「勝ち逃げの女王 君たちに明日はない4」垣根涼介

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
不況の世の中で多くの会社が人員削減に努める。そんな人員削減を請け負う会社に勤める真介(しんすけ)の仕事を通じて、多くの人の人生の転機に触れる事が出来る。
「君たちに明日はない」シリーズの第4弾である。今回も真介(しんすけ)がその仕事のなかで、3つの企業の従業員を面接する。最初の物語では経営破綻に陥った航空会社でCAの面接を真介(しんすけ)が担当する。これまでの物語と違うのは、普段は退職を勧めるのに対して、今回は予定以上に退職希望者が出てしまったために慰留を勧める点だろう。毎週のように合コンを繰り返すCA。多くの日本人女性が憧れるCAという職業の様々な問題点が見えてくるだろう。
印象的だったのは、3つめの物語「永遠のディーバ」。かつでは音楽に情熱を注いでいたため、その延長で楽器を扱う会社に就職し管理職を努める男飯塚(いいづか)の物語。真介(しんすけ)は飯塚に退職を勧めながらも、その夢と仕事を割り切る事のできない生き方に苛立つ。一方飯塚(いいづか)は真介(しんすけ)の言葉をきっかけに改めて自分の生き方を考え始める。そこで描かれるのは、好きな物と努力と才能。どんな才能にめぐまれた人でも、世界一でなければいつかは味わう、自分より優れた才能にであったときの絶望。人は夢と才能と仕事と、どうやって生きていくべきなのか。そんなことを考えさせてくれる内容である。

結局は、気持ちなんです。次々と見せつけられる実力の差やセンスの壁に、それでも挫けずにその行為をやり続けるに値する、自分の中の必然です。その必然に支えられた情熱こそが、絶え間なく技術を支え、センスを磨き、実力を蓄えてくれる。

もちろんほかの2つの物語も深さをもっているが、この3つめの物語はもう一度読み返したくなるほど印象的だった。

将来は、確かに大事だ。でも、だからと言って、その将来のために今のすべてを犠牲にするなんて馬鹿げている。何故なら、どんな年齢になっても、死ぬ寸前まで常に将来はあるからだ。その将来の備えのために、常に犠牲となっていく今という時間。

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