「氷点」三浦綾子

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
辻口家の娘のルリ子を殺した犯人は、自分も生まれたばかりの娘を遺して自殺した。辻口啓造(つじぐちけいぞう)は浮気をしていた妻夏枝(なつえ)への復讐のために、犯人の子供を引き取ることとする。

タイトルは何度も耳にしたことがある作品にもかかわらず読んだことがなかったので、今回手に取ってみた。

犯人の子を陽子(ようこ)と名づけて、長男の徹(とおる)とともに我が子として育てる夫辻口啓造(つじぐちけいぞう)と妻夏枝(なつえ)の様子を描く。夏枝(なつえ)の一時の気の迷いから生まれた行為が誤解を生み、そんな夏枝(なつえ)への復讐のための陽子(ようこ)が犠牲になっているという流れである。

強い嫉妬や復讐が描かれることが多い展開の中、唯一の救いは、母から辛くあたられるという苦難の中でも、前向きに生きようとする陽子(ようこ)の姿である。しかしそんな困難をプラスに変える生き方が、さらに母夏枝(なつえ)の敵対心を増していくのである。

個人的に気になったのは、自らの子供を殺した犯人の娘だかという理由で、真実を知ってから陽子(ようこ)につらく当たる夏枝(なつえ)の行動である。子供には何の罪もなく、幼い頃から育ててきだ子供であれば、血が繋がっているいないに関係なく愛情を注げると感じるのだが、この違和感は2020年代に読むからこそ感じるのだろうか。本書が出版された1970年代にはこの「殺人者の血」という考えが、今よりも自然に受け入れられていたのかもしれない。

すでに40年以上前に出版された物語であり、その舞台はさらにその10年以上前の戦後を舞台としているので、描かれる生活の様子が古いのはもちろんだが、登場人物の心情の描き方が表面的である点が、読んでいて古臭さを感じた。

一つの古典作品として読むのならまったく問題ないが、単純に一つの物語として楽しめるかと言われれば、やはり現代の深い心情描写や、息もつかせないような物語展開の作品と比べると見劣りしてしまう。

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「営業の神様ヤマナシさんが教えてくれたこと」早崎郁之

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
不動産会社の営業として成績がふるわない早崎(はやさき)はある日、ヤマナシさんと出会い、営業に対する考えを変えていく。

売るために物件のスペックばかりを説明していた早崎(はやさき)がヤマナシさんの助言によって、少しずつお客の本当に実現したいことは何かに耳を傾けるようになっていく。

その後は早崎(はやさき)がさまざまなお客に対して同様の考えをすることで、営業の成績をあげていく。結局本書で重要なのは次のことである。

その人がその商品やサービスを通じて得たいと思っているもの。誰かに愛されること、受け入れられること、認められること。これこそが真の欲望、『スーパーウォンツ』なんだよ

営業だけでなくさまざまなサービスにおいてもよく聞く話ではある。ブランドのひけつについて書いた「Building a storybrand」にも、サービスをスターウォーズにたとえて、私たちはヨーダになるべきでルークルカイウォーカーになってはならない。という言葉があった。結局、成功するサービスは常にお客様が主人公であることを意識しているのである。

そしてそれを常に実行するために、本書の「スーパーウォンツ」ように、共通の言葉を与えているのは有益だろう。

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「日本一わかりやすい ひとり社長の節税 〜税理士YouTuberが“本音”で教える〜」田淵宏明

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
個人で仕事をしている人向けの節税方法について語る。

確定申告でかなりの税金をとられることから、他にも節税方法がないかと思っていたところで知人に本書を勧められた。

独立後の働き方としては、個人事業主として働くか、法人化するかという二つの選択肢があり、本書は基本的に法人化を進めており、全体的にも法人化したのちの節税方法について書いている。

大きな学びは、よく言われる年収1,000万円付近が法人化の目安、というのは特に信憑性がなく、年収500万円程度でも法人化した方が節税になるということである。

とはいえ、法人化した後の節税方法を知れば知るほど、考えなければいけないことが複雑になっていくという点が非常に悩ましい。法人としての税金計算に加え、個人としての計算も必要になり、単純に考えても計算にかかる手間が二倍以上になる。また、それを税理士に依頼するとさらに複雑になり、法人化すると税務調査が入る可能性も大きく高まるという。

