
オススメ度 ★★★★☆ 4/5
日本のプロ野球が4球団に縮小され、アメリカのメジャーリーグとの統一リーグとなることとなった。プロ野球の関係者たちはプロ野球の未来と自分の立場を憂いながらも大きな変化に適応しようとする。
選手、ファン、監督などさまざまなプロ野球関係者の視点から、日本のプロ野球とメジャーリーグ(以下MLB)の統合の動きを追っていく。もっとも興味深いのは大野俊太郎(おおのしゅんたろう)という20代の青年だろう。彼はファンタジーベースボールという実際のプロ野球のデータをもとに競うゲームで優勝者となったことから日本の球団の副GMという仕事にたどり着いたのである。「マネーボール」のような緻密な分析を日本のプロ野球に取り込んだことでチームの成績を上げたにも関わらず、プロ野球とMLB統合という大きな波に飲まれていくのである。
日本のプロ野球とMLBとの統合という考えは、サッカー界が国をまたいだ大会によって大きな成功を収めていることを考えると、現在の閉鎖的なプロ野球でありかつ人口減少が止まらない日本における解決策としては興味深い。しかし、細かいルールの違い、チームが抱える選手数の違い、移動距離の問題、など、実際に実現しようとなると克服しなければならないさまざまな障害があるのである。本書はそれぞれの登場人物の物語とともにさまざまな問題を取り上げていく。
物語として面白いかどうかは別として、プロ野球にかぎらずスポーツビジネスに興味がある人は楽しめるだろう。個人的に興味を持ったのが、アメリカで最も人気のあるスポーツアメリカンフットボールのビジネスモデルである。年間1チーム20試合に満たない試合数でこれほど成功するスポーツの秘訣は一体なんなのか、今年のシーズンは興味を持って見てみたいと思った。
面白く描いたスポーツのビジネス書として捉えるとちょうどいいかもしれない。