「ローマ人の物語 パクス・ロマーナ」塩野七生

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
「ローマの平和」を意味する言葉「パクス・ロマーナ」。紀元前29年から紀元14年までの、カエサルの死後を引き継いだアウグストゥスの時代を描く。
この時代には派手な戦や動乱はない、ただローマの平和の礎を築枯れて行く時代なので、アウグストゥスの地味な政策が続く。そのため人によっては「退屈な時代」と映るかもしれない。
しかし、地味な時代だからこそ、アウグストゥスの狡猾さや人間味が見えて面白い。筆者もそんな地味な面白さをしきりに訴えていて、カエサルとアウグストゥスの異なる面を興味深く描いている。例えば、アウグストゥスが後継者に血統を重んじたという点、そして、カエサルのような陽気さや大らかさ、そして指導力やカリスマ性を持っていなかった点などである。
この時代の分かりやすい一つの大きな動きはゲルマニア侵攻である。カエサルのガリア戦争同様に、ゲルマニア侵攻も進むはずだったのだが失敗に終わる。そんな過程で見えてくるアウグストゥスとティベリウスの関係が面白い。ゲルマニア侵攻で実績を残し、兵士達からも慕われたティベリウスだが、アウグストゥスからはなかなか理解されずにロードス島に引きこもってしまうのである。全体としての印象だが、アウグストゥスはどこか冷淡で、心を開かない人間だったと言う印象を受ける。
ついに紀元に入ったローマ帝国。今後キリスト教などが普及して行くことだろう。皇帝ネロの誕生も本書では描かれていたので、宗教絡みの展開が楽しみである。
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