「人魚が逃げた」青山美智子

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
銀座に逃げた人魚を探している王子がいるらしい。そんな噂が流れる銀座で、人間関係に悩む6人の男女を描く。

青山美智子作品も何冊か読むと、その共通したテーマと、スタイルに気づくことだろう。いつでも今ある日常の人間関係の大事さを伝えようと、さまざまな立場の人間の目を通して伝えてくるのである。今回もそういう意味ではその哲学は変わらない。人魚姫という素材を盛り込みながら、うまくいかない人間関係をさまざまな視点で描いていく。

印象的だったのは19歳の友治(ともはる)と31歳の理世(りよ)の12歳の年齢差のカップルの物語である。第一章が友治(ともはる)目線と第五章がの理世(りよ)目線となっており、友治(ともはる)目線の物語からは、豪華なマンションで生活する理世(りよ)に劣等感を抱きながらも背伸びする男性の様子が描かれる。

また理世(りよ)目線の物語では、若い男性に自分はふさわしくないかも、と怯えながらも強がって大人の女性を演じる様子が描かれる。結局のところ両思いにもかかわらず、不安を募らせる両者が、読者として第三者目線でみると、なんとももどかしい。

60歳を過ぎて離婚した男性を扱って第3章も面白かった。勢いではなく、冷静に離婚を決断した妻の言葉は世の男性すべてが心に留めておくべきだろう。

私が本当に、ああもうだめなんだなって悟ったのは、あなたが積み立て預金に手をつけたこと自体よりも、罪悪感もなく逆ギレされたことよ。人と人を繋ぐのは結局、愛とか恋より、信頼と敬意なのよ。

どの物語からも、正直な思いを言葉にして伝えることが、どれほど重要か、そしてそれを怠ることでどれほど無駄なすれ違いを生むのかが伝わってくる。

「でも、私は彼にふさわしい人間だなんて思えない。」
「彼はきっとこう言うわ。それは僕が決めることなのに、って」

恋愛に躊躇しているすべての人に伝えたい言葉である。

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「ユーモアは最強の武器である」ジェニファー・アーカー/ナオミ・バグドナス

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
ユーモアの重要性とさまざまな実験の結果や事例とともに説明する。

序盤はユーモアの有効性、特にビジネスシーンにおける必要性を語りながら、人々がユーモアを発揮にくくさせている4つの思い込みについて触れている。

  • 1.ビジネスは真面目であるべきという思い込み
  • 2.うけないという思い込み
  • 3.面白くなくちゃいけないという思い込み
  • 4.生まれつきの才能という思い込み

面白いのは、ユーモアを試みるだけでも、つまりつまらないユーモアだったとしても職場の雰囲気は大きく変わるということである。

中盤ではさまざまな有名企業でのユーモアの事例を挙げている。本書ではグーグルやピクサーの例を紹介しており、リーダーや会社のトップがどのようにユーモアを使い、社員のユーモアにどのように反応するかが、組織におけるユーモアの文化を決めていくのだということがわかる。

特に印象的だったのが、立場において使えるユーモアが変化するという考えである。立場が低い人は、自虐ネタよりも上司をいじるユーモアが有効な一方、上司は自虐ネタの方が安全なのである。言われてみれば納得であるが、ユーモアを効果的に使えるように気をつけたいと思った。

さっそく、生活の中で使うユーモアの量を少しずつ増やしていきたいと思った。

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「マインクラフト 革命的ゲームの真実」ダニエル・ゴールドベリ/リーナス・ラーション

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
現在では子供から大人まで多くの人に愛されているゲーム、マインクラフトをつくったマルクス・パーションの生活とマインクラフト立ち上げまでをの様子を語る。

マインクラフトというゲーム自体は名前は聞いたことあるものの実際にプレイしたことはなかった。以前プレイしたバーチャルワールドであるセカンドライフのようなものという印象を何となく持っていた。子供が幼稚園生になって園児のなかにもマインクラフトを日常的にプレイしている子が多々いるということで、改めてマインクラフトについて知りたくなった。

本書を読むとマインクラフトというゲームが、ただ単に開発者であるマルクスの試行錯誤だけでなく、さまざまな過去のゲーム開発者たちの考え方を結集してたどり着いた結果であることがわかる。漫画であればスラムダンクが大きくその後の漫画を変えたように、電話であればiPhoneが革命を起こしたように、マインクラフトもゲーム史の大きな革命を起こしたのだと感じる。

また、本書からはマルクスがお金儲けよりも自分の地位よりも、ただ純粋にゲームをプレイすることやゲームを作ることを楽しんでいる様子が伝わってくる。「Tomorrow and Tomorrow and Tomorrow」でも感じたことだが、本書のマルクスのように、ゲームが生活の一部になっている人たちの話に触れると、ゲームをプレイしない自分は人生をかなり損しているのではないかと感じてしまう。映画や漫画や小説と同じように、きっとゲームも楽しいことだろう。さっそくマインクラフトをインストールして触ってみたいと思った。

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「記憶に残る人になる トップ営業がやっている本物の信頼を得る12のルール」福島靖

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
リッツ・カールトン、アメリカン・エキスプレスを経て営業コンサルティングとなた著者が良い営業になるための秘訣を語る。

著者自身の営業としての哲学は一貫して、得るものやサービスを語るよりも、信頼できる人間になるということである。そして、同時にタイトルにあるように記憶に残る人になるということである。そのための方法として著者が実践していることを本書では解説しているが、なかでも印象に残ったのは「感謝」の方法を決めないの章である。