漠然と法人化したのちのイメージはついたが、なかなか手間を考えると簡単には決断できないと感じた。人生の豊かさは持っているお金だけでなく、どれだけ生活を単純化するかにも大きく依存すると感じているので、節税のためとはいえむやみに人生を複雑にすべきではないだろう。

本書はすでに法人化を決断した人が読むと、使える情報にたくさん出会えるかも知れない。

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「The Perks of Being a Wallflower」Stephen Chbosky

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
高校生のCharlieが日常の出来事を日記に綴っていく。兄や姉や家族の話や、高校の友人たちの話を語る。

前半は、本当に普通の高校生が日常を綴っているという印象である。基本的には仲のよいPatrickと大好きなSamを描くことが多い。他にもさまざまな高校の友人たちが描かれ、Charlieが描く友人たちが、みんな非常に優しい人たちなのが伝わってくる。ただ、高校生活の些細な出来事が多く、なかなか物語が大きく動かないので若干飽きてしまうかもしれない。

しかし、中盤以降、少しずつCharlieが、普通の高校生とは少し違った感覚の持ち主で、過去の出来事によって心に大きな傷を抱えていることがわかってくる。そして、Charlieが日記をつけ始めたのは、精神科医に勧められて始めたということである。

やがて、Charlieは周囲の家族や周囲の友人たちの支えもあって、少しずつ自分の人生に向き合うようになっていくのである。

作品としては映画化もされており、大きく評価されてはいる。しかし、読んでみるとそこまで本を読み慣れている人に響く作品には感じられなかった。どちらかというと、その日記というスタイルから、主人公のCharlieと同年代の十代の若者の共感を集めたのだろうと感じる。

一方で高校生であるCharlieが日記をつづる、というスタイルの物語なので、時々出てくる高校生らしいスラング以外は出てくる英単語は非常に簡単である。

英語新表現
somebody's crush 誰かの片思いの人
designated hitter 指名打者
do acid 幻覚剤を摂取する
behind by one run 一点差で負けている
the beer starts to hit him ビールで彼は酔っぱらい始めた
second string 補欠(2番手)選手

「El cuco de cristal」Javier Castillo

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
心臓移植で命を救われたCora Merloは、自分の命を救ってくれたCharlesがどんな人生を送ってきたのかを知るためにCharlesの故郷のミズーリ州Steelvilleを訪れることとなる。しかし、Steelvilleでは未解決の行方不明事件が繰り返し起こっていた。

物語としては、CoraとCharlesの兄のJackが、行方不明の事件の真実に迫っていく様子を描く現在の様子と数年前の様子を交互に描いている。CoraはドナーであるCharlesの生前の様子を知るためにSteevilleに滞在し、そのなかで偶然行方不明のこどもを発見したことから事件に巻き込まれていくこととなる。一方Jackは、CoraのドナーとなったCharlesを弟に持つだけでなく、行方不明者を捜索していた警察官だった父親も失踪しているという過去を持つのである。

現代と並行して描かれる過去の物語では、失踪前のJackの父のEdwinが、子供の頃に行方不明になった姉を探す様子を描く。姉は田舎町の生活に嫌気が出て家族も顧みずに出ていった、と思っていたEdwinだったが、警察官として町の事件の解決に奔走する中で姉と思われる写真を見つけ、姉は実は拉致され殺害されていたのではないかという疑いが濃くなるのである。

Edwinの姉が行方不明になった1980年とEdwinが警察官として行方不明者の捜索に奔走する2000年、そしてCoraとJackがEdの父親Jackを含む行方不明者の謎に迫る2017年と、40年近くを隔てた3つの時代に起こった未解決行方不明事件の謎に迫るという、こんなに風呂敷を広げて大丈夫なんだろうかと思うほど謎満載の物語である。

マラガ生まれの著者のスペイン語の物語であるにもかかわらず舞台はアメリカという点がちょっと残念であるが、物語自体はしっかり楽しませてもらった。

スペイン語新表現
a hurtadillas こっそりと
de costado 脇腹から、横向きに
una camisa a cuadros チェック柄のシャツ
los juegos de mesa ボードゲーム
a merced de … 〜に翻弄されて、〜のなすがままに