた。そんな慣習の中で料理に情熱を注ぐTitaの人生を描く。

末っ子は母親の面倒を一生見なければならない、という古い伝統に縛られた家庭を、末っ子のTitaと母Mamá Elenaを中心に描く。そんななかTitaに恋をしたPedroは、Titaが結婚を許されていないことを知り、それでもTitaの近くにいるために、Titaの姉のRosauraと結婚することを選ぶのである。この決断によって複雑な関係が始まっていくのである。

そんな複雑な人間関係のなかで一生懸命生きるTitaやその姉妹とともに、調理の描写が細かいのが印象的である。本書を読むとメキシコの古いしきたりだけでなく、料理についても触れることができる。

スペインのスペイン語に慣れていると、メキシコのスペイン語を読むのが大変であるが、それに加えて調理方法や調理器具などに関する言葉が多くて読むのに苦労させられた。本書は「赤い薔薇ソースの伝説」「Like Water for Chocolate」として、映画化されて映画も高い評価を得ているようなので、機会があったら見てみたいと思った。

スペイン語新表現
pedir la mano de … 〜にプロポーズする、〜に結婚を申し込む
conciliar el sueño 眠りに落ちる
en balde 無駄に
por doquier どこでも、至る所に

和訳版はこちら

「教誨」柚月裕子

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
親戚の死刑囚三原響子(みはらきょうこ)の遺品の受け取り人として指定されていた吉沢香純(よしざわかすみ)は、三原響子(みはらきょうこ)が幼い子を二人殺めた理由を知ろうとする。

幼い自らの子供だけでなく、近所の女の子まで殺害した三原響子(みはらきょうこ)は死刑を執行された。遺品と遺骨を受け取った香純(かすみ)の記憶では、小学校の頃に一度言葉を交わしたことがあるだけであるにも関わらず、そんなことをするような女性には感じられなかった。遺骨を納める地を探すとともに、同年代の響子(きょうこ)に起きた出来事を知ろうとするのである。

世の中の伝統や仕組みゆえに、犯罪が起こる。という物語は、宮部みゆきの名作「火車」を思い起こさせる。ただ、このような、物語の展開よりも心の描写を中心に描くのであれば、よくある物語の何倍も深く、鋭く人の心を描写しないと、傑作にはなりえないなと感じた。そういう意味では、悪くはないが長く心に残るほどの作品には至ってない。

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「Hamnet」Maggie O’Farrell

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
Hamnetは双子の妹のJudithが高熱で倒れたことから母を探していた。

物語は序盤は、Judithの高熱に対応する母を探して近所を歩き回るHammnetの様子、そして、その15年前、風変わりなAgnesと手袋職人の家の長男がやがてAgnesと結婚するまでの様子が交互に描かれる。

後半は家族を失ったことと、父親がロンドンで仕事をすることで、心が少しずつ離れ離れになる様子が描かれる。

正直、最後の最後まで、この物語がシェイクスピアを扱った物語だということに気づかなかった。HamnetとHamletが同じ意味の単語であることも知らなかったし、そもそもハムレットの物語自体を知らなかったから、重要な部分を見逃しているのかもしれない。やはり退屈でも古典には触れないといけないと感じた。

ただ、物語としてはかなり展開が少ない。Judithの高熱が、ひと段落するまで物語の半分以上を消費してしまう。

見どころは、子供を失った両親の描写だろう。きっとその描写から得られる感情は、独身の読者と子供を持つ読者では異なるのではないだろうか。そんなことを子供を持つ立場になってみるといろいろ伝わってくるものが違うのに気付かされた。

英語新表現
at odds with … …と矛盾する
Will-o'-the-wisp 欧米の神話に登場する不思議な光のこと
by-your-leave あなたの許可
chimney breast 暖炉や煙突などの部屋の中に出ている部分
chest cold 気管支炎

「極楽征夷大将軍」垣根涼介

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
第169回 (2023年上半期)直木賞受賞作品。足利家に生まれた兄弟、又太郎(またたろう)と次三郎(じさぶろう)が、やがて室町幕府を起こすまでを描く。

本書は足利尊氏とその弟直義(ただよし)や高師直(こうもろなお)中心に室町幕府を起こすまでを描いている。

正直、今まで触れてきた歴史物は、戦国時代から江戸時代のものが多かったし、それ以前の物語だと武蔵坊弁慶や源義経など鎌倉幕府に関わる物が多かったので、この時代についてはほとんど知らなかった。それだけに本書で描かれていた足利尊氏(あしかがたかうじ)の人間性や室町幕府成立に対するる尊氏(たかうじ)の弟直義(なおよし)の貢献さには大きさには驚かされた。

本書では足利尊氏(あしかがたかうじ)は、政治に才能を発揮する弟の、直義(ただよし)や師直(もろなお)に任せきりで、人情味あふれる人間ではあれど、ほとんど政治に興味を示さない野心ない人間として描かれているのである。

後半では、室町幕府が成立して以降の、終盤では、さまざまな内紛の様子が描かれる。それまで一緒に室町幕府を支えていた。直義(ただよし)と師直(もろなお)が、少しずつ疎遠にいく様子からは、当時の遠方との意思疎通の難しさが伝わってくる。

そういう意味では、日本という大きな土地を長く統治することがどれほど難しいかが伝わってくる。一方でそれは、のちに長く全国を平和に統一した徳川家康につても興味を掻き立ててくれる。

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