僕自身謝罪を感謝に置き換えられるなら可能な限り感謝の言葉を伝えたい、という考えではあるが、感謝を伝えようとすると、どうしても言葉で「ありがとう」と伝える以外の方法が思いつかず、その形の制約から伝えられる相手や状況が限られてしまっていた。だからこそ本書の

感謝の方法や対象にこだわってはいけない

は非常に印象的でぜひとも取り入れたい考え方である。実際、本書では名刺に感謝のメッセージを書いて渡したり、ゴミ箱に清掃員への感謝のメモを貼ったりするシーンが描かれていて、決して難しい行動ではないと感じた。

著者は次のようにも語っている。

  • 感謝されるようなことをするよりも、小さな感謝を伝えることで人の心は動く…
  • 「すべての人」に、感謝を伝えているだろうか?

もちろん人は感謝されるために行動しているわけではない。だからといって感謝を伝えない理由はない。ぜひ実践していきたいと思った。

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「国宝」吉田修一

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
長崎の極道の家に生まれた立花喜久雄(たちばなきくお)は、抗争で父を失ったのち、歌舞伎の家で生活しながらその道へと進んでいくこととなる。

すでに本作品は映画化されており、すでに複数の人からその映画を勧められた。同じ物語の本と映画があったら本から入るべきという哲学から、本書を読むに至った。

物語は極道の過程に生まれ育った立花喜久雄(たちばなきくお)が、父親の死をきっかけに勢力を失っていくなか、知り合いの歌舞伎役者の花井(はない)家の下に預けられる。元々演技をすることが嫌いではなかった喜久雄(きくお)は、本家の息子である俊介(しゅんすけ)とともに、歌舞伎の未来を担う役者として成長していく。

一般的には本と映画があったら本のほうが良い作品であることが多い。それはそもそも良い物語を2時間の尺に詰め込むのはむずかしいし、人の心情を表情などの映像で伝わる表現だけで表現するのは不可能だということからだろう。しかし、本書に関しては、歌舞伎の描写の説明が多く含まれており、よっぽどの歌舞伎愛好家でなければ理解できないような内容が多く、映画の方が多くの人にとって入りやすいだろうと感じた。

歌舞伎の歴史や描写以外でも、喜久雄(きくお)を中心にした人間の物語はそれなりに読み応えはあるのだが、歌舞伎の描写の部分になかなかついていけなかったこともあり、物語を存分に満喫したような感じは味わえなかった。

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「Red Rising」Pierce Brown

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
将来移住してくる人類のために、火星の地下を掘り続けるRedと呼ばれる人々、そんななかの一人Darrowは、妻のEoが処刑されたことを機に、自分達を欺いてきた世の中の仕組みに気づく。

序盤は火星の地下の開拓のために、重労働を強いられる人々が描かれる。そんななかDarrowの妻は体制に歯向かって処刑される。Darrowは自暴自棄になったところでようやく現実に気づくこととなる。それは、すでに火星の地表には多くの人々が移住して快適に生活しており、将来の人類のために地下を開拓する、というのはRedの人々を働かせるための方便だったのである。

表向きには処刑されて死んだことになったDarrowは、肉体改造を経て、火星の頂点の種族であるGoldとして、将来のRedの反乱を確実に成功させるために、Goldの社会へと潜入する。そして、Goldの社会の中での地位を手に入れるためにGold同士の生き残りのゲームに参加することとなるのである。

火星を舞台にしたサバイバルということで、「The Hunger Games」のような印象である。未来の火星を舞台としているだけでなく、道具や技術も架空のものが多いので、なかなかその世界観についていくのが難しい。架空の世界の物語については常に言えることだが、世の中に活かせるような学びはほとんどない。本書は三部作の最初の作品ということで、物語はまだ道半ばではあるが、この労力を費やしてまで続きを読むのかは悩ましいところである。

以前よりよく名前を聞く作品で、完成度の高いファンタジー作品を期待していたのだが、若干期待はずれという印象である。

英語新表現
a game of merit 実力主義のゲーム
square up with … …と決着をつける
bent on … …に夢中になっている。
standard deviation 標準偏差
buck for … …を得ようと躍起になる
get their jollies off 楽しむ、満足感を得る、喜びを得る

「シューメーカーの足音」本城雅人

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ロンドンで靴職人として働く斉藤良一(さいとうりょういち)と、日本で靴職人を夢見る榎本智哉(えのもとともや)の二人を描く。

すでにロンドンで靴職人として独り立ちしながらも、さらにそのブランド価値を高めようとする斉藤良一(さいとうりょういち)を描くとともに、日本で、靴の修理という小さな対応を重ねながら、将来を夢見て自らの技術の向上に励む榎本智哉(えのもとともや)を描く。

物語が進むに従って少しずつ二人の過去が明らかになっていく。現在は成功している斉藤良一(さいとうりょういち)だが現在の地位を掴むための苦労が見えてくる。そんな斎藤の過去からは、靴づくりにかける情熱と並行して、狂気のようなものも見えてくる。

一方で、榎本智哉(えのもとともや)の日常からは、斉藤良一(さいとうりょういち)を過剰なまでに意識していることがわかる。そこには父親の最期が大きく関わっていた。

やがて、智哉(ともや)の計画が功を奏して、二人は対決することとなる。

若干物語の展開が少ない。一方で靴職人の靴づくりにかける思いは十分に伝わってきて、ものづくりに没頭することのすばらしさを改めて感じた。

